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2014/06/13

日本政府のあまりにもあまりな愚かしさ。

徹夜明けのぼんやりしたアタマでぼーっとネットサーフィン(死語)をしておりましたら、何というか朝から情けなさに体を絞られるようなお話にぶつかってしまいました。

朝日新聞の山中季広氏は産経新聞に移籍した方がいい - シートン俗物記

何のこっちゃと思っておりましたら、下記の2本でちょっと触れた知覧の記憶遺産の話でした。
知覧の特攻隊資料が世界記憶遺産に申請という件: 思いついたことをなんでも書いていくブログ
記憶遺産:特攻隊員の遺書は落選。: 思いついたことをなんでも書いていくブログ

上記シートン博士が厳しく批判されているのは朝日新聞のこの記事です。
(日曜に想う)記憶遺産、負のせめぎあい 特別編集委員・山中季広:朝日新聞デジタル(2014年6月8日05時00分)

シートン博士の山中氏批判には全く異論がないのでそこは触れません。

一点、山中氏がユネスコになぜ取材に行ったのかがよくわかりません。ユネスコだって当たり障りのないことしか言えないでしょうに。それに、山中氏がユネスコ本部に取材に行った時期は、まだ特攻遺書が日本政府から推薦されるか分からない時期だったのですが、どうなるか分からないのになぜわざわざユネスコに取材に行ったのかという気がします。もうちょっと待てば日本政府の推薦選考の結果も分かるのだし、それからでも良かったのではないかとも思うわけです。
あと、札びらでユネスコの頬をはたく金持ちみたいな論調が気に入らないけどまあそれも飛ばします。

私が思わずがっかりしたのは、この山中氏の記事中にあった南九州市の考え方についてです。シートン氏も引用している箇所ですが、

 申請にあたった南九州市の桑代睦雄係長(53)によると、神風特攻隊は海外では自爆テロの先例と目されがち。申請書ではあえて「神風」の語を使わず、「大死一番」「七生轟沈(しちしょうごうちん)」といった決死の遺筆も外した。

 提出したのは親や恋人、幼いわが子に宛てた日記や遺書計333通。読むと、極限状況でつむがれた言葉の清明さが胸に迫る。

結局、南九州市は史料の扱い方はおろか、記憶遺産の意義すら理解していなかったわけです。

自分が気持ちよくなる部分だけを取り出してそれ以外を隠すのは、記憶遺産としての価値を本質的に毀損することです。
シートン氏が

もちろん、「知覧特攻隊員の遺書」の記憶遺産登録、というのは、漂白化・美化が目的ですから、中国・韓国側の批判は当たっているわけです。でなければ、「申請書ではあえて「神風」の語を使わず、「大死一番」「七生轟沈」といった決死の遺書も外し」たりはずがありませんから。
と述べたのは全く的確な指摘だったと言わざるを得ません。そしてまた特攻平和会館もまた、「漂白化・美化」のための施設だったことが明白になりました。
このような形の登録申請であったなら、確かに日本の選考委員会で「日本からの視点のみの説明。世界的な重要性の説明が望まれる」と指摘されたのもうなずけます。

それにしても、たとえ靖国神社と同様の大東亜戦争史観を持っていたとしても、史料や歴史遺産に対する認識があまりにお粗末すぎます。文物を守る立場の行政がこのていたらくでは南薩地域の文化資源の保全など到底望めません。

追記(2014年6月14日)
特攻遺書の選別はしていないという記事が出てきました。
特攻隊遺書、記憶遺産候補漏れ ネット上では「当然だ」の声も : J-CASTニュース(2014/6/13 19:27)

一方、南九州市では、J-CASTニュースの取材に対し、遺書の選定などの配慮はしていないと担当者が説明した。本人と特定できた遺書はすべて申請しており、その中には、「大死一番」「七生轟沈」といった遺筆も入っていたとした。また、「神風」は海軍で使っていた表現で、知覧特攻隊は陸軍なのでその表現は使わず、申請で「神風」の表現を省いたわけではないという。
上記山中氏の記事では「南九州市の桑代睦雄係長」と取材先を明記していましたので、このあたりの実際がどうだったのかは気になるところです。

*****
南九州市の対応よりもっとがっかりしたのが、菅官房長官が中国に抗議したという報道です。

時事ドットコム:記憶遺産申請「極めて遺憾」=慰安婦資料、中国に抗議-菅官房長官


 菅義偉官房長官は11日午前の記者会見で、中国が旧日本軍による南京事件と従軍慰安婦に関する資料を国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に登録申請したことについて、「極めて遺憾だ」と不快感を示した。北京の外交ルートを通じて中国に抗議し、申請を取り下げるよう申し入れたことも明らかにした。
 菅長官はユネスコ事務局に登録申請の事実を確認したと説明。「中国がユネスコの場を政治的に利用し、日中間の過去の一時期における負の遺産をいたずらにプレーアップしようとすることは極めて遺憾だ」と強調した。南京事件の犠牲者数に関しても「具体的な数はさまざまな議論があり、政府として断定することは困難だ」と指摘した。 (2014/06/11-12:14)
自国の過去を直視できず、その不快感をよりによって自分たちが悪逆非道の限りを尽くしたその犠牲者にぶつけるとは、一体何という浅ましさなのでしょうか。

南京大虐殺にせよ従軍慰安婦にせよ、これらこそ正に世界史的な記憶とする価値のある重要な事件であって、ホロコーストなどの他の負の遺産と並び、決して忘れてはならないものの一つのはずです。
それの登録に全面的に協力することは我々の最低限の義務であるはずなのに、なぜこの様な無様な振る舞いをしていまうのでしょうか。このような知性も倫理観もない政府をいただき、近年まれに見る高支持率で支えているのが我々なのです。


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