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2014/11/09

中学校の部活の民間委託、大阪市で始めるとのこと。

大阪市立中の部活、民間委託へ 1千人の指導者が必要:朝日新聞デジタル(2014年11月6日12時25分)

興味深い。
部活は教員にとって長年の懸案だったので、方向性としてはよいのだけれど、一律に民間委託にするということだと記事にあるように課題も多い。これらをどういうふうに処理していくのか。

現在の部活運営について記事で挙げられている問題意識は次の5点。
1. 部活の顧問は職務の一環なのに「ボランティア」と思われがち
2. 練習時間や活動日数が度を超している
3. 教員の負担が重く専門性も不足
4. 少子化で休部や廃部が相次ぐ
5. 暴力的指導など不祥事が起きている

これらはおそらく大森不二雄・市教育委員長に取材したもの。
5の体罰等は、民間委託云々よりガバナンスの問題ではないか。

記事によれば、「人材確保や費用に課題」とのこと。
知らなかったが、10年以上前に、半田市が先行実施していたのだそうだ。だが、指導者不足で顧問教諭が結局指導せざるを得なくなったり、部活を復活させたりしたとのこと。10年の実践を通しても地域の指導者不足が解消されなかったということらしいから、これは一筋縄でいく問題ではなさそうだ。

体罰やいじめ、事故の防止体制の問題も大変だが、部活の第一義は教育にあるわけだから、民間委託するにせよ、スポーツエリートの育成のような話にスライドしないでほしいなあ…と思う。この点、橋下氏の
「スポーツ能力を高めるためには、幼少時から専門家に教わるべきだ」
というコメントは、少しポイントがずれていると思うし、義務教育に英才教育を持ち込むような匂いを感じて少々不安になる。
いずれにせよ、現場教員の負担軽減とすべての生徒がその種目を好きでいられるような部活とにつなげてほしいなあ…と願う。

なお、記事に掲載されている現場教諭の声が興味深いので下に掲げておく。

担当部活賛否理由
男性(武道)競技経験が乏しい種目で顧問を引き受けると練習やプレーの詳細な助言ができないので、専門家が加わればプレー指導ではかなり助かる
女性(球技)×部活動は教育そのもの。濃密な人間関係の中で付き合い方やルールなどを学ぶ場所でもある。民間に任せて技術が向上すればいいというわけではない
男性(球技)週末だけでも任せて休めるなら体力的にはだいぶ楽になる。ただ、生徒が外部コーチの言うことのみを聞き、教員を低く見るようになると、教員と生徒の絆が壊れる恐れがある
男性(球技)全面的な民間委託は生徒にも学校にも混乱をもたらすので反対。外部の指導者が教員を補佐する形で教員と一緒に指導にあたる形態なら賛成

◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 大阪市は来年度から、市立中学の運動部の指導を民間委託する取り組みをスタートさせる。対象種目や実施規模、委託先の選定に近く入る。教員の負担軽減などが狙いだが、現場では歓迎と不安の両面がのぞく。課題を探った。

■「危機直視を」

 「スポーツ能力を高めるためには、幼少時から専門家に教わるべきだ」(橋下徹・大阪市長)

 「教員の負担を軽減し、閉鎖空間での体罰をなくすためにも民間委託が必要だ」(大森不二雄・市教育委員長)

 2人は中学校の運動部改革を連携して進めようとしている。直視すべき課題として、①部活の顧問は職務の一環なのに「ボランティア」と思われがち②練習時間や活動日数が度を超している③教員の負担が重く専門性も不足④少子化で休部や廃部が相次ぐ⑤暴力的指導など不祥事が起きている――を挙げる。大森氏は「部員不足に指導者不足。部活は待ったなしの危機だ」と強調する。

 現在、大阪市では市立中学校(約130校)で生徒の6割弱が運動部に所属する。約3万人に及び、改革の影響は大きい。

■人材確保や費用に課題

 だが、民間委託のハードルは低くない。大阪市立中学校で仮に全面委託すれば、1千人前後の新たな指導者が必要となる。「受け皿」となるスポーツクラブや団体の確保は容易でない。特にスポーツクラブは週末が「稼ぎ時」のためだ。

 愛知県半田市は2002年度に土日の部活を原則廃止し、練習したい生徒は「総合型地域スポーツクラブ」(有料)に通う仕組みをとった。しかし、指導者不足のため、学校の顧問教諭らが地元クラブでの指導も担わざるを得なくなり、12年度に校長判断で土日も部活ができるように方針転換。部活を復活させた学校もある。

 安全確保策も課題になる。大阪市教委は、体罰防止のため、指導者以外の第三者を立ち会わせたい意向だが、保護者や地域住民からどこまで協力を得られるかは未知数だ。全面委託の場合、委託料も膨大になる。娘が市立中のバレーボール部に所属する40代の主婦は「そもそも部活は先生と生徒、生徒同士の絆を強める場でもある。絆が壊れないか心配だ」と指摘する。

■先行自治体は

 「球の動きを予測して、もっと球に近づいて!」「良い球を飛ばすため、サーブの時はもっとひじを伸ばしていこう!」

 スポーツクラブのコーチがアドバイスする。昨春から民間委託を実施中の東京都杉並区立神明中を見学した。毎週日曜、テニス部(部員約30人)の指導にあたる臼倉明博コーチ(43)は「普段は大人が相手で、学校の部活動にかかわるのは初めて。技術面はもちろん、礼儀やあいさつなど『部活』を意識して指導している」と強調する。

 2年の男子生徒は「平日に教わる顧問の指導と、週末に教わるコーチの言うことが食い違うこともあり、最初は少し戸惑ったけれどもう慣れた」と話す。

 同区では、委託先が指導する時は原則として顧問教諭は立ち会わないが、事故防止などのため、保護者や地域住民が交代で顔を出す仕組みをとっている。練習に立ち会った母親は「保護者の金銭負担がなく、プロ級の指導を受けられるのは大きい」と言う。別の母親は「立ち会い当番にあたると保護者も日曜返上だけど、やむを得ない」。同区は区立23校中10校で土日を中心に野球やテニス、サッカー、陸上競技など9種目の部活を民間委託。委託料は指導者1人につき1回約1万5千円で区の負担だ。(阪本輝昭)

     ◇

 《学校活動に詳しい赤尾勝己・関西大教授(教育学)の話》 授業時間数の増加や学力向上の取り組みなどで現場の教員は超多忙だ。せめて部活指導を教員の仕事から切り離し、負担を減らそうというのは自然な流れといえる。部活も教育の場という意識を、市教委と委託先が共有することが重要で、事前研修などもすべきだ。事故時の責任の所在も明確にする必要がある


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