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2010/05/24

いろいろ感想文

講師の「細切れ雇用」で、大学は教育できるのか?:日経ビジネスオンライン

高学歴ワーキングプア」なる言葉も人口に膾炙しつつある昨今ですが、研究職志望者を見殺しにするような国には未来はないと言いたいんだけど、あまりテーマを深められなかった…、というコラム。

大学院に進学した人たちが、ことごとく(と言ってもいいでしょう、新卒就職率が90%とか80%とかで「氷河期」と叫ばれるぐらいですから)、悲惨な末路をたどっているという事実は、もう20年ほども続いているわけで、取り上げられるのは大変いいことなのですが、正直「いまさら」感が漂います。

本コラムで紹介されている調査ですが、いずれもこの筋では有名な話。

・博士課程修了者が教育機関や企業などへ就職した割合:64.3%。博士を出た10人に4人は職がない。
 さらに内訳では「教員」25.0%、「科学研究者」は24.7%。文系は事実上大学に残るほかに求人はないので、恐ろしいことになっているわけです。

で、大学非常勤講師、すなわちバイトで食いつなぐわけですが、その平均像は、

・45.3歳で年収は306万円、44%の人が年収250万円未満

という始末。

経済学では、教育=将来所得増加への投資という発想で考えるわけですが、それに従うなら、学歴が高いほど所得が高くないといけないわけです。要するに、日本では、大学院進学はまったく経済合理性に反している、愚かな自爆行為にしかなっていないのですね。
言ってみれば、日本における「科学技術」とか「学術研究」ってのは、芸大や音大進学、あるいは芸能界やプロスポーツ界を目指す人たちと同じような、趣味に生きる人が物好きでやること、という扱いになってるわけです。

とかいう愚痴は止めにしますが、どう考えても今後状況が改善されるとは思えません。これからますます絶望的になる日本の高等教育環境、出られる人はなるべく早く国外に出た方がいいと思います。

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若い人が本気で資産形成を図らなければならない理由 :投資十八番 

で、いろいろ絶望的なニッポンでは、もう自衛するしかないという話。

このコラムは単純で、古くから言われている
「昔は老人1人を若者5人とかで支えてたけど、将来は1.5人で支えないといけない」=負担が大変!
という話に、
「日本の金融資産の6割が60歳以上の高齢者が握っている」=若者は苦しい!
という話をくっつけたものです。

特に、50歳以上で見ると、日本の金融資産の80%以上を占め、20代の若者はわずか0.3%しか持っていないのだそう。
で、この構図だと、もう年金や社会保障が破綻するのは確実なので、若者は自助努力するしかない!という話。

「国があてにならない」というのは現在70歳以上の人には常識だと思いますし、私も「自分を守るのは自分だけ」という指摘は大いに賛成しますが、金融資産の多くを高齢者が占めているのは、悪くはないんじゃないかなあと思います。
人のライフサイクルを資産の蓄積期間と取り崩し期間で分けると、高齢期は取り崩し期間に当たるので、彼らが蓄えを持っているのはむしろ当たり前だし、そうでないと、生活苦に陥る老人が多数発生するのでまずいわけです。
若者世代の負担を減らすために社会保障や年金を薄くするなら、当然、老年期のために自ら蓄える必要が増えますから、高齢者が資産の多くを持つという構図はそれと整合的です。ですから、資産保有割合の話は、このストーリーにはいまいちじゃないかな、と。

とはいえ、長期的に起きている人口構造の変化と経済成長率の鈍化傾向の波をかぶって、現在の若者世代から少なくとも今世紀前半の子ども世代が貧乏くじを引くことになっているのは確かではあります。昭和元禄の夢の後始末をする世代として、「国はあてにならない」を身を以て体験することになるでしょう。

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中国は大学も”生産能力過剰”に:日経ビジネスオンライン

というわけで、大学が絶望的なのは日本だけじゃないよ!という話。

中国をはじめとする新興国では高等教育機関はウハウハなのかと思っていたら、どうやらそうでもないらしいです。

そういえば、以前から、中国では大卒者の就職難が社会問題となっていたのでした。
なんでも暴動が起きたぐらい。

で、事情はよくわかりませんが、中国でも大学志望者が減っているのだそうです、しかも急速に。

記事では、少子化とか就職難の影響とかが示唆されていますが、もうちょっと複雑かもしれません。どうしてそう思うかというと、

1.少子化は長期的構造変化なので短期的に大きな変化の要因とはなりにくい。
 人口ピラミッドは、大体どこの国でもでこぼこなので、年によって変動が変わって、ある年は18歳人口が減ったけど次の年は増えた、みたいなことは割とあります。でもこれは予測可能なので取り立てて騒ぐ必要はない。

2.大卒者の就職難が進学率を下げるということは十分あり得ますが、大学進学動機が就職のみに特化しているかは疑問。またそれなら今までがむしろバブル的な進学熱ブームだったのではないか。長期的には所得の成長とともに進学率は向上傾向を持つだろうから、今回の現象が中国の大学にとって深刻な危機だとは言い切れないのでは。

というわけで、進学希望者が前年比20%減とかいう短期的かつ急激な変動については、いろいろ事情を考えられそうで、表面的にどうこう言えないなあという気がするわけです。関係者が持っている危機感にしても、進学バブルを当て込んで不良資産を抱え込んだ人たちの後処理と生き残りゲームを表現しているだけかもしれないし。
いずれにせよ、何で進学希望者が減ったのか、今後分析記事が出るといいのですが。

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ルポ:“弱者”として生きるアメリカ:日経ビジネスオンライン
底辺高校の卒業生が見た「オバマ」への希望:日経ビジネスオンライン

以上3本のコラムを読んできて、個人の人生としても、また日本社会全体としても、どうも未来が見えないわけですが、この連載記事は、そうした絶望感の中でも何とか生きようとしている人の話。

登場する人たちも苦しい生活をしていますが、何より著者の林さん自体が、出口の見えないトンネルの中を進み続けているようで、読み進めるうちに、だんだん彼自身の人生の中に巻き込まれていくような気持ちがします。

何より、ここに出てくる人たち、彼らはアメリカの貧困層ですが、それが外国の人ごとと思えない。実際に、アルバイトでわずかな時給を稼ぎながら、家族の生計も支えている若い人たちを知っていますし。勉強したいとかしたくないとか以前に、そうした意識を持つことすらおぼつかないような環境にいる人たちがおり、そして彼らに対して何も出来ない自分がいる…という構図は、あまりに人ごとと思えず、林さんの、時々青臭い悩みも、素直に受け止めてしまえるわけです。

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