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2011/02/26

思いつきメモ

会話が下手な人に共通して欠落してる能力 - Not Found

「周りをイラッとさせる会話術」って項目が列挙されています。

・人の話を全く聞かずに、自分が言いたいことばかり話す
・まず否定から入る
・面白い話をするとき、途中で自分で笑いだしてこっちには何の事だかわからない
・相手の話にいちいち対抗したがる
・「それ“で”いいよ」「“けっこう”好き」など、すっきりしない言い回しを多用する
・他人に気を遣わせる自虐ネタが多い
・どんな話題に対しても批評や批判をしたがる
・「ここだけの話」を多用する
・詮索好きで、質問責めにしてくる
・いきなり主語を言わずに話し始める
・具体的な説明ができない
・「ねえねえ何か面白いことない?」を連発する
・自分から質問してきておいて、答えを全然聞いてない
・いない人の悪口や噂ばかり言う
・大声で相手を圧倒したがる
・すぐに「わかるわかる」と言う
・思わせぶりに話を振っておいて、答えを言わない
・いちいち細かい反論や、突っ込みを入れる
・少し前の話題を全然聞いていない
・擬音がやたら多い
・相槌が全くない
・「仕事が忙しい」「時間がない」「寝てない」としか言わない
・「なんでもいい」と言いながら、全然なんでもよくない
・すぐ説教をしたがる
・話がやたらと長い。オチがない
・話が盛り上がっているのに、すぐまとめようとする

なかなか面白いんだけど、こういうのは端的に間違っている可能性が高いんですね。
ネタの思いつき程度ならマシなんだけど、学術研究レベルでもありがちなミスなので、思いついたことをメモ。

簡単に言うと、

1.調査者の無意識のフレーム(認知枠組み)と調査意図のバイアスが反映されてしまう
2.観察不能な根本要因ではなく、表面的な現象、徴候、症状を本質と見誤ってしまう

の2点ってことなんですが。

今回の例で言うと、ありがちな調査方法としては、
1.人と話をしていて「イラっとさせられる話し方」について回答を収集
2.回答群に共通する特徴を項目にまとめる
3.項目について「イラっとさせられると思うか」アンケートする
4.「イラっとさせられる」という回答が多い項目をまとめる
ということになるでしょう。

このプロセスで、まず調査者の認知バイアスがかかりやすいのが1と2の部分です。この調査自体が「イラっとする」という心理現象が、相手の話し方という表現形式の限られた部分に強く依存するということを暗黙の前提にしていることが一つ、そして、この回答をまとめる段階で、調査者が「この話し方はイラっとさせられるよね」と共感できる回答を無意識に選び出してしまう傾向があるということが一つです。回答収集段階で、回答者に特定方向の回答を要請するような方向付けをしてしまうこともよくあることです。

次に、表面的な現象を本質と見誤るという点ですが、これは上記3と4の部分によく現れます。報告書のまとめとかでありがちなのが、アンケートのまとめをする際に、
「以上のポイントに留意して話し方を改善すれば、人当たりのいい会話ができると考えられる」
みたいなことを書いちゃうことです。
これは一見正しいみたいに見えますが、しかし、そもそも「なぜ人はイラっとするのか」について、ろくな検討をしていない以上、こういう対策めいた提言は全くできません。これは表面的な症状を見ているだけで、本当の原因は別にあるかもしれないからです。
たとえば、風邪を引いている人が熱を出してのどが痛くて鼻水がひどいとします。そのときに、熱冷ましと痛み止めと鼻炎止めを処方すれば一見普通に見えますが、実は風邪は治っていません。風邪という原因があって症状が出ているので、症状だけを抑えるのは筋違いだからです。これと同様に、「イラっとさせる」話し方についても、そういう話し方を誘発する心的傾向や性格、考え方やそのときの気分・感情、対人関係などがあって、実はそちらが本質的なのかもしれません。
また、「話し方」という要素は、全く違う原因にたまたま付随しているだけで、本当は全く無関係かもしれません。たとえば、実は「イラっとさせられる」のは、聞く側のその場の状況や気分、あるいは話の内容が聞く側にとって耳障りの悪いものであることなどが大きいかもしれません。それが話している人への印象を悪くし、些細な表現に敏感になってしまうのかもしれません。

というわけで、本当に「イラっとさせられる話し方」について調べようと思ったら、実はコミュニケーションと感情の関係全体について心理モデルを定義して、「イラっとさせられる」場面以外も調べなければならないことが分かります。

とはいえ、上で挙げられている「イラっとさせられる」項目は、確かに当たっているなと思わされることが多いと思います。だから正しいのではないか、説得力があると思うかもしれません。
しかし実はその感覚こそが認知バイアスの表れなのです。イラっとさせられたときのことは覚えていますが、特に感情が動かなかったときのことは覚えていませんから、たとえば「まず否定から入る」話し方が「イラっとさせなかった」割合との比較がわかっていません。また、このように項目立てされていることで「まず否定から入る」という面に意識が焦点化され、それが自分の該当する記憶を刺激するということもあります。この場合、ここで焦点化されなかったことは、それが重要であっても現れませんから、「当たっていないな」という評価にはつながりません。さらに、項目が多数列挙されてしまうことでその項目間の優劣のみに意識が向いてしまい、「そもそも、話し方よりも重要な要素があるのではないか」という根本的な疑問が出づらくなるという問題もあります。

以上をまとめると、

1.「人をイラっとさせる話し方」みたいな、一見調査に見えるものには、落とし穴がある。
2.それは直感的に分かりやすい表面的な現象を問題の本質と思ってしまう間違いである。
3.出されている処方箋やライフハックっぽいものは一見もっともらしいけど、それも表面的にすぎず、根本的な解決とは違っているかもしれない
4.結局、本質的な原因は何なのだろうという姿勢で、内容を吟味することが大切

ということになります。

「先生の言うことを信じちゃいけないよ」って先生が言ってるみたいなオチになりましたが、まあ、世の中そんなものです。

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