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2014/10/06

林和清さんの「歌人・柳原白蓮の生涯」が面白かった

NHKラジオ第2の「文化講演会」で放送された講演。
たまたま車の中で聞き始めて、結局駐車場の中でずっと1時間聞いてしまった。

文化講演会|NHKラジオ第2 文化番組
10月11日(土)にも再放送があるらしい。

朝の連続ドラマ「花子とアン」で、仲間由紀恵さん演じる葉山蓮子のモデルになった歌人・柳原白蓮に注目が集まっている。水際立つ美貌、高貴な身分、豊かな教養を持ちながら、不如意な結婚で心に傷を負い苦悩・・・家族制度や家父長制度に縛られながらも、“道ならぬ恋”に生きた白蓮の情熱的で波乱万丈な人生について語る。
連ドラは時々見たけど、白蓮のことも花子のこともあまり知らないまま、でも妙にステレオタイプの「戦前」と「戦中」で、何となく割り切れない感想を持っていた。
その後、村岡花子のことをちらちらネットで拾い読んで、
「こっちの方が面白いじゃないか」
と思ったり、
「白蓮の夫は宮崎滔天の息子だったのか」
とびっくりしたり。何と現実そのものがものすごくドラマチックではないかと感心していたので、この林さんの解説には溜飲が下がった。

講演では、白蓮が下町で平民の気取らぬ暮らしに馴染んだ後、まるで家長の所有物のごとく振り回され、婦女暴行罪まがいの強引な妊娠出産、結婚、我が子との別離、さらに政略結婚の道具にされお飾り扱いにされて10年を過ごしてのち、とうとう生涯の夫となる宮崎龍介に出会ったことが語られ、彼女が巨額の財産を捨てて龍介の許に走った思いが説得的だった。
びっくりしたのが、白蓮が伊藤伝右衛門に返した財産の巨額さで、今の金額に直すと、宝石が1億5千万円、土地などの権利が60億円だったとか。
自分自身を生かしたいという思いや宮崎と本当の生活をしたいという願いはそれらの価値を上回るものであったのだろうと思うし、これらを維持したまま彼女の抱える難問を解く方法はなかったのだろう。
「新しいものをつかむためには、今手にしているすべてを捨てなければならない」という林さんの言葉は含蓄があった。

講演では、白蓮の絶縁状(宮崎の友人らがかなり手を加えて社会性を強めたという)と、伊藤伝右衛門の反論とを朗読されたが、それもまた味があった。伝右衛門が結婚時の恨み辛みまでくどくどと並べ立てているのが非常に面白い。それにしても、彼女の事績について細かい研究がなされているのだなあと感心した。

その後の彼女の献身、社会活動への参加はいうまでもないが、娘の蕗苳さんが「母はいつも書き続けていた」と言ったという言葉、逮捕された社会主義者の代わりに黙って彼の実家へ仕送りを続けていたこと、晩年に緑内障で失明した白蓮を介護し続けた龍介の手記、「柳原よりも伊藤よりも安住の地にできたのではないか」などが印象的だった。

白蓮の文学の社会性、宮崎龍介の人となり、悲母の会と平和運動など、ときどき連ドラをちくちくと刺すのもよかった。
ただ、白蓮文学の評価や白蓮・宮崎のアジア太平洋戦争への考え方などにも触れてほしかったかな。しかし時間が足りなかったかもしれない。いずれにせよ、聴かせる講義で一気に時間が過ぎた。いろいろ勉強になりました。


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