2017/08/08

「政務研究会―京都政務セミナー」と宮崎健介氏のリンク

twitterでちょっと話題になっていた。簡単な検索記録。

元衆議院議員の宮崎健介氏が京都市の下鴨神社で講師を務めるセミナーが開催される。
ポスター画像【魚拓】, その2

セミナー名は「政務調査・政務活動 京都政務セミナー」。平成29年9月5日、6日の2日間計4回の日程。参加費は各回1万5千円、4回通しだと4万8千円。

このポスターは素人の手作り感がある。
講座タイトルが「前衆議院議員特別講座 今の時代に求めらている議員像」と大きな誤植がある。「29年9月5日」と年号を付けない、など。

主催団体は「政務研究会―京都政務セミナー」というらしい。
ウェブサイト→政務研究会 -京都政務セミナー-
「今の時代に求められている議員像 in KYOTO」という見出しが大きい。スマートフォン用にデザインされているようだ。
ウェブサイトは非常に簡素で、セミナー案内以外にほとんど内容がない。団体の概要紹介もなく、誰が主催者なのかも分からないし、いつから行われているセミナーなのかも分からない。

宮崎氏以外には、次の「公演」(「講演」ではなく)が予定されている。
11月:神道扶桑教現管長、元小池百合子秘書官の宍野史生氏
12月:衆議院議員金子めぐみ氏
※12月の金子氏は宮崎氏の妻である。

ところで、宮崎氏のセミナー案内には次のように氏のプロフィールが紹介されている。

8infinity株式会社 代表取締役。(神社仏閣の経営支援及びプロデュース)
1981年 東京都新宿区生まれ。1999年 早稲田大学高等学院卒業。2003年 早稲田大学商学部卒業。同年 日本生命保険に入社。2004年 人材派遣会社のインテリジェンス(現・パーソナルキャリア)に転職。2005年 ITベンチャーのドリコムに転職。2007年 株式会社ネオトラディションを創業。2012年 第46回衆議院議員総選挙で京都3区から出馬し初当選。2014年 第47回衆議院議員総選挙で2回目の当選。
その後辞職し、新会社を設立したことには触れていない。

氏の会社である「8infinity」のサイト:8infinity株式会社
会社概要は以下のように記載されている。

運営者:8infinity株式会社
住所:京都市伏見区竹田真幡木町64番地
電話番号:0120-55-1175
URL:https://www.8infi.co.jp/
Email:8infinity株式会社
事業内容:神社仏閣の総合経営支援及びプロデュース
     プログラミング教室事業
     宿坊事業
     研修事業
資本金:10,000,000円
そして、こちらのウェブサイトもほとんど内容がない。「サービス内容」というページは白紙状態だ。

ところで、この「8infinity」のサイトと上記の「政務研究会」のサイトは、同じ人or事務所が作っているような気がする。なんとなく似ているのだ。

宮崎氏のこの事業については週刊現代の記事がある。
不倫で辞任・宮崎謙介元議員は新会社を設立して「実業家になる」(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社

妻がテレビで「ネタ」を解禁する一方で…

宮崎氏本人に聞いた

「そこそこ仲良くやってますよ」

日曜朝の情報番組『サンデー・ジャポン』(TBS系・4月9日放送)に出演した金子恵美衆議院議員(39歳)は、夫婦仲を聞かれると、そう即答。

「ビジネスカップルでしょ?」「好感度のため?」と突っ込まれても、「そんなことないですよ」と笑顔でかわしていた。

夫である宮崎謙介元衆議院議員(36歳)は、育休をとりたいと宣言していながら、妻の妊娠中に女性タレントと不倫していたことが発覚。昨年2月に議員辞職し、離婚はなんとか免れたものの反省の日々を過ごしている。

「1歳になる長男と家族3人で、議員宿舎で暮らしています。夫婦仲について、宮崎さんは『家族として仲良くしている』と言っていました。

なんとなく今の状態が分かりますね。宮崎さんは、金子さんの事務所に出入りして政治活動をサポートしながら育児をしていましたが、昨年末に知人と新しい企業法人を立ち上げて頑張っていますよ」(自民党関係者)

その会社名は『8infinity』。宮崎氏が代表取締役を務め、役員はほかにいない。いったいどんな会社なのか?宮崎氏本人に聞いた。

――設立した会社について教えてください。

「個人事業をメインでやっています。(業務内容は)特に公表しているものではなく、他に関係者もいるので、お話しできないんです。すみません」

――近況についてお話を聞きたいのですが。

「取材は一律でお断りをしています。(夫婦仲については)それは妻が言っている通りでございますので。私が特にコメントする立場ではありません。わざわざありがとうございます。失礼します」

終始丁寧な受け答えだったが、新会社については口を濁した。

代わって宮崎氏の親しい知人はこう語る。

「教育関連の事業を行っています。メインは子供たちにコンピュータのプログラミングを教えるプロジェクトだと聞いています。

いずれはスポンサーをみつけて事業を大きくしたい気持ちが彼にはある。もともと宮崎さんは議員じゃなくて商売人に向いているんですよ。いまはイキイキと仕事しています」

金子議員の父で、月潟村(現新潟市)の元村長・金子由征氏はこう語る。

「会社について報告はありました。これからの生活のこともあるわけだから頑張って、と伝えましたよ。私たち夫婦も月の半分以上は上京して、子育てを手伝っています。(宮崎氏には)子供の面倒を見ながら仕事も頑張ってくれという気持ちです。

また議員の不倫のニュースがありましたけど、ウチのほうは夫婦仲良く、一生懸命家族で頑張っていますので、もう大丈夫ですから。過去は過去で、これからしっかりやってもらいたいですね」

実業家として成功し、「ゲス不倫」の汚名を晴らすことができるか。

「週刊現代」2017年5月6日・13日合併号より

こちらの記事には、「神社仏閣の経営支援及びプロデュース」とか「8infinity株式会社では、神社仏閣の総合経営支援及びプロデュース業を柱とし」とかの、神道・仏教系の事業には言及がない。代わりに「メインは子供たちにコンピュータのプログラミングを教えるプロジェクトだ」という話が出ている。どちらが「メイン」なのだろう。あるいは事業内容が変わってきているのだろうか。事業内容の筆頭には「神社仏閣の総合経営支援及びプロデュース」が挙がっているのだが……。
もう一つ、宮崎氏は東京の議員宿舎でお子さんと生活されているとのことだが、この会社は京都市伏見区に所在地があり、そして今回の「セミナ-」も京都市で行われる。伏見区は確かに元の選挙区だった京都府第3区に含まれているのだが……。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2017/07/09

節操のない毎日新聞

毎日新聞とジュンク堂書店が百田氏のサイン会を宣伝。

2017年7月8日付毎日新聞(大阪版のみ?)夕刊の5面に、百田尚樹氏サイン会の広告が掲載された。
Dsc_2021e_2
ジュンク堂大阪本店で『今こそ、韓国に謝ろう』を買った人に7月16日の百田氏サイン会の整理券を配布中とのこと。

ジュンク堂も断れないのかしれないが、氏のサイン会を開くなど恥辱の極みだと思わないのだろうか。
本はほぼ全てジュンク堂で買っていたのだが、今後は書店を代えざるを得ない。残念の極み。

毎日新聞は、すでに先日、当該の本の広告を掲載していた。その時もひどくがっかりしたのだけれど、広告主がいることだから……と我慢した。しかし、今度の広告には「企画・制作/毎日新聞社広告局」とある。
もちろん依頼があったからこういう広告を出したのだろうと想像できる。しかし、今回は主体的にレイシズムの宣伝に荷担したわけだ。積極的に、毎日新聞社として、この醜悪な書物を推薦しているわけである。

ジュンク堂と毎日新聞社に対しては、百田氏のこれまでの言動とこの書物に対する見解を聞きたい。

ちなみにその夕刊の7面には「毎日通販」という会社の「筑紫金うなぎ蒲焼き」の広告が掲載されている。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2017/06/29

「プレミアムフライデー」を動かす人々

以下の記事に引っ張られて。
「プレミアムフライデー、3人に1人が参加」 自画自賛広告に疑念。『早く帰らなくてもOK』になぜかすり替わってる | 生田綾(ハフポスト)
「プレミアムフライデー 定着の兆し」 全面広告に失笑...「虚構新聞」もネタに : J-CASTニュース
虚構新聞:「3人に1人が参加 プレミアムフライデー、定着の兆し

嘲笑されている。ハフポストの生田さんは怒っているけど。

嘲笑するのは当然だが、この馬鹿げた施策にも国費が投じられているわけで。
この馬鹿げた公共事業でどんな人たちがご飯を食べているのだろうか。

プレミアムフライデー推進協議会公式サイト
この公式サイト、お金がかかってるなあ……(血税をたくさん食べてるなあ)と思う一方で、組織に関する説明がほとんどない。事務局が博報堂で、経産省が主管だということしか分からない。

博報堂か……。

で、この公式サイトが貼っている、誰の文書か記名がない平成28年12月12日付「プレミアムフライデー推進協議会の設立について」というPDFファイルによれば、専従事務局員を2名新たに雇っているそうだ。
補助金が終わると雇用が終わる短期雇用かなあ……。

この文書によれば、この協議会、設立時の幹事としては経産省+15団体とのこと。
で、この16者の後から、幹事を追加してもいいらしいんだけど、現時点での幹事の一覧は分からない。
つまり、どういう人たちが運営しているのかは公式サイトでは分からないことになっている。

そして、幹事会の議事は非公開、配付資料は原則公開だけど、非公開にしてもいいらしい。
どうして非公開にするのかというと、「率直かつ自由な意見交換を確保するため」だそうだ。

で、この16名の幹事だけど、経産省のPDFファイルによれば、以下の通り。

伊藤 廣幸 一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会 専務理事
乾 敏一   全国商工会連合会 専務理事
井上 淳   日本チェーンストア協会 専務理事
上田 正尚  一般社団法人日本経済団体連合会 産業政策本部長
江口 法生  一般社団法人日本スーパーマーケット協会 事務局長
越智 良典  一般社団法人日本旅行業協会 理事・事務局長
栗原 博   日本商工会議所 地域振興部長
近内 哲也  日本百貨店協会 専務理事
島原 康浩  一般社団法人新日本スーパーマーケット協会 事務局長
鈴木 秀昭  日本小売業協会 事務局長
戸張 隆夫  一般社団法人日本アパレル・ファッション産業協会 専務理事
新津 研一  一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会 専務理事
林 揚哲   経済産業省流通政策課 課長
村上 哲也  一般社団法人日本ショッピングセンター協会 事務局長
元松 明彦  一般社団法人日本専門店協会 専務理事
吉田 康夫  全国商店街振興組合連合会 専務理事
出所:プレミアムフライデー推進協議会名簿(経産省・PDF)
この名簿が置いてあるページ:経済産業省2016年12月12日付ニュースリリース「プレミアムフライデーの実施方針・ロゴマークが決定しました(METI/経済産業省)

ハフポストの生田さんは時短が忘れられていると怒っているけれど、このメンバーを見れば分かる。労働関係の人が誰もいない。流通とレジャーだけ。経産省も流通政策課が担当課になっている。事務局は博報堂だし。そもそも時短は関係なかったんだなあ。
じゃあどこから時短みたいな話が流布されるようになったのか……は、世論のイメージ操作の例としてちょっと興味深いけれど、今回は突っ込む余裕がない。

そもそも、上記の謎の文書によれば、この「プレミアムフライデー」なる構想は、経産省が絡む「検討会」とか「非公式会議」とかで進められてきたものらしく、そこでどういう人たちがどういう議論をしてきたかというのが全く分からないんだよね。

現時点で経産省サイトに対して「プレミアムフライデー」で検索して最も古いのは平成28年11月25日付の「世耕経済産業大臣の閣議後記者会見の概要」。もう最終段階で、経団連、流通と旅行業界が関わっているということだけしか分からない。

ところで、個人的に許せないのが、この「プレミアムフライデー推進協議会」にかかっているお金。補助金の枠組みが、「平成28年度中小企業消費者行政推進調査等委託費(産業界・地域と連携した消費需要喚起対策事業)」となっていること。
なんと中小企業対策予算から出ているんだよね。

このアホみたいな無駄金、中小企業対策予算なんです。で、事務局は博報堂。どこが中小企業なのかと。
いや、そりゃコンテンツ制作やキャンペーンで下請けや孫請けに中小零細のメディア系事業者は入ってくるでしょうけど、そういうのを中小企業対策と言うなら東京五輪だって中小企業対策になりますよ。
そんなことはどうでも良くて、こんな事業に支出してる蔭で抑えられた支出があるわけで、大企業や「幹事」を食わせるために本当の中小企業向けの支援が減らされているのが許せない。

おまけに、この博報堂への委託費がいくらなのか、さらにこれ以前の「非公式会議」やら「検討会」やらに国が出した金はいくらだったのか。全く分からない訳です。

他人の金を使って、嘲笑されるようなコンテンツでお茶を濁して、お為ごかしで楽しく遊んで飲み食いして、何ら咎められることもないんだから、そりゃあ止められないだろうと思うよね。

そして最後に言っておくと、今回話題になった新聞広告、あれ、読売新聞への全面広告だからね。
安倍首相が自分で答弁する代わりに「読売新聞を読め」と言ったあの読売新聞。
官邸を援護して前川前事務次官への個人攻撃記事を載せたあの読売新聞。
記者会見で菅官房長官を追及した東京新聞の望月記者に激怒して、東京新聞のキャップを怒鳴り上げたという読売新聞。
ここに全面広告を打ったわけです、プレミアムフライデー推進協議会。

読売新聞の新聞広告掲載料金について|新聞広告ナビ
によれば、
読売新聞全国版、朝刊、モノクロ、面指定なし、1回掲載の場合の料金は、全15段(1ページ)で、4791万円。
読売新聞広告料金表(2017年4月)」によれば、多色刷りにすると追加料金が854万円。
これらが皆、中小企業向け予算から出ているわけです。そして金額や関係者は不明。

嘲笑している場合じゃないかもしれない。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2017/05/28

ヘイト扇動記事のはずが。

韓国人飼い主のマナーの悪さに日本人が怒り「韓国にはもう犬を送らない」=「犬を食べようが食べまいが、韓国は犬が暮らしにくい国」―韓国ネット- Record China(配信日時:2017年5月27日(土) 12時0分)

1.韓国人客のモラルの低さに憤った日本の店が「韓国には売らない」と。
2.それらの客のモラルの低さを批判し、韓国社会の未熟さを嘆く韓国人たちの声が高まる
という記事。

中国や韓国へのヘイトが目立つレコードチャイナ。
今回も韓国への悪印象を狙ったとおぼしき記事だが、むしろ韓国社会の正常さを浮き彫りにすることになっている。

むしろ際立つのは、この日本の店のずさんで差別的な対応。質の悪い客を「韓国人」というラベルでくくり、「韓国には売らない」とするのは明確に差別だからだ。この記事の「韓国」を例えば「北海道」とか「東京」とかの別の地名(何なら自分の故郷や愛着のある土地の名前)に置き換えてみれば問題は明らかだろう。

店側のこうした差別的対応に対して怒りもせず、店側の心情を思いやったり、悪質な飼い主らの問題を自分たちの問題として引き受けようとする韓国人らの姿勢は公平で建設的だ。

もちろん韓国内の意見もこうした建設的なものばかりであったはずはないだろう。レコードチャイナが一面的な声だけを紹介している可能性は大いにある。
でもまあ、もし立場を入れ替えて、日本と韓国が入れ替わって韓国の店が「もう日本には売らない」とブログに書き込んだとしたら日本国内でどんな反響があるかなあと思うと、ちょっと彼の国がうらやましくなったりもする。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2017/05/23

時効完成後の逮捕?

共謀罪がらみの民心操作の一環だろうという推測は措いておいて。

「中核派」捜索で逮捕の男 渋谷の警察官殺害の指名手配犯か | NHKニュース(5月22日 23時19分)

大阪府警が先週、広島県内で過激派「中核派」の関係先を捜索して男2人を公務執行妨害などの疑いで逮捕し、警察はこのうちの1人が、顔や体の特徴などから昭和46年に東京・渋谷で、警察官を殺害したとして指名手配されている男と見て、確認を進めています。
捜査関係者によりますと、大阪府警は今月18日に過激派「中核派」の広島県内の関係先を捜索し、部屋にいた男2人を公務執行妨害などの疑いで逮捕しました。

警察は、このうちの1人が顔や体の特徴などから、昭和46年11月、暴徒化した仲間らと東京・渋谷区の派出所などを襲い新潟県警から応援に来ていた当時21歳の警察官を鉄パイプで殴ったり、火炎瓶を投げつけたりして殺害したなどとして、警視庁に殺人などの疑いで指名手配されている大坂正明容疑者(67)と見ているということです。

警視庁は、大坂容疑者が組織的な支援を受けながら逃亡を続けていると見て全国に指名手配するとともに、最高で300万円の懸賞金をかけるなどして行方を捜査していました。捜査関係者によりますと、男は黙秘しているということですが、警察はDNA鑑定を行って最終的な身元の確認を進め、身元が確認できれば、警視庁は殺人などの疑いで逮捕する方針です。

公安は昔からこの人を把握していただろうと思う。とにかく「過激派」はよく監視しているので(他にすることはないのかと思うぐらい)。だから、たぶん今をこのカードを使うタイミングだと判断したんじゃないだろうか。

ところで、1971年の事件だから46年経っている。時効はどうなっているのだろう。

最高裁「殺人の時効撤廃、さかのぼって適用できる」なぜ「合憲」と判断したのか? - 弁護士ドットコム
法務省だより あかれんが Vol.31 1/7
これらによると、たぶんこんな感じ。

1971年11月 事件発生。当時の公訴時効は15年。

1986年11月 公訴時効完成。

2005年1月 公訴時効の延期。殺人罪などは15年から25年に。このとき、改正前の罪については、「従前の例による」とされて遡及適用されないことになった。

2010年4月 公訴時効の延期(2回目)。殺人罪の時効は廃止。この時期までに時効が完成してない場合、時効は適用されないことになった。

2015年12月 最高裁判決。「犯罪が改正法の施行前に犯されたものであっても,その施行の際公訴時効が完成していないのであれば,改正後の公訴時効に関する規定が適用されます。」[2]

というわけで、これまでの記述では、すべて「時効が完成していなければ」という限定がついている。この事件については、仮に、殺人罪の公訴時効廃止前の規定であった25年で計算しても1996年には時効になっている。だから、単純な計算では、免訴されることになるんじゃないかと思う。

免訴が想定される被疑者をわざわざ捕まえてニュースにするというのは……というふうに勘ぐりたくもなるけれど、それは単なる勘違いかもしれない。
・何らかの事情で時効が完成していなかったのかもしれない。例えば長く海外に滞在していたとか。
・本来、時効かどうかに関わらず、警察は被疑者を発見したら逮捕送検するものなのかもしれない。
など。

法律の知識がなくてよく分からないが、それにしても大阪府警の捜査員は45年前に発生して20年以上前に時効になっているぐらいの事件の容疑者を、よく覚えていたものだなあ。

追記(2017年5月23日)

時効は完成していなかったという解説があった。

40年以上前の殺人事件に公訴時効が成立しない理由を解説しよう - 弁護士三浦義隆のブログ

1.共犯の被疑者が起訴されて、時効の進行が停止した。
2.その被疑者が裁判中に心神喪失となり、公判手続きが停止した。
3.2010年になって殺人罪の時効が廃止された。

こういう流れで時効にならなかったということだそうだ。
上記1は共犯がいる以上やむを得ないとしても、2や3は当人からすれば(表現は悪いが)運が悪いとしか言いようがない。何という巡り合わせだろう。
逆に見れば警察や被害者遺族からすればこの巡り合わせのおかげで犯人に迫れたということになるかもしれない。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2017/05/15

またウォッチ対象を見つけてしまった……。

フリーWEB塾「郷什塾」へようこそ!

郷中教育は薩摩藩の郷士教育の慣習で、鹿児島県にはこれを称揚する人が多い。
それはまぁいい…んですが、アレな方向とくっつくとこうなるんだなという感じ。まあ元々郷中教育自体その方向と親和的な感じなんで「ああそうなるよね」という納得感はあります。

郷中教育に詳しくないのでよく分かりませんが、確か「郷中」が普通で「郷什」とは書かなかったような気がします。会津藩の(!)什と混ぜた造語なのでしょうか。まあ漢字や読み方をいじって手前勝手に概念を拡張して悦に入るってのは自意識肥大した人にはよくあるので生暖かい気持ちがわき上がります。

私からすれば、鹿児島は薩摩藩の圧政に苦しんだ土地だという印象があるのですが、なぜか島津氏や武家に自己同一化して誇りにしている人が多い。

で、創始者の岩渕秀樹という方、各地で後援会やセミナーをやっているそうで、まあ当然青年会議所がお得意先みたいですが、大学や企業でも講演してみるようです。新潟大学やALSOKとか……。

しかし、この手のアレな団体や人って本当に多くて到底追い切れませんね。
愛国保守って本当に商売になるんだなあ……としみじみ思いますが、単に右翼という一言でくくれるものでもなく、トンデモなニセ科学や陰謀論やいろいろな要素がコンタミになっていて一種独特の芳香があります。で、それがさりげなく福祉や男女共同参画や社会教育や地域振興の場で行政とつながっていたりする。実は根は広く深く広がっているんですよね。自営業や中小企業の経営者とか地域のきもいりがそれ系だったりすることもあるので余計にそういう傾向が出ます。私のイメージでは、儒教的価値観+ヤンキー文化が根っこではないかと思っています。その意味では孔子の責任を追及したい。

***********************

で、講演先に「一般財団法人子どもの未来支援機構」ってのがありまして。
かなり手広く活動しているようなんですが、役員の方々が面白そうです。まだ見てませんが。

法人概要 | 子どもの未来支援機構

ところで、「こども」と「未来」の付いた団体などはすごくたくさんあるんですね。今回初めて気付きました。

NPO法人日本子ども未来支援ネットワーク
こちらの名前で検索すると、元理事が事件を起こしていたりします。

「こども」「みらい」「支援」「ネットワーク」「機構」を持つ団体や行政部署は結構多そうです。ほとんど間違い探しの様相を呈しています。
詳しくないのですが、国の政策との関係でしょうか。

いかにもお役所的な組織の例:一般社団法人沖縄こどもみらい創造支援機構(Facebook)

で、個人的には、こちらで後援会が告知されている武藤杜夫さんにちょっと注目したい。ポスター(画像)が半端じゃなくかっこいいです。
この方、肩書きが「沖縄少年院 法務教官」となっています。確か今年法務省を辞めて「日本こどもみらい支援機構」の代表になったそうなのですが、法務省現役当時からこのスタイルでポスターを作っているのですね。

くるとん / 武藤杜夫講演会チケット(2017/5/27開催)画像魚拓

各地で講演を展開されているようです。本もあります。

んで、こんな人が講演の感想を書いています。

なぜ、少年院で人生が変わるのか? 武藤杜夫氏の講演を聞いて。|神谷宗幣オフィシャルブログ「変えよう!若者の意識~熱カッコイイ仲間よ集え~」Powered by Ameba

神谷さんはあの「龍馬プロジェクト」の人。じわじわとつながっていきますねえ……。

「なんちゃら先生」みたいに国会議員になりアレな主張をするようにはならないでほしいものです。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2017/05/13

ニッポンスゴイの浸透事例:小学校5年生社会科の授業例

大田区立入新井第一小学校 山家 哲雄「小学校における NIE の可能性」

2014年3月に東京新聞がまとめたNIEの取り組みの一つ「がんばれ先生!東京新聞教育賞」第17回受賞論文の一つらしい。
がんばれ先生!東京新聞教育賞(TOKYO Web) 第17回(平成26年) 受賞者の論文

この山家先生は小学5年生の授業で新聞を活用し、学級新聞を作るなど、授業を工夫している。その努力や成果には敬意を表する。しかし、その報告の中に一つ残念な授業があった。

③新聞ノートを使った、未来を考える社会科授業
5年生社会科の『日本の工業』単元のふかめる過程で新聞を活用した授業を行った。児童が毎週作成しているスクラップ記事から工業に関するものをまとめ、新聞ノートを完成させた。この新聞ノートの中には自動運転の車や、アメリカでの日本車の評判のよさ、曲がる耐熱ガラス、下町ボブスレー、宇宙旅行への取り組みなど様々な日本の工業製品の技術力の高さを取り扱った記事を載せた。記事を読み取った上で、日本の工業のこれからを考えていく展開である。未来を予想した後、事前に取材しておいた『外国での日本製品の現状を、海外に住む日本人に聞いたアンケート』を公開し、児童の意見を価値付けた。
単元のつかむ過程において、日本の自動車の生産台数が下がっていることを知り、危機感をもっていた子供たちだが、新聞から現状を知り、外国での日本製品の活躍を知ったことにより
『日本の技術はすごい』
『自分も将来そういう風になりたい』
『日本人でよかった』
そんなふうに明るく日本の工業を捉えなおし、未来について夢を膨らますことができた。

本質的な間違いは、日本の工業のパフォーマンス(生産量推移や製品例など)を日本(自国)への愛着や誇り、自信と関連づけていることで、「価値付け」の誤りにある。
一国の産業の盛衰は古くから愛国心と結びつけられてきたが(例えば殖産興業や植民地独立運動)、そこに経済的な合理性はない。この授業で取り上げられているトピックスで言えば、日本の自動車生産台数の減少は日本経済の危機とは関係しないし、日本製品の国際的成功や「技術力の高さ」は「日本」という国(国家にせよ地域社会にせよ)の優秀さを表すものでもない。例えば、ベトナムやバングラデシュ製のアパレル製品は世界を席巻しつつあるが、それはそれらの国々の優秀さ・素晴らしさの証拠としていいだろうか。また、1950年代の日本は例えばクリスマス電球の世界的輸出国であったが、それは「日本の技術はすごい」という「価値付け」に回収できる現象だったろうか。

一国の一産業の盛衰は、一面ではその国の産業構成や社会状況を反映しており時代によって変容する。典型的には一次産業から三次産業への「産業構造の高度化」を示すペティ・クラークの法則がある。日本は1950年代にクリスマス電球の世界的輸出国であったが、その生産と輸出は1960年代には急速に衰退した。香港などとの競争に負けたのである。だがこのことを日本の衰退や危機と見なすべきだろうか。このクリスマス電球の衰退の背景には、日本経済の成長に伴う人手不足と賃金上昇があった。クリスマス電球製造以外の産業が成長し、それらと労働力を奪い合う競争の煽りを受け、低賃金長時間労働による低価格を競争力基盤としたクリスマス電球産業は、他の低賃金国との価格競争に敗れたのである。したがって、クリスマス電球産業の衰退は日本における経済成長と賃金・所得上昇と結びついていた。このことから見れば、クリスマス電球産業の衰退を日本の危機や衰退と関連づけられないことが分かる。
これと同様に、近年の日本の自動車生産の減少もまた日本の衰退や危機とは関係ない。自動車生産はすでにグローバル産業であり、日本の国内生産は主に国内市場の状況を反映しているに過ぎない。日本の国内自動車市場はすでに飽和・成熟しており、買替え需要がその主体である。その需要は人口規模に依存している。人口成長が停滞し、高齢化に伴う労働力人口の減少傾向が続く以上、自動車生産台数が減少傾向にあることは自然である。そして、経済発展の成果として国際的に高賃金を達成した日本は工業製品の大量輸出をするのに適した国ではなくなっているし、近隣の大市場であるアジアや北米は自動車を生産できない地域であるわけでもない。要するに、日本の自動車生産台数の減少は、日本の経済社会の「成熟」と、それと関連する国際的な比較優位構造を反映しているに過ぎない。日本が「成熟した経済大国」であり、もはや「世界の工場」のような役割から解放されたことを表しているのであって、それは危機でも衰退でもないのである。自動車の生産が減れば、他の製品やサービスの生産が増えるだけのことである。

ここまでをまとめると、まず、自動車生産台数の減少に危機感を覚えた子どもたちの感覚を無批判に肯定したのは誤りであった。この自動車生産台数の減少に危機感を覚えるという感覚は、控えめに言っても、一産業・一製品の生産推移とGDPで代表される経済成長とを混同することで生じている。そしてこうした誤りは社会に流布しているから、この誤りを正すことには意義がある。だから、一産業は国民経済の一部に過ぎず経済全体への影響は限られること、自動車産業の変化は国民経済の変化を反映しており危機ではないことに気づかせるべきであった。その上で、例えば、なぜそのような誤解を持ってしまうのかについて考えを巡らせることができれば、間違いやすい数字のトリックや情報の発信・受容の歪みという論点に気づかせられたかもしれないし、「国」や「社会」という概念の曖昧さや、愛郷心や愛国心の危うさという論点にも気づけたかもしれない。

この授業の二つ目の問題は、日本製品の素晴らしさを無批判に取り上げ、しかもその肯定的評価を「日本」や「日本人」のイメージと直結させたことである。
言うまでもなく、日本製品は日本経済や日本社会の産物ではない。それらはそれらを開発し生産した人々の産物である。確かに、彼らの活動を可能にした背景には日本の経済や社会条件がある。しかしそれは「日本経済」とか「日本社会」とかいう抽象的かつ平板な概念でくくれるほど単純ではない。個別の製品開発には個別の文脈と個別の事情が強く働いている。個別の製品は第一に各企業や開発者固有の事情と物語との産物であって、仮にそこに「日本経済」とか「日本社会」とか「日本人」とかの普遍的性質を見いだせたとしても、それは非常に間接的かつ希薄な意味でしかない。例えば、世界的発明とされる紙、火薬、印刷は皆中国の発明だが、これによって古代中国の先進性を評することができるとしても、これらを当時の中国の経済社会あるいは中国人の素晴らしさを証する根拠とできるだろうか。紙を発明したことを「中国人」らしさや「中国人」が固有に持つ美徳と関係づけられるだろうか。紙は蔡倫、電球はエジソンというふうに個人に結びつけられる一方で、下町ボブスレーや下町ロケット、曲がる耐熱ガラスには個人名が結びつけられないのはなぜだろうか。個別の開発や製品の事例を安易に国や社会のイメージと結びつけるのは、社会と個人との関係への洞察を妨げる誤りであり、開発者個人の栄誉を損ねたり成功プロセスの複雑さを見失ったりする危険をはらんでいる。

この問題のもう一つの側面は、特定のユニークな製品や成功した開発事例を社会の美徳と受け取るという誤解の問題である。古代中国の発明の例で言えば、紙や火薬を発明した古代中国は素晴らしい国だとか、(当時の人が)中国人で良かっただとか言えただろうか。当たり前のことだが、立派な発明が生まれた国が社会問題を抱えていないわけではない。また、その発明と無縁な人々(例えば紙が一般社会に普及したのは蔡倫から遙か後の時代である)にとっては、自国が世界的発明の発祥であっても実際的な便益はほとんどなかっただろう。古代ギリシャは多数の学術的文化的な貢献をなしたが、そこの平民や奴隷からすればそんなモノより飯を食わせろというようなものであったろう。ピラミッドや万里の長城、東大寺の大仏が多大な犠牲を労苦を伴ったという話はよく知られている。確かにその国や地域で行われた偉業をその人々が誇らしく思う気持ちは自然である。それは所属意識や帰属意識に由来している。けれどもその感情作用はしばしばその国や地域が抱える矛盾や不満を隠すために使われる。そして、この種の感情作用は、往々にして、他人の偉業を自国のものと強調する一方で、自国で起きた(自国民が起こした)不祥事は他人の不始末として自国から切り離す傾向を持っている。従って、日本製品の素晴らしさを日本や日本人の素晴らしさと直結させる感覚を無批判に肯定することは、このようなダブルスタンダードの危険や社会の多面性に気づかせる契機を損ねるという点でも誤りである。

以上で述べてきたように、経済学をやっている人間からすれば、経済統計や開発成功事例などを日本や日本人の素晴らしさという分脈に使うこと自体が不適切にしか思えない。日本とか日本人とかの概念はあまりに茫漠としていて、何かの製品の統計や事例で語れるほど具体的な内実があるように思えないし、また具体的な事物を数点並べただけで「日本」とか「日本人」とかの本質を語れるとも思えない。それに、統計にせよ開発事例にせよ、それ自体が豊富な情報と含意を持っているので、「日本」や「日本人」の美徳みたいな話に使うのは正直もったいない、ある意味で無礼だとすら思えてしまう。経済統計や経済の事例はあくまで経済や社会の事実に関する授業で使うべきである。けれども、あえてこれらを教材として、「日本」を考える「価値付け」授業を行うとすれば、自分なら次のようなことを考える。

ところでこの先生はこの授業を社会科で行っているようなのだが、そもそも「価値付け」は道徳の「内容項目」の一貫であり、社会科の学習指導要領では出てこない観点だと思う。小学5年生の社会科の授業で生産統計や開発事例を使うなら、指導要領で言う「様々な工業製品が国民生活を支えていること」や「工業生産に従事している人々の工夫や努力」に焦点を当て「産業と国民生活との関連」への理解を深めるようにする。ここでは「価値付け」の話にはあまりならない。だから、以下では道徳の授業として考えてみる。

まず統計について言えば、そもそもどうして国内自動車産業が衰退することを「危機」と感じてしまうのだろうか。上で述べたとおり、一産業の盛衰と一国経済の盛衰は直結していないし、実際には自動車会社はグローバル化しているので国内生産が減っても企業が困るわけではないのに、である。そこから、子どもたちがなぜ危機感を抱いたのか、その危機感の内実は何なのかについて考えていきたい。そこからはメディア論のような視点、すなわち情報の伝え方・受け取り方と心理的バイアスへの気づきが得られるかもしれないし、愛郷心や集団帰属意識が与える社会認知のバイアスへの気づきが得られるかもしれない。こうしたことは、道徳の内容項目のうち「自主、自律、自由と責任」にある「自律的に判断」に関わることになるし、「真理の探究、創造」の「真理を大切にし,物事を探究しようとする心をもつこと。」につながるだろう。

次に、開発事例を「価値付け」に使うなら、「ニッポンスゴイ」ではなく、開発の背景や開発を可能にした条件、開発者の苦労、そしてそれが経済的成功に結びついた条件や人々の努力について考えたい。安易に社会一般の美徳のような解釈をさせないことが大切である。そこからは「希望と優樹、克己と強い意志」の「より高い目標を立て,希望と勇気をもち,困難があってもくじけずに努力して物事をやり抜くこと」や「思いやり,感謝
」の「日々の生活が家族や過去からの多くの人々の支え合いや助け合いで成り立っていることに感謝し」の大切さを考えることができる。ほかにも「相互理解、寛容」や「国際理解、国際貢献」とも関連づけることができるだろう。

簡単なまとめ

社会科の授業で「価値付け」が行われ、それがニッポンスゴイ的認識を強化する方向に作用している事例を検討した。

統計や事例(エピソード)は社会の一側面が表れる貴重な情報であるが、それをニッポンスゴイのような本質論の根拠に使うと、社会を詳細に考察する視点を失わせる危険がある。これらの資料はあくまで複雑な社会の複雑さに分け入るための契機とするべきである。
教師は、生徒が「日本とは」「日本人とは」のような安易な本質論に陥らないように戒めるためにこそ、このような資料を使うべきである。そのためには教師自らが資料の意味や使い方をよく理解する必要がある。社会科に道徳科のような視点を持ち込むことには十分慎重であるべきだろう。

参考
小学校学習指導要領「生きる力」第2章 各教科 第2節 社会:文部科学省

「小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」平成27年7月文部科学省(PDF)24ページ「内容項目の指導の観点」

| コメント (0) | トラックバック (0)

2017/04/17

「特定秘密」文書の廃棄が進行中。ほか関連記事(毎日新聞から)

毎日新聞は行政文書の隠蔽や廃棄の問題を重視している印象がある。

特定秘密文書:廃棄手続きが進行中 対象や省庁名は不明 - 毎日新聞(2017年4月17日 07時00分(最終更新 4月17日 10時02分))

14年末の特定秘密保護法施行後、初

 国の行政機関が指定した特定秘密を記録した文書について、廃棄に向けた手続きが進められていることが内閣府などへの取材で分かった。特定秘密文書の廃棄は2014年末の特定秘密保護法施行後、初とみられる。順次廃棄が進められるとみられるが、秘密文書は通常の文書と違って第三者のチェックに制約がある。専門家からは「本来残すべきものまで廃棄される恐れもある」との指摘がある。

 特定秘密文書は、公文書管理法に基づいて一般の文書と同様に、それぞれの保存期間を過ぎれば内閣府のチェックを受けた後に廃棄することができることになっている。ただし、特定秘密保護法の運用基準で、指定から30年を超えた文書は重要性が高いと判断されて一律に公文書館などに移管されて保存されることが定められている。

 廃棄をチェックする内閣府は毎日新聞の取材に対し、特定秘密文書を保有する省庁と廃棄に向けた協議を行っていることを認めた。対象文書の内容や省庁名は明らかにしていないが、保存期間2年以下の文書とみられる。

 内閣府は各省庁から文書目録の提供を受け、「行政文書管理ガイドライン」に沿って廃棄が妥当か点検する。しかし、特定秘密文書の目録は秘密の内容が想起されないようにタイトルを付けることになっており、内閣府は文書の重要度を判断しにくい。省庁側に特定秘密文書の閲覧を求めてチェックすることも制度上は可能だが、文書を作った省庁は「わが国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれ」があるとの理由で閲覧を拒否することができる。

 内閣府のチェックとともに、第三者機関の役割を担う政府内の独立公文書管理監の検証・監察を受けることになっているが、方法は明らかになっていないが、保存期間2年以下の文書とみられる。

 秘密文書の廃棄を巡っては、今月11日の衆院総務委員会で内閣官房の田中勝也審議官が「恣意(しい)的な廃棄はできないと理解している」と答弁した。【青島顕】

特定秘密を記録した文書

 外交、防衛、テロ・スパイ防止に関する重要情報を政府が特定秘密に指定し、漏えいした人などに罰則を科すと定めた特定秘密保護法が2014年に施行され、16年末までに11行政機関が487件を指定した。5年ごとに秘密指定期間が更新され、通算30年(一部は60年)まで可能。特定秘密を記録した文書は15年末段階で27万2020点ある。文書の保存期間は秘密指定期間と別に定められ、特定秘密に指定されたまま文書が保存期間満了を迎え廃棄対象になる場合もある。

掲載図:特定秘密文書廃棄審査の流れ(イメージ)(魚拓)

こちらは2016年12月の記事。よくまとまっている。
特定秘密保護法:施行から2年 行政の情報隠し、発見・指摘に高い壁 - 毎日新聞(2016年12月5日 東京朝刊)

 国の安全保障に関わる重要な情報を厳重に管理し、情報を漏らしたり不正に取得したりした人に重罰を科す「特定秘密保護法」が施行されて10日で2年を迎える。今のところ懸念された国民の「知る権利」をおびやかす事態は発覚していない。しかし行政による情報隠しが起きたとき、行政と並び立つ司法や立法が誤りを指摘し、正すことのできる準備は十分とは言えない。【青島顕】

役所はほぼ不開示

 「情報公開請求で特定秘密をチェックすることができる」。秘密保護法が成立したころ、そう説明をする人たちがいた。自民党のホームページにある「特定秘密の保護に関する法律Q&A」にも「特定秘密の記録された行政文書についても、情報公開法に基づいて、開示・不開示が判断されます」とある。

 本当だろうか。「特定秘密に指定された情報に違法なものがある」と市民が聞きつけたと仮定して、役所に情報公開請求をするケースを考えてみる。役所は特定秘密指定の有無にかかわらず「公開対象外だ」として不開示にするだろう。

 市民が不服審査を求めると、第三者でつくる審査機関は非開示になった文書を実際に見られることになっているので、特定秘密のチェックも一見できそうにも思える。しかし役所が本当に見せるかどうかは分からない。

 仮に審査機関が開示すべきだと判断しても、審査機関は役所に開示を命じるのではなく、開示した方がよいと「答申」できるだけだ。役所は特定秘密に関わる文書の開示を拒否できる。

 そうなった場合、市民は裁判所に情報公開訴訟を起こすしかない。しかし現行の情報公開法では、裁判官が不開示文書を取り寄せることはできない。そのまま市民が敗訴する公算大だ。

 鈴木秀美・慶応大教授(憲法)は、情報公開法を改正して裁判官が文書を実際に見て、開示か不開示かを判断する「インカメラ審理」と呼ばれる仕組みを取り入れるよう訴えている。「裁判所が文書をきちんと見たうえで実質的な判断をできるようにすることが重要だ」と話す。

 インカメラ審理を使って不備のある秘密情報の公開を実現するには、もう一つ高いハードルがある。現行の情報公開法には「公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある」などと行政側が判断すれば不開示にできるという条文がある。併せて改正が必要になる。

国会に通報窓口を

 国会は衆参両院に「情報監視審査会」をつくった。所属する議員や職員に守秘義務を課し、携帯電話の電波も届かない特別な部屋を非公開にすることで、政府から特定秘密の提供を受けてチェックする仕組みを整え、2015年春にスタートした。

 厳格な仕組みにもかかわらず、秘密保護法は、政府に提供を拒否する権限を与えている。とくに外国から得た情報について、政府は相手国の了解を得なければ国会には出せないとしている。

 森雅子担当相(当時)は14年、衆院議院運営委員会で「国会から求められた場合は政府としては尊重して適切に対応する。提供できない場合は限定的に解釈していくべきだ」と答弁していた。ところが参院の審査会(会長=中曽根弘文・元外相)に対する担当官僚の説明は森元担当相の答弁より後退したものになっているという。

 参院の審査会は審査の前提を欠いたまま、本題に入ることができなくなり、さらに環太平洋パートナーシップ協定(TPP)承認案・関連法案をめぐる与野党の対立もあって11月2日以来、丸1カ月開催できていない。15年に指定された特定秘密61件の妥当性がおもな審査課題だが、指定した省庁の説明聴取が始まっていない。来年3月までに年次報告書を作成するのは難しい状況になっている。

 一方、衆院の審査会(会長=額賀福志郎・元財務相)は昨年の特定秘密の指定状況などについて11省庁からの説明を聴取し、来年3月に報告書を公表する方向だ。

 11月30日には、警察庁と経済産業省から特定秘密を記録した文書や画像を提供させてチェックした。審査会に所属する議員たちが実際に秘密の記録を見るのは、今年1月以来だ。

 委員らの説明によると、警察庁の特定有害活動(スパイ活動)にかかわる特定秘密の文書の中に30年以上前の古いものがあり、特定秘密としてふさわしいかを調べたという。

 ただ審査する特定秘密を選ぶ手掛かりは、秘密の概要を記した「指定書」と、担当官僚による説明に限られている。何らかの問題が起きてもそれを発見するのは極めて難しい。

 秘密保護法に詳しい江藤洋一弁護士は「指定書の記載はあいまいで、検証が難しい。国会が監視できなければ特定秘密の問題を見つけることはできないのに、現状は衆参の審査会が機能しているとは言えない」と手厳しい。

 また、審査会や事務局には省庁の職員から通報を受ける窓口が作られていない。通報者を保護する仕組みも作られていない。

 省庁から独立した国会にこそ通報窓口が必要だとする声も識者の間には根強い。

政府内にも監視機関

 政府内にもチェック機関はある。内閣府の佐藤隆文・独立公文書管理監(検事出身)と佐藤氏を室長とする情報保全監察室(20人)がそうだ。守秘義務を課せられた官僚でつくる組織だけに、特定秘密の文書を直接見て妥当性を判断できるようになっている。今年4月、外務省と警察庁の計3件の特定秘密に相当する文書がないとして指定の解除を求めた。監視活動が初めて具体的に機能した。

 独立公文書管理監には官僚からの内部通報を受け付ける窓口があるが、政府内の機関に対して官僚が通報するには相当な決心が求められそうだ。独立公文書管理監の業務についての報告書は来年春に作られる予定だ。佐藤独立公文書管理監は14年12月の就任以来、記者会見を一度も開かず、業務の方針などを国民に説明していない。

 ■ことば

特定秘密保護法

 (1)外交(2)防衛(3)テロの防止(4)スパイなどの防止--の4分野について、政府が重要な情報を特定秘密に指定し、漏らした人や不正に取得しようとした人に最長懲役10年の重罰を科す内容。政府は米国などと安全保障に関する情報を交換、共有しやすくするために必要だとして1980年代以来、制定を目指してきたが、安倍晋三政権が2013年に成立させた。いったん特定秘密になると外部からうかがい知れないため、情報隠しに悪用される余地があるとの懸念が根強い。


掲載図1:衆院の情報監視審査会の開催について説明する額賀福志郎会長(左から2人目)ら=東京都千代田区の衆院第2議員会館で2016年11月30日(魚拓)
掲載図2:各国議会の情報監視機関の開催比較(魚拓)
掲載図3:特定秘密監視の仕組み(魚拓)

特定秘密:「ルーズな運用」に批判…文書なし166件 - 毎日新聞(2017年3月29日 22時10分(最終更新 3月29日 23時03分))

 特定秘密保護法に基づく秘密指定の状況を調査する衆院の情報監視審査会(会長・額賀福志郎元財務相)が29日、年次報告書を衆院議長に提出した。昨年に続いて2回目。調査で文書が存在しない秘密の存在が次々に判明し、指摘を受けた政府は新たに9件の秘密指定を解除した。専門家は「ルーズな運用だ」と批判している。

 防衛省は2014年の特定秘密保護法施行まで「防衛秘密」だった「自衛隊防衛・警備計画」や「情勢等に関する見積もり」など5件を特定秘密に移行させていたが、文書は存在していなかった。「行政文書として保存期間を過ぎており廃棄をした。関係する職員が知識として保有しているため、特定秘密の指定としての維持をしている」。防衛省幹部は昨年11月21日の審査会でこう答弁した。

 こうした対応について、政府の情報保全諮問会議委員の清水勉弁護士は「特定秘密は文書や電子情報といった表示できるものを組織として管理するのが法の趣旨だ。頭の中の知識は原則として秘密指定の対象にならない。防衛省の説明は誤りだ。ルーズな運用で、氷山の一角かもしれない」と批判する。

 15年末時点の特定秘密は443件。政府は27万2020の文書に秘密が記録されていると説明したが、それぞれの秘密に何件の文書があるかは分かっていなかった。審査会が各省庁に提示を求めると、4割弱の166件に対応する文書がなかった。

 暗号を含む「物」の形で存在するものが91件あったが、15件は情報が将来出現する見込みで指定されており、10件は「職員の知識の中に存在する」状態だった。政府は昨年5件の秘密指定を解除したが、さらに今月までに9件を解除した。

 審査会は非公開で開かれ、所属議員には守秘義務が課されているが、行政機関が説明を渋るケースは後を絶たない。国家安全保障会議(NSC)は4大臣会合の結論を秘密指定しており、昨年10月14日の審査会で政府参考人は「安全保障政策の核心が記載されており、極めて機微」と答弁した。

 出席議員の一人は「答弁は初めから(特定秘密を)出さないと言っているに等しい」と指摘した。

 「安全保障に支障がある恐れがある」と政府が判断した場合、特定秘密の提供を拒否できるため、審査会の調査には限界がある。過去1年の調査で特定秘密の提供を受けたのは6件にとどまった。

 昨年は衆院と同じ3月30日に年次報告書を提出した参院の審査会は、2回目の年次報告書提出のめどが立っていない。【青島顕、遠藤拓】

掲載図:衆院情報監視審査会の終了後、2016年の年次報告書を額賀福志郎会長(左)から手渡される同院の大島理森議長(中央)=国会内で2017年3月29日午前10時21分、川田雅浩撮影(略)

| コメント (0) | トラックバック (0)

2017/04/05

東芝問題は過去の経緯の綿密な調査告発をこそ注視すべきではないか

東芝 イギリスの原発会社の全株式の買い取りを発表 | NHKニュース(4月4日 21時24分)

経営再建中の東芝は、イギリスで計画中の原子力発電所の受注を目指して、3年前に買収したイギリスの企業をめぐり、共同で出資しているフランスの企業が保有する、すべての株式を事前の取り決めに基づいて買い取ると発表し、現在、目指している海外の原子力事業からの撤退に影響を与えそうです。
東芝は、3年前にイギリスの原発事業会社「ニュージェネレーション」の株式の60%を買収して子会社化し、当時のアメリカの原子力子会社、ウェスチングハウスを通じて、イギリス北西部で計画中の原発の建設事業の受注を目指してきました。

ニュージェネレーションは、フランスのエネルギー大手「エンジー」が残りの40%の株式を保有していますが、発表によりますと、ウェスチングハウスが先月、連邦破産法11条の適用を申請し経営破綻したことから、重大な事案が発生した場合には東芝が株式を買い取るという3年前の取り決めに基づいて、エンジー側が保有する株式のすべてを買い取るよう求めてきたということです。

東芝による買い取り額は、およそ153億円になる見通しです。東芝は、海外の原子力事業からの撤退を目指していますが、イギリスのニュージェネレーションについては、東芝の保有比率が100%に高まることで、今後の撤退計画に影響を与えそうです。

「重大な事案が発生した場合には東芝が株式を買い取るという3年前の取り決め」
2014年だから、震災以降だし、第2次安倍政権下。アベノミクスで海外原発輸出とか旗を振っていた頃。

こんな債務保証みたいな条項を付けて契約したのはなぜか?
自分たちが自力で市場進出しコンペに勝って案件を獲得するのではなく、外国の地場資本を買収してまでして日の丸を立てたかったのはなぜか?

原発が斜陽だという指摘は震災前からあり、震災以降は明らかに潮目が変わったと各方面から言われていたのに、なぜここまで暴走したのか?なぜ暴走できてしまったのか?
この巨大な失敗に至る過程については、東芝の枠を超えて調査と告発を徹底することが必要だ。

東芝問題については、東芝が今後どうなるのかという関心から語られることが多いように思うが、むしろ我々にとって重要なのは、なぜこんなにひどい判断・行動をしてしまったのかを検証して、他山の石として教訓を得たり、制度的な再発防止策を整備したりすることではないか。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2017/03/27

毎日新聞を「国家公務員制度改革基本法」というキーワードで記事検索した結果(2017年3月27日時点)

政治家の口利きが横行している様子が分かる。官僚側でも記録がないとか、やりたい放題。森友学園の問題では、この体質が噴出しているなあ。
記録を「個人文書」として公開対象外としていたり、「ない」と言って後から「あった」と出してきたり、ごまかしの手口も似ている。

以下、毎日新聞のここ1年ほどの記事のピックアップ。ほとんど同じだが微妙に細部が異なる記事も含めて。これは「国家公務員制度改革基本法」というキーワードでの記事検索結果。甘利氏とURの問題、遠藤利明氏とALT派遣会社との癒着の問題で2016年2月頃の記事が多い。次に問題になったのが集団的自衛権の問題。ここ1年だけだが、これらに絞っても献金問題とか関連記事が多すぎて到底追い切れない。

以下の記事には、政官癒着、あるいは官僚の政治家べったり姿勢を批判する指摘が繰り返し見られるが、2014年5月末の内閣人事局設置はその姿勢を更に強化しているだろう。この方向はいわゆる「決められる政治」とか「変わらなきゃ」とかに見られる「政治主導」や「リーダーシップ」を強調する潮流を反映しているが、それは内閣府の肥大化、官邸主導という官の集権化だけでなく、自民党内部での執行部への集権化、小選挙区比例代表制という選挙制度に伴う政権安定化とも関係しているだろう。

甘利・前経済再生担当相:現金授受問題 国交・環境省、秘書と接触の記録残さず 改革法では規定 - 毎日新聞(2016年2月3日 東京朝刊)

 甘利明前経済再生担当相の現金授受問題で、国土交通省や環境省が甘利氏の秘書らとのやり取りについて、法律が定める記録を残していないことが分かった。第2次安倍内閣は法に基づき、政治家と官僚の不透明な関係を防ぐため各省庁に記録を作らせることも申し合わせているが、事実上、機能していなかった。(2面参照)

 国家公務員制度改革基本法は、官僚が国会議員やその秘書と接触した場合、「記録の作成、保存」と「その情報を適切に公開するために必要な措置」をとるよう規定している。

 また、2012年末に発足した第2次安倍内閣は初閣議の後の閣僚懇談会で、同基本法と公文書管理法に基づき、「政官接触」の記録・公開について「大臣等の指揮監督の下に適切に対処する」ことを申し合わせた。

 それ以降、内閣改造のたびに最初の閣議で「指導力を発揮」するよう菅義偉官房長官が各閣僚に要請している。

 甘利氏の秘書らは昨年7月、都市再生機構(UR)と紛争中の千葉県の建設会社に問題解決を頼まれ、URを所管する国交省の住宅局長(当時)を訪問。電話や面談で計3回やり取りした。秘書らは14年9月25日には環境省の課長らとも面談した。

 だが、両省は毎日新聞の取材に、これらの接触について記録を残していないことを明らかにした。

 その理由について、国交省住宅局は「閣僚懇の申し合わせは『対応が極めて困難なものについては大臣に報告する』などと定められている。今回はUR担当者の連絡先などの問い合わせだったので、該当しないと判断した」と説明した。ただ、閣僚懇の申し合わせは大臣への報告とは別に接触記録の「作成・保存」も定める。同局は「規定は『大臣などの指揮監督の下に適切に対処』とあり、必ずしも全てを記録するということではない」としている。

 一方、議員会館で秘書らと面会した環境省廃棄物・リサイクル対策部の山本昌宏企画課長(当時は産業廃棄物課長を兼務)は取材に「大事な話なら面談記録を作るが、今回の内容はそれに当たらず、1回限りだったこともあり、記録は残していない」と述べた。

 政官接触記録について、基本法を所管する稲田朋美・行政改革担当相(当時)は14年4月の参院内閣委員会で「大臣らの指揮監督の下、適切に実施されていると認識している」と答弁。各省庁に任せていることを明らかにしている。

 だが、第1次安倍・福田両内閣で行革担当相補佐官として公務員制度改革を担当した原英史(えいじ)氏(現・政策工房社長、元経産官僚)は「まさに今回のような事態を防ぐために、すべての政官接触を公平・正確に記録・開示しようというのが基本法の趣旨だ。基本法にも閣僚懇の申し合わせにも違反していると言わざるを得ない」と指摘。「本来は政府として制度を整備する義務があるはずだ。『表に出したくない』と官僚は思うのかもしれないが、そもそも官僚も政治家も税金で活動している。国民にチェックされて困ることがあってはならない」と話す。

 一方、独立行政法人のURは甘利氏側との面談内容を記録し、生々しいやり取りが明らかになった。URは「担当者が個人的に作っていたメモ」(広報室)とし、政治家との接触を常に記録しているわけではないという。【日下部聡、樋岡徹也】

甘利・前経済再生担当相:秘書問題 面会記録なし、首相が「適切」 - 毎日新聞(2016年2月5日 東京朝刊)

 甘利明前経済再生担当相の現金授受問題に絡み、甘利氏の秘書らと面会した国土交通・環境両省の職員が国家公務員制度改革基本法の定める記録を残していなかった問題で、安倍晋三首相は4日の衆院予算委員会で「適切に実施されていると認識している」と、政府見解を繰り返した。村岡敏英・改革結集の会代表の「基本法は守られていると思うか」との質問に答えた。

 同基本法は政治家による圧力を防ぐため、官僚が国会議員やその秘書と接触した際の記録の作成・保存や公開を規定。しかし両省は毎日新聞の取材に「全てを記録するということではない」(国交省)などと回答、法に解釈の余地があると判断している。【日下部聡】

遠藤担当相仲介問題:予算委で厚労省部長「何度か接触」 - 毎日新聞(2016年2月5日 20時25分(最終更新 2月5日 21時54分))

 遠藤利明五輪担当相が、外国語指導助手(ALT)に関する通知を文部科学省が出す直前に、通知に関与した厚生労働省の担当者とALT派遣会社社員の面会を仲介した問題で、文科省と厚労省は5日の衆院予算委員会で、それぞれの担当者が遠藤事務所と派遣会社の3者で面談したことを明らかにした。

 厚労省の派遣・有期労働対策部長は「遠藤事務所で13年末ごろから(派遣会社社員と同省の担当者が)何度か接触した」と説明。「ALTについて派遣と請負の留意点や法令解釈を聞きたいということで、具体的なやりとりは厚労省で行った」と述べた。さらに「事務所の(衆議院議員)会館の秘書の方が同席ということのようです」と明かした。

 しかし、面談記録を出すよう求められると「残していないので提出できない」と答弁。国家公務員制度改革基本法に基づく申し合わせでは、官僚が議員や秘書と接触した場合に記録を保存する取り決めになっている。

 また、文科省の初等中等教育局長も昨年10月、遠藤事務所で同省の担当者が派遣会社社員と面談したことを認め、「中身は一般的な英語教育の改革、全般についてお話しした」と述べた。こちらも面談記録については「全部を取っているわけではない」としている。

遠藤・五輪担当相:文科・厚労職員、事務所で面談 秘書ら同席記録せず - 毎日新聞(2016年2月6日 中部朝刊)

 遠藤利明五輪担当相が、外国語指導助手(ALT)に関する通知を文部科学省が出す直前に、通知に関与した厚生労働省の担当者とALT派遣会社社員の面会を仲介した問題で、文科省と厚労省は5日の衆院予算委員会で、それぞれの担当者が遠藤事務所と派遣会社の3者で面談したことを明らかにした。

 厚労省の派遣・有期労働対策部長は「遠藤事務所で13年末ごろから(派遣会社社員と同省の担当者が)何度か接触した」と説明。「ALTについて派遣と請負の留意点や法令解釈を聞きたいということで、具体的なやりとりは厚労省で行った」と述べた。さらに「事務所の(衆議院議員)会館の秘書の方が同席ということのようです」と明かした。

 しかし、面談記録を出すよう求められると「残していないので提出できない」と答弁。国家公務員制度改革基本法に基づく申し合わせでは、官僚が議員や秘書と接触した場合に記録を保存する取り決めになっている。

 また、文科省の初等中等教育局長も昨年10月、遠藤事務所で同省の担当者が派遣会社社員と面談したことを認め、「中身は一般的な英語教育の改革、全般についてお話しした」と述べた。一方、遠藤氏の事務所名でマスコミ各社に送付されている毎日新聞記事への反論書が内閣府から送付されていたとして、維新の党の今井雅人幹事長は「事務所名の文書を行政が出すのは問題ではないか」と指摘。遠藤氏は「事務所で対応していたと思っていたが、調べてお答えします」とした。【杉本修作、藤田剛】

政治とカネ:安倍政権下、「口利き」巡り問題続出 - 毎日新聞(2016年2月11日 東京朝刊)

 「政治とカネ」を巡る問題が、安倍政権で再燃している。10日の衆院予算委員会では現金授受問題でつまずいた甘利明前経済再生担当相や、業者と官庁を仲介した遠藤利明五輪担当相の問題が取り上げられた。「口利き」を防ぐ法制度の機能不全も浮かんだ。

全11省、政官接触記録なく 今年度「不適切な場合だけ」
 政治家の不当な介入の排除を目的に、官僚が国会議員や秘書と接触した時に記録を作成・公開するよう国家公務員制度改革基本法などで定められているにもかかわらず、全11省で今年度、記録が作られていないことが分かった。甘利明前経済再生担当相の現金授受問題で「口利き」の有無が焦点となる中、それを防ぐための制度が空洞化している。

 毎日新聞は昨年11月、総務▽法務▽外務▽財務▽文部科学▽厚生労働▽農林水産▽経済産業▽国土交通▽環境▽防衛−−各省に、同基本法に沿って昨年4月以降に作られた政官接触の記録を情報公開請求したところ、全省から「作成していない」「保有していない」との通知があった。

 また、10日の衆院予算委員会で井坂信彦議員(維新)は、第2次安倍内閣になって以降の3年間、全省庁で作られていなかったと指摘した。だが、甘利氏の当時の秘書らは昨年、都市再生機構(UR)と紛争中の建設会社に問題解決を頼まれ、URを所管する国交省の局長を訪問。法務省にも、甘利事務所から外国人の滞在ビザ審査を巡る問い合わせが昨年2件あった。こうした接触は記録されなかったことになる。

 同基本法に沿って第2次安倍内閣は政官接触の記録・公開を申し合わせている。各省が記録を作らない理由は、要約すれば「不当な働きかけがあれば記録するが、そういうことがなかった」ためだ。

 同基本法を所管する内閣人事局は「いたずらに事務を膨大化させない範囲で措置を講じるというのが基本法の趣旨」(平池栄一参事官)とし、記録するか否かの裁量は各省庁にあるとする。

 だが、第1次安倍、福田両内閣で行革担当相補佐官を務め、基本法案の準備に携わった原英史(えいじ)氏(現・政策工房社長、元経産官僚)は、「すべての政官接触を公平・正確に記録・開示するのが基本法の趣旨。政府の責任で制度化すべきだったのに各省でいいかげんに運用されている。完全に空洞化している」と指摘する。【日下部聡、樋岡徹也】

秘書に補償額漏らす 甘利氏疑惑、UR記録非公開部分
 甘利明前経済再生担当相の金銭授受問題を巡り、千葉県白井市の建設会社との補償交渉を進めていた都市再生機構(UR)が昨年10月9日、甘利氏の当時の秘書(先月辞職)との面談で、建設会社への追加補償の額を漏らしていたことが分かった。10日の衆院予算委員会で参考人の上西郁夫UR理事長は「つい口を滑らせた。極めて不適切だった」と陳謝した。

 交渉に影響を与えかねない情報を当事者以外に漏らすのは、独立行政法人の情報公開法の趣旨に反する行為とされる。上西氏は「補償内容に影響をうけたことは一切ない」と述べたが、秘書はこの場で「結局カネの話か」「少しイロを付けて」などと発言。政治家秘書と献金業者が一体で補償交渉に臨んだ実態が浮かんだ。

 URが一部黒塗りですでに公表している面談内容によると、秘書は「いくら提示したのか。教えられる範囲で構わない」と追加補償額を質問。これに続く黒塗り部分で、UR側が秘書に金額を漏らしていた。10日の衆院予算委では、井坂信彦議員(維新)が、黒塗り部分について上下の行との半角分のずれに着目して「数字が入っている。金額を伝えたのでは」と追及。上西氏が漏えいを認めた。

 昨年10月9日の面談では、秘書が「事務所の顔を立てる意味でも」とも発言し、URの千葉県内の出先事務所ではなく本社の担当者が建設会社と面談するよう働きかけた。実際、同月27日に本社の担当者を交えた会合が千葉県内で開かれた。

 会合でのやり取りについて、予算委で大西健介議員(民主)は、建設会社の総務担当者だった一色武氏(62)の録音に基づくとするメモを公表。会合に出席した一色氏はまず、この場が甘利事務所の要請で設けられたことをUR側に確認し、「新しい提案があるんだよね」などと補償額を増やすよう要請。「国務大臣の中でも相当の方だと思うよ」などと甘利氏の名前を何度も出した。

 一方、2013年8月に合意されたURによる約2億2000万円の補償を巡り、甘利事務所に協力を頼むと交渉が急進展したとする一色氏の証言についても、野党側は追及した。URの上西氏は「先方がそう言っているだけ。基準に従い計算した妥当なものだ」と口利き疑惑を否定した。【本多健、樋岡徹也】

「偽装請負」行政指導歴 ALT、遠藤氏仲介の会社受託
 遠藤利明五輪担当相の事務所が、外国語指導助手(ALT)に関する通知を文部科学省が出す前に、通知に関与した厚生労働省とALT派遣会社の面会を仲介するなどした問題で、同社に委託した自治体が偽装請負だとして行政指導されていたことが分かった。10日の衆院予算委員会で維新の党の今井雅人幹事長が取り上げ、仲介との関連をただしたが、遠藤氏は「偽装請負があったかは全く承知していない」と述べた。

 質疑などによると、同社と愛知県東海市による業務委託(請負契約)について、愛知労働局は2010年3月、ALTと担任の「チームティーチング」は請負契約で認められず、労働者派遣法違反に当たるとして是正指導した。この問題は中央労働委員会でも審査され、中労委は13年1月、「業務委託の範囲を超えた業務が部分的に行われた」と判断した。

 これに先立つ09年8月、文科省は「担任の指導の下で行うチームティーチングは請負契約でできない」と自治体側に通知したが、遠藤氏の仲介後の14年8月、ALTと担任の「会話実演」は「直ちに違法とはならない」と新たに通知した。今井氏はこうした経緯を取り上げ「派遣会社は13年後半に(厚労省に)要望し始め、通知が変わっている」と指摘。遠藤氏は「詳細は分からない。指導や偽装請負は全く承知していない」と答えた。

 仲介については13年12月上旬と14年4月上旬、厚労省の担当課長らが遠藤氏の事務所で秘書と面会したことも判明。

 これで仲介に絡む面会は13年12月〜14年5月に計6回、うち4回は秘書が居たが、遠藤氏は「(派遣会社と厚労省の話の)内容には一切関わってない」と述べた。

 一方、文科省が16年度予算案に載せたALTなどの「指導員等派遣事業」について「自治体の直接雇用が対象で、派遣や請負は対象外」と説明していることに対し、今井氏は「直接雇用でも業務委託がある」と指摘。ALTを直接雇用する大阪市は、この派遣会社に13年度に約6000万円、15年度には約4200万円で採用業務などを委託している。【杉本修作、藤田剛】

ALTを巡る通知と遠藤氏の事務所による仲介などの経緯
2009年

 8月28日 文部科学省がALTに関し「日本人担任とのチームティーチングは請負契約でできない」と通知

  10年

 3月 3日 ALT請負契約を派遣会社と結んだ愛知県東海市に愛知労働局が「偽装請負」だとして是正指導

  13年

 1月25日 中央労働委員会が派遣会社と東海市によるALT請負契約を偽装請負と認定

12月上旬  厚生労働省需給調整事業課長と遠藤利明議員の秘書が面会

12月下旬  同省課長と秘書、派遣会社が面会

  14年

 1月上旬  同省課長補佐と秘書、派遣会社が面会

 4月上旬  同補佐と秘書が面会

  〃    同補佐と派遣会社が面会

 5月上旬  同補佐と派遣会社が面会

 8月27日 文科省がALTの請負契約に関し、担任との「会話実演」は「直ちに違法とはならない」と通知

政治とカネ:安倍政権、足元の火ダネ UR、補償額漏らす 甘利氏秘書、業者と一体交渉 - 毎日新聞(2016年2月11日 大阪朝刊)

「黒塗り面談」判明
 「政治とカネ」を巡る問題が、安倍政権で再燃している。10日の衆院予算委員会では現金授受問題でつまずいた甘利明前経済再生担当相や、業者と官庁を仲介した遠藤利明五輪担当相の問題が取り上げられた。「口利き」を防ぐ法制度の機能不全も浮かんだ。

 甘利明前経済再生担当相の金銭授受問題を巡り、千葉県白井市の建設会社との補償交渉を進めていた都市再生機構(UR)が昨年10月9日、甘利氏の当時の秘書(先月辞職)との面談で、建設会社への追加補償の額を漏らしていたことが分かった。10日の衆院予算委員会で、参考人の上西郁夫UR理事長は「つい口を滑らせた。不適切だった」と陳謝した。

 交渉に影響を与えかねない情報を当事者以外に漏らすのは、独立行政法人の情報公開法の趣旨に反する行為とされる。上西氏は「補償内容に影響をうけたことは一切ない」と述べたが、秘書はこの場で「少しイロを付けて」などと発言。政治家秘書と献金業者が一体で補償交渉に臨んでいた実態が浮かんだ。

 URが一部黒塗りで公表している面談内容によると、秘書は「いくら提示したのか。教えられる範囲で構わない」と追加補償額を質問。これに続く黒塗り部分でUR側が金額を漏らしていた。10日の衆院予算委では、井坂信彦議員(維新)が、黒塗り部分に上下の行との半角分のずれに着目して「数字が入っている。金額を伝えたのでは」と追及。上西氏が漏えいを認めた。

 昨年10月9日の面談では、秘書が「事務所の顔を立てる意味でも」とも発言し、URの千葉県内の出先事務所ではなく本社の担当者が建設会社と面談するよう働きかけた。実際、同月27日に本社の担当者を交えた会合が千葉県内で開かれた。

 会合でのやり取りについて、予算委で大西健介議員(民主)は建設会社の総務担当者だった一色武氏(62)の録音に基づくとするメモを公表した。会合に出席した一色氏はまず、この場が甘利事務所の要請で設けられたことをUR側に確認し、「新しい提案があるんだよね」などと補償額を増やすよう要請。「国務大臣の中でも相当の方だと思うよ」などと甘利氏の名前を何度も出したという。【本多健、樋岡徹也】

政官接触記録、全11省なし 過去3年間 口利き排除空洞化
 政治家の不当な介入の排除を目的に、官僚が国会議員や秘書と接触した時に記録を作成・公開するよう国家公務員制度改革基本法などで定められているにもかかわらず、全11省で今年度、記録が作られていないことが分かった。甘利明前経済再生担当相の現金授受問題で「口利き」の有無が焦点となる中、それを防ぐための制度が空洞化している。

 毎日新聞は昨年11月、総務▽法務▽外務▽財務▽文部科学▽厚生労働▽農林水産▽経済産業▽国土交通▽環境▽防衛−−の各省に、同基本法に沿って昨年4月以降に作られた政官接触の記録を情報公開請求したところ、全省から「作成していない」「保有していない」との通知があった。

 また、10日の衆院予算委員会で井坂信彦議員(維新)は、第2次安倍内閣になって以降の3年間、全省庁で作られていなかったと指摘した。

 だが、甘利氏の当時の秘書らは昨年、都市再生機構(UR)と紛争中の建設会社に問題解決を頼まれ、URを所管する国交省の局長を訪問。法務省にも、甘利事務所から外国人の滞在ビザ審査を巡る問い合わせが昨年2件あった。こうした接触は記録されなかったことになる。同基本法に沿って第2次安倍内閣は政官接触の記録・公開を申し合わせている。

 第1次安倍、福田両内閣で行革担当相補佐官を務め、基本法案の準備に携わった原英史(えいじ)氏(現・政策工房社長、元経産官僚)は、「すべての政官接触を公平・正確に記録・開示するのが基本法の趣旨。政府の責任で制度化すべきだったのに各省でいいかげんに運用されている。完全に空洞化している」と指摘する。【日下部聡、樋岡徹也】

ALT請負 「偽装」と行政指導歴 遠藤氏の仲介会社受託
 遠藤利明五輪担当相の事務所が、外国語指導助手(ALT)に関する通知を文部科学省が出す前に、通知に関与した厚生労働省とALT派遣会社の面会を仲介するなどした問題で、同社に委託した自治体が偽装請負だとして行政指導されていたことが分かった。10日の衆院予算委員会で維新の党の今井雅人幹事長が取り上げ、仲介との関連をただしたが、遠藤氏は「偽装請負があったかは全く承知していない」と述べた。

 質疑などによると、同社と愛知県東海市による業務委託(請負契約)について、愛知労働局は2010年3月、ALTと担任の「チームティーチング」は請負契約で認められず、労働者派遣法違反に当たるとして是正指導した。【杉本修作、藤田剛】

集団的自衛権:9条解釈巡る政官協議 法制局、記録残さず - 毎日新聞(2016年2月14日 西部朝刊)

 集団的自衛権の行使容認に伴う憲法9条の解釈変更を巡り、内閣法制局の横畠裕介長官が国会議員との協議について、法律などで定める政官接触の記録を残していないことが分かった。法制局は、意思決定過程の記録を行政機関に義務付ける公文書管理法の趣旨にも反し、内部での検討経緯を公文書に残していない。解釈変更を容認する同局のプロセスの不透明さが改めて浮き彫りとなった。【日下部聡、樋岡徹也】

 政官接触記録は、国家公務員制度改革基本法により「政」による「官」への不当な介入を防ぐ目的で、国の官僚が国会議員と会った際に作成するよう定める。さらに現内閣は、同基本法や公文書管理法にのっとって政官接触の記録や公開を申し合わせている。

 政府は2014年7月1日、同盟国への攻撃を自国への攻撃とみなして反撃できる集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。だが、横畠氏は閣議決定の前に自民党の高村正彦副総裁や公明党の北側一雄副代表らと非公式に協議し、容認に伴う解釈変更に合意していたことを複数の与党関係者が取材に証言している。

 これを踏まえ、毎日新聞は内閣法制局に対し昨年11月、安全保障関連法制の本格的な検討が始まった13年以降の政官接触記録を情報公開請求したところ、「保有していない」との通知があった。横畠氏は与党幹部との接触を記録していなかったことになる。

 基本法を所管する内閣人事局は、政官接触記録について、いわゆる「口利き」を想定し「不当な要求があった時にのみ残す」と解釈している。これに対し、福田政権から鳩山政権初期にかけて国家公務員制度改革推進本部(当時)の企画官だった元衆院議員の大熊利昭氏は「基本法にも内閣の申し合わせにも違反している。政官接触記録は口利きだけでなく、政策的なことにも適用される」と指摘する。

 第1次安倍・福田両内閣で行革担当相補佐官として公務員制度改革を担当した元経産官僚の原英史(えいじ)氏(現・政策工房社長)も「すべての政官接触を公平・正確に記録・開示することが求められている」と指摘する。実際、基本法は政官接触記録の目的として「政策の立案、決定及び実施の各段階における国家公務員としての責任の所在」の明確化をうたっている。

 そもそも、内閣法制局長官が閣外の国会議員と個人的に接触すること自体、異例だ。元長官の一人は「憲法解釈についての検討依頼は官房副長官を通じてだった」と証言する。
 政官接触記録を残さなかった理由を聞こうと横畠氏に取材を申し込んだが、法制局総務課を通じて「忙しいのでお断りする」との返答があった。また、富岡秀男総務課長は「『文書がありません』と申し上げるしかない」と話した。

 一方、安保法制を議論する与党協議会の事務局を務めていた内閣官房国家安全保障局にも同様の情報公開請求をしたが、政官接触記録は作成していなかった。

 ■ことば

政官接触の記録
 国家公務員制度改革基本法に基づき、国の官僚が国会議員と接触した際、保存や公開を前提に記録を作ることが定められている。内閣官房が2013年、国会に示した書式によると、接触した日時、場所、議員の氏名とともに質疑応答が具体的に箇条書きで列挙されている。

Listening:<社説>政官の接触記録 法の要請を無視するな - 毎日新聞(2016年2月16日)

 国の官僚が国会議員と接触した場合、相手や会見の内容について記録を作ることが国家公務員制度改革基本法で定められている。「政」から「官」への不当な介入を防ぐために2008年に施行された法律だ。

 ところが、毎日新聞の情報公開請求で、国の全11省が今年度、政官接触記録を「作成していない」か「保有していない」ことが判明した。

 官僚側のずさんな運用によって、制度が骨抜きになっている。立法や行政の意思決定にかかわる記録の保存は、民主主義が適切に機能しているのかを検証するために欠かせないものだ。制度の原点に立ち返り、透明性のある運用をすべきだ。

 とりわけ、内閣法制局の横畠裕介長官が政官接触記録を残していなかった問題の根は深い。横畠長官は一昨年、集団的自衛権の行使容認に伴う憲法9条の解釈変更をめぐり、与党である自民党や公明党幹部と非公式に協議していた。戦後の安全保障法制の大転換に関わる政治課題だ。

 与党の有力政治家がその意思決定にどう関わったのか、検証が必要だ。だが、記録がなければ、責任の所在はうやむやになってしまう。

 法制局は、公文書管理法の趣旨に反し、憲法解釈変更についての内部議論の記録も残していなかったことが分かっている。記録は歴史的文書であり、国民共有の知的資源だ。二重の意味で、法の精神に反する。

 政官接触記録の制度化は、小泉内閣時代、当時の鈴木宗男衆院議員が外務省へ介入したのがきっかけだった。内閣の一員でないのに省庁に影響力を及ぼす「族議員」の力をそぎ、政策を決める内閣と実行する官僚の役割を明確化する狙いもあった。

 だが、情報公開の結果を見れば、複数の省が法施行後、一通も記録を作っていない。「不当な要求があった場合だけ記録を残す」と、法を狭く解釈している。内閣と与党の有力者が一体となって政策を決めていく日本の政治風土を背景に、官僚側の政治家への配慮が垣間見える。

 第2次安倍内閣は発足時に、「基本法と公文書管理法に基づく政官接触記録の作成、保存、公開に適切に対処する」と申し合わせている。公文書管理法を入れた点について「政策決定過程をきちんと残しておくべきだとの精神を踏まえている」との担当閣僚答弁もある。

 記録がないことは、この申し合わせにも反していることになる。

 記録の公開の時期などについて定めがないため、記録を残さない方向に意識が働いている可能性がある。仮に現行法に不備があるのならば、改正の議論をすればいい。官僚の判断でなし崩し的に法を有名無実化している現状は許されない。

内閣法制局長官:政官接触記録「定めに従って適切に対処」 - 毎日新聞(2016年2月16日 22時36分(最終更新 2月16日 22時36分))

 集団的自衛権行使容認に伴う憲法9条の解釈変更を巡り、内閣法制局の横畠裕介長官が法律などの定める与党幹部との協議の政官接触記録を残さなかった問題で、横畠氏は16日の衆院予算委員会で「一般的にではあるが、定めに従って適切に対処している」と述べ、残さない理由を具体的に説明しなかった。落合貴之議員(維新)の質問への答弁。

 国家公務員制度改革基本法は「政」による「官」への不当な介入を防ぐ目的で、官僚が閣外の国会議員と会った際に記録を作成するよう定め、現内閣も記録や公開を申し合わせている。制度を所管する内閣人事局は「口利き」を想定し「不当な要求があった時にのみ残す」と解釈しているが、制度設計に携わった政府関係者は「すべての政官接触を公平・正確に記録・開示することが法の趣旨」と指摘している。【日下部聡】

政官接触:11省「記録なし」 作成ルール、有名無実化 - 毎日新聞(2016年2月24日 東京朝刊)

 「口利き」など国会議員による官僚への不当な介入を防ぐための政官接触の記録について、作成を定める国家公務員制度改革基本法の施行(2008年6月)後に作られたものを国の全11省に情報公開請求したところ、一通も存在していないことが分かった。基本法に加えて現内閣は接触記録の作成や保存、公開を申し合わせてもいるが、ルールは有名無実化している。

 国の11省(総務▽法務▽外務▽財務▽文部科学▽厚生労働▽農林水産▽経済産業▽国土交通▽環境▽防衛)を対象に毎日新聞は昨年11月、基本法に基づく今年度分(昨年4月1日以降)の政官接触記録を、情報公開請求した。これに対し全省が「作成していない」または「保有していない」と回答した。そこで11省に今年1月、昨年度(昨年3月31日)までに作成した記録をすべて開示するよう改めて請求した。これにも、全省が「ない」と回答した。

 基本法や現内閣の申し合わせは、官僚が閣外の国会議員と接触した際に記録を作り、保存、公開するよう定める。しかし、基本法を所管する内閣人事局は「不当な要求があった時のみ記録する」と解釈。各省もこれにならい「不当な要求はなかった」として記録を作っていない。

 一方、基本法作りに携わった政府関係者は「すべての政官接触を公平・正確に記録・開示することが法の趣旨だ」と指摘している。

 甘利明前経済再生担当相の現金授受問題を巡っては、国交省や環境省の幹部職員が甘利氏の当時の秘書と接触していたことが明らかになったが、政官接触の記録は作られていなかった。【日下部聡】

政官接触:一件も記録なし 介入防止の法、骨抜き - 毎日新聞(2016年2月24日 大阪朝刊)

 「口利き」など国会議員による官僚への不当な介入を防ぐための政官接触の記録について、作成を定める国家公務員制度改革基本法の施行(2008年6月)後に作られたものを国の全11省に情報公開請求したところ、一通も存在していないことが分かった。基本法に加えて現内閣は接触記録の作成や保存、公開を申し合わせてもいるが、ルールは有名無実化している。

 国の11省(総務▽法務▽外務▽財務▽文部科学▽厚生労働▽農林水産▽経済産業▽国土交通▽環境▽防衛)を対象に毎日新聞は昨年11月、基本法に基づく今年度分(昨年4月1日以降)の政官接触記録を、情報公開請求した。これに対し全省が「作成していない」または「保有していない」と回答した。

 そこで11省に今年1月、昨年度(昨年3月31日)までに作成した記録をすべて開示するよう改めて請求した。これにも、全省が「ない」と回答した。

 基本法や現内閣の申し合わせは、官僚が閣外の国会議員と接触した際に記録を作り、保存、公開するよう定める。しかし、基本法を所管する内閣人事局は「不当な要求があった時のみ記録する」と解釈。各省もこれにならい「不当な要求はなかった」として記録を作っていない。

 一方、基本法作りに携わった政府関係者は「すべての政官接触を公平・正確に記録・開示することが法の趣旨だ」と指摘している。

 甘利明前経済再生担当相の現金授受問題を巡っては、国交省や環境省の幹部職員が甘利氏の当時の秘書と接触していたことが明らかになったが、政官接触の記録は作られていなかった。

 これについて18日の参院決算委員会で、又市征治議員(社民)が「今後、すべての接触を記録する考えはないのか」と質問した。石井啓一国交相は「今後もこれまでと同様、適切に対処していく」、白石徹環境政務官は「すべて記録するのは職員の業務が多くなり、現実的でない。これからもケース・バイ・ケースで残していく」と答弁し、両省とも新たな対応はしない構えだ。【日下部聡】

政官接触:11省「記録なし」 「政官が付き合い過ぎ」 飯尾潤・政策研究大学院大学教授 - 毎日新聞(2016年2月24日 東京朝刊)

 国家公務員制度改革基本法が国会議員と官僚のやり取りを記録するよう定めているのに、同法施行後、国の全11省が作成した記録は一通もなかった。「政」と「官」の関係を透明にする制度はなぜ機能しないのか。「日本の統治構造−−官僚内閣制から議院内閣制へ」などの著書で知られる飯尾潤・政策研究大学院大学教授に聞いた。

      ◇

 問題の根は深く、一朝一夕に解決するのは難しいだろう。

 政官接触の記録・公表は政治家の圧力から官僚を守る制度だ。不当かどうかは政府や国民が判断する。だから、すべて記録するのが国家公務員制度改革基本法の建前だが、現状では不当かどうかを官僚自身が判断できるので機能していない。関係者が不利になりそうなことを、わざわざ記録するはずがない。

 日本の官僚は政治家と付き合い過ぎだ。官僚が議員会館を回ったり、党本部まで出向いて説明したりということは外国ではあまり見られない。政策決定は政党政治家による内閣が担い、官僚はその実行に徹するのが本来の議院内閣制だが、日本は両者が融合してしまっている。

 例えば英国の官僚は証拠を残すために、政治家の問い合わせには文書でしか応じないのが原則だ。組織文化が大きく違う。

 そもそも日本の行政機関は、公文書をきちんと残さない傾向がある。大きな原因は人手不足だ。日本の公務員は諸外国に比べ非常に少ない。作った文書を重要度で分類し、それぞれ保存期間や公開範囲を決めていく膨大な作業が必要だが、日々の業務に忙殺される官僚には酷だろう。国会議員への対応が多忙さに拍車をかけている皮肉な現実がある。

 交渉ごとなど機微に触れる内容は、一定期間秘密にした後に開示するような法整備も検討すべきだ。そうしないと官僚は重要なものほど残さないという判断をするようになる。要員増が望めないなら技術で補うしかない。文書を作ると自動的に組織内で共有され、整理や蓄積もされるような電子システムを構築する必要がある。【聞き手・日下部聡】

 ■人物略歴

いいお・じゅん
 1962年生まれ。東京大大学院博士課程修了。専門は政治学・現代日本政治論。埼玉大助教授などを経て現職。著書に「現代日本の政策体系」「政局から政策へ」など。

政官接触:内閣人事局に「記録」存在 - 毎日新聞(2016年2月25日 06時00分(最終更新 2月25日 09時30分))

「作っていない」と回答、実は「任意の備忘録」
 国会議員による国の官僚への不当な介入を防ぐ目的で法律などが定める政官接触の記録を国の11省が作っていない問題で、法律を所管する内閣官房内閣人事局も、毎日新聞の情報公開請求に「作っていない」と回答した。ところが、同局が職員の作成した国会議員との接触記録を保存していたことが分かった。同局は取材に「任意で作った」と説明。法律に基づく政官接触記録ではないとして開示しなかったとみられる。

 政官接触の記録は国家公務員制度改革基本法(2008年6月施行)が定め、現内閣は同法や公文書管理法に基づいて記録の作成や保存、公開を申し合わせている。政官の関係を示す記録が「官」の裁量で国民の目から遠ざけられている実態が浮かんだ。

 国の全11省は毎日新聞の情報公開請求に対し、基本法施行以降、同法に基づく記録はないと回答した。11省とは別に、基本法を所管する内閣人事局にも今年1月、同様の情報公開請求をしたところ、同局から今月8日に「作成していない」との通知があった。

 同局は幹部官僚人事の一元管理などで政治主導を強めることを目的に、国家公務員制度改革の一環で14年5月に発足。内部文書は前の担当部署から引き継いでおり、基本法施行時にさかのぼって調べても政官接触記録は「なかった」(文書審査係)という。

 ところが、前身の内閣官房行政改革推進本部は13年11月の衆院内閣委員会で、接触記録の「フォーマット(書式)」を出すよう野党議員や委員長らから求められ、渋った末に翌12月、国会議員と職員のやり取りの記録を提出していた。

 この事実について内閣人事局に取材したところ、同局は記録を保存しており、毎日新聞に提供した。それによると記録は2件あり、1件はA4判3枚で、国会議員から説明(レクチャー)を求められ、質疑応答を列挙している。日付は13年11月25日で、職員と議員の名前は黒塗りされている。

 もう1件は、A4判1枚で「議事概要(未定稿)」「議事・国家公務員制度改革の検討状況について」とある。13年10月に開かれた会議録とみられるが、会議の名称や日付、国会議員の名前、発言内容が黒塗りされ、内容はわからない。

 この2件について人事局の平池栄一参事官は、取材に「職員が任意で備忘録的に作ったものだと思う」と説明。「これまで不当な働きかけは特段なかったので(政官接触)記録もない」と述べ、基本法に基づく記録ではないと強調した。

 政官接触記録について、人事局は「議員から不当な要求があった場合にのみ記録を残す」と基本法や現内閣の申し合わせを解釈し、11省もこれにならう。だが、基本法は記録の保存・公開の目的として「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進」を掲げる。第1次安倍・福田両内閣で行革担当補佐官として公務員制度改革を担当した元経産官僚、原英史(えいじ)氏は「不当な働きかけがあった場合だけに限る趣旨ではない」と指摘している。【日下部聡】

内閣人事局保存の接触記録 質疑応答、箇条書きで詳細に
 内閣人事局が保存していた13年11月25日の接触記録3枚は「国家公務員法改正案の幹部職員一元化と人事管理」を巡る質疑応答だった。

 1枚は「レク要求」で、「午後3時41分」と議員側の要求時刻を明記。内閣官房職員が同4時半に議員会館へ出向いて「議員本人」に説明し、資料要求は2部、職員は「役職問わず」などと記され、説明前に作られたとみられる。

 残る2枚は「メモ」と題し、「先方の主な質問事項」「主なやりとり」など5項目の小見出しのもと、「外部の民間人も大臣は(幹部職員の審査に)推薦できるのか」「そのとおり」などと箇条書きで詳細に列挙している。

クローズアップ2016:政官接触、ルール骨抜き 記録作成は官僚判断 - 毎日新聞(2016-02-25):掲載図魚拓:基本法などで定める政官接触記録が、なぜ作成されないのか

 甘利明前経済再生担当相の「口利き」疑惑で、改めて明るみに出た「政」から「官」への不当な介入。それを防ぐために法で定められた政官接触の記録を調べると、ルールは骨抜きになっていた。【日下部聡、樋岡徹也】

 毎日新聞は昨年11月、国家公務員制度改革基本法が定める政官接触の記録について、国の全11省(総務、法務、外務、財務、文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業、国土交通、環境、防衛)に情報公開請求を行った。開示を求める対象は「今年度(昨年4月1日から現在)」とした。本来なら「2008年6月に同基本法が施行されて以降」とすべきだが、文書量が多く、開示が遅れる可能性を考えてのことだった。

 しかし、それは「取り越し苦労」だったようだ。全省が「作成していない」か「保有していない」のゼロ回答。しかも、総務、法務、農水3省は取材に、法施行後一通も作っていないことを明らかにした。

 基本法だけでなく、現内閣は政官接触の記録や公開を申し合わせている。なぜ作成されないのか。

 基本法の政官接触記録に関する規定は「政の官への圧力排除」(安倍晋三首相の10日の国会答弁)を目的としている。だが、条文は「必要な措置を講ずる」とし、その先のルール作りは政府に委ねている。かつて国家公務員制度改革推進本部(当時)の企画官を務めた大熊利昭・元衆院議員は「駅で偶然会ったら接触と見なすのか。電話はどうか。具体的な詰めがないまま放置されてきた」と指摘する。

 こうした基本法を補完するのが、第2次安倍内閣発足時(12年12月26日)の閣僚懇談会での7項目からなる申し合わせだ。そこでは(1)国会議員や秘書からの働きかけや要請で「対応が極めて困難なもの」は大臣に報告する(2)基本法と公文書管理法に基づき、記録の作成、保存、公開に適切に対処する−−と定める。

 (2)は「接触はあまねく記録せよ」と促しているように読める。ところが、基本法を所管している内閣人事局は「不当な要求」などを記録した場合に従うルールを確認しているに過ぎない−−と説明する。各省もこれにならって、「不当な要求があった場合にのみ記録を残す」と、同法を狭く解釈している。

 しかし、14年4月3日の参院内閣委員会で当時の稲田朋美行政改革担当相は、(2)の規定に「公文書管理法」が入っていることについて「公文書管理法には、政策決定過程をきちんと残しておくべきだと定められている。その精神を踏まえてということ」と述べ、政官接触の記録が単なる「口利き防止」ではなく、意思決定のプロセスを検証可能な形で残すものだとした。

 第1次安倍・福田両内閣で行革担当相補佐官として公務員制度改革を担当した元経産官僚の原英史(えいじ)氏(現・政策工房社長)も「(1)と(2)は分けて考えるのが自然だ。(2)に照らせば、すべての政官接触を公平・正確に記録・開示することが求められている」と指摘する。

 結局のところ、現行の基本法解釈で記録するかどうかは接触を受けた官僚の判断に任されている。人事局の武藤真郷参事官は「官僚に説明や資料を求める議員は多い。全部を記録するのは難しい」と話す。これに対し、原氏は「そんなに難しいことではない。録音すればいい」と指摘する。

「禁止」与野党反対で頓挫
 政官接触記録の制度化は小泉内閣時代の2002年にさかのぼる。鈴木宗男衆院議員(当時)の外務省への介入が問題となり、政府の方針と著しく異なる働きかけを政治家から受けた官僚は接触の日時や内容を記録し、大臣に報告する−−と申し合わせた。

 ただ、法律に基づいた制度ではなく、事実上立ち消えとなっていた。

 しかし、内閣の一員でもないのに省庁に強い影響力を及ぼす「族議員」への批判は消えない。第1次安倍内閣は、07年に「国家公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」を設けた。ここで、メンバーだった作家の堺屋太一氏(元経済企画庁長官)が、大臣以外の国会議員と官僚の接触そのものを禁止することを提案した。英国の制度を手本とし、政策を決める内閣と、それを実行する官僚の役割を明確に区別しようという狙いがあった。

 これを受けて福田内閣は08年、政官接触の原則禁止をうたう国家公務員制度改革基本法案を提出した。ところが、官僚から情報が得られなくなることを心配した与野党議員から反対が続出。与野党協議で、接触を認める代わりに、内容を記録・公開し不正を防ぐ現行規定に修正され、成立した経緯がある。

 記録に法的根拠が与えられ、公開を定めた点で、小泉内閣時の申し合わせからは前進している。基本法の修正案を提案した一人、自民党の宮沢洋一衆院議員は当時、同法の狙いについて「記録をきっちり残す、そして公開するということで、透明性を高める」と衆院内閣委員会で説明した。

 しかし今回、基本法が施行直後から機能していない実態が取材で浮かんだ。政府関係者の一人は「相手(政治家や秘書)に迷惑がかかるような記録を、役人がわざわざ残すはずがない」と指摘している。

政官接触:内閣人事局、記録非公開 任意作成理由に - 毎日新聞(2016年2月25日 大阪朝刊)

 国会議員による国の官僚への不当な介入を防ぐ目的で法律などが定める政官接触の記録を国の11省が作っていない問題で、法律を所管する内閣官房内閣人事局も、毎日新聞の情報公開請求に「作っていない」と回答した。ところが、同局が職員の作成した国会議員との接触記録を保存していたことが分かった。同局は取材に「任意で作った」と説明。法律に基づく政官接触記録ではないとして開示しなかったとみられる。【日下部聡】

 政官接触の記録は国家公務員制度改革基本法(2008年6月施行)が定め、現内閣は同法や公文書管理法に基づいて記録の作成や保存、公開を申し合わせている。政官の関係を示す記録が「官」の裁量で国民の目から遠ざけられている実態が浮かんだ。

 国の全11省は毎日新聞の情報公開請求に対し、基本法施行以降、同法に基づく記録はないと回答した。11省とは別に、基本法を所管する内閣人事局にも今年1月、同様の情報公開請求をしたところ、同局から今月8日に「作成していない」との通知があった。

 同局は幹部官僚人事の一元管理などで政治主導を強めることを目的に、国家公務員制度改革の一環で14年5月に発足。内部文書は前の担当部署から引き継いでおり、基本法施行時にさかのぼって調べても政官接触記録は「なかった」(文書審査係)という。

 ところが、前身の内閣官房行政改革推進本部は13年11月の衆院内閣委員会で、接触記録の「フォーマット(書式)」を出すよう野党議員や委員長らから求められ、渋った末に翌12月、国会議員と職員のやり取りの記録を提出していた。

 この事実について内閣人事局に取材したところ、同局は記録を保存しており、毎日新聞に提供した。それによると記録は2件あり、1件はA4判3枚で、国会議員から説明(レクチャー)を求められ、質疑応答を列挙している。日付は13年11月25日で、職員と議員の名前は黒塗りされている。

 もう1件は、A4判1枚で「議事概要(未定稿)」「議事・国家公務員制度改革の検討状況について」とある。13年10月に開かれた会議録とみられるが、会議の名称や日付、国会議員の名前、発言内容が黒塗りされ、内容はわからない。

 この2件について人事局の平池栄一参事官は、取材に「職員が任意で備忘録的に作ったものだと思う」と説明。「これまで不当な働きかけは特段なかったので(政官接触)記録もない」と述べ、基本法に基づく記録ではないと強調した。

 政官接触記録について、人事局は「議員から不当な要求があった場合にのみ残す」と基本法を解釈し、11省もこれにならう。だが、基本法は記録の保存・公開の目的として「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進」を掲げる。第1次安倍・福田両内閣で行革担当補佐官として公務員制度改革を担当した元経産官僚、原英史(えいじ)氏は「不当な働きかけがあった場合だけに限る趣旨ではない」と指摘している。

質疑応答を箇条書き
 内閣人事局が保存していた13年11月25日の接触記録3枚は「国家公務員法改正案の幹部職員一元化と人事管理」を巡る質疑応答だった。1枚は「レク要求」で、「午後3時41分」と議員側の要求時刻を明記。内閣官房職員が同4時半に議員会館へ出向いて「議員本人」に説明し、資料要求は2部、職員は「役職問わず」などと記され、説明前に作られたとみられる。

 残る2枚は「メモ」と題し、「先方の主な質問事項」「主なやりとり」など5項目の小見出しのもと、「外部の民間人も大臣は(幹部職員の審査に)推薦できるのか」「そのとおり」などと箇条書きで詳細に列挙している。

政官接触記録:他にも? 行革相、「行政文書」と認める - 毎日新聞(2016年2月26日 東京朝刊)

 内閣官房内閣人事局が保存し、毎日新聞が25日朝刊で詳報した職員による国会議員との接触記録について、河野太郎行政改革担当相は25日の衆院予算委員会第1分科会で「行政文書だと思っている」と述べ、職員の個人的なメモではなく、組織的に管理する文書だと認めた。井坂信彦議員(維新)の質問に答えた。

 内閣人事局は毎日新聞の取材に「職員が任意で備忘録的に作った」と答えていた。

 井坂氏は「同じような記録は他にも多数あるのか」と質問。三輪和夫・内閣人事局人事政策統括官は「どれくらいあるかは把握していない」と述べ、他にも職員が作成した接触記録が存在する可能性を否定しなかった。

 内閣人事局は、国家公務員制度改革基本法などが定める政官接触記録の開示を求めた毎日新聞の情報公開請求に、この記録を出さなかった。

 河野氏は「基本法に基づく記録ではない」と述べ、対応に問題はないとした。

 政官接触の記録は閣外の国会議員による介入を防ぐ目的で定められているが、内閣人事局は「不当な働きかけがあった時だけ記録する」と解釈し、河野氏もこれを踏襲した。【日下部聡】

政官接触:未記録問題で政府が答弁書 - 毎日新聞(2016年3月5日 東京朝刊)

 集団的自衛権行使容認に伴う憲法9条の解釈変更を巡り、内閣法制局の横畠裕介長官が与党幹部との協議記録を残さなかった問題で、政府は4日、「適切に対処している」との答弁書を閣議決定した。政官接触記録の作成・公開を定めた国家公務員制度改革基本法に違反するとして見解を求めた逢坂誠二衆院議員(民主)の質問主意書に答えた。

 同基本法は政官接触記録の目的について「政策の立案、決定及び実施の各段階における国家公務員としての責任の所在をより明確」にするためとしているが、政府は答弁書で「『口利き』と言われるような、『政』の『官』に対する圧力を排除する趣旨」と、従来の限定的な解釈を踏襲した。

UR:甘利氏側との面談記録、一転ご都合公開 - 毎日新聞(2016年4月5日 07時30分(最終更新 4月5日 10時45分))

 外に出さない「職員の備忘録」が一転、開示すべき「組織文書」に−−。甘利明前経済再生担当相の現金授受問題で、都市再生機構(UR)が公開した当時の秘書らとの面談記録は当初、職員の個人的文書とされ、情報公開制度の対象外だった。説明義務を果たすため例外的に公開したとUR側は説明しているが、組織防衛の意図ものぞく。【日下部聡】

 この問題では国土交通省と環境省の職員が甘利氏の秘書らと面談していたが、国家公務員制度改革基本法の定める政官接触記録を作っていなかった。URは公的資金を受ける独立行政法人で、職員は公務員に準じた扱いを受ける。2月に記者会見で公開した面談記録は、いわばUR版「政官接触記録」だ。

 記録について、URコンプライアンス・法務室の丹圭一チームリーダーは取材に、「国会担当の職員が個人的に備忘録としてつけていたものだ」と説明。週刊文春の報道後、秘書らとのやり取りを確認するため職員から事情を聴いたところ、記録の存在が分かったという。この職員は同僚や上司に記録を見せたことはないという。だが、記録はA4判の用紙に印字され、面談を依頼してきた議員や秘書の名前、依頼を受けた職員名、日時、内容などを書く欄があり、一定の書式で作成されている。

 URには、独立行政法人情報公開法に基づき情報を開示する義務があり、開示の対象は「職員が組織的に用いる」文書とされる。URによると、面談記録は職員個人の文書で開示対象外だったが、公開した時点で「組織的に用いる」文書となったため、現在は情報公開請求で誰でも入手できる。

 面談記録によると、甘利氏の秘書らは千葉県の建設会社とURの補償交渉を巡り「結局カネの話か」「少しイロを付けて」など補償増額を働きかけるような発言をした。一方で記録には、UR側が秘書らに「これ以上(交渉に)関与されない方がよろしいように思う」と示唆するなど、URの「正当性」を示す内容も含まれていた。

 公開した理由について、丹氏は「URとして説明義務を果たすため」と述べた。だが、国会に参考人として呼ばれた上西郁夫UR理事長は、公開の狙いを「社会的な疑念が持たれることを考慮し、当機構への疑念を払拭(ふっしょく)する上で重要だ」と説明し、組織防衛の意図をにじませた。

 重要な記録であるにもかかわらず、公的機関の裁量で開示、非開示が決まっている。政治家との面談記録作成を内部で義務づけ、最初から「組織的に用いる」文書として管理するよう内規を変えられないのか。URは「国や他の組織の動向も見なければならない」(林田桂・広報室主査)と述べ、UR単独で変えることは今のところないとした。

 身の安全考えたか
 元外務官僚で作家の佐藤優氏の話 URは「個人的な備忘録」と言うが、自分だけのためなら汚い字で他人に読めないように残せばいいわけで、あの記録は組織内で共有する文書だろう。省庁と比べ権限がないため身の安全を守ることを考えたのだろうが、よくこれだけ細かく取っていたと感心した。国の官僚は国会議員とのやり取りで、内容が外に出るとまずい場合には口頭で上司に報告し記録に残さない。後日、経緯を知りたくとも分からなくなるのは問題だ。

解説 政官接触、常に開示を
 「備忘録」という言葉は政府の内閣人事局の幹部からも聞いた。国家公務員制度改革基本法は、国会議員の省庁への不当な介入を防ぐ目的で、国家公務員が政官接触の記録を作るよう定める。ところが、同法を所管する人事局は、情報公開請求に「記録はない」と回答しながら、国会議員との面談記録を保存していた。「職員が備忘録的に作った」との説明だった。

 実際には記録があるのに、なるべく公開せずに済ます方便として「備忘録」と言う−−そんな疑念がぬぐえない。ある元官僚はこう明かした。「機微に触れるやり取りは(情報公開の対象にならないよう)『個人メモ』にしていた。上司に見せたこともあった」。上司に見せたのなら「組織的に用いた」ことになり、本来は公開の対象だ。こんな恣意(しい)的な運用が許されるなら、情報公開制度は空洞化するだけだろう。

 官庁が政官接触記録の作成や公開に及び腰なのは、「後で面倒なことになる」という心理的な要因が大きいためとみられる。だが、URの例でも分かるように、それは自身を守る手段ともなる。

 業者から口利きを頼まれた政治家や秘書が、公務員らに圧力をかける。汚職の温床となるこうした事例は枚挙にいとまがないが、今回ほど詳細な実態が明らかになるのは珍しい。URは「政官接触記録」の価値を世に知らしめたとも言える。

 一方、政策決定過程を後で検証できるよう記録することを定めた公文書管理法は、個人のメモでも重要性に応じて公文書として扱うべきだとガイドラインでうたう。官庁は「情報を国民と共有する」という感覚を持ってほしい。同時に、国民の主権者意識も問われている。【日下部聡】

| コメント (0) | トラックバック (0)

«文科省:領土問題に対する近隣国の見解は教えるな。だが教育勅語は教えて良い。