「チンパンジー」を削除したら問題解決?差別をまき散らす産経新聞とマイクロソフト
以前、「低劣さに反吐が出る産経新聞と上田和男(こうだ・かずお)氏」として批判した産経新聞のコラム。
産経新聞が、見出しだけ修正していました。
具体的に言うと、「チンパンジー」という語を見出しから削除しました。それ以外は一切修正していないようです。
【国際ビジネスマンの日本千思万考】近くて遠い「反日・中韓」より、遠くて近い「親日・インド」を大事にすべし…パール判事の「知性」を思い出そう(1/5ページ) - MSN産経west
以前は、「反日・中韓」が「反日チンパンジー・中韓」でした。いつ変わったかは知りません。
一応、下記の魚拓に当たって本文の修正がないか調べましたが、変更点は全くありませんでした。
見出しを変更した点について社からのコメントもないようです。
この修正は各所で悪評が立って記事が有名になったためでしょうか。ならば、多くの人が批判したことに意味があったわけで、それは喜ばしいことです。
しかし、この修正はあまりに無知、または無恥・こそくです。
見出しだけが差別的だったのではなく、本文もまたひどすぎるからです。
本コラムのインド論が箸にも棒にもかからないのは言うまでもありませんが、前回のエントリでちょっと述べたように、そもそも「民族」でレッテルを貼ること自体が差別だし、記事で持ち上げている「インド人」ですら目下に見る優越感が各所で露出する見苦しさ。そして「インド人」を誉めたい本当の動機が「反日・中韓」を「むずかる」と揶揄しておとしめたいだけだといういやらしさ。
扇情的な見出しを少し改善しただけでこれらの問題を糊塗できると思う心性が本当に醜悪です。
産経新聞社はこのコラムの他にも数多くの差別的な記事・コラムを掲載しており、彼らに自浄能力がないことは明らかです。しかし、マイクロソフト社は少なくとも自らこれらの作文の編集責任を負っているわけではありませんし、愛国商売や炎上商法を収益源にするべき積極的理由もないはずです。にも関わらず、Internet Explorer のデフォルトスタートページとされるウェブサイトにこの様な差別意識むき出しの記事を放置し続けることは、マイクロソフト社自体もまた差別的企業だと見なされる、少なくとも差別と外国人嫌悪の垂れ流しに荷担し続けている企業だと見なされることになるでしょう。
しかしながら、この程度の小手先の対応で足りる・無視しても問題ないと彼らが考えるほどに、我々の社会は差別に寛容、言い換えれば被差別者に酷薄なのです。この様な状態を変えるためには、今回の抗議の声をさらに大きく、広くすることが何よりも重要なことだと思います。
ところで余談ですが、このコラム、誤植はあるわ、小見出しは内容と合ってないわ、まあ産経記事に校正はないというのは定番ネタですが、それにしても記事の質の悪さは見事に安定しています。せめて中国製食品の質に向ける関心と同じくらいの注意を自社のコラムにも払ってほしいものです。産経新聞社は自社の記事に愛着も誇りもないのでしょうか。
仕方がないので、とりあえずMSNにまた意見を送りました。本エントリ末尾に掲載します。
1000字では細かいことを書けず、いくつか内容を削らざるを得ませんでした。
MSNと産経ニュースは一体化しているので単なる場所貸しだという弁明はしづらいでしょうし、またMSNのブランドイメージも毀損していると思うんですが。
*****以下資料*****
●魚拓
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念のため上記魚拓から取った本文を下記に示しますが、現時点(2014年5月7日23時10分)では全く変わっていません。
●初期の本文
2014.4.19 07:00 (1/5ページ)[国際ビジネス]中韓=チンパンジー 日印=ボノボ
インドへ旅をしてきました。今こそ、パキスタンやバングラディッシュと国を分かちあいますが、インダス文明を生んだ古代都市圏として、またBRICS新興経済発展国の一角としても、インドがアジアの一盟主であることに変わりはなく、中でも、長期にわたり極めて親日的な国家・国民でいてくれることを忘れるわけにはゆきません。
動物・人類学者のお説によると、類人猿には大区分すると、攻撃的・闘争的なチンパンジー派と友好的・防御的で愛の心情を持つボノボ派の2種に分かれるそうです。人類にも同じような性癖が継承されているらしく、さしずめ中華・朝鮮両民族がチンパンジー系なら、日本・インド両民族はボノボ系といえるのかもしれません。
2030年に中国抜いて人口世界一に
現下のインドは、面積で世界第7位。人口は12・5億で、中国に僅差で次いで第2位ですが、45%が20歳以下なので、2030年には、間違いなく世界一の人口大国になるといわれております。観光ガイドの話では、結婚と家族関係を大切にする伝統があり、特に結婚式の招待客も数百人を超え、花火を打ち上げたり、万色のライトをともして楽団演奏で踊ったり相当派手なイベントが数夜も続くのだそうです。
なんでも、世界最大の鉄鋼会社ミタルスチール社(一時期新日鉄も買収の危機にさらされたようですが、それも新日鉄と住金合併の引き金になったのかもしれません)のオーナー社長の御嬢さんの結婚式では、75億円もかけ、ベルサイユ宮殿を借り切り、世界中から数千人の招待客を集め、盛大な祝典を繰り広げたそうです。ちなみにミタル社は、フランスのユジノール製鉄会社由来のアルセロール社やオランダの会社などを買収しており、ミタル氏の欧州での高名と各界へのコネは無限のようです。
●“インドの春”実現のカギは「“中国の過ち”との決別」→次のページへ
2014.4.19 07:00 (2/5ページ)[国際ビジネス]
いずれにせよ、一人っ子政策の中国に比して結婚奨励で多産系のインドが中国を逆転して人口世界一になるのは確実でしょう。問題は、現下の経済成長の継続と相まって、今後の政治がインドの陰の部分、すなわち世界最大と言われる貧困層の所得改善・社会保障と民度アップをいかに克服するか、にかかっていそうです。
なぜ仏教は定着しなかったのか
釈迦が開祖・布教した仏教が、なぜインドで定着せず、現下の日本やタイでより正統的に継承されたのか、という長年の史的疑問をぶつけてみたところ、現地人ガイドの以下の説明に、ほぼ納得させられました。
「ネパール発の釈迦仏教が持ち込まれたのは、前5世紀の頃だったが、釈迦の死に際し、その遺言を履行するべく、直属の弟子10人は伝道を広めよとの師命を実行するため、遠国四方八方へと旅に出てしまった。残された仏教はもともと経典を持たなかったこともあって弱体化し、その後古来土着の習俗とバラモン教が前3世紀ごろ結びついて、新世紀に入り6~7世紀ごろまでに宗教的骨格が固まってできたヒンズー教が主たる宗教となった」
併せて、いまだに残るカースト制度もこのヒンズーのパルナ・ジャーティなどと呼称される職業・身分階級制度に由来を持つものだということも理解できました。民主主義国インドとはいえ、中国共産主義の階級制度とあまり変わりない“差別主義”から、いかに脱却できるかが、未来の存亡のカギを握っているのではなかろうか、と考えさせられました。
“インドの春”は起こるか
先にインドの人口を12億5千万と書きましたが、このうち約7億人が選挙権を持っており、その点からいえば「世界最大の民主主義国」といえますが、逆にカースト制度や過密な人口が災いし「世界で最も選挙予想が当たらない国」ともいわれております。そのインドで、今年4月から5月にかけて総選挙が予定されており、すでにその前哨戦としての地方選挙が始まっています。
●パナなど日系も進出…所得3倍で世界5位へ、魅力は「知性」「冷静さ」→次のページへ
2014.4.19 07:00 (3/5ページ)[国際ビジネス]
その一例、デリー首都圏議会選挙で、にわかに脚光を浴びたのが、結党わずか1年の素人集団「一般大衆党」で、従来の保守対革新の既存2党対立に割って入り、一挙に3極の一角を占めることになっております。党首は次期首相候補にまで上げられ、「国を変える願望」の下、インターネット中心で広く集められたボランティアの膨大な運動員たちの一挙手一投足が大きな注目を浴びるようになっています。これには。与党副総裁で首相候補の、名門ガンジー家のプリンスも危機意識を高めているそうです。
もっとも、この大衆新党は「汚職撲滅」と「無償の水道や電気提供」を政策目標に掲げ、低カースト層をターゲットに急伸しているものの、政策実現の手段・対策が不明確であり、社会主義的な要因がインド経済を害するとの恐れもあって、単なるポピュリスト政党にすぎないと、財界や知識層からは無視されているようです。果たして「インドの春」現象が起きるのか、注目される時節を迎えています。
将来有望なインド経済
インドの経済を概観しておきますと、目下世界11番目ですが、2025年には所得水準が3倍となり、世界第5位の消費市場になると予測(米系シンクタンク誌)されております。労働力環境は、少子高齢化の中国に代わって、若手労働者の急増から、2030年までには世界一の7億5千万人となると予想されています。
問題は貧困・インフラ対策と職業訓練で、英語力と数学力のある若手が戦力化すれば、より世界から投資と工場進出などが期待されるでしょう。日本企業も、すでに千社ほど進出しておりますが、定着して成果を勝ち得ているのがスズキだけです。目下パナソニックや日立も現地化に踏み込んではおりますが、「インド人たちの手の届く良品」しか買ってもらえないことを肝に銘じ、現地指向を徹底し貿易や工場進出も現地人登用に重きを置いて展開すれば、成功の確率はうんと高くなるでしょう。
●「勝ち負けは腕力、正義とは無関係」「われわれ有色人種の希望、日本が…」→次のページへ
2014.4.19 07:00 (4/5ページ)[国際ビジネス]
すでに、デリー・ムンバイ間産業大動脈構想が具現化し始めており、今般の旅行中、バスの車窓から、デリー南部一帯の農地に開発途上の、日本企業・著名数十社の工場群と労働者用団地ビルや小売り商店街などを目にしました。
東京裁判で唯一冷静だったインド人判事
本稿の冒頭で、インドが親日国であることに触れました。最後にその検証として、最初に挙げておきたいのは、大東亜戦争終結後の極東国際軍事裁判におけるパール・インド代表判事(ベンガル人でインドの法学者・国際法の専門家)の勇気ある冷徹で公明正大なる意見陳述です。
GHQと連合国側は、この東京裁判で、戦争の全責任を日本になすりつけ、数多のABC級被告人を全員有罪とする“復讐的儀式”に血眼になっていました。パール判事はそんな中、裁判官11人のうちのただ一人、裁判そのものの不当性を訴えるとともに、「全員無罪」を主張されたのでした。
「パール判決書」の要旨を抜粋すると、「戦争の勝ち負けは腕力の強弱によるもので、正義とは関係ない」「ハルノートのようなものをいきなり突きつけられたら、モナコやルクセンブルク(のような弱小国でさえ)も戦争に訴えただろう(言外に、太平洋戦争を始めたのは、日本ではなくアメリカだった、と明言した)」「日本の戦争は一方的侵略戦争ではなかった」「裁判官が戦勝国だけで構成されているのは不適切」「侵略戦争責任を個人に求めるのは妥当ではない(非戦闘員生命財産の破壊障害こそ戦争犯罪なり、原爆投下決定者こそ裁くべし)」「平和に対する罪、人道に対する罪は事後法であり、有罪根拠自体成立しない」…。東京裁判そのものを否定し、日本および被告人を守護し、逆にアメリカを糾弾したのでした。
2014.4.19 07:00 (5/5ページ)[国際ビジネス]
パール判事の別の語録(日露戦争後の心境を語ったもの)も引用しておきます。
「同じ有色人種国である日本が、北方の強大なる白人帝国主義ロシアと戦ってついに勝利を得たと言う報道は、われわれの心をゆさぶった。私たちは白人の目の前をわざと胸を張って歩いた。先生や同僚とともに、毎日のように旗行列や提灯行列に参加したことを記憶している。私は日本に対する憧憬と祖国に対する自信を同時に獲得し、わななくような思いに胸がいっぱいであった。私は、インドの独立について思いを致すようになった」
まさに日本人としても永代忘れるべきではないインド人こそ、この人なのです。
日本がアジアに自由と独立の喜び与えた
もう一点、特筆すべきは、「日本国がアジアに自由と独立の喜びを与えた」とする植民地解放、白人の有色人種差別撤廃運動に対する日本の国際的貢献をインドの人たちがたたえてくれていることです。1943年秋、日本の呼びかけで、アジア7カ国首脳が東京・帝国議事堂に結集して催された、世界初の有色人サミット「大東亜会議」での、共同宣言の採択です。
この会議にインドを代表して参加されたのが、仮政府首班・チャンドラ・ボースでした。大戦中から戦後、このチャンドラ・ボースをはじめ、マハトマ・ガンジーや、独立後のネール首相らに代表されるインド各界のリーダー・有識者の多くが世界へ向けて日本をたたえ、感謝の念を伝えました。その無数のメッセージは、いまだにインド政財界・文化人に継承されているというのです。
こうした観点から思い至るのは、むずかる中韓とは、しばらく距離を置き、インドを代表とするアジアの友好的諸国との心情的・政治外交的距離感をもっと短縮化すべき努力が、今こそ問われているのではないでしょうか。「近くて遠い反日国」より、「遠くて近い友国」をもっと、大事にすべきだと確信する次第です。
(上田和男)
=随時掲載します
上田和男(こうだ・かずお)
昭和14(1939)年、兵庫県淡路島生まれ。37年、慶応大経済学部卒業後、住友金属工業(鋼管部門)に入社。米シラキュース経営大学院(MBA)に留学後、45年に大手電子部品メーカー、TDKに転職。米国支社総支配人としてカセット世界一達成に貢献し、57年、同社の米ウォールストリート上場を支援した。その後、ジョンソン常務などを経て、平成8年(1996)カナダへ渡り、住宅製造販売会社の社長を勤め、25年7月に引退、帰国。現在、コンサルティング会社、EKKの特別顧問。
*****以下、MSNに宛てた意見*****
以前、御社MSNサイトで産経新聞社の下記の記事および関連する連載記事の削除をお願いした者です。
http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/140419/wec14041907000001-n5.htm
今回、当該記事の見出しが以下のように変更されていることを確認しました。
変更前:近くて遠い「反日チンパンジー・中韓」より、遠くて近い「親日・インド」を大事にすべし…パール判事の「知性」を思い出そう
変更後:近くて遠い「反日・中韓」より、遠くて近い「親日・インド」を大事にすべし…パール判事の「知性」を思い出そう
当該記事は、この見出しの変更以外全く変更ありません。変更についての告知もありません。
この記事は、本文全体が人種・民族差別的偏見を煽るものです。中でも、異質な言語・文化を持つ多数の集団が構成する国家であるインド、中国を「インド民族」や「中華民族」などと単一視した上、「インド民族」と「日本民族」なるものをボノボに、「中華民族」と「朝鮮民族」なるものとをチンパンジーに無根拠にたとえている箇所は、誤謬と差別誘導的言辞の最たるものであり、本記事の性格を象徴しています。
今回、当該記事では見出しが変更されましたが、御社マイクロソフト社様は、こうした差別性が見出しの「反日チンパンジー・中韓」を「反日・中韓」としただけで解消するものだとお考えだということでしょうか。
ウェブページ上には産経新聞社の記事内容が御社の見解を反映するものではないとする告知がなされていますが、御社が上記の差別的な記事配信を容認していると見られることは避けられないと考えます。
改めて要請します。この記事および連載記事を直ちに削除し、差別主義的な記事の掲載は許さない旨の告知を行っていただきたい。
なお、この記事の連載「国際ビジネスマンの日本千思万考」には、地球温暖化に関して、地表の氷が溶けると海水面が下がるはずだとし、海水面の上昇を「しろうと的思い込み」と断じるような極めて稚拙な誤りを元に地球温暖化説を一蹴するなど、見るに堪えない記事が数多くあります。小学校の理科程度の素養も持たない論者の記事をマイクロソフト社のサイトで配信し続けることは、御社の技術的ブランド形成にも芳しい効果をもたらさないものと考えます。
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