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2013/09/10

日本の戦争犯罪への認識が急速に後退中

1980年代頃までは一般には、日本国民もまた軍部・政府の誤った軍国主義に振り回された被害者であり、悪いのは指導者であったという観点からの反戦・平和指向が大きかったと思う。例えば銃後の耐乏生活、思想統制、兵員の犠牲、空襲や中国朝鮮の開拓団、沖縄などの苦難など、国民にとって戦争がいかにひどいものかという視点が重点にあったような記憶がある。
それが教科書問題や靖国参拝、日の丸君が代の強調などから他国民への加害という視点が改めて認識されるようになり、単に軍部に巻き込まれたというだけでなく自ら積極的に加害と残虐行為を支持・荷担してきた我々という観点を含めて、戦争認識が徐々に深化してきたというのが私のこの30年ほどの認識だ。

日本国民が単なる被害者にとどまらないというのは、そもそも社会では人々が複雑に関連し合っているという観点からすれば当たり前のことであり、我々は被害者であると同時に加害者でもある。この両面がどのように絡み合っているのかを丹念に検証することが、この巨大かつ凄惨な過ちを次に生かせる唯一の道であると思う。その点で、これまでの歴史認識の深化は、我々日本人にとって前進であった。

この夏、島根県などで「はだしのゲン」が事実上閲覧禁止状態に置かれたことが問題になったが、その措置を要求したのは「一市民」であり、彼は日本の加害の歴史が描写されていることを問題視して教育委員会にクレームを付けていたのであった。そして教育委員会は、描写の過度な残虐さや女性蔑視的な表現などを理由として閲覧禁止措置を執った。
数年前には「自虐史観」を問題視した日本史教科書が作られ、一部の自治体で採択されるということが起こった。また、これもこの夏のことだが、実教出版の日本史教科書の日の丸君が代問題の取り扱いで、東京、兵庫、埼玉、大阪などの県教委が高校に採択させないように圧力を掛けるという事件が起こっている。
そして今回、大阪の平和博物館で加害を見せないようにする計画が進んでいるらしい。

これは歴史認識の後退、もっと言うと終戦直後から残っている「日本は悪くなかった」論への接近である。記事では「保守系の団体や議員が「自虐的」と指摘」しているのだそうだ。また、今回の展示変更案は、「橋下徹大阪市長が提唱する「近現代史学習館」との役割分担を意識」したものでもあるそうだ。
橋下氏は、一見中立的な表現を使いながら、人権博物館「リバティおおさか」の展示にも圧力を掛けて補助金を打ち切った。そのときの理由は「展示内容が差別や人権に特化されていて、子どもが夢や希望を抱けるようなものではない」というものであった。

今回のピースおおさかでも、リニューアルの方針は「子どもに難解」「身近な地域で起きた空襲のほうが戦争と平和を自分の問題として考えやすい」ということだそうで、具体的には南京事件の展示がなくなるのだそうだ。

歴史認識が後退し「日本は悪くなかった」論が支配的になっていくプロセスは、このようにして、一見もっともらしい、みんなのためを思ったかのような、オブラートに包んだような理由で進められていく。

ナチスのユダヤ人強制連行をドイツ国民が納得したのも、「それがユダヤ人のためでもある」という理由があったのだし、戦前の日本人も、アジア解放とアジア人の教育と発展のためと信じて、あの差別と抑圧、強権支配を正当化し、アジア人と仲良く共生できると思っていたのだった。

朝日新聞デジタル:旧日本軍の行為展示、大幅縮小案 大阪の平和博物館 - 社会

2013年9月10日8時19分  戦後70年の2015年を目標に全面的なリニューアルを進める平和博物館「大阪国際平和センター」(ピースおおさか、大阪市中央区)の基本設計案(中間報告)がわかった。第2次世界大戦中の旧日本軍の行為に関する展示を大幅に縮小するとしており、改めて議論を呼びそうだ。

 ピースおおさかの現行の展示は、展示室A「大阪空襲と人々の生活」▽展示室B「15年戦争」(満州事変~日中戦争~太平洋戦争)▽展示室C「平和の希求」で構成。Bは南京大虐殺や朝鮮人強制連行を展示し、保守系の団体や議員が「自虐的」と指摘していた。

 朝日新聞が入手した基本設計案によると、戦時下の大阪の暮らし▽大阪大空襲の被災▽復興――の展示を増やす一方、日中戦争や太平洋戦争での旧日本軍の行為の展示を縮小する。一方で、大阪が戦前「軍都」と呼ばれたことや科学技術の発展と軍事のつながりを新たに展示。「15年戦争」の表記は使わず、日清戦争から太平洋戦争に至る半世紀を「世界中が戦争をしていた時代」とし、「日本の戦争」を世界的な位置づけの中で展示するという。

 現行展示の見直し理由として、運営法人は「子どもに難解」「身近な地域で起きた空襲のほうが戦争と平和を自分の問題として考えやすい」などと説明。基本設計案では、どの展示をなくすかは明示されていないが、岡田重信館長は取材に「南京の展示がなくなる可能性が高い」としている。

 ピースおおさかの展示更新は1991年の開館以来初めてで、総工費は約2億5千万円。基本設計案は橋爪紳也・大阪府立大21世紀科学研究機構特別教授(建築史)ら監修委員4人がまとめ、出資する大阪府・市の議会に近く報告する。監修委員の一人、もず唱平さん(75)は「中国やアジア・太平洋地域、植民地下の朝鮮・台湾の人々に多大の危害を与えたことを忘れない、とする設置理念は変えない」と話している。(武田肇)

     ◇

 〈日本の戦争責任資料センター研究事務局長の林博史・関東学院大教授の話〉 ピースおおさかは開館以来、日本による戦争加害の側面を本格展示する数少ない公的博物館として知られてきた。今回の設計案に沿って展示が大幅に変更されてしまうと、海外に「日本は加害の歴史に向き合っていない」と受け止められる可能性がある。設計案は限られたメンバーで拙速にまとめたという印象がぬぐえない。議論を公開し、慎重に練り直すべきだ。

     ◇

 〈国立歴史民俗博物館などの展示に関わった原田敬一・佛教大教授の話〉 大阪大空襲が展示の中心になったとしても、工夫次第では先の戦争で日本に被害と加害の両面があったと来館者に考えてもらうことは可能だ。ただ、日本が戦争をした責任と反省をあやふやにしてしまっては、「そういう時代だったから仕方ない」というメッセージになりかねない。どんな歴史認識で戦争を伝えるのか。今後、展示方法を詰めていく中で最も重要になる。

以前から問題視されていることを全く知らなかった。
朝日新聞デジタル:「ピースおおさか」展示変更を考える 29日にシンポ - 大阪 - 地域

2013年6月24日
 大阪市中央区の平和博物館、大阪国際平和センター(ピースおおさか)が「加害展示」を大幅に縮小する計画について、「ピースおおさかのリニューアルに府民・市民の声を!」と題したシンポジウムが29日午後1時半から大阪市港区弁天2丁目の港区民センターホールで開かれる。

 主催するのは、「大阪大空襲の体験を語る会」「南京大虐殺60カ年大阪実行委員会」など関西に拠点をおく約30の市民団体でつくる実行委員会。

 1991年に大阪府・市の出資で開館したピースおおさかは、先の戦争の「被害」と「加害」の両面を展示する全国でも数少ない公立博物館として知られてきた。戦後70年の2015年完成目標の展示リニューアル構想によると、橋下徹大阪市長が提唱する「近現代史学習館」との役割分担を意識し、加害展示の柱だった「15年戦争」(満州事変~日中戦争~太平洋戦争)は大幅縮小となる。市民団体からは「設置理念をゆがめる展示になりかねない」と懸念が出ている。

 シンポでは「15年戦争研究会」の上杉聡さんの基調講演の後、歴史学・教育学・平和学などの専門家や大阪大空襲の被災者らが、構想について意見を交える。府・市の担当者にも出席を求めている。参加費500円。(武田肇)

朝日新聞デジタル:消える「加害展示」(考 民主主義はいま) - 政治

2013年6月7日8時14分
 【武田肇】大阪府・市が出資する博物館「大阪国際平和センター」(大阪市中央区、ピースおおさか)が展示の一新を決めた。戦時下の日本による「加害」に関わる展示はなくなるという。何があったのか。

ということで、ウェブ上で全文は読めないが、この記事で次のように計画が示されている。
ピースおおさかの展示リニューアル計画
展示室A
 現在「大阪空襲と人々の生活」焼夷弾の模型、焼け跡のジオラマ、空襲の写真・映像など
 2015年「大阪空襲」へ変更
展示室B
 現在「15年戦争」中国との戦争、日本の植民地、原爆、沖縄戦などのパネル・映像
 2015年全部か大半をなくす
展示室C
 現在「平和の希求」戦後の核兵器、地域紛争、平和への取り組みなどのパネル・映像
 2015年「焦土からの復興 平和の創造」一部を残す?

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