2017/01/20

山本一郎氏がアパホテル批判へのカウンターをリツイート

山本一郎(やまもといちろう)さんのツイート: "@bci_ @tamai1961 @johannessm2k この手の話はもっと知られてもいいよね"

山本氏らしいなあという印象。さりげなくヘイトを煽る。
元はこの話。

黒色中国さんのツイート: "この数日、アパホテルについては賛否両論出てますけど、中国だと便器に日の丸をつけたホテルとか、日の丸を玄関マットにしたレストランがあります。アパホテルの部屋に「本」が置かれている…と大騒ぎする前に、中国は自省すべきことがたくさんあるんじゃないでしょうかw @johannessm2k https://t.co/5jBngFtKex"

関連して追加されたツイート。

黒色中国さんのツイート: "中国には「日本人と犬は立入禁止」というホテルもありました。アパホテルはホテルの本業を越えた歴史的主張をしたのかも知れない。でも、客を侮辱して拒否したわけでもない。批判も当然ですが、とりあえず中国は文句を言う前に自らを正せ…と私は思いますw @johannessm2k https://t.co/kbpmHjZwx4"

これらのツイートに賛同する反応がぶら下がって読める。

この元ツイートをした人も、中国だって同じことをしているだろう、他人を批判する前にまずわが身を正せ、という論調だ。リツイートした人たちは、相対化できる材料をもらえて喜んでいる。
アパホテルが悪いことをしているという点は否定できないが、しかしアパホテルを擁護したい、あるいは日本や自分が悪いわけではないと切断したい人たちが引っかかっている。

こういう人たちは、日中の言説の非対称性に気づいていないか、意図的に無視している。
ツイートで紹介されている中国のホテルや店の行為が醜悪で排外的なことは当然だ。だが両者は相対化できるものではない。

そもそも、他人を批判する前にわが身を正せと言うのなら、それを人に言う前に同じことを自分がしたらどうだろうか。つまり、「中国」の反日的な振る舞いを非難(あるいや揶揄)する前に、「日本」の排外的な振る舞いを批判・抑止するということだ。彼らはなぜ、今回の騒動の発端となったアパホテルと元谷氏の、そしてそれに連なる人々の暴言を厳しく批判しないのだろうか。
「先ず隗より始めよ」である。

****************
追記(2017年1月20日)

ちょっと違ったか。

彼らは、中国側の反日行為への批判はしないから、おまえたち中国人も日本の反中行為への批判はするな、と言いたいのだろう。きっと、お互い様だからお互いなじり合いは止めておこうよ、ということなのだ。

もしそう思うなら、単純に言えば、両方とも批判・告発すればいいと思うのだが。
極右的な人々はどちらの国にもいるのだから、きりがないのは確かだが、それに、そんなことばかりに関わっていられないのもその通りだが、「どっちもどっち」として排外主義への批判を無力化するのではなく、「確かにこっちは悪い。批判に賛同・協力する。それとともにそっちの排外主義への批判も強めよう」という方が正当ではないか。
だが、中国での排外主義を「中国人としても許せない」と同調した中国人のツイートには、「日本側への批判は誤りだ」という反応が付いた。この非対称性こそが偏りである。

私からすると、この件は「どっちもどっち」ではなく日本側に禍根があるのだから、日本側がまず改めるべきものだ。その意味で中国側の排外主義を併置して「どっちもどっち」とするのは間違いだし、そもそもアパホテルの件に限れば元谷氏の本と「日本人お断り」の差別とを対置して相殺するのも難しいものだ。

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メモ:類似性

https://pbs.twimg.com/media/C2hkmrRUUAACbKD.jpg(切り抜き画像)
※インタビュイーの除本理史氏による紹介。(ツイッター

[戦後責任]日本政府はなぜ「法的責任」を否認するのか -Apes! Not Monkeys! はてな別館

上記ツイッターで除本氏が言及した記事:(記者有論)水俣と福島 「人間の被害」国は直視を 石川智也 朝日新聞デジタル2017年(1月19日05時00分)

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2017/01/19

(元)閣僚(現国会議員)による買春とそれへの反応

安倍総理側近の元大臣、吉原超高級ソープ通い 後援者の葬儀後に | デイリー新潮

「硫黄島の戦い」を指揮した栗林陸軍大将を祖父にもち、2年4か月前まで総務大臣を務めていた新藤義孝衆院議員(58)。安倍総理の側近としても知られる“名門”代議士の姿が、吉原ソープ街にあった。

 ***

 新藤議員が吉原の超高級ソープを訪れたのは1月10日、地元・埼玉県川口市で行われた後援者の葬儀後のことだった。

「週刊新潮」の直撃取材に、新藤議員は「そんなの、言いたくないでしょう」を連呼。風俗通いをとやかく言うつもりはないけれど、斎場から“登楼”とは……。

Yahoo!ニュースのコメント一覧 -
はてなブックマークのコメント一覧

これらのコメントのほとんどは、新藤議員の買春行為は全く問題ないとしている。また、新藤議員の買春行為を報じた雑誌や、新藤議員を追い取材した記者を批判するコメントも多い。典型的なものをいくつか抜粋しておく。


・何が問題なの?
・完全にプライバシーの侵害。誰か不利益被っとるんか?
・びっくりするくらいどうでもよかった
・ 弔問客の後をつけた記者のモラルのほうが問題だと思うんだが。「風俗通いをとやかく言うつもりはない」と書いてあるから性風俗に対する批判でもないし。
・ほっといてやれ
・公人だからって業務に関係ない合法な趣味を晒すのは違法にして欲しい。ただただ他人を貶める事を仕事にしてるこの記者は本当に恥ずかしい人間。
・全く問題ないし、週刊新潮がいかにゲスいかって事。

日本人男性による海外買春ツアー、アダルトビデオの出演強要、従軍慰安婦問題。これらへの冷淡な反応を思い出す。
また、性暴力被害者、時折報じられる拉致監禁され救出された女性などへのいわゆるセカンドレイプ。そして痴漢対策としての女性専用車両への抵抗、最近では「私たちは買われた展」への批判などを思い出す。他方で痴漢えん罪問題での女性敵視も。

「集団レイプする人は、まだ元気があるからいい。まだ正常に近いんじゃないか」と言ったのは自民党の太田誠一衆院議員(2003年当時)だったが、彼は今71歳になる。我々の社会の感覚は彼の時代とほとんど変わっていないようである。

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メモ

・「合法だ」→うわべが取り繕われていれば何をしてもいいという話だろうか。賭博でも売春でも麻薬・覚醒剤などでも。
・「プライバシーの侵害」→元閣僚、現国会議員は公人で、しかも良識が問われる。不倫スキャンダルなど私生活での倫理性を問われて失脚した政治家は世の東西を問わずたくさんいる。そして、人格において尊敬・信頼・共感できない政治家を自分の代表として政治過程の代行を任せられるだろうか。
・「報道するな」→我々が選んだ代表がどういう人格の人間かを知らせることに意義はないだろうか。私的スキャンダルで政界を追われた世界の政治家たちは皆報道の犠牲者なのだろうか。

「超高級ソープ」で買春している新藤議員を擁護する人たちは、
「直撃取材に「そんなの、言いたくないでしょう」を連呼」したという新藤議員に
「堂々と自分の行為の正当性を主張しろ」
「買春は正しい行為だ。正々堂々と通い続けろ」
と励ましてやったらどうだろうか。

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追記(2017年1月22日)

参考
流出した硫黄島・栗林大将の孫=新藤義孝代議士の女性スキャンダル写真: 情報紙「ストレイ・ドッグ」(山岡俊介取材メモ)(2008.07.16)
<ミニ情報> 総務相就任で飛び出した新藤義孝代議士の下半身スキャンダル: 情報紙「ストレイ・ドッグ」(山岡俊介取材メモ)(2013.01.04)
安倍内閣 現職議員を襲った公然ワイセツ写真・・・どうも新藤義孝らしい - アルコール・カフェイン中毒と広告の影響(2013-11-21)

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2017/01/12

ソウルで僧侶が慰安婦問題に抗議して焼身自殺した件と国内報道

Buddhist monk sets himself on fire in South Korea over 'comfort women' deal | World news | The Guardian(Sunday 8 January 2017 07.01 GMT)

このニュース、知らなかった。
ガーディアンによれば、

A South Korean Buddhist monk was left in critical condition after setting himself on fire in Seoul to protest against the country’s settlement with Japan on compensation for wartime sex slaves.
また、
In his notebook, police said, the man called South Korea’s embattled president, Park Geun-hye, a “traitor” over the 2015 agreement.
とのことで、焼身自殺を図ったこの僧侶の動機は日韓合意への抗議だとされている。
後の報道によれば、この方は亡くなったそうだ。
人によっては「当てつけだ」と立腹しているかもしれないが、日韓合意が市民の反発を生むことは当初から予想されていたし、その後の日本政府・政治家の行動も慰謝どころか傷を逆なでするものばかりであったわけで、この方の死を我々が全く無視していいというわけではない。というか、我々が死に追いやったようなものだ。この僧侶は朴大統領を非難しているそうだが、それは彼が韓国社会の一員であるからであって、その批判の先には我々が主権者である日本政府と議員らがある。謝罪とともにご冥福をお祈りする。

この件について日本での報道が気になったので検索したが、日本語記事は限られている。見つけられたのはAFPとレコードチャイナだけだ。

朴氏の退陣求める集会で僧侶が焼身自殺図る 韓国 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News(2017年01月08日 18:39 発信地:ソウル/韓国)

【1月8日 AFP】(写真追加)韓国ソウル(Seoul)で、朴槿恵(パク・クネ、Park Geun-Hye)大統領の退陣を求める抗議集会に参加していた僧侶が焼身自殺を図り、重体となっている。当局が8日、明らかにした。

 60代の僧侶は7日夜、11週目に入った週末の反朴大統領の大規模集会の最中、自身の体に自ら火をつけた。僧侶の氏名は明らかにされていない。

 聯合(Yonhap)ニュースによると、僧侶は、不正疑惑の渦中にある朴大統領を「国家反逆」を犯したとして逮捕するよう求めるメモを残していたという。また慰安婦問題についても、2015年の日韓合意を受け入れたとして朴氏を「売国奴」と非難している。

 警察当局と僧侶が搬送されたソウルの病院によると、僧侶は全身に第三度熱傷を負っており意識のない状態が続いている。(c)AFP

朴氏退陣要求デモで焼身図った僧侶が死亡、韓国 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News(2017年01月10日 20:11 発信地:ソウル/韓国)

【1月10日 AFP】韓国の朴槿恵(パク・クネ、Park Geun-Hye)大統領の退陣を求める抗議集会で先週、焼身自殺を図った僧侶(64)が搬送先の病院で9日、死亡した。病院側が10日、明らかにした。

 僧侶はソウル(Seoul)中心部で7日夜、11週目に入った大規模な朴氏退陣要求デモの最中、自らの体に自ら火をつけた。集会には数十万人規模の参加者が集まっていた。

 治療を行っていたソウル大学病院(Seoul National University Hospital)の説明によると、僧侶は顔と全身に重度のやけどを負っており、9日夜に死亡した。

 この僧侶は「チョン・ウォン(Jung-Won)」という法名で、不正疑惑の渦中にある朴大統領を「国家反逆」の罪で逮捕するよう求めるメモを残していたという。また聯合(Yonhap)ニュースによると、僧侶は慰安婦問題についても日韓合意を受け入れた朴氏を「売国奴」と非難していたという。

 大韓仏教曹渓宗(Jogye Order)の社会的公正委員会は「高僧チョン・ウォンは朴大統領辞任の要求を含んだ民衆の気持ちを伝えるため、自らの命を犠牲にした。このように人々の命が失われないよう、また国全体がいち早く安定するよう願う」との声明を発表した。(c)AFP

朴大統領の退陣求める集会で僧侶が焼身自殺図り重体、慰安婦合意に不満、メモ残す―韓国 - Record China(2017年1月9日(月) 10時10分)

2017年1月7日、韓国・ソウルで朴槿恵(パク・クネ)大統領の退陣を求める11回目の抗議集会に参加していた僧侶(64)が焼身自殺を図り、重体となっている。英BBCの中国語ニュースサイトが伝えた。

ロイター通信によると、僧侶はすぐにソウル大学病院に搬送された。病院の関係者によると、全身に第3度熱傷を負っており、意識不明の重体だという。

警察によると、僧侶はメモを残しており、慰安婦問題をめぐる2015年の日韓合意への不満や朴大統領を「国家反逆」を犯したとして逮捕するよう求める内容が記されていたという。(翻訳・編集/柳川)

レコードチャイナのこの記事はBBC、ロイターを下敷きにしている。
AFPも配信していることから、日本のメディアが全く知らなかったということはなさそうだ。

どうして日本メディアの報道が見つからないのだろう。Googleで検索しただけなので、ひょっとしたら検索に載ってこなかっただけかもしれないし、もう流れてしまっただけかもしれないし、ネットに上げていないだけかもしれない。

ただ、この件で検索すると嫌韓な人たち、排外的な人たちが書いたものばかりがたくさんヒットするのだが、それらが情報源にしているのも、AFPやレコードチャイナ、VOA、ロシア系のアレなスプートニクなどで、国内メディアの報道が見当たらない。……それにしても抗議の自殺を遂げた人を嘲笑している様を見ると、人間のむごたらしさを改めて感じる。日本人の残虐な行為(戦時暴力や関東大震災の朝鮮人虐殺など)について「日本人がそんなことをするわけがない」という人が時々いるけれども、いやいやどうして、今まさにここに存在していますよと言いたくなる。そしてもちろんこれは他人事ではない。

で、本題に戻すと、国内メディアが報じた痕跡を見つけられないのだけれども、どうしてなのだろうか。少なくとも中国、イギリス、アメリカ(、ロシア?)のメディアでは報道があったみたいなのだが。

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2017/01/10

メモ

61.金言:「和解 こそ真の勝利 」=西川恵
毎日新聞 2012年04月27日 東京朝刊

「日英の和解に尽力 してきた元英兵、フィリップ・メイリンズ氏」に関するコラム。
出典:吉田祐起氏のサイト

山梨学院大学の小菅信子教授
Amazon.co.jp: 小菅 信子:作品一覧、著者略歴

近現代史・国際関係論・平和研究が専門分野です。戦時・災害時などの極限状況で、いかに人間性を保護してきたのか(しうるのか否か)、それがのちにどのような意味をもったのか(もつのか否か)について研究しています。
毎日新聞で何度か紹介されていた……というか、氏の著作に沿った記事が出ていたように思う。

毎日新聞に載ったコメント記事
安倍首相:真珠湾慰霊 和解を確認/わだかまり消えず - 毎日新聞(2016年12月29日 中部朝刊)

 安倍晋三首相の真珠湾慰霊と演説について、山梨学院大の小菅信子教授(近現代史)は「真珠湾訪問は、オバマ大統領の広島訪問よりインパクトや外交的意義は小さかったが、和解の重要性を日米間で相互確認できたのは良かった」と評価した。さらに「日中、日韓間ではなぜこのようなセレモニーができないのか、考えるきっかけにしたい。日米の和解を参考にして、知恵を絞ってアジアでの和解につなげる道を探っていくべきだ」と提言した。

「沖縄」矛盾指摘も
 評論家の小沢遼子さん(79)は「オバマ政権は末期。トランプ政権下で日米同盟がどう変質するか、日本政府は予測できているのだろうか」と話す。首相が「希望の同盟」と表現したことにも「米軍普天間飛行場を辺野古に移設する工事が再開され、沖縄県民が猛反発している」と指摘した。

 旧満州(現中国東北部)で旧ソ連兵から銃で撃たれた経験を持つ俳優、宝田明さん(82)は「大統領が広島を、首相が真珠湾をともに慰霊に訪れたことは非常に良いこと」と評価する一方で、「遺族の心から真にわだかまりが消えることはないはずだ」と話す。また「安倍首相は戦争をしないと公言しながら、安全保障関連法を強行採決して戦争ができる国に変えた。矛盾があると思う」と述べた。

 漫画家の小林よしのりさん(63)は「日米同盟は軍事同盟。『不戦の誓い』と言われても意味が分からない」と手厳しい。さらに「大戦で多くの民間人が犠牲になり、その後も米軍基地が集中する沖縄を、あれくらいの言葉で慰めるべきではないのか」と話した。【岸達也、山崎征克】

「日中、日韓間ではなぜこのようなセレモニーができないのか、考えるきっかけにしたい。」
例えば首相が南京を訪問しない理由を考えるとかの話だろうか。それとも南京訪問を可能にするための国内政治的土壌をどう作れるかというようなことだろうか。あるいは加害責任を不問にさせるための条件作りとか……?

小菅信子 꼬스게 노부꼬(@nobuko_kosuge)さん | Twitter

以下をリツイートしている。

スルメロックさんのツイート: "差別者を消せ https://t.co/GXsxd0MxvH"

ykoさんのツイート: "かのやなせたかし先生がおっしゃるにはそれぞれ各国の独自の正義があってそれを掲げて戦うと。 正義のすり合わせほど難しいものはないですな… https://t.co/zmIXUO0kDZ"

精神科医 Dr.Snowmanさんのツイート: "いろんなことが複雑になりすぎて誰もが生きづらい時代。時と場に応じて多くの生き方の引き出しを駆使する柔軟さが求められる。様々な立場のできるだけ多くの声に真摯に耳を傾けたい。自分は絶対正しいと確信し、同調者にしか耳を貸さず、意見の異なる他者を排除する姿勢では引き出しは増えていかない。"

なんとなく、毎日新聞が好きそうな「和解」……。
かなり距離があるはずなのに、どうしてか曾野綾子を思い出してしまう……。

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毎日新聞の戦争責任観についてのメモ

従軍慰安婦問題に関する毎日新聞の論調をしばらく見てきた印象だが、毎日新聞はアジア女性基金を支持していて、朴裕河氏にも親和的な立場を取っている。そして、この立場の基本には、被害者側からの許しが重要だという認識があるように思う。

和解は心の問題であり、それには「許す」という感情が重要だという考え方には一面の真理があるが、しかし、それを加害者側が言うのか…と思わざるを得ない。しかも我々の被害者に向けて。そしてまた、許しに焦点を当てた「和解」には再発防止への視点が抜けている。
こうした見方の底にあるのは、あの惨劇がもう過ぎたことであり、我々には無縁で再発するようなものではないという認識だろう。今の日本は平和国家であり、我々日本人が残虐な行為をするようになる心配などないのだという意識が、戦争責任へに対するこうした態度の一要素になっているのではないだろうか。

私が毎日新聞のこういう視点に気がついたのは、日英和解についての記事を何度か目にしたときだった。

参考:「日英兵士の和解」―ビルマ戦線―-日本財団会長 笹川陽平ブログ
掲載された毎日新聞記事写真をみると、「和解」の観点が日本と日本人の名誉回復にあるのが印象的である。

今回、当時読んだ記事を拾おうと検索してみたのだが、あまり見つからなかった。一つ、日米になってしまうが、三菱マテリアルによる米兵捕虜への謝罪に関する記事を拾っておく。

そこが聞きたい:日米の戦後和解 岡本行夫氏 - 毎日新聞(2015年12月9日 東京朝刊)

(前略)中国と韓国が高まるナショナリズムを背景に、世界に向け反日キャンペーンを行いました。(……中略……)民間の側でも7月に、企業が第二次大戦中に強制労働させられた米国の元捕虜に謝罪するといった出来事がありました。

−−三菱マテリアル(旧三菱鉱業)ですね。岡本さんは同社の社外取締役を務めていますが、どんな考えで捕虜問題に取り組んだのですか。

 元捕虜の存命者がわずかになっています。私も人間の尊厳に立ち返って謝罪すべきだと思っていました。米国政府は第二次大戦中に強制収容された日系アメリカ人に謝罪し、補償しました。大事なのは人間の心です。今回、元捕虜からも金銭的な要求はありません。
(……中略……)

 歴史和解には波及をどこまで考えるかという難しい問題があります。(……中略……)

 一方、他の企業が提訴されている「韓国人徴用工」の問題は性質が違います。65年の日韓請求権協定のもとで徴用工問題は明確に解決されましたし、被害の実態も異なります。韓国人は日本人と共に働かされていました。劣悪な職場に割り振られた韓国の人々は強制労働だったと主張しますが、米国の捕虜や中国人らに課された奴隷状態とは違います。

(……中略……)

中国や韓国は簡単には日本を許そうとしません。(後略)

この岡本氏の談話には、加害責任を曖昧にしてもらえる相手には寛容さを示す特徴が現れている。怒り、厳しく追及してくる被害者に対しては警戒感があらわになっている。そして、後に示すが、毎日新聞はこの岡本氏の論調に沿った社説を出して日米和解を説いている。

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そこが聞きたい:日米の戦後和解 岡本行夫氏 - 毎日新聞(2015年12月9日 東京朝刊)

政府の消極姿勢に変化 外交評論家・岡本行夫氏
 戦後70年の今年は歴史認識に注目が集まった年だった。日米開戦の12月8日をはさみ、現在、外務省の招きで米国の元捕虜が来日中だ。日本の和解への対応をどうみるか。元捕虜への民間謝罪に関わり、安倍晋三首相の戦後70年談話を検討する有識者会議の委員も務めた外交評論家、岡本行夫氏(70)に聞く。【聞き手・岸俊光、写真・竹内幹】

−−日米関係を中心に、この1年の日本の歴史問題についての取り組みをどう評価しますか。

 70年という期間は、感覚的にちょうど「史実」が「歴史」になって固定化し始める節目だったような気がします。それに中国と韓国が高まるナショナリズムを背景に、世界に向け反日キャンペーンを行いました。70年が国際的にも強く意識されて、日本も反応せざるを得なかったという面があります。日本が前に進むには、歴史にどう対応するかを考える必要がある。安倍首相はそうみて、戦後70年談話の参考にするために21世紀構想懇談会を設けました。懇談会はバランスのとれた歴史観を示したと思います。内閣として歴史問題に正面から取り組んだと言えるのではないでしょうか。民間の側でも7月に、企業が第二次大戦中に強制労働させられた米国の元捕虜に謝罪するといった出来事がありました。

−−三菱マテリアル(旧三菱鉱業)ですね。岡本さんは同社の社外取締役を務めていますが、どんな考えで捕虜問題に取り組んだのですか。

 元捕虜の存命者がわずかになっています。私も人間の尊厳に立ち返って謝罪すべきだと思っていました。米国政府は第二次大戦中に強制収容された日系アメリカ人=1=に謝罪し、補償しました。大事なのは人間の心です。今回、元捕虜からも金銭的な要求はありません。

−−2009年には、当時の藤崎一郎駐米大使が元捕虜団体の会合に出席して謝罪したことがあります。

 いいことでした。政府は長年、サンフランシスコ講和条約で決着済みとして民間が元捕虜と個別和解することには消極的でした。それが第2次安倍政権になって、民間がやるのは自由という空気が出てきた。これで大変やりやすくなりました。私自身の関わりは、元捕虜による損害賠償訴訟が米国内で拡大していた00年以降です。取締役会では全員が謝罪に賛成でした。それからなお時間を要しましたが、今年実現できました。講和条約は戦争の悲劇に、人間としてどう行動すべきなのかについては言及していません。企業が使用者、管理者としての責任を感じて謝ることは自然なことだと思います。

−−同社の中国人強制連行訴訟にも和解の動きがありますね。

 歴史和解には波及をどこまで考えるかという難しい問題があります。日本が戦地から連行した捕虜約3万6000人のうち、95%が米国、英国、オランダ、オーストラリアの人々でした。1971年の昭和天皇の訪欧の際にはオランダや英国で抗議運動が起きました。三菱マテリアルとしては、和解できるなら、米国以外の英国、オランダ、オーストラリアにも謝罪するという立場です。中国人の強制労働被害者にも真摯(しんし)に対応します。訴訟の中で話し合っています。

 一方、他の企業が提訴されている「韓国人徴用工」の問題は性質が違います。65年の日韓請求権協定のもとで徴用工問題は明確に解決されましたし、被害の実態も異なります。韓国人は日本人と共に働かされていました。劣悪な職場に割り振られた韓国の人々は強制労働だったと主張しますが、米国の捕虜や中国人らに課された奴隷状態とは違います。

−−ところで、途絶えていた日韓首脳会談が先月実現しました。米国の仲介をどう評価しますか。

 日韓で話し合っても進展は限られます。ドイツのメルケル首相はフランスとの和解を強調していますが、日本と韓国を仲介できるのは米国です。中国や韓国は簡単には日本を許そうとしません。フランスが域内諸国を説得したように、米国がアジア・太平洋国家の一員として仲介してくれるのはありがたいことです。

−−米大統領の被爆地訪問を日米が体験を語り継ぐ契機にという声があります。どう考えますか。

 来てもらいたいですね。日本の首相の真珠湾訪問も、米大統領の被爆地訪問も、不可能ではないと思います。米議会上下両院合同会議で4月に行われた安倍首相の演説=2=は、「真珠湾、バターン・コレヒドール、サンゴ海」という戦場をあげ、「悔悟」という言葉を用いて、米国で評価されました。三菱マテリアルの今回の謝罪に、米国は原爆投下を謝っていないという声もありました。しかし相互謝罪がなければ何もしないという考えは、個々の状況を無視していると思います。日本は、歴史を次の世代にきちんと伝えなければなりません。特に高校で日本の近現代史を必修科目とすべきでしょう。若い人と接してそう実感します。

聞いて一言
 三菱マテリアルが元捕虜への謝罪を決めた陰には、元捕虜との交流を続けてきたライター、徳留絹枝さん(64)の仲介があった。7月に米ロサンゼルスで謝罪が行われる前には捕虜問題に間接的に言及した安倍首相の米議会演説があり、このときワシントンで催された首相夫妻主催の夕食会には元捕虜の一人が招かれた。そして11月、この元捕虜はオバマ大統領にも面会した。アジアとの和解は残されているが、日米和解の重要な一コマと言えよう。

 ■ことば

1 日系人強制収容
 米西海岸などに住む日系アメリカ人約12万人が1942年の大統領令により10カ所ほどの強制収容所に送られた。88年、レーガン大統領が補償法に署名。米国政府は初めて日系アメリカ人に公式謝罪し、生存する元収容者全員にそれぞれ2万ドルの補償金を支払った。

2 安倍首相の米議会演説
 安倍首相は今年4月末、米議会上下両院合同会議で「戦後の日本は先の大戦に対する痛切な反省を胸に歩みを刻んだ」と演説した。米側から評価される一方、東アジアの歴史問題に踏み込まず、安全保障関連法を夏までに成立させると明言したことに批判もあった。

 ■人物略歴

おかもと・ゆきお
 1945年生まれ。外務省北米1課長などを経て退職。橋本龍太郎首相と小泉純一郎首相の補佐官として、それぞれ沖縄問題とイラク復興を担当。今年、21世紀構想懇談会の委員を務めた。


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社説:12・8 日米の傷癒やす努力を - 毎日新聞(2015年12月8日 02時34分(最終更新 12月8日 02時34分))
 日本の真珠湾攻撃による日米開戦から、きょうで74年がたった。強固な日米同盟を築くに至った両国だが、今も深い傷を残す人がいる。

 日本と米国はそれを癒やす努力を続けなければならない。

 第二次大戦中に旧日本軍の捕虜となった元米兵ら10人が、日本政府の招きで14日まで来日している。

 政府による元戦争捕虜の招待は、心の和解を通じて日米の相互理解の促進を図ることを目的に2010年から始まった。これまでに訪日した元捕虜や介護者はのべ97人になる。

 戦後70年を迎え、元捕虜の高齢化が進んでいる。なるべく多くの人を招待しようと、10月に続いて、今年2回目の実施となった。

 この間、政府が招いた元捕虜の中には旧日本軍が1942年にフィリピン・バターン半島で約100キロを歩かせ、多数の死者が出た「バターン死の行進」の生存者が含まれる。09年には、当時の藤崎一郎駐米大使がこの元捕虜の団体の会合に出席し謝罪した。英国やオランダの元捕虜を招く事業の対象外だった米国の元捕虜の招待が、翌年に実現した。

 安倍晋三首相は今年4月に米議会上下両院合同会議で行った演説で、「真珠湾、バターン・コレヒドール、サンゴ海」という戦場をあげ、先の戦争で命を落とした米国人に哀悼をささげた。その折、首相夫妻が主催した夕食会には元捕虜が招かれた。

 今年は元捕虜を使役した企業の側でも、和解に向けた前進があった。

 三菱マテリアルが7月、米ロサンゼルスで、前身の三菱鉱業が大戦中に行った強制労働について、米国の元捕虜と遺族に日本の大企業として初めて公式に謝罪したのである。

 日本企業を相手取り元捕虜が損害賠償を求める訴訟が米国に広がっていた00年ごろ、日本政府はサンフランシスコ講和条約で決着済みであり法的責任はない、との立場を譲らなかった。裁判で日本の主張が認められたことで政府は道義的責任に基づく謝罪に転じ、民間も謝罪しやすい環境が整ったとみられる。

 米国は歴史問題をめぐる国際的な論議の舞台になることが多い。他の企業の動きはないが、一連の和解の意味は小さくない。

 一方、アジアとの関係改善は残されている。三菱マテリアルは、中国人被害者らとの和解を訴訟の中で模索している。

 米国政府はこのところ慰安婦問題で停滞する日韓関係を取り持つ姿勢も示してきた。当事国間では困難な問題の打開に向け、アジア・太平洋国家である米国の影響力は大きい。

 日米にはなお、原爆投下の問題などが横たわる。双方の努力でわだかまりがとけ、大統領の被爆地訪問が実現するよう期待したい。

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報道に辟易:駐韓大使日本帰国

年末年始に見たメディアはNHKと毎日新聞だけだったのだが、大概うんざり。
NHKのニュースが政府広報で、外国の脅威を叫び排外主義を煽りつつ、日本の素晴らしさを称揚し国威発揚を図る方向が強まっていることは分かっていたが、見るニュースがそればかりだとさすがに食傷する。

今日見たNHKのニュース。

1.中国軍機に対して自衛隊機がスクランブル。国境への脅威が増えているという話。

2.少女像問題で韓国側を非難する日本政府→韓国内で少女像建立が相次いでいる状況(一部学生団体の仕業という印象)→深刻な影響(韓流ブームに沸いた新大久保に閑古鳥が鳴く・訪韓観光客の激減に韓国の観光業界からも不満の声)→在日韓国人による「韓国が悪い」という声→韓国側の努力を要請しつつさらに努力するという日本政府
※この印象操作には本当にうんざり。こんな報道ばかりで韓国嫌いが増えなければ日本人は聖人君子の集まりですよ。

3.世界的に注目されるミニロケット分野でJAXAが新型ロケット開発。

毎日新聞。

毎日新聞は外国人労働者問題への報道が比較的多く、論調もまだマシと思って取りつづけているのだが、なぜか戦争責任問題についてのスタンスはほとんど安倍内閣と変わらない。世界記憶遺産の問題や慰安婦問題では、中国や韓国側への批判が主で、外交問題としてしか認識がなく、我々自身への問の投げかけという視点も被害者の人権問題という視点も重視されない。今回の日本政府の恥ずかしい対応についても、韓国側の問題だとするばかりで日本側の愚かさに言及する記事はまだ見ていない。

NHKにせよ毎日新聞にせよ右翼メディアではないはずなので、今回の少女像の問題についてはこのような論調が少なくとも日本のメディアの主流なのだろう。そして、そもそもなぜ少女像が建てられるのか、そしてなぜ少女像に対して日本政府がこれほどまでに敏感に反応してしまうのか、さらに少女像の建立が本当に日韓合意に反しているのかについて、論じる報道がほとんどない状況においては、人々が、まるで韓国人が本当に日本人憎悪に凝り固まっているかのように思ってしまっても仕方ないのかもしれない。今日のNHKのニュースに出た在日韓国人のコメントを見てそう思った。だが後で考えると、彼はそうコメントせざるを得なかったのかもしれない。

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2016/12/27

変わらぬ女性蔑視

ミス日本候補者に農相が冗談連発 自身の発言も笑いに - 共同通信 47NEWS(2016/12/2 17:26)

 山本有二農相は2日、ミス日本の最終候補者9人の表敬訪問を受け、「(次期米大統領の)トランプさんを旦那さんにしていいと思う人は?」などと上機嫌で冗談を連発した。また「あんなとんでもない発言をしても、民主主義はああいう人が選ばれていく」と感想を述べた上で、「私も発言で失敗しちゃったんで」と、笑いを誘う一幕もあった。

 表敬訪問は農林水産省の大臣室で行われた。農相はトランプ氏に関し「3度目の結婚できれいな奥さんが隣にいる」などとし、「日本のこういう美しい人はひょっとしてみんな手を挙げるのではないかと」などと述べた。

初めて読んだとき、あまりに山本農相っぽいので嘘ニュースかと思ったのだが、共同通信配信だったので目をむいた。

「トランプさんを旦那さんにしていいと思う人は?」
などという愚劣で露骨な蔑視にさらされ続けて、この女性たちは何を感じただろうか。

そもそも、ミス日本候補者がなぜ農水大臣を表敬したのだろうか。ひょっとすると、女の品評会で見世物になる精神力を養うための試練だったりして(我ながら誰への嫌みなんだかわからんな…)。

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2016/12/15

天皇教が浸透している例

わりとどうでもいいんだけど。

はてなブックマーク - 「カジノ法、明治天皇も怒っている」 共産・大門氏:朝日新聞デジタル

ほとんどのコメントがこの発言に批判的だ。
「天皇制を否定している共産党が天皇の権威を利用するな」ということのようだが、この主張は一見もっともらしいように見えてもその実は感情的反発に過ぎない。

1.「ある前提を否定する人はその前提を用いた立論を行うべきではない」という主張は不当である。
 論敵を批判する時、相手の論拠や前提を利用してその立論の不当性を示すという方法はごく一般的に行われている。「あなたが支持する観念に基づいても、あなたの主張はおかしいですよね?」という指摘は、それ自体妥当なものである。「マルクスを否定する人がマルクスの権威を利用してマルクス主義を批判するのはおかしい」というと、「馬鹿じゃないの?」としか思えないでしょう?

2.論旨自体ではなく「誰が言ったか」で論旨の妥当性を判定する姿勢は正しくない。
カジノ法が明治時代の刑法の立法趣旨に反しているという指摘自体への批判ではない以上、この指摘は生き残っている。しかし「おまえが言うか」に意識を集中させると、ここで提起された問題、賭博は世を乱し経済を停滞させるという問題をどう考えるべきかという論点が忘れられてしまう。誰が賛成反対したかによらず、いったんカジノ法が成立すれば、それに伴って様々なことが起きる。何が起きるか、副作用にはどう対処するかこそが本質なのであって、その指摘を誰がしたかは副次的なことに過ぎない。
なお当然政治活動はカジノ法だけにとどまらないから共産党が(というか大門氏が、だけど)明治天皇を持ち出したことに他の政治的意図・効果がないとは言えないだろうが、今の共産党だしまあほとんど何の意味もないんじゃないか。

この報道記事自体、国会風景の一コマみたいな記事で天皇がどうとかいう話ですらなく、せいぜい自民や維新などが戦争責任や差別に関して「ジョーク」を飛ばしたみたいな位置づけに過ぎない。実際「明治天皇云々」はジョークに過ぎないわけで、天皇を相対化できているからこそ言えるネタだとも言え、それを「共産党が言うな」と思ってしまうこと自体が「あなたどれほど天皇制に染まっているの?」と問い返したいぐらいの話だ。結局、「共産党のくせに」云々という思いの根っこにあるのは、「あいつらは俺の大切なものを否定しているんだから、あいつらにはそれに触る資格などないんだ!」「おまえらは仲間じゃないんだから触るな!」ということである。

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まあ大門氏だって別に本気で明治天皇が怒ってるなんて思っているわけもなくて、言いたいことは「旧刑法の立法趣旨にも反している」というだけのことにすぎない。それを大門氏らしいというか、ちょっと毒を持たせた洒落を言ったら、早速そこ(だけ)に批判が集中するという(苦笑)。みんな、日頃から天皇制反対論者への怒りをためていたんだねえ。
論説の趣旨からすれば単なる修辞に過ぎない「明治天皇も怒っている」という部分だけに反発が集中していて、「天皇の政治利用」とか言っている人もいるくらいなのだから(天皇の政治利用ってそういう意味じゃないのにねえ…)、いかに我々の内面において天皇が大きな存在になっているかが分かる。まさに「神聖にして侵すべからず」になっているわけである。
……でも今の共産党は事実上天皇制を認めているってことには全然気づきもしないんだね。天皇を大事に思っている割にどの政治勢力が天皇をどうしようとしているかには関心がないのかねえ。

●追記

上では「明治天皇云々は大門氏のジョークにすぎない」と書いたが、ひょっとしたら大門氏が本気で思っているという可能性もないわけではない。何と言っても今の共産党だからなあ、明治天皇を日本近代化の立役者ぐらいに位置づけていても不思議ではない…。
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「カジノ法、明治天皇も怒っている」 共産・大門氏:朝日新聞デジタル(2016年12月14日22時53分)

■大門実紀史・共産党参院議員

 (刑法で)賭博が禁じられてきた理由の一つは、勤労の美風を損ない、経済活動を阻害することにあります。

 立法事実は江戸時代末期にさかのぼります。資料によれば、江戸後期から末期にかけて、世相は乱れ、町の辻々で昼間からばくちが行われ、博徒がはびこっていた。明治維新になって、「新しい日本の建設、経済発展のためには、まず賭博撲滅、風俗矯正だ」ということになり、明治天皇のもとで定められた刑法において厳しく賭博を禁止することになったのです。こういう最初の立法時の趣旨を知った上で、自民党の皆さんは「カジノが経済の目玉」などとのんきなことを言っているのでしょうか。明治天皇も雲の上で怒っています。「共産党、頑張れ」と言っているのではないでしょうか。(カジノ解禁法案を可決した14日の参院本会議の反対討論で)

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2016/12/10

自慢するときにも恨みを言わずにいられない人。

安倍さんって、本当に、何か正邪二元論というか、悪意を持って自分を攻撃し続ける邪悪な存在をひしひしと感じているというか、自分の外の世界に対して何か根深い恨みを抱き続けているんだなあ。

安倍首相「子供の貧困は大きく改善した」→ネットから疑問の声「使ったデータは?」(The Huffington Post | 執筆者: Chitose Wada
投稿日: 2016年12月09日 12時30分 JST 更新: 2016年12月09日 12時30分 JST)

随分、私も国会において、安倍政権で相対的貧困率が悪くなっているのではないか、とこういう批判を受けてきたわけですが、安倍政権の間はまだどうなっているのかという指標がこれ、出なかったんですね。出ないにも関わらず、どういうわけか安倍政権は批判をされていた状況が続いていたわけですが、幸い私たちが進めている政策によって改善した。
特に、子供の相対的貧困率が、大きく改善をしました。……中略……安倍政権で下がった。これは拍手をする場所ですから、さっそく世耕経済産業大臣が大きく拍手をしていただきました。
そりゃ世耕さんだし「大きく拍手」するよなあ(苦笑)。

ところで安倍氏のこの発言、事務的に要約すると
「私たちが進めている政策によって相対的貧困率が改善した。」
というだけのことなんだけど、彼が本当に言いたいことを要約すると、
「安倍政権は結果指標もないのに批判されてきたが、実は状況は改善していた。ざまあみろ。」
ということになる。

厚顔無恥のように見えながらも意外に心が弱くて、実はいろいろ批判が心に応えているのかもしれないなあとか、他人からの指摘や批判を人格攻撃や尊厳の侵害のように感じてしまう人なのかもなあとか、深層心理に絶えず不安を抱えているので一見自分を包容してくれるように見える人々や言説には無防備に飛びついてしまう傾向があるのかなあとか、思わず想像してしまう。
かわいそうな人ではあるなあと思いつつも、一番かわいそうなのは、この人から敵認定というか邪悪な存在側と認定されてしまった側の人間である。何と言っても、彼は国家の最高権力者なのだから。

閑話休題。

記事の指摘は、
1.「子供の相対的貧困率が低下している」とする安倍氏の根拠は、全国消費実態調査。
2.全国消費実態調査に基づく貧困指標は適切ではない恐れがある。
3.資料としてはまだ国民生活基礎調査の方がましで、政府やOECDが利用する(というか政府がOECDに報告している)データもこっち。
4.通例を破って今回わざわざ消費実態調査の結果を出したのは欺瞞ではないか。
という感じ。
全国消費実態調査と国民生活基礎調査との貧困率のズレの話は勉強になるので一読の価値あり。

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貧困率の話は技術的にいろいろ簡単ではなく、日本の格差が国際的に見てどうなのか、時間的に拡大縮小どっちの傾向なのかにも議論がある。ただ、報道などや人々の実感としては拡大傾向にあるとする向きが多いようだし、いろいろな指標を総合して見ても、大まかにはそういう傾向だとは言えるようだ。

近頃見た貧困率関係の話題

トランプ旋風 日本でも? 格差貧困実態は|NHK NEWS WEB(11月29日 22時45分)
上記のhuffingtonpostの記事に関連したNHKの記事。上記の二つの統計の違いについて書いている。

まずジニ係数について:全国消費実態調査と所得再分配調査の比較。
●平成26(2014)年の全国消費実態調査、2人以上の世帯のみのジニ係数
・年間収入のジニ係数:
  平成21(2009)年に比べて格差拡大。昭和59(1984)年以降、一貫して拡大。
・等価可処分所得のジニ係数:
  平成21(2009)年に比べて格差縮小。

●平成26(2014)年の所得再分配調査(平成26(2014)年)
再分配前のジニ係数:調査開始以降最も高い。昭和55(1980)年頃から増加傾向?
再分配後のジニ係数:平成16(2004)年をピークに縮小傾向。長期的には横ばい。

次に相対的貧困率について:全国消費実態調査と国民生活基礎調査との比較。

●平成26(2014)年の全国消費実態調査
平成21(2009)年に比べ0.2ポイント低下。データが捕捉できる平成11(1999)年以降では初めて。

●平成24(2012)年の国民生活基礎調査
平成21(2009)年に比べ0.1ポイント上昇。調査開始の昭和60(1985)年以降最悪。

国民生活基礎調査では確かにまだ安倍政権下の「結果」は出ていないので分からない。

記事では他に、「中間層の所得は減少の一途」として等価可処分所得の中央値が減少し続けていると報じている。

みずほ総合研究所の堀江奈保子上席主任研究員のコメント
1.アベノミクスによって格差や貧困が一段と拡大したという批判はあたらない
2.富の集中度が高いアメリカと日本では社会状況が異なっている
3.格差や貧困は拡大していないが、一部の例外を除いて、全所得階層がシフトダウンしている可能性がある
4.中間層が貧困層に転落するリスクも高まっている

とのこと。
「アベノミクス」が貧困を拡大したかどうかは別にして、貧困化や不平等化が緩やかに進んでいるとはおおよそ言えるのではないか。

おまけ

駐日デンマーク大使館さんのツイート: "デンマークは貧困率が最も低い国です! 母子家庭など一人親家庭の貧困率は世界最低です。 https://t.co/9bJ81PYH5A"(16:50 - 2016年11月30日)
これはちょっと牽強付会かなあとは思うけれども。例えば成人の単身世帯や二人世帯の貧困率で見れば日本はそれほど高くない。

子どもの貧困 「昔のほうが大変だった」への対処法(湯浅誠) - 個人 - Yahoo!ニュース(12/6(火) 7:16)
反対者をどうやって巻き込んでいくか、という運動論みたいなもの。
よく言われていることではあるし、包摂的な立場からすればその通りなのだけど、反対者の怒りや不満や恨みを抱き留めてあげればその人が善良な協力者になるとは限らないわけで。人を変えることはできないが、反対行動を取るのを止めるぐらいならしてもらえるかも、というような話かなあと。赤旗とかを読むとこの種の辛抱強い働きかけの話はよく出てくる。

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