「大学改革」も大変だよなあ…という感想
お説ごもっともで正論なのだけど、「大学改革」を推進する人たちには届かないかなあ…と。
なぜなら、これらの指摘はずっと昔から「大学改革」批判の論点として指摘されてきた点であって、しかもそれらは「大学改革」を進める中ではあまり十分顧みられてこなかったものばかりのように思うからだ。
(政策化のプロセスでは同種の議論はあっただろうが、しかしそれが改革の方向性を左右するほどの影響は及ぼさなかっただろうということ。)
事務職の人たちの様子やそこからの指示、要請を見ると、教員の仕事ぶりをいかに管理してつじつまを合わせるかが最大の苦労のように見えるし、中教審の答申などを見てもどうやって教員を働かせるかという意識が基層にあるように感じる。そこから鑑みて、こうした正論がなぜ顧みられてきていないかというと、私の印象では、おおよそ以下のような気分があるのではないかと想像する。
1.「改革」に反対する抵抗勢力、守旧派の教員たちが既得権益を守るためにする議論だ。十年一日のごとく何も変えずマイペースで「研究(笑)」をだらだらと行ってろくに論文も出さず、1コマの増担も学生のケアも授業改善も嫌がり、学務と称して適当に委員会に出ては思いつきを好き放題にしゃべり散らして責任は取ろうとせず、そのくせ給与や研究費には文句たらたらで、自分より薄給で実務を支えている職員に対しては教員様を敬えと威張り散らす、そんな連中が、「研究」とやらのありがたさを金科玉条のごとく押し頂けと言うわがままにすぎない。
2.これらの指摘や議論は、大学を改善するための力になり得ない。永遠に百家争鳴で結論の出ない議論を続けるだけで、いつまで待っても大学改革への動きにつながることなどはない。つまり大学運営を変革しようという場面においては無意味な議論でしかない。
3.数値化への危惧を表明する議論が示す通り、正に数値化できない価値を強調する議論であるが故に、政策評価の対象にしづらい。逆に言えば、政府や国会を説得可能な基準や価値判断の方法を提示してくれればこの議論にも乗れるが、ただ数値化の危険性を批判されるだけでは政策化プロセスに乗せようがない。
4.いつまで経っても大学も教員も自分から変わろうとしない以上、多少無理筋でも外圧をかけて動かすしかない。「先生」方は議論するのが仕事なので、いつまででも好きに議論していればいいかもしれないが、大学への風当たりは強く、経営環境も年々厳しくなっている中で、実務者としては到底そんな悠長な議論を待っていられない。
5.教員に経営や運営への関与をお願いすると大抵嫌がられるし、教員は教育研究の専門家であり、本来業務に専念してもらう方がいいということもあるから、運営管理はこちらで決め、その大枠に沿って自分の研究内容を調整してもらえばいい。要するに、先生方の意見は現場の多様な意見の一つとして参考にはするが、他の事情もあるのでそれ以上のものにはできない。
こうしたもののなかで一番根深いのは、
お前たちだって大学の当事者のはずなのに、何評論家ぶって能書きばかり垂れてるんだよ。文句があるなら汗をかいて他の教員たちを動かしてお前の大学を変えてみろよ。主体性も責任も引き受けようともしない連中のご高説なんかに何の意味があるっていうんだ。
みたいな反感や、
じゃあ何?あなたのお説に基づけば我々は具体的に何をどうしたらいいの?何か実務レベルまで砕いて実施可能な「改革」案とかできるの?それ文科省が全国の大学に下ろせる程度の普遍性・共通性を担保できるの?(冷笑)
みたいな軽蔑
ではないかなあ、と想像する。
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実際、「国の『大学改革』に振り回されてろくでもない状況に追い込まれる前に自分たちでウチの大学を変えよう」とかっていう話が出ると、「何?『改革(笑)』のお先棒をかついでるの?恥ずかしい連中だなあ」みたいな反応が出て、「そもそも大学っていうのはだねぇ…云々」という類のご高説お披露目大会が起きたりするわけで、そこまで行かなくても、「まぁ、カイカクゴッコはそういうのが好きな人がやったらいいんじゃないの?」みたいな話になるわけだから、あながち、上述の反感や猜疑心や諦めが無根拠だとも言えないんだよね…。
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