ポイント抜き書きノート:「ヘイトスピーチ規制論と歴史修正主義の両立状況について」
ヘイトスピーチ規制論と歴史修正主義の両立状況について - コトコトじっくり煮込んだ日帝♪
備忘として、ポイントと思った文言を抜き書き。
ヘイト「スピーチ」が、本来の差別的な状況の表層であって、この表面的現象だけを取りざたする姿勢が誤りなのは言うまでもない。このスピーチ現象への批判は、差別が浸透した我々の社会、個人のあり方そのものを問い直し、変えていく契機とすることにその意義がある。
歴史修正主義との対峙が不可欠になるのは、特に戦争責任問題・近世からの我々の植民地主義が民族差別と切り離せないからであるが、同時に現在の歴史修正主義が排外主義以外に深刻な女性蔑視や自己責任論や自己中心主義と結びついて、社会の分断と憎悪を強化する働きをしているからでもある。
上記のリンク先の論説は、歴史修正主義、保守政治家らの「愛国主義」が在特会的な分かりやすい憎悪表現を生み出しただけでなく、この排外的な自己愛が着実に日本社会に浸透してきた経緯を簡潔に描いている。しかしそれよりも重要な指摘だと思われることは、保守主義者によるヘイトスピーチ規制が、言わば「外聞が悪いから止めさせる」ものでしかなく、自らの差別性を全く温存するものに他ならないという点である。かつての廃娼運動や障害者浮浪者の隔離、公共施設からのホームレスの排除と同じ構造がここにも見られる。反差別運動の拡大を、自分が差別者であり抑圧者であるという自己認識を持とうとしない人たちを取り込むことで果たそうとすることの矛盾を鋭く突いた本論説の「『普通のひとたち』の『普通』が問われないという条件」という言葉を頭に染みつけておきたい。
以下は抜粋。
特に宝塚市のように全国でも先駆けて2008年に元「慰安婦」に「誠実な対応」をするよう政府に求める意見書を可決した自治体までもが今回を契機に調子付いた反動を抑えられなかったことは深刻に受け止めたい。
事実、日本書籍の歴史教科書は「つくる会」などから激しく攻撃され、01年の採択率はそれまでと比して半減、04年までに廃刊に追い込まれた。
12年にはすべての教科書から「慰安婦」という言葉が完全に消えた。
河野談話、村山談話が日本政府の法的責任を回避させ「国民基金」というかたちで決着を図ろうとしたことで温存してしまった、ある意味ではより確固たるものとして確認された、<戦前からの連続性>こそが絶えざる反動の巣窟空間を残し、修正主義をここまで肥大化させていった面があるのではないかと私は考えている。
7月24日の規約人権委員会からの勧告にしても、8月29日の人種差別撤廃委員会からの勧告にしても何も在特会によるヘイトスピーチだけを問題にしているわけでは当然ないのである。人種・民族差別について限定しても、公人によるヘイトスピーチはもちろんのこと、朝鮮学校生徒に対する高校無償化、補助金からの排除の解消、在日外国人高齢者、障害者の無年金状態の解決、日本軍性奴隷制被害者に対する補償や名誉回復などについても言及しているにも関わらず、日本のメディアのほとんどは在特会によるヘイトスピーチばかりを焦点化している。一つの参考として8月5日~10月5日の2ヶ月間において、朝日新聞でヘイトスピーチを扱った記事は100件程度、「慰安婦」は150件程度、ヘイトスピーチと「慰安婦」が同じ記事の中で出てくるものは5件、読売新聞では同期間において、それぞれ30件、120件、3件であり、いずれにおいても日本軍性奴隷制の否定をヘイトの問題として、あるいはそれに繋がるものとして扱ったものは皆無であった。
また「五輪開催地にふさわしくない」(枡添)や「日本の誇りを傷つける」(安倍)、「日本の信用を落とす」(余語)といった反応はどれも被害者の人権を護るという目的意識を欠いた自己中心的な視点であり、朝日バッシングと同じ構造である。おぞましいのは歴史修正主義とヘイトスピーチ規制論が日本(人)の名誉回復として両立してしまっていることである。
「国民基金」提案者は日本国家の「連続性」を絶つ努力を約束するのではなく、かわりに「国民基金」という形で決着をつけさせてくれと被害者に迫ってしまった。
しかし、運動の<大衆化>が保守・右翼の参入、差別に対する自戒のないものたちの参入によって、つまりは悪い意味でそのまんま「普通のひとたち」の「普通」が問われないという条件によって果たされてきたのを体制側は当然に見抜いていたであろう。
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