意思を表示することが大切だなあと思ったという話。
母親60人が“オッパイ”デモ 授乳権利を訴え、一斉に… カナダ - MSN産経ニュース
カナダのモントリオールにあるショッピングモールで19日、乳児を持つ母親約60人が、子どもたちに一斉に授乳するデモ集会を行った。同ショッピングモール内にある衣料品店が今月初め、ある母親に店内で母乳を与えないように求めたという。これに対し、母親らは、授乳する権利があることを訴えるため、公共の場での一斉授乳のデモに踏み切ったという。(2011.1.20 09:23)
店側にも理由があるだろう事を承知の上で、それなりに配慮されている場所・形態なら、授乳していいのは当然だ、という立場から、この要求を支持します。
人前に肌をさらすな、とか特に女性に、胸を露出するなとかいう文脈で、人前での授乳を抑制しようという考え方には反対します。育児に伴う諸々の面倒くさいことを、公共の場で共有し、許し合う世の中が望ましいと思っているので。
で、今回興味深かったのは、意思表示の仕方が「デモ」という形を取っていること。
同じように抗議の意志を示すにしても、日本だったら、たとえば、こんな感じになったんじゃないか?
1.Twitter で「○○店で授乳しようとしたら追い出された。大泣きする子どもを抱えて放浪して途方に暮れた」とかが流れ、話題に。
2.2ちゃんねるでスレが立つ。教えてGooとかで「どう思いますか?」という質問が出て議論に。
3.いろいろな店の対応例が挙げられてくる。真偽不明のエピソードも続出。店に考えを質す人が登場。店側の認識が流布される。木で鼻をくくったような対応がさらに話題に。
4.抗議メールや抗議電話が始まる。店名でネット検索すると授乳拒否関連が上位に並ぶ有様に。→翌日、店長または社長名で「お詫び」がサイト掲載、店頭掲示。拒否された人にお詫び訪問。
5.一連のいきさつがマスコミで報道される。ワイドショーでちょっと触れられる。
まあいいたいのは、デモにはならないだろうなあということだけなんですが。
海外ニュースでは、ときどきこんな感じのデモや抗議行動が報道されます。集団行動だから、「行動しよう」という話が誰かから出されて、その意志が広がった結果なんだろうと思います。日本でも報道されないデモはたくさんあるし(っというか報道されない方が普通じゃないかな)、海外でも、なんでもデモで抗議するというわけじゃないでしょうけれど、それでも何となく、日本でこんなことがこんなふうなデモになるかなあって気がします。
授乳拒否って、何となくすごく個人的な(というかプライベートな)出来事のように思えて、日常の中でぼやくぐらいで解消するしかないような気がしていたけれど、少なくともカナダの人たちは、こんなふうに、「みんなでイヤだ、おかしいって言おうよ。自分たちの気持ちを示そうよ」って行動するだけの可能性を持った出来事なんだなあと思った次第です。そしてそれを実行できるだけの人的つながりを持っているんだなあ、とも。
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12.4 黒い彗星★国際連帯声明 - 12.4 黒い彗星★救援会
私たち「12.4黒い彗星★救援会」は、2010年12月4日、渋谷駅近くの路上で起こった事件について、世界中の差別と闘う人々に訴えます。日本人レイシストによる民族差別デモに単身抗議した「黒い彗星」こと崔檀悦(チェ・ダンヨル)は、レイシストたちに集団暴行を受け、全治3週間の大けがを負いました。にもかかわらず、警察は、暴行の加害者を放免し、暴行の被害者であるかれを「暴行容疑」で逮捕したのです。
(中略)
かれは暴力をふるってなどいません。むしろレイシストたちが一斉にかれに襲いかかり、集団で殴る蹴るの暴行を加えたのです。多くの警察官がそれを見ていました。にもかかわらず、渋谷署はかれを逮捕し、指紋を採取し、必要な医療措置を受けさせませんでした。その上、暴行加害者を充分に調べることなく帰宅させました。
幸い、かれは約50時間の留置のあと釈放されました。しかし、今回の事件は、日本社会と日本行政の腐敗・堕落を明らかにしました。現在の日本では、人間を不当に貶める差別表現が容認され、さらには、差別する者たちのおぞましい集団的暴力が容認されてしまっているのです。(後略)
この文面に従うと、穏当な意思表示をしただけの人が暴行されたのに、被害者が逮捕され、加害者は解放されたということです。
1.これはとんでもないことだ。警察は間違っているし、そんな事件が起きたことは許せないことだ。
2.警察が簡単に間違うはずはないし、何か事情があったんじゃないか。普通、簡単に暴行したりしないから、暴行に至る経緯もあったんじゃないか。だからこの文面は一面的じゃないか。
善良なる市民としては、上記(2)を支持したいのですが、個人的な経験からも、警察ってこういう関係では結構恣意的で政治的かつ官僚的だという印象を持っているし、「人は簡単には暴行しない」というのも幻想だと思っているので(2)は却下。
差別という面では、私たちの社会は…そして私自身も…大きな問題を抱えていると思うし、それは若い世代になっても変わらず根深い…つまり私たちは世代を超えて変わらず閉鎖的で偏見が強く、独善的で無知で想像力を欠き、他者の存在を知ろうともしない…と思っているので、この事件が起きたことは悔しいことだし、恥ずかしく、また「救援会」を支持します。
日々、周囲へ同調し、周りの人の感情を損ねないように行動してしまう自分としては、こういうふうに正当な方法で意思表示し、周りを変えていこうとしている人の存在はまぶしく、うらやましく、そして道しるべになっています。自由な意思表示ができ、おおらかに議論し、存在を認め合う社会を作るために、連帯の意を表したいと思います。
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