« 2015年1月 | トップページ | 2015年3月 »

2015年2月の18件の記事

2015/02/27

1万4千字を書き起こした。疲れた…。

2015年2月25日(水)「資料から読み解く慰安婦問題」(探究モード) - 荻上チキ・Session-22

こちらのポッドキャスト配信をダウンロードして、書き起こしました。
発言のそのままではなくて、後での読み取りの便を考えて文末表現などを整形しながら作ったけれど、疲れた。
5時間ぐらいかかった。
ご入り用の方はご連絡下さい。

林氏は、資料の扱い方として、文書と証言を一つ一つ吟味しそれらを複数照合させながら一つの歴史的な事実を浮かび上がらせるという歴史学の方法について、慰安婦研究という実例を通して示していました。
歴史研究のものすごさについては常々経済史や技術史の分野の文献を眺めても痛感するところのものなので、今回も非常に頭が下がるのですが、とても丁寧に、門外漢向けに解説されたと思いました。

梁氏のお話も、聞き取りを実際にされた中で感じられたことやその証言の意味の解題、そして証言の吟味も含めて多面的な話に及んで大変興味深かったです。インタビューや面接調査への含意もあったなあと。
「被害者証言が多数ある」という紹介に対して「今ある証言は実態と比べれば正に点にすぎない」と言われたのは印象的でした。
被害者の証言が多数あるという言い方には慰安婦問題を否定する人たちに対するアピールという意味合いがあるわけですけれども、それでも、この言い方には問題があるということは全くその通りで、今回林氏が述べたように、慰安婦・慰安所に関する資料は厖大なものが集められてきているとはいうものの、それですら「実態」の詳細を知るにはほど遠いほどの広範かつ巨大な対象であるのだなあと改めて思わされました。
この、日本の占領地域全体に広がった途方もない巨大さはもちろんのこと、それに巻き込まれた個々人にとっては正に自分の全存在・現実の全てを覆い尽くした出来事だったという意味での個々人にとっての巨大さと深刻さもあって、この二つの重さを再確認させられた放送でした。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2015/02/26

暴君。オレのものはオレのもの。お前のものもオレのもの。

県:なんだか国の工事が許可区域外に影響が出ているみたい…調査しなくちゃ…。
県:調査する→国:「止めろやボケ」
県:調査の間、工事を待ってほしい→国:「知るか、ボケ」
県:こんな状態ならもう許可できなくなる→国:「やる気か、あん?」

ずっと前から、県知事は安倍政権側と対話したいとお願いしてるのに、シカト。
県が待ってほしいと言っているのに、完全無視して「粛々と工事は進める」。
全ての対話の筋道を自ら絶って、沖縄県側が自力で何とかしようとしたら、「止めろや」と恫喝。

素晴らしいです。美しい国ニッポン、着々とトリモロされていますね。

沖縄県の現地調査「極めて遺憾」官房長官 NHKニュース(2月26日 17時45分)

菅官房長官は午後の記者会見で、アメリカ軍普天間基地の移設計画を巡って、沖縄防衛局が名護市の辺野古沿岸部に設置したコンクリートブロックについて、沖縄県が現地調査を始めたことを受けて、「一方的に開始したことは極めて遺憾だ」と述べたうえで、今後も環境に配慮しながら作業を進めていく考えを示しました。

アメリカ軍普天間基地の移設計画を巡って、沖縄防衛局が名護市の辺野古沿岸部に設置したコンクリートブロックについて、沖縄県は許可した区域の外にある岩礁を壊した可能性が高いとして、26日現地調査を始めました。
これについて、菅官房長官は、午後の記者会見で、「沖縄防衛局が調査の目的や方法などを確認するため、今月23日に沖縄県に照会する文書を送付していたところだ。そういうなかで、一方的に現状調査を開始したことは極めて遺憾だ」と述べました。
そのうえで、菅官房長官は「政府としては、今後も引き続き、海上ボーリング調査などの各作業について、環境に万全を期しながら粛々と進めていきたい」と述べました。
また、菅官房長官は、記者団が「沖縄県が調査中の作業の中断を求めているが」と質問したのに対し、「全くその気はない。作業は沖縄県の了解を得たうえで行っている」と述べました。
さらに、菅官房長官は、沖縄県の翁長知事が仲井真前知事が埋め立て工事のために出した岩礁を破砕する許可そのものを取り消す可能性もあるという考えを示していることについて、「それはありえないと思っている」と述べました。

| コメント (0) | トラックバック (0)

政府が民間右翼団体と「緊密に連携を取って」セカンドレイプをし続けていること

下記の記事を読んで唖然としたのでNHKの報道記事を記録。
カリフォルニア州高等裁判所「慰安婦への人権侵害は「米下院議会決議だけでなく、日本政府も認めている」と述べ」たものの実は日本政府が乱訴の黒幕だったという冗談みたいな事実 - 誰かの妄想・はてな版(2015-02-26)

最近つとに思いますが、従軍慰安婦問題で(今月に入って南京事件の件も再燃しつつありますが)、本当に日本の政府も社会も、頭のねじが飛んだヒステリー状態に陥ってしまったようです。
というのは、もう全く、話が通じない、聞く耳も持たない状態が広がっているばかりでなく、植村氏への脅迫などに見られるような恫喝、朝日新聞への執拗な攻撃、そして今回の訴訟など、従軍慰安婦問題を取り上げる人たちへの攻撃がエスカレートし、そしてその容認が恒常化していると思うからです。魔女狩りやマッカーシズム、批林批孔運動を彷彿とさせる勢いです。

今回、上記の scopedog 氏が引用されたNHK記事を見て、ウソだろうと目を疑いましたが、NHKサイトに全く同じものがまだ残っていました。本当に唖然とするしかありません。
私が唖然とした点については 上記 scopedog氏の記事が詳細に意を尽くしていますので、そちらを見ていただければと思います。筋の悪い人たちに公的なお墨付きを付けて関係を深めるとは二重に筋が悪いと思いますが、しかしその筋の悪さがわからなくなってしまっているわけですね。

私には、日本の政治行政機構に何となく信頼感があったんです。日本政府は強力な官僚制のお陰でどんな馬鹿な政治家が政権を取ろうが変わらない、少々政治家が暴れても社会がぐらつくことはない、良くも悪くも、官僚支配の国ではないか、と。
ところが、近年になって、地方自治体の首長のトンデモがいとも簡単に行政機構や社会秩序を破壊してしまう例を多数目撃するようになり、その上に、ここ数年、民主党から政権を奪還した安倍自民党政権の下で、どんどん社会の雰囲気が悪くなっていく様子を目の当たりにして、ああ、日本も他の国同様に、mal-governance の効果が現れる普通の国だったのだなあ…と思い直しています。

「慰安婦像相いれず原告と連携」官房長官 NHKニュース(2月25日 13時30分)

菅官房長官は午前の記者会見で、アメリカに住む日本人らが、いわゆる従軍慰安婦の問題を象徴する銅像の撤去を裁判で求めていることについて、「像の設置はわが国の立場と相いれない」として、原告の関係者らと緊密に連携を取って対応していることを明らかにしました。

この中で、菅官房長官は、アメリカ・ロサンゼルス近郊の市に住む日本人らが、公園に設置された、いわゆる従軍慰安婦の問題を象徴する銅像を撤去するよう裁判で求めていることについて、「政府として個別具体的なコメントは控えるべきだと思うが、慰安婦像などの設置は、わが国政府の立場やこれまでの取り組みと全く相いれないものであり、極めて残念なことと受け止めている」と述べました。
そのうえで、菅官房長官は「アメリカは多様な民族、文化的バックグラウンドを持った住民が平和と調和のなかで共生する社会になっており、そういうなかで慰安婦を巡るような出身国によって意見の全く異なる案件を持ち込むことは適切でない。原告の関係者を含む在留邦人とは、わが国の総領事館幹部を通じて緊密に連携を取っている」と述べました。(下線強調部分は引用者)

あと、「産経」(新聞のような何か)は普段は目にしないようにしてるのですが、見てしまったので記録しておきます。

【歴史戦】米慰安婦像撤去訴訟「なぜ日本政府から同調する意見表明ないのか?」 審理で判事が疑問発言、結局は在米日本人側敗訴(1/2ページ) - 産経ニュース(2015.2.26 07:10)

 米カリフォルニア州グレンデール市に設置された慰安婦像などの撤去を求めた訴訟で、同州ロサンゼルスの州裁判所が在米日本人ら原告の訴えを事実上退けたことについて、菅義偉(すが・よしひで)官房長官は25日の記者会見で、「極めて残念なことと受け止めている」と遺憾の意を示した。一方、裁判の過程で、判事が原告側弁護人に対し、像などの設置が日本人の感情を傷つけたとの原告側の主張が事実であれば、「なぜ日本政府から同調する内容の意見陳述書の提出がないのか」と発言していたことが分かった。

 州裁判所は23日までに、原告と被告双方に判断の詳細を説明する文書を示しており、この中で「日本政府が慰安婦に対する恐ろしい犯罪に関与したことについて議論の余地はない。米下院、さらには日本政府自身さえ、慰安婦に対する暴力を認めている」と指摘。旧日本軍ではなく「日本政府」と明記して、政府の責任を強調した。

 慰安婦募集の強制性を認め、慰安婦への「お詫(わ)びと反省の気持ち」を盛り込んだ平成5年の河野洋平官房長官談話を踏まえた見解とみられる。河野談話は国連の場で「慰安婦20万人」などを事実上認定したクマラスワミ報告書にもつながっており、米下院が2007(平成19)年に採択した対日非難決議は同報告書を下敷きにしている。

 今回の訴訟で判事が示した見解は、中国と韓国などによる一方的な歴史認識が米国で定着し、覆すことが極めて難しい状況にあることを示したといえる。

 原告は上級審に提訴する方針。原告側弁護人は上級審でも日本政府から何らかの意見表明がなければ、同じ判断が出る可能性が高いとの見通しを示している。

 一方、菅官房長官は25日、訴訟について、民間人による外国でのものだとしつつも、「慰安婦像や碑の設置は日本政府の立場やこれまでの取り組みと全く相いれないものである。在留邦人の方も恐らく同じ思いで訴訟に踏み切られたんだろうと思う」と述べた。

 ただ、今回の訴訟に政府が関与すれば、民間人が外国で起こした訴訟に関与する前例を作ることになるだけでなく、日本国内の訴訟に外国政府が関与する余地を与えかねないとの懸念が政府内にある。

 原告の一人で米国在住の目良浩一氏は、「裁判で勝利するためには政府の大胆な動きが必須だ」として、河野談話の破棄と訴訟の積極支援を求めている。

【用語解説】米グレンデール市の慰安婦像撤去訴訟

 2013年7月、米カリフォルニア州グレンデール市の公用地に設置された慰安婦を象徴するブロンズの少女像などの撤去を求め、在米日本人らが市側を相手取って起こした訴訟。州裁判所と連邦裁判所の2つで係争中。

曲解が…(ため息)

記事中、
「今回の訴訟に政府が関与すれば、民間人が外国で起こした訴訟に関与する前例を作ることになるだけでなく、日本国内の訴訟に外国政府が関与する余地を与えかねないとの懸念が政府内にある。」
とありますが、上述のNHK報道によれば、菅氏自ら、政府が既に荷担しているということを公言したわけで、もう踏み込んでいるんですよね。
原告の目良氏は、さらに一歩進めて政府に前面に立ってほしいと言っているようです。産経(新聞のようなもの)も同じ意見なのでしょうか(たぶんそうでしょうけど。)

| コメント (0) | トラックバック (0)

2015/02/21

本当の思いつき:ニュースで国に言及するときの傾向を調べる?

NHKなどのニュースで、企業や人などに言及する際に「日本の」や「○○国の」というふうに国籍・出身国に言及することがあります。
これらがどういう文脈で言及されているのか、国による差はあるのか、について調べてみたい。
また逆にとくに言及されないままニュースになる場合もあると思います。それについても調べてみたい。というか、これも調べないと現象を正しく把握したとは言えないでしょう、本当なら。けれど、こちらはかなり手間がかかることが予想されるし、実際には国籍・出身国などが分からないことが多いかもしれません。だからこっちの方は多分お預けかな。

どういう関心かというと、先日レノボが ThinkPad にマルウェアを仕込んでいたというニュースがあって。
日本のニュースでは「中国企業のレノボが」という紹介なのに対して、海外の報道ではことさらに「中国企業」とか言わず、単に「レノボが」という形になっていたというんですね。
まあこのこと自体がどこまで確からしいか判断できないのですが(つまり別に海外で国籍に言及した・しなかった報道を網羅的に見たわけでないので)、ただ、海外の企業や人に言及するときに、よくNHKとかではその国籍を紹介する記憶があるなあ…と。これに何か差別的な偏見が関係しているのかなというのが発端ですね。

今書きながら気がついたけれど比較方法が結構難しいですね、これ。
そもそもの報道に国ごとのバイアスがかかっている可能性があって、その場合はそこを調整しなければならない。例えばA国に関する報道は経済関係、B国については政治関係などとバイアスがあれば、仮に「○○国の」の言及面で特に差がなくても結果が偏る。この効果の分離は結構面倒そうです。そもそも報道の関心の偏りとその国への偏見とが報道行為にも報道文にも同時に影響するのは当然考えられますし。
仮に、どの社会でも発生する出来事のジャンルの分布は大体同じだと仮定しても(どこでも人間が生活している以上、大抵の出来事はどこでも同じように起きるでしょうから)、それら無数の出来事の束の中から何に注目するかの段階で歪みが生じるわけです。そして、その注目した出来事をどのように紹介するかの段階でまた歪みが生じます。問題は、この二つの歪みを分離して測定するのが大変難しそうだということなのです。

どこかに先行研究とかあるのかなあ。メディア論とか文化論の関係で誰かやってるかもしれない。それともそもそも無理筋の発想なのかなという気もしてきました。分離して把握しようというのが筋悪かもしれないし。

ただ事件報道などで「○○人が…」などとするのは偏見を助長するようでイヤですね。逆に全部付けて「日本人の……が」などと必ずするならまだ分かりますが。わざわざ国に言及する意味もよく分からないし。確かに国や出身地が意味を持つ報道もありますけど、そうでないと思われるのに国籍に言及する場合がありますからね。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2015/02/20

外国人技能実習問題:読んでないけど取り急ぎクリップ

最近本当に全然時間がない……。ので、とりあえず私の基本的立場だけ述べておきます。

1.外国人労働者も人間でありたった一度の人生を生きる存在なのだということ。
2.キャリア形成と人生設計という不可逆の時間の流れを無視する制度は必ず離反者が出て多大な社会的費用と人生を失わされる犠牲者が出るということ。
この2点を踏まえない一切の制度に私は反対します。

記者の目:「外国人技能実習制度」見直し=河津啓介(横浜支局) - 毎日新聞(2015年02月19日 東京朝刊)

 ◇「就労」の現実、直視の時だ

 政府は今国会に、途上国の労働者を実習生として受け入れる「外国人技能実習制度」を見直すための関連法案を提出することを決めた。3年の滞在期間を5年に延長することや、受け入れ先の介護分野への拡大などを盛り込む。政府は「途上国支援」と位置付けるが、この制度を利用して入国した外国人の多くが、日本人から敬遠される業界に「労働力」として雇用されている。政府は建前の「実習」を改め、現実に見合った外国人就労制度を制定すべきだ。

 ◇搾取助長する、あいまいな身分

 「実習生なしでは経営が成り立たない」。日本の生産現場では、そんな声が珍しくない。昨年8〜9月に制度の運営を担う「国際研修協力機構」が受け入れ先1103団体・企業に対して実施した調査では、「制度の効果」を三つまで選ぶ設問に63・9%が「人材確保」と回答した。実習生への依存度が高まる中で、安価な労働力として使い捨てにされる事件も後を絶たない。

 1年前、東京都の縫製工場に勤務する中国人実習生の女性たちを取材した。無休で働いても月の手取りは数万円。薄い外壁の工場内に設けられた「宿舎」はすきま風が吹き込み、防寒着が必要だった。トイレとシャワーは、屋外に置かれるような簡易型。天井の鉄骨や床の基礎部分がむき出しになった空き部屋に設置されていた。「凍えながらシャワーを浴びている。最初はシャワーさえなかった」

 全国に約16万人とされる実習生の平均賃金は月約12万円で、法定の最低賃金レベルだ。毎年3000カ所前後の実習先を監督指導している労働基準監督署の調査では、約8割の企業で賃金や就労時間に関する法令違反が確認されている。実習生を支援する「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平事務局長は「日本の都合で働かせているのに『支援だ』と言うおごりが、搾取の背景にある」と批判する。

 事業主と実習生には「教える側」と「教えられる側」の上下関係が生まれがちだ。実習生は特定の受け入れ先で働くことを条件に日本滞在を認められているが、来日費用を借金で工面することが多く、事業主に嫌われて途中帰国させられれば負債だけが残る。「支配と隷属」につながる背景には、そんな立場の弱さがある。鳥井事務局長は「普通の社長さんが圧倒的な支配力を得て、外国人を酷使する悪人に変わる。それが真の恐ろしさだ」と訴える。「実習生」というあいまいな身分が残る限り、国外からも批判される搾取の構造はなくならない。

 ◇介護人材の確保、「支援」と呼ぶ愚

 今年1月23日、介護分野への拡大を議論していた厚生労働省の有識者検討会が、最終的な見解をまとめる会議を開いた。厚労省の担当者が「拡大の目的は、人材不足への対応ではない」と念押しし、多くの出席委員が「『途上国支援』との趣旨ならば理解できる」などと応じた。労働組合出身の委員が「介護の質が担保できず、拡大は反対だ」と訴えても、冷めた空気が広がるだけで結局、厚労省が示した素案がほぼ追認された。

 検討会のやり取りに「裸の王様」の物語を連想した。真の狙いが「労働力確保」なのは明らかなのに、政府が「途上国支援」と言えば、委員たちは虚構に異を唱えず、現実とかけ離れた議論で取り繕う。「実習生は労働者だ!」と声を上げる人はいない。

 本来、介護人材の確保は、日本人の待遇改善も含めた総合的な視野で考えなければならない。その上で外国人が必要ならば、制度を作って受け入れればいい。「実習生」とごまかす限り、外国人材の活用と国内の雇用保護を両立させるための建設的な議論は封じられる。現実の課題から目を背け、小手先の対応を続けるのはあまりに無責任だ。

 制度の存続は、外国人労働者を苦しめるだけでなく、日本の将来をゆがめかねない。

 人口減少という転換期を迎えた日本は、既に外国人の支えなしに社会が成り立たなくなっている。5年後の東京五輪も、実習生を活用して人手を確保しなければインフラ整備が追い付かないと見込まれる。国籍や性別、世代を超えて知恵や力を出し合う「多様性」の社会を構築しなければ、産業界の発展も難しくなるだろう。実習生と同じ程度の短期就労を制度化し、外国人を社会の担い手として正面から迎え入れる総合的な政策を考える時期に来ている。

 関連法案を審議する今国会を、急場しのぎの対応を議論する場に終わらせてはならない。移民社会の入り口に立つ現実を直視し、日本人と外国人が共生する将来像について真摯(しんし)に話し合う姿勢が、政治家に求められている。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2015/02/17

外国人労働者問題、技能実習制度問題、人身売買問題:毎日新聞記事のクリップ

とりあえず論評抜きで記録・資料用にクリップ。
某省に勤めている知人に以前聞いたヨタ話ですが、某省の某局では毎日新聞は嫌われているそうです。
曰く、外国人がらみの人権問題に敏感で某省に批判的だからだそう。
へーそういう印象を持ってしまうんだ……と思いました。

社説:難民受け入れ 「冷たい日本」続けるな - 毎日新聞(2015年01月23日 02時33分)

 地域紛争や内戦の激化に伴い避難生活を余儀なくされている避難民が世界各地で増えている。2013年時点で、第二次世界大戦後最も多い5100万人と推定される。

 そうした現状下、13年に世界各国で難民と認定された人は21万人以上いるが、日本の同年の難民認定者は6人だ。人道的理由で在留を認めた人を含めても157人にとどまる。

 かつて「難民鎖国」と言われた実態は、受け入れ人数から見る限り今も変わっていない。

 こうした中、専門家による法相の私的懇談会が先月、難民政策の見直し案をまとめた。迫害の方法などが多様化しているのに対応した保護の仕組みを創設することなどを提言した。先進国として責任ある難民の受け入れは当然だ。政府は一層の制度改善に取り組むべきだ。

 日本は1981年に難民条約に加入し、翌年、難民認定制度を始めた。13年までの累計認定者数は622人だ。申請は近年急増し、13年はアジアを中心に3260人に上った。

 経済的な豊かさを求め、国境を越えて移動する時代背景もあるのだろう。「迫害を受けるおそれ」という難民の定義からかけ離れた就労目的などの申請も相当数あるとされる。

 一方で、従来の難民の定義では保護し切れない人たちが増えている。アフリカの一部地域に残る女性器切除などの新たな類型の迫害について、既に保護対象にしている国がある。提言は、こうした国際環境の変化への積極対応を促したもので、人権保護の立場から当然の考え方だ。

 ただし、懇談会の報告は、難民受け入れ総数の少なさには踏み込まなかった。欧米諸国などは、難民条約に基づいて年間数千、あるいは万単位の難民を受け入れている。認定は「本人や出身国の個別事情」とする法務省の説明は説得力に欠ける。

 日本は国連難民高等弁務官事務所に世界2位の拠出を行っており、間接的な人道支援への貢献は大きい。だが、実際に難民を受け入れなければ、「難民に冷たい日本」との国際社会の評価は変わらないだろう。

 イスラム国の台頭で、シリアやイラクでは国内外に数百万人の避難民が生まれている。そうした現実を見据えれば、アジアの一員として一歩も二歩も踏み出すときではないか。

 難民認定が国際的な基準に比べ厳しすぎるとの支援団体などの批判を政府はしっかり受け止め、受け入れ拡大策を真剣に検討すべきだ。難民が日本社会に定着できるような社会的基盤づくりも必要である。

 衆参両院は、難民条約加入30年の11年、難民問題で日本が「世界で主導的な役割を担う」との決議を採択した。国会も責任を果たすべきだ。


入管法違反:難民申請悪用を指南 容疑でネパール人の男を摘発 - 毎日新聞(2015年02月05日 東京夕刊)
 来日ネパール人に虚偽の難民認定申請をさせて仕事をあっせんしたとして、入国管理局がネパール人の男(30)を入管難民法違反(不法就労助長)容疑で摘発し、強制送還したことが分かった。難民認定制度は2010年、申請から半年を過ぎて審査が続いている場合、正規在留者に限って就労を認めるようになった。男はこの仕組みを悪用し、指南していたとみられる。

 法務省によると、名古屋入管などが昨年9月、富山県のゴム製造工場で働く外国人50人を同法違反(不法就労など)で調査。その際、ネパール人16人が難民認定申請中で、うち数人の供述から男の存在が浮上。申請から半年を過ぎていないのに仕事をあっせんしていたとして入管当局は同11月、男を収容、翌12月に送還した。こうしたケースの摘発は初めて。

 男はあっせんの見返りに謝礼を受け取っていたといい、調べに対し、100人程度に偽装を指南したと説明。他にも同様の「ブローカー」が複数いることも明かしたという。

 難民認定申請者は近年急増し、昨年は過去最多の5000人前後とみられる。ネパール人は4分の1の1300人近くを占め、制度が改正された10年と比べ10倍以上に増えた。【和田武士】


出入国管理法違反:中国人実習生に不法就労 容疑で2人逮捕 制度不備、犯罪の温床に 実習生に「いい仕事ある」 /広島 - 毎日新聞(2015年01月27日 地方版)
 外国人技能実習制度の問題点が指摘される中、実習生が実習先から失踪するケースが相次いでおり、そんな制度の隠れた側面を悪用した事件が明るみになった。県警は26日、逃げ出した元実習生を不法就労させたとして、さいたま市の会社員の男ら2人を出入国管理法違反(不法就労助長)容疑で逮捕した。実習生の支援者は「日本の労働力に外国人が欠かせない以上、きちんとした受け入れ制度を作らなければ、犯罪の温床になる」と指摘する。【石川裕士、目野創】

 技能実習は、途上国への技術移転を名目に企業などが最長3年で外国人を受け入れる制度。法務省によると、昨年6月現在、国内の外国人技能実習生は約16万2000人。政府は労働力確保を視野に、期間の延長や対象業種の拡充を検討中だが、国際研修協力機構(JITCO)の調査では、2013年度、来日2年目以降の実習生のうち2822人の行方が分からなくなっているという。

 外国人を支援するNGO「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平事務局長(61)は、失踪の理由に「約束よりも稼げない」ケースを挙げる。出稼ぎ目的の実習生が「3年で300万〜400万円稼げる」などと誘われ来日したものの、実際には半分以下しか稼げず、より高給な環境を求めて姿を消す場合があるという。

 県警によると、逮捕されたのはさいたま市岩槻区本宿、会社員、高橋英二(47)と、埼玉県熊谷市新堀、自称人材派遣仲介業、早野巧一(48)の両容疑者。今回、高橋容疑者の下で働かされていた中国人の元実習生2人は、実習期間終了直前に「割のいい仕事がある」と別の実習生に誘われ逃げ出したものの仕事にありつけず、高橋容疑者らのあっせんに応じたという。

 しかし、紹介されたのは大型冷蔵庫内での食品の仕分けで、2人は県警の聴取に「朝から晩まで、ずっと庫内にいて寒かった」と話した。時給は手取り900円だったが、同容疑者らに一部を「ピンハネ」されていた可能性もあり、捜査関係者は「安易に失踪した先がさらにきつい仕事だったとしたら、皮肉としかいいようがない」と話した。

捜査関係者の「安易に」という言葉が引っかかる。

新日系フィリピン人:不法就労で容疑のブローカー逮捕へ - 毎日新聞(2015年02月14日 08時00分(最終更新 02月14日 08時27分))

 日本人の父親とフィリピン人の母親の間に生まれた「新日系フィリピン人」(JFC)らの女性を不法就労させたとして、岐阜県警は13日、来日を仲介したブローカーの男ら約10人について入管法違反(不法就労助長)容疑で逮捕状を取り、岐阜、愛知両県内のパブ計5店舗を家宅捜索した。男は「国籍取得を手伝う」などと持ちかけ、来日した女性にパブで低賃金労働を強いていたとされる。2009年の改正国籍法施行でJFCらの国籍取得が容易になったことを背景に、ブローカーとのトラブルが増えているという。

 捜査関係者によると、男らは、女性に就労できる在留資格がないことを知りながら、パブなどで働かせた疑いがもたれている。

 この男の下から逃げ出した複数の女性やその支援者によると、男は「国際財団」の看板を掲げ、フィリピン人の妻が通訳して現地でJFC母子を勧誘していた。来日させた後、生活費や経費などで「借金がある」と説明し、“返済”のため提携するパブで働くよう指示していた。少なくとも数十人が国際財団の仲介で入国したとみられる。

 改正国籍法によってJFCらは、出生後に日本人の父親らに認知されれば、両親が結婚していなくても日本国籍を取得できるようになった。JFCの母親も、子に日本国籍があれば定住資格が認められやすい。一方で、国際移住機関(IOM、本部・ジュネーブ)駐日事務所には09年ごろから、「ブローカーにだまされた」といったJFCやその母親からの相談が急増している。JFC母子の大半は日本語が不自由で「つけ込む隙(すき)が生じている」と担当者は指摘する。

 アジア・太平洋人権情報センター(大阪市西区)の藤本伸樹研究員によると、国籍取得を支援する人権団体に加え、工場や介護施設など就職先を案内する仲介業者も増えている。だが中には、渡航費を過剰請求する▽休みを与えず低賃金で働かせ、パスポートを取り上げる▽月数万円の貯金を強制する−−など悪質な業者もいる。

 フィリピンの人権団体の女性スタッフによると、こうした業者が日本大使館の近くに軒を並べ、大使館に相談に訪れたJFC母子を勧誘している。【林田七恵、梶原遊、野村阿悠子】

 【ことば】新日系フィリピン人(JFC)
 1980年代以降に主に興行ビザで来日したフィリピン人の母と、日本人の父との間に生まれ、フィリピンで育った子供たち。JFCは「Japanese Filipino Children」の略。戦前や戦中にフィリピンに渡航した日本人の子孫と区別し「新」を付ける。ピークの2004年には約8万人のフィリピン人が興行ビザで入国しており、JFCも数万人以上いるともされるが、全体像は分かっていない。父親に養育を放棄された子供も多い。

新日系フィリピン人:「工場で仕事」実はパブ 手口を証言 - 毎日新聞(2015年02月14日 08時01分(最終更新 02月14日 08時28分))

 父の面影を求めた“祖国”で、約束はほごにされた。日本人の父親とフィリピン人の母親の間に生まれた「新日系フィリピン人」(JFC)らが働いていた岐阜、愛知両県のパブが、入管法違反容疑で岐阜県警の家宅捜索を受けた。来日に関わったブローカーの男の下から逃げ、今も息を潜めて暮らす女性らが、約束にないパブでの労働を強いる手口を毎日新聞の取材に証言した。

 「お金は要らない。ただ、工場で4年間働いてほしい」。大学生だったJFCの女性(20)はフィリピンの首都マニラで昨年6月、日本人の男に来日を持ちかけられた。

 女性が生まれて9カ月後に姿を消したという日本人の父親。その戸籍には入っておらず、20歳の誕生日までに申請しないと日本国籍を取れない。日本大使館に相談しても話が進まず途方に暮れていた時、「JFCを支援している」という「国際財団」の男を知人に紹介されたのだ。

 自分は、周りの友人や親族とは顔つきも、時に振る舞いも違う。私は何者なのか。日本という国や日本人を知れば父に近づき、自分のことも分かるのではないか。「お金だけの問題じゃない。アイデンティティーの問題」。そんな思いで来日を決めた。

 だが大学をやめて7月に来日すると、中部国際空港に迎えに来た男の車は岐阜県のパブに直行した。数日後、初めて“借金”があると告げられた。食費もただという触れ込みだったが、「ご飯を食べるだけでも借金が積み上がる」と言われた。経費が60万円かかったとも言われ、隠れて泣いたが、酔客の接待を断れなかった。

 別の女性(34)もこの男を頼り、日本人との間に産んだ長男(10)=日本国籍=と昨年4月に来日。だが、パスポートを取り上げられ、名古屋市のパブで働かされた。長男を通学させる約束は破られ、外出も止められた。来日前に30万円と約束された月給は8万円しかなく、「逃げれば罰金150万円。(男の)兄弟がヤクザだから、どこに行っても見つける」と脅された。だが長男の将来を考え、男がフィリピンに渡った昨年8月、隙(すき)を見つけて逃げ出した。

 同時期に来日した女性(29)は、長女(7)に既に日本国籍があるのに「訴訟費用に60万円かかった」と、返済を求められた。来日前に工場での仕事を紹介されることになっていたが、4年間パブで働くよう言われた。10月に逃げたが、居場所が発覚する恐れから支援者のつてで転々とした。「早く働きたい」が、男が捜索しているという情報もあり、息を潜める毎日を余儀なくされている。
【林田七恵、稲垣淳】

世界の雑記帳:タイ政府提案の受刑者の漁船労働、人権団体が反対で撤回 - 毎日新聞(2015年01月21日 14時09分)

 [バンコク 20日 ロイター] - タイ政府が受刑者を人手不足の漁船に派遣する案を打ち出したが、人権団体などの反対で撤回した。外務省が明らかにした。

 タイは世界3位の海産物輸出国で、漁業部門の就業者は30万人を超える。多くは近隣諸国からの不法就労者で、しばしば不当な扱いを受けている。また、慢性的な人手不足から人身売買の温床となっている。

 政府は昨年12月、刑期の残りが1年未満となった受刑者について、同意のうえで漁業部門に派遣する計画を提案したが、人権団体は受刑者の人権侵害につながるうえ、労働者不足の根本的な原因の解決にならないと反発していた。

クローズアップ2015:外国人技能実習 期間、職種を拡充 制度のゆがみ放置 - 毎日新聞(2015年02月14日 東京朝刊)

 ◇名目、途上国支援 実態、人手不足の解消

 途上国の若者らを最長3年間受け入れる国の「外国人技能実習制度」について、法務省と厚生労働省の有識者懇談会が先月末、滞在期限を5年間に延長し、監督態勢を強化することなどを柱とした報告書をまとめた。政府は今国会に関連法案を提出し、来年度中の施行を目指すが、今回の見直しでも「実習」の看板は残ったままだ。「途上国支援」を建前にして、外国人を安価な労働力として受け入れ、日本の人手不足を補うという制度の根本的なゆがみは是正されそうにない。【河津啓介】

 「目的は労働力確保ではない」。制度見直しについて、厚労省と法務省の担当者は強調する。だが、狙いが「労働力」にあることは明らかだ。見直しの方向性を決定づけたのは、昨年6月に閣議決定された「成長戦略」だった。

 戦略策定に向け、官民でつくる「産業競争力会議」の分科会を中心に人口減少社会を見据えた経済政策が議論され、滞在期間の2年間延長や、介護分野への職種拡大が早々に打ち出された。分科会の財界出身議員は「人手不足は喫緊の課題」「技能実習制度を労働力確保に生かすべきだ」と強調、「途上国支援」にこだわり慎重姿勢をみせる政府側を批判した。

 民間議員主導で、中長期にわたって外国人を受け入れることを想定したような就労制度の整備も提言され、成長戦略には「中長期的な外国人材受け入れの総合的検討」との文言が盛り込まれた。国際労働市場の問題に詳しい佐藤忍・香川大教授(社会政策)は「国が人手不足の現実を認め、外国人労働者の必要性を明確にしたことは大きな転換点だった」と話す。

 ところが、制度の枠組みを具体的に議論する法務省と厚労省の有識者懇談会に議論の場が移ると、政権肝いりの成長戦略の会議で守勢に回っていた両省の担当者が主導権を握った。背景にあったのは「移民受け入れ」への根強い抵抗感だ。政権内からも「外国人材の活用が移民政策と誤解されてはならない」との声があった。

 議論の主題は「労働力確保」から「技能実習制度の拡大解釈」へとすり替わり、有識者懇談会は先月末、成長戦略に盛り込まれた拡充案を追認する報告書をまとめた。「国際貢献」の文言が何度も登場する一方で、人手不足の問題は触れられなかった。特定の職場で働くことを前提に在留を認められている実習生は、職場を離れれば日本にいられなくなる。報告書には監督機能や罰則の強化策が盛り込まれたが、実習生が今後も転職の自由すらない弱い立場に置かれ続けることに変わりはない。

 こうした状況に、政府関係者からも「もうカムフラージュはやめた方が良い」「日本の労働力確保にも役立てることを制度の趣旨に含めるべきだ」との声が漏れる。

 外国人労働問題に取り組む指宿昭一弁護士は「罰則や監督態勢の強化など、これまでも制度の見直しが繰り返されてきたが、効果はなかった。真の目的は労働者の確保にあるのに、いつまでまやかしを続けるのか」と批判。「実習制度にこだわる限り問題は解決しない。外国人を雇用主と対等な労働者として受け入れる新たな制度を作る必要がある」と指摘した。

 ◇人材獲得、アジアで激化

 「来日するための費用や家族と離れて生活することを考えれば、中国で働いた方が良かった」。首都圏の建設現場で働く30代の中国人実習生は苦笑いした。

 外国人からみれば、日本での実習は「出稼ぎ」に他ならない。経済成長を続ける中国では給与水準も上昇しており、実習生の中には母国で月10万円近くを稼いでいたという人もいる。

 一方、日本での実習生の平均賃金は、最低賃金レベルの月約12万円。来日費用は母国での年収に匹敵し、実習先でのトラブルを理由に途中で帰国した場合は、法外な「違約金」を現地の派遣業者に支払う契約を強いられているケースも珍しくない。過酷な労働実態は中国でも広く知られているうえ、最近の円安もあって、日本で実習する魅力は低下しているという。

 そうした「変化」を、日本の受け入れ側も感じ取っており、「中国人も豊かになってハングリー精神が薄れた。きつい仕事を嫌がるようになった」(農業団体職員)との声も出ている。日本の仲介団体は、安価な賃金でより熱心に働く人材を求め、近年はカンボジアやミャンマーにまで募集の手を広げるようになった。

 実習生の出身国を見ると、中国が最大の送り出し国だが、全体に占める割合は2011年末時点の75%から、昨年6月末には65%にまで低下した。その間に実習生の総数は2万人増えている。中国人の減少分を他のアジア諸国が補い、上乗せしている格好だ。

 一方、労働力確保は日本だけの課題ではない。アジアでも人材獲得を巡る国際競争は激しさを増している。「採用試験の倍率が下がっている」「他国で就労ビザが簡単に発給されるため、日本が選ばれなくなった」。昨年、実習制度の運営を支援する公益財団法人「国際研修協力機構」が受け入れ団体・企業1103機関に実施したアンケートには、こんな声が寄せられた。

 例えば、韓国は04年に外国人労働者の受け入れに踏み切り、現在は最長で通算約10年間の就労が可能だ。シンガポールは華僑・華人が多く中国人労働者が溶け込みやすい上、英語が公用語で他国の労働者が働きやすい。マレーシアも多民族、多宗教国家だ。

 ベトナムの労働者派遣会社の日本駐在員は「出稼ぎ労働者は長く働けて、待遇面で恵まれた国を選ぶ。日本語は難しく外国人にはハードルが高いし、他の国と比べて特別に条件が良いわけではない」と指摘する。各国が人材確保に手を打つ中、外国人労働者への門戸を閉ざしたまま技能実習制度の拡大解釈を続ける日本の「ガラパゴス化」が際立っている。

 明治大の山脇啓造教授(移民政策)は「日本は既に多くの外国人を受け入れ、定住も進んでいる。少子高齢化が進む中、国の活力を維持するには、社会の多様化はもはや避けられない。外国人の出入りを管理するだけでなく、外国人の権利や生活環境を支える政策を実行し、日本人と共生できる社会を築くべきだ」と提言している。

外国人技能実習制度の見直しのポイント
拡充受け入れ先と実習生が一定要件を満たせば、実習期間を3年間から最長5年間に延長
受け入れ枠を従業員数の最大5%から倍増
職種を介護分野に拡大するほか、職種の追加をより柔軟に
監督強化相手国との間で2国間協定を結び、現地の悪質業者を排除
新たな監督機関を設置。法的権限を与え、抜き打ち検査などを導入
通報・相談窓口を整備し、人権侵害行為への罰則を強化
Photo
出所:上記記事, 毎日新聞2015年02月14日東京朝刊

| コメント (0) | トラックバック (0)

2015/02/16

学校のエアコン問題から離島の悲哀を感じた流れの記録

所沢市の住民投票のニュースを見る→条例に疑問を持つ→他自治体の事例を検索する→伊是名村の事例が見つかる→伊是名村の条例を検索する→琉球新報の記事が見つかる→「安愚楽牧場」の誘致問題!?とびっくりする→疑問が浮かぶ。
1.安愚楽牧場の危うさに当時の人たちは気付いていたのだろうか。報道には出てきていないけれど。
2.島の人や当時の関係者は当時のことをどう思っているのだろう?胸をなで下ろしたのだろうか。
3.誘致当時の裏事情ってものはなかったのだろうか。そもそもどういういきさつだったのか。

…で、検索してみたのだけれど、あまりヒットしない。
まあ当事者や地元の人は「伊是名」と「安愚楽」の両方の語をわざわざ書いたりしないだろうから簡単には見つからないだろうけど。
他方、安愚楽牧場関係のこの頃の書き込みはたくさん見つかる。どす黒い毒霧に心が蝕まれる。子どもは見てはいけない。

こちらは伊是名村の方なのかちょっと分からないけれど。
くらしの悩み、なんくるないさ!:安愚楽牧場破産で(2011年11月10日)

安愚楽牧場は,かつて伊是名島に牧場を開設しようということで,島内を二分,住民投票の末,わずか1票差という僅差で誘致派が多数を取ったものの,村としては誘致を取りやめた経緯があります。

振り返ってみれば,非常にきわどい話で,伊是名島にも大きな禍根を残しかねない話しでした。

代わりに変なものを見つけた。

中山なりあきさんはTwitterを使っています: "南大東島で偶然副村長に出会い、いろんな話を聞き、島内も案内して貰う。安愚楽の倒産で畜産は無くなり、水田なく、カボチャが少し、後は砂糖キビだけ。きれいに整備され、休耕畑なし。さとうきびは島を守り島は国土を守る、と製糖工場の煙突に大書。周囲20キロ、人口1300人。小、中学校も訪問。"
知る人ぞ知る中山氏がビミョーなつぶやきを残されていた。
てか安愚楽牧場って南大東島まで行っていたのか。改めて離島の悲哀を感じる。

まあ関係者以外は触れてはいけない話なのかもしれない。どんな小さな社会でもそうなんだけど、闇って存在するよねえ、と…あぁいやいやゲスの勘ぐりでした。私もすっかり毒に侵されてますな。

伊是名 北海岸にヘドロ/牧場誘致で拡大を懸念(2007/10/03 00:00 【沖縄タイムス】)

 【伊是名】伊是名村が全国各地で黒毛和種牛を飼育する安愚楽共済牧場(栃木県・三ヶ尻久美子代表)の誘致を進めている内花区の海で、近年、ヘドロがたまり、魚や貝が採れなくなっていることが分かった。近接するごみ最終処分場や、土地改良事業に伴う赤土流出などが原因とみられる。地元を中心に、牧場建設による汚染拡大への不安が広がっており、県農林水産部水産課は九日、海の水質や底質など現地調査に乗り出す。
 同区は村の北側に位置し、人口約二百人の集落。一般廃棄物最終処分場や堆肥センター、個人牧場などの施設が周辺に集中。大雨のたび、ごみや牛ふんが混じった汚水が海に流れ出し、浅瀬の砂に異臭を伴うヘドロとなって蓄積されている。
 区によると、以前はイセエビも捕れる豊かな漁場だったが、数年前から海で採った貝から泥のにおいがし、魚が捕れなくなったという。
 村モズク生産部会の諸見豊次会長(71)は「ごみ処分場から有害物質が出ていないか、健康被害が心配だ。新たな牧場は島を囲むモズク養殖場にまで汚染を広げる」と懸念。「水質調査をはじめ、ヘドロの除去と沈砂地の設置が急務」と指摘する。
 一方、村は同区の村有地七・六ヘクタールに二千頭の牛を飼育する牧場誘致を計画。堆肥センターを増築して排出されるふんを処理し、サトウキビの有機栽培に生かしたい考え。約二十人の雇用創出も期待する。
 前田政義村長は「環境問題については、法的に縛りのある協定書を安愚楽牧場と結んでおり、海の汚染はない。JAのアンケートでは、村民の七割以上が誘致に賛成しており民意に沿って計画を進める」と話している。

伊是名住民投票 牧場誘致は民意踏まえて - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース2008年4月30日 社説

 牧場誘致による牛舎建設の是非を問う伊是名村の住民投票は、賛成461票、反対460票となり賛否が拮抗(きっこう)、農業振興と環境保護のはざまで揺れる村民の思いを映し出す結果になった。
 村民の意向を村政に反映させるため、牧場誘致を目指す村当局が住民投票を提案した。「村長は投票結果を尊重しなければならない」と住民投票条例は定めているが、投票結果に法的拘束力はない。
 賛成が反対を上回ったとはいえ、その差はわずか一票。過半数に迫る反対者がいる中で、果たして誘致計画を進めることができるのか。
 ごり押しすれば、ほぼ半数の民意を切り捨てることになり、村民を二分する事態にもなりかねない。
 村当局は、計画を推進したいのなら、反対する住民に対し懇切な説明を尽くし、納得させるだけの環境保全策を示すべきだろう。
 村が誘致しているのは黒毛和種の繁殖・肥育を手掛ける安愚楽(あぐら)共済牧場(栃木県)。伊是名村内花区の村有地約8万1千平方メートルに2千頭規模の牧場を誘致し牛舎を建設させる計画になっている。
 牧場から出る牛糞(ふん)をサトウキビの堆肥(たいひ)として活用し「耕畜連携」を図る。誘致に伴い、既存の堆肥センターを増設する方針だ。20人規模の新規雇用も見込まれるという。
 村議会も「農業を主産業とする村にとって大変有意義な計画」として、2007年8月の臨時議会で牧場誘致を賛成多数で決議、計画を後押ししていた。
 これに対し地元・内花区の住民らは牧場建設で悪臭や汚泥流出が予想されるとして猛反対、撤回を求めている。
 牧場の誘致は、農業を振興し島の活性化を図るという点で、大きな経済効果が期待できる。にもかかわらず、460人もの有権者が反対したのはなぜか。
 たとえ経済的に潤ったとしても環境が破壊されてしまっては困る―と考えたからではないか。
 周辺に悪臭が漂ったり汚水が海に流出したりする事態を招かないための有効な手だてを示さない限り、反対する住民の懸念を払拭(ふっしょく)することはできないだろう。
 伊是名村は琉球王国第二尚氏の始祖・尚円王の生誕地として知られる。伊是名城跡、銘苅家住宅、伊是名集落のフクギ並木など多くの観光名所がある。旅人を手厚くもてなす温かい島人の気質を表す「イヒャジューテー」という言葉があるほど人情あふれる土地柄だ。
 その風光明媚(めいび)な島で今、農業振興と環境保護をめぐって意見が真っ二つに割れている。議論を深めるのはいいが、感情的なしこりを残せば島の良さが失われかねない。
 村当局には、民意を十分に踏まえた対応が求められる。

宮崎から沖縄へ牛ふん供給|freeml byGMO(2004/06/16 22:29)
biomassMLというメーリングリストからの転載らしい。2004年には関係があった。これが後の汚水問題につながるのかな。

>■宮崎日日新聞(宮崎市)---------------- http://www.the-miyanichi.co.jp/
>・児湯牧場から沖縄へ牛ふん供給
http://www.the-miyanichi.co.jp/news/index.php3?PT=2&DT=20040615
 農業生産法人・安愚楽共済牧場(本社栃木県那須町、三ケ尻久美子代表)は、今月末から高鍋町上江の児湯牧場で排出する牛ふんを地力低下に悩む沖縄県北部の離島・伊是名村に供給する。同村は牛ふんをたい肥化し、基幹産業のサトウキビの収量アップに生かす。同牧場では「牛ふんの減量化につながる」と歓迎している。
 児湯牧場では約六千頭の黒毛和牛を飼育、毎月八百トンの牛ふんを排出している。計画によると、今年は今月末に予定している八百トンを含め、年間三千トンを三回に分けて供給する。
 同牧場で袋(約七百キロ入り)詰めまでを行い、鹿児島県志布志港からチャーター船で運ぶ。同村はその後、地元のたい肥センターでサトウキビの葉と混ぜ合わせ、たい肥化し、農家に売却するという。袋と運送費用は村側が負担する。
 児湯牧場では「連続発酵乾燥たい肥処理施設」を導入、有機肥料を作るなど環境へ配慮した取り組みを進めている。宮崎支店の伊藤正信支店長は「児湯郡内は牛ふんに限らず畜ふんは過剰状態にあり、少しでも緩和につながればと思う。こちらにとってもありがたい」と話している。
 伊是名村は人口約二千人で、農家の約九割がサトウキビを栽培している。春、夏の二回の植え付けで計百三十ヘクタールを栽培しているが、地力低下のため、収量は一九九五年をピークに年々低下しているという。同村農林水産課の仲田富好課長は「収量減は深刻。安定して牛ふんが供給されるので、地力アップが図れると思う」と期待している。

どこかの報道の転載記事。日付は報道日ではない可能性がある。
伊是名・牧場誘致住民投票 民意真っ二つ - 沖縄情報発信(2008年04月28日)

 伊是名村内花区に計画されている牧場誘致による牛舎建設の是非を問う住民投票が27日、実施され、賛成が461票、反対が460票とわずか1票差で賛成が上回った。投票総数は947票で、無効票が26票あった。投票率は71・36%。

 建設に対する村民意見が二分する結果となったことを受けて、誘致の立場の前田政義村長は「厳しい結果だ。村民の下した結果として真摯(しんし)に受け止めたい。個人としては(牧場)誘致の方向で考えていきたいが、今のところは全く白紙。関係者と十分協議して慎重に考えていきたい」と述べ、慎重に検討した上で結論を出す考えを示した。
 一方で、牧場誘致と牛舎建設により悪臭や汚水流出で環境が悪化するとして反対してきた内花区の名嘉広一区長は「一票差で負けはしたが、勝ったつもりでいる」と述べ事実上の勝利宣言をした。「(牧場誘致は)内花区だけではなく、島全体の問題だ」と話し、今後も計画撤回を求めて運動を展開していく方針だ。

 黒毛和牛の繁殖や肥育を手掛ける安愚楽(あぐら)共済牧場(本社・栃木県)を誘致し、2000頭規模の牧場から出る牛ふんをサトウキビの堆肥(たいひ)に充て、堆肥センターを新たに建設する計画。建設予定地の内花区住民らが悪臭や汚水流出などで環境悪化が懸念されるとして反対していた。

どこかの報道の転載記事。日付は報道日ではない可能性がある。
伊是名村 牧場誘致を断念 - 沖縄情報発信(2008年05月19日)
 伊是名村(前田政義村長)が同島内花区に計画していた牧場誘致に伴う牛舎建設問題で、前田村長が、同区への牧場誘致を白紙に戻すことを関係者に伝えていたことが十九日、分かった。同計画をめぐっては今年四月、環境悪化を理由に誘致の是非を問う住民投票が行われ、賛否が二分していた。
 前田村長は「住民投票の結果を重く受け止めた」と白紙撤回の理由を説明。今月十七日に誘致を予定していた安愚楽共済牧場(栃木県)を訪ね、方針を伝えたという。

 ただ「村の振興につながる牧場誘致自体を断念したわけではない」としている。

 今後については「現時点では何も決めていない」と話した。同区への誘致がなくなれば、JAおきなわが予定していた堆肥センター増設工事も事実上白紙となる。村は十九日午後、記者会見し、正式に発表する予定。

 環境悪化を理由に反対運動を続けてきた内花区の名嘉広一区長は「誘致断念となれば、一年間の反対行動が報われる思いだ。村長は住民投票を重く受け止めたのだろう」と話した。

「牧場誘致自体を断念したわけではない」とする村長の言葉。安愚楽の誘致は進められないという判断だったのか。

| コメント (3) | トラックバック (0)

エアコンぐらい付けてあげたらいいのに…と思ったら、思わぬ勉強をしてしまったでござるの巻

エアコン設置「賛成」 3分の1には達せず NHKニュース(2月15日 23時50分)

埼玉県所沢市で航空自衛隊の基地周辺にある小中学校にエアコンを設置するかどうかの是非を問う住民投票が15日行われ、設置に賛成する票が反対を上回りました。しかし賛成票は「結果の重みをしん酌しなければならない」とする有権者の3分の1には達しておらず、結果を受けて市長がどのような判断をするのか注目されます。
…中略…
一方で投票率は31.54%で、賛成票は「結果の重みをしん酌しなければならない」と市の条例が定める有権者の3分の1には達しませんでした。
住民投票の結果について、所沢市の藤本正人市長は「結果についてはこれから分析を行うが、これまで国内の自治体で実施した住民投票と比べると、決して高くない投票率だったのが残念です」というコメントを出しました。(後略)
市長のコメントからはそこはかとないアレな香りが漂ってくるような気がしますが、それは措いておいて。

「『結果の重みをしん酌しなければならない』と市の条例が定める有権者の3分の1」
ここに引っかかりました。

今回の投票率はそもそも3分の1未満なので、賛成も反対も3分の1未満。
すると、市長は賛成も反対も「斟酌」できない or する必要はないのでは?
賛成にせよ反対にせよ、3分の1を超えることが要件だとかなり大変では?
そもそも、「斟酌する」って具体的にどういうこと?

というような疑問が浮かんだわけです。

仮に無効票がゼロとしても、賛否が拮抗していたら片方が3分の1を超えるためには投票率が3分の2以上、即ち67%程度を越えなければいけない。それって都市部では非常に大変なハードルではないか。
逆に片方がほぼ圧倒的なら投票率は3分の1でいいけれど、そんなことはあり得ないだろう。言い換えると、投票率を40%とか50%とか以上にすることを住民投票に要求されているということになる。こんな二重のハードルを設置するのは要するに住民投票の結果に拘束されたくないという行政(というか市長かな責任者だから)の思惑が反映しているのじゃないか。

とまあ、こう思ってですね、とりあえず本件条例を見てみました。

市条例第67号「防音校舎の除湿工事(冷房工事)の計画的な実施に関する住民投票条例」(所沢市)

(投票結果の尊重)
第11条 市長及び市議会は住民投票の結果を尊重しなければならない。この場合において、投票した者の賛否いずれか過半数の結果が投票資格者総数の3分の1以上に達したときは、その結果の重みを斟酌しなければならない。
「結果尊重」の義務を課していながら、さらにその上に「結果の重みの斟酌義務」を課すという二重構造になっているみたいに見えます。
そうすると、初めの「結果尊重」と「結果の重みの斟酌」とはどのように区別されるものなのだろうという疑問が出てきます。「尊重」+「斟酌」なので、たぶん、ただの「尊重」よりも投票結果に従う必要が高まるのだろうとは思います。

ただ、今回の結果は賛否どちらも3分の1に達していないので、この規定によれば、「斟酌」はどちらについても必要ないわけです。
すると「結果尊重」だけが残ります。「結果」は賛成多数だったわけで、それを「尊重」すればいいわけですが、さて「尊重」って何をすればいいのか。別に市長は従う義務はないわけですし。まあそもそも「斟酌」を付けても従う義務はないのですけど。

で、こういう「斟酌」は他の事例ではどう扱われているのか。
そう思って他の自治体の条例がどうなっているか見てみたわけです。

で結果を先に言うと、「斟酌」という言葉は見つからなかったのですが、類似規定のある先例がありました。それと、もっと厳しい制限のある条例もありました。
感想を言うと、基本的にはこういう制約は設けるべきではないと思いますが、常設型ならまだ分かる気もします。でも個別問題ごとに住民投票条例を作る場合は、こういう規定は良くないと思いましたね。
……ただ、結局「斟酌」って具体的に何なのかは分からないままでしたけれど……。

さて、以下はちょっと検索してみた結果です。
まず、条例を探したら下記2件がとりあえずヒットしました。

「神戸空港」建設の是非を問う住民投票条例案(1998)神戸空港を考える神大の会

(住民投票に関する市長の義務)
第14条 2 市長は、地方自治の本旨に基づき、住民投票における有効投票の賛否いずれか過半数を得た結果を尊重しなければならない。

佐久市総合文化会館の建設の賛否を問う住民投票条例(素案)(2010)佐久市
(投票結果の尊重)
第14条 市長は、住民投票の結果を尊重するものとする。

上の二つには「斟酌」は出てきません。
どうも必要が生じると、その都度その問題にだけ絞って住民投票条例を作るみたいなんですね。いくつも事例はあるようなんですが、肝心の条例がなかなかヒットしません。

ただ、常設型の住民投票条例というのがあるそうです。
鳥取県が事例研究をした文書がヒットしまして、それから見てみると、「斟酌」規定は出てこないんですね。
1. 住民投票条例を常設している市町村が4つある(川崎市、北栄町、日吉津村、広島市)。
2. 各市町村の住民投票結果の取り扱いの条文は下記の通り。
常設型住民投票条例を持つ4市町村の条文(投票結果の取扱い該当部分)(鳥取県)

条例名対象事項に関する条文
川崎市住民投票条例(結果の尊重)第 28 条 議会及び市長は、住民投票の結果を尊重する。
広島市住民投票条例(投票結果の尊重)第 15 条 市民、市議会及び市長は、住民投票の投票結果を尊重しなければならない。
北栄町住民投票条例(投票結果の尊重)第 15 条 町民、町議会及び町長は、住民投票の結果を尊重しなければならない。
日吉津村住民投票条例(投票結果の尊重)第 22 条 村民、議会及び村長は、住民投票の結果を尊重しなければならない。

3. 「尊重」に関する上記自治体の考え方は下記の通り。
常設型住民投票条例を持つ4市町村の考え方(結果の取扱い該当部分)(鳥取県)
○川崎市住民投票条例逐条解説
○「尊重」とは、単に投票結果を参考とすることにとどまらず、投票結果を慎重に検討し、これに十分な考慮を払いながら、議会と市長が意思決定を行っていくことと考えられる。このため、議会と市長は、それぞれの意思決定について、住民に対する十分かつ明確な説明責任を果たす必要があると考えられる。
○住民投票の結果は、本来、誰もが尊重すべきものであるが、市長・議会と住民とではその責任の重さが異なり、また、住民投票は、議会と市長の意思決定にその投票結果を反映させるものであるという点を考慮する必要がある。このことから、自治基本条例第31条でも、投票結果を尊重するとされているのは市長と議会であり、住民に対する尊重義務は規定されていない。
○北栄町自治基本条例逐条解説
住民投票の結果は、法的拘束力はありませんが、町民の意思を真摯に受け止め、町長と議会は、住民投票の結果を尊重すべきものとしています。
○日吉津村住民投票条例逐条解説
住民投票は法的拘束力をもたぬものの、村民による総意として、その結果については、村民、議会そして村長が当然尊重すべきものと明記しています。
○広島市住民投票条例逐条解説なし。
というわけで、「斟酌」的な何かは「尊重」という表現に既に含まれていているという考え方のようにも見えます。

で、この鳥取県の研究よりも包括的で日付が新しそうな論文が見つかりました。
小川正「常設型住民投票条例における住民投票の対象事項該当性 広島高判平成24年5月16日(LEX/DBインターネット25481762)」自治総研通巻429号 2014年7月号
これによると、常設型の住民投票条例を持つのはこの時点で54団体だそうです。
で、この論文末に資料の表がありまして、ここに常設型住民投票条例の「成立条件」というのがあるんですね。これによれば、
1.投票率が一定割合(2分の1や3分の1など)を超えないと不成立
という規定を設けている自治体が結構多いです。

で、今回の所沢市のケースの先例に当たるのが、
2.賛否どちらかが有権者の一定割合(3分の1)を超えたら結果を尊重
という規定を設けている自治体で、それは2例ありました。我孫子市と小金井市です。

これらの例から見ると、今回の所沢市の条例は、投票率で住民投票の有効性を判定する基準としては中間的な厳しさを持ったものだと言えるでしょう。すなわち、投票率が低ければ不成立というON/OFF2値の判定基準が最も厳しいと言え、こうした制限を設けないのが最も易しいと言えます。そして今回の条例は、ただ投票率が低ければその結果尊重の程度が低くなるという規定なので、上記2者の中間的存在だろうということです。

しかしながら、上で述べたとおり、本来はこうした制限は設けるべきではないのではないかと思います。
常設型の場合は、一旦住民投票にかかってしまえば極めて低い投票率による結果に政策判断が左右されるという危険を避ける意味はあると思います。実際、市町村長の単独判断で実施可能とする条例が多いので、歯止めを掛けないと長の専横の道具になりかねませんし。ただ、これはそもそも住民による住民投票発議の要件と市町村長の要件との非対称性が原因だとも言え、そう考えると、この権利の非対称性の弊害をこういう制限で押さえるという方法は正当だとは言えないと思います。
そして、非常設型の場合は、住民投票条例が成立するまでに、条例制定の直接請求を通した上に議会で可決されなければならないというかなりのハードルが住民側にはあるわけです。既にそのハードルを超えてきているものにさらにこうしたハードルを付けるのは、代議制の限界を補完する制度という意味でもその存在意義を弱めすぎるのではないかと思います。そもそも住民投票結果は「尊重」しさえすればよくそれに従う義務はないという弱い意味しかないのですから、余計にそのように思います。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2015/02/15

朝日新聞記事をコピペしてる世界日報が朝日新聞を批判してる件

朝日新聞の論説記事からコピペして自分の社説を作ってる世界日報さん。
参考:朝日新聞、統一教会の広報紙「世界日報」からコピペされる。: 思いついたことをなんでも書いていくブログ

また朝日ネタで記事を稼いでいます。
今度は朝日批判ですが、毎度お世話になっておりま~す的な。
統一教会はもう朝日新聞社に菓子折でも持って挨拶に行った方がいいんじゃないか。

で、今回のネタはこれ。
誤解される曽野氏の“棲み分け論” | オピニオンの「ビューポイント」(2015/2/15  コラム [ウィーン発コンフィデンシャル])

「ウイーン在住」氏の連載コラムという体裁で、今ちょっとホットイシューになっている曽野綾子さんのコラムを応援しています。
自然発生的なセグリゲーションだったら構わないとか二重の意味でダメダメな議論で本論は読む価値がありませんが、そもそも拾うメリットのない火中の栗をなぜわざわざ拾いに行くのか…オマケに曽野さんカトリックだし…等々の謎はさておいて。

で、別に朝日新聞が曽野氏批判の旗を振っているわけではない――ていうか、海外メディアで炎上が始まって、その様子を見ておそるおそる毎日が
「何か、産経新聞に抗議文とか来てるらしいっすよ」
的な
「オレ、別にこの件で何か賛否とか判断とかしてるわけじゃないっすから。単に事実報道っすから」
という感じの記事を上げて、そうしたら次にやっと朝日が記事を出した――という経緯なんですけど。

でも、世界日報的には、やっぱり朝日新聞しか見えていないんだなあ。

朝日新聞電子版を読んでいると、小説家の曽野綾子さんが産経新聞に掲載した2月11日付のコラムが批判されている。
…中略…
 朝日新聞は早速、海外メディアを巧みに利用して、「人種隔離政策だ」、「南アのアパルトヘイト政策を想起させる」といった類の批判の声を紹介している。
…中略…
…それだけに、朝日新聞社には自社の誤報を暴露した産経新聞憎しの思いが強いことは理解できるが、朝日新聞社は曽野さんのコラム批判でも、曽野さんが書いていないアパルトヘイト(“強制的な”人種別居住地政策)を持ち出し、批判している。

 朝日新聞社はよほど「強制的」という言葉が好きなのだろう。「強制的」でないと、記事にならないと考えているかのようだ。“強制的”に慰安婦にする、強制的に人種別居住地化、といった具合だ。朝日新聞社は慰安婦問題の誤報で謝罪表明し、社長が退陣に追い込まれたが、この歴史的大誤報から同社が何も教訓を引き出していないことが今回の曽野氏のコラム批判で図らずも明らかになった。

えーっと、海外メディア(多数)は曽野氏の文章どころか安倍政権まで対象を広げて手厳しく批判してますけど、そっちはどうでもいいんですかね。ウイーン在住の割に、ずいぶん日本メディアにご執心なご様子で…というか、どんだけ朝日ラブなんだよ!っていうね。ちょうどバレンタインシーズンだし、菓子折よりチョコレートをプレゼントした方がいいね。

***
参考:多分この記事を批判しているんだと思う。(というか批判対象記事の明示すらしない世界日報さん。朝日新聞をまるごと愛してるんだな。)
曽野氏コラムは「人種隔離容認」 南ア大使が産経に抗議:朝日新聞デジタル(2015年2月14日23時00分)

 産経新聞社は14日、同紙の11日付朝刊に掲載された作家、曽野綾子氏のコラムについて、南アフリカのモハウ・ペコ駐日大使らから抗議を受けたことを明らかにした。アパルトヘイト(人種隔離)政策を容認する内容だとして、インターネット上で批判を浴び、海外メディアも報じていた。

 コラムは「労働力不足と移民」と題して、介護分野での外国人労働者の受け入れの必要性を指摘。「居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい」と書き、人種差別の廃止後の南アで、生活習慣の違いから白人と黒人が分かれて住んだ例を紹介した。

 産経新聞社広報部によると、大使からの抗議文は「アパルトヘイトを許容し、美化した。行き過ぎた、恥ずべき提案」との内容だった。NPO法人「アフリカ日本協議会」(東京)も産経新聞社と曽野氏に抗議したという。

 コラムをめぐっては、掲載後からツイッターで「アパルトヘイト擁護だ」などと問題視する声が広がり、ロイター通信など海外メディアが「首相の元アドバイザーがアパルトヘイトを称賛」といった見出しで報じた。

 産経新聞は「当該記事は曽野綾子氏の常設コラムで、曽野氏ご本人の意見として掲載しました。コラムについてさまざまなご意見があるのは当然のことと考えております。産経新聞は、一貫してアパルトヘイトはもとより、人種差別などあらゆる差別は許されるものではないとの考えです」との小林毅・東京編集局長のコメントを出した。(斉藤佑介)

***
産経新聞:曽野綾子氏コラムにNPO法人が撤回求め抗議文 - 毎日新聞(2015年02月14日 12時44分(最終更新 02月14日 15時35分))
 ◇「アパルトヘイト擁護する内容が含まれる」と

 産経新聞が掲載した作家の曽野綾子氏のコラムに「アパルトヘイト(人種隔離)を擁護する内容が含まれている」として、アフリカの地域自立を支援しているNPO法人「アフリカ日本協議会」(東京都台東区)は14日までに、産経新聞と曽野氏あてにコラムの撤回などを求める抗議文を送ったことを明らかにした。

 同協議会が問題視しているのは、産経新聞11日付朝刊の「労働力不足と移民」と題したコラム。曽野氏は労働力不足を緩和するための移民の受け入れに言及し、「20〜30年も前に南アフリカ共和国の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった」などと書いた。

 同協議会は「人種ごとに居住区を分けることがすべてのアパルトヘイト政策の根幹にあった。アパルトヘイトを擁護し、導入せよとの主張は言語道断」などと訴えている。

 産経新聞社は毎日新聞の取材に対し、「抗議文は現時点(14日正午)で受け取っておらず、コメントできない」としている。【山本将克】

| コメント (0) | トラックバック (0)

経済合理性を失いつつある原発

原発廃炉:米国で相次ぐ 安いシェールの火力拡大 - 毎日新聞2015年02月14日 21時12分(最終更新 02月14日 23時43分)(魚拓1魚拓2図の魚拓

1.電力自由化→価格競争
2.シェール革命で火力発電のコストが安くなった
3.風力発電にも押されている
4.電力規制→料金収入が安定(要するに高価格を維持できる)→原発新設の動き

・シェール革命→ガス火力のコスト低下+原発の安全対策コスト増
・再生可能エネルギーへの補助金等→風力発電など普及
・原発中心だった夜間電力供給→風力普及で電力が余る→原発利益減
・オバマ政権の地球温暖化対策→原発推進→3基建設中(全て電力販売規制地域)
・新増設が続くかは「補助金など政府がどの程度の推進策を新たに出すか次第」

相対価格は採算性などはそれこそ風任せというか時代情勢によって変化するので、原発のような長期操業を前提とした施設の場合、一概に「もはや原発に経済合理性は全くなくなった」とは言えないと思います。
しかしながら、現状において規制と補助金がないと維持困難になっている原発をこれ以上存続させる意味はないと思いますね。そもそも費用計上されていない隠れたコストが大きすぎますし、放射性廃棄物という極めて面倒なものを増やし続けますし。
再生可能エネルギーへの移行が望ましいですが、困難な分はまだ火力によるCO2排出と電力価格上昇の方がマシではないかと思います。それにエネルギー価格が上がれば補助金や規制がなくても電力会社は自主的に原発を復活させようとするでしょうしね。

 【ワシントン清水憲司】世界で最も多く原発を保有する米国で、原発の廃炉が続いている。電力自由化に伴う価格競争が激しくなる中、シェール革命で火力発電のコストが安くなり、原発の優位性が低下。風力発電にも押されているためだ。電力規制が残って比較的安定した料金収入を得られる地域では新設の動きもあるが、米国の電力需要の約2割をまかなう原発の存在感は低下するとの見方が根強い。

 昨年末、北東部バーモント州のバーモント・ヤンキー原発が運転を終了した。米国では、2013年春、約15年ぶりにキウォーニー原発(ウィスコンシン州)が廃炉になって以来、4発電所5基が運転を終了、100基超あった米国内の原発は99基に減った。19年にもさらに1基が停止する。

 ヤンキー原発は1972年に運転を開始。老朽化を懸念する環境団体が廃炉運動を展開したが、米原子力規制委員会(NRC)は32年までの運転を認めていた。

 廃炉に追い込まれたのは、原発が利益を出しにくくなったからだ。同原発を運営してきた米電力大手エンタジーのビル・モール社長は「経済的要因が第一の理由だ」と説明する。シェール革命によるガス火力のコストが低下し、電力価格が下がる一方、原発は安全対策などのコストが増えた。

 米国では、電力市場の仕組みが地域ごとに異なる。電力販売が自由化された北東部や中西部では価格競争が激化。安価なシェールガスを使えるガス火力の発電比率が08年の約2割から12年には約3割に拡大、州政府などから補助金や税制優遇を受けた風力発電など再生可能エネルギーも普及し、原発は押され気味になった。

 従来、需要が少ない夜間の電力は、昼夜を問わず一定出力で運転する原発を中心にまかなっていたが、風力発電が増えて夜間電力が余るようになった。事業者間で売買される電力価格が「0ドル」になるケースもあり、原発の利益を押し下げた。原発は建設費が巨額でも、発電コストが安く、火力発電などに比べ優位とされてきたが、電力価格が大幅に値下がりすると、投資回収のリスクが高まる。

 米シンクタンク資本形成協議会(ACCF)のデビッド・バンクス氏は「原子炉が1基しかないような小規模発電所ほど競争力が低下する。現行制度では、少なくともあと6基が閉鎖の危機にさらされる」と指摘。30年までに原発の発電規模は2割減る可能性があると分析する。

 一方、オバマ政権は地球温暖化対策の強化に向け、再生可能エネルギーとともに原発を推進する方針を掲げ、建設中の原発も3カ所ある。いずれも電力販売の規制が残り、安定した収益を期待できる地域だ。ただ、今後も新増設が続くかは「補助金など政府がどの程度の推進策を新たに出すか次第」(日系原子炉メーカー幹部)。原発の“うまみ”が減る中、新増設の方は事業者の期待ほど進まないとの見方が根強い。

原発依存か、脱原発か:【基礎知識】原発のごみの捨て場所はあるのか? - 毎日新聞(2014年01月31日、毎日新聞×日本の論点)

 ◇最終処分場のある国、ない国

 原発から出るごみは、大きく分けて2つある。一つは使用済み核燃料、もう一つは廃炉によって生じる廃棄物だ。日本にとっては、目下どちらも喫緊の課題である。

 発電に使ったあとの燃えかすである高レベル放射性廃棄物は、ガラス原料と一緒に高温で溶かしてステンレス容器に入れたもの(ガラス固化体)を、地下300mを超す深い場所に埋める、いわゆる「地層処分」が最適とされている。もっとも、数万年にわたって処分場の安定が維持できるかどうかは誰もわからない(いまから数万年前といえば、ネアンデルタール人がいた時代である)。そのため、廃棄物を完全に封印するか、当初の数十年から数百年間は取り出し可能な状態で保管するかは、各国によって方針が異なる。どちらにしても、この地層処分がすでに事業としておこなわれている国は、いまのところない。

 もっとも実現に近いのが、小泉元首相の「原発ゼロ」発言のきっかけになったフィンランドの核廃棄物処分場「オンカロ」である。処分地として決定済みで、2020年頃には操業を開始する予定だ。この場所の岩盤は、過去19億年、大きく動いた形跡がないという。

 これに次ぐのがスウェーデンで、現在、原発のあるフォルスマルクが処分地に選定されていて、決定待ちの状況である。決まれば2029年頃に操業開始となる。この2カ国の処分場は、バルト海を挟んでちょうど向かい合う位置にある。

 いっぽうフランスでは、スペイン国境に近いビュールに核廃棄物地下研究所があり、ここに処分場を建設して、2025年頃に操業を開始する計画が進んでいるが、地元では反対の声が強い。

 アメリカでは、ブッシュ政権の時代にネバダ州ユッカマウンテンに処分場を建設する計画が進んでいたが、地元の反対が根強く、オバマ政権になってこれを撤回した。

 そのほか、スイス、ドイツ、イギリス、カナダ、中国などでも処分場選定の動きが見られるが、具体的な候補地が決まった国は一つもない。日本も同様である。

 ◇日本の最終処分場はどこか

 日本は使用済み核燃料を再処理してプルトニウムとウランを取り出し、繰り返し使用するという核燃料サイクル政策を進めようとしているが、現実には頓挫している。仮にそれが操業にこぎつけたとしても、再処理の過程で出る高レベル放射性廃棄物をどうするかはまったく未解決だ。

 フランスを除くほとんどの国では、再処理をせずに使用済み燃料を高レベル廃棄物として直接処分する方針をとっている。再処理することでコストが減るわけではないことがわかったからだ。

 だが日本は、巨費を投じて始めた事業だけにやめることができずにいる。かといって、核燃料サイクルが機能しているわけではないため、使用済み燃料から取り出したまま使いようのないプルトニウムが現在も増えつづけているのである。そのうえ高レベル廃棄物最終処分場は選定すら進んでおらず決まる見込みはほとんどない。文科省所管の日本原子力研究開発機構が、北海道幌延町と岐阜県瑞浪市に設けた超深地層研究所で地層処分の研究開発を進めてはいるが、すでに地元では研究所周辺が最終処分場とされるのではないか、との懸念の声があがっている。

 中間貯蔵施設を受け入れている青森県は、「最終処分場とはしない」と国に確約させた。しかし、県民のあいだでは、それを反故にされるのではという疑念がたびたび生じている。高レベルではないが、福島県内の除染によって生じた汚染土の処理にも同様の問題がある。政府は12月14日、双葉、大熊、楢葉の3町長と佐藤雄平福島県知事に対して汚染土の中間貯蔵施設の建設受け入れを要請した。難航が予想されるのは、中間貯蔵施設がそのまま最終処分場に転じるのではないかという懸念があるからだ。

 高レベル廃棄物の最終処分場の選定は、これまで、電力会社が中心になって2000年に設立された原子力発電環境整備機構(NUMO)が候補地を公募し、自治体の応募を待つ方法に頼ってきた。地元の説得が最大の難関だからである。応募があれば立地の適性を調査することになるが、その調査段階で地元に年10億円の交付金が入ることになっていたため、いくつかの自治体で立候補をめざす動きがあった。しかし、実際に立候補したのは高知県東洋町(2007年)だけだった。それも、住民の反発は大きく、反対派の町長が当選したことによって撤回された。

 福島第一原発の事故後は、自治体からの立候補はまず望めなくなった。そこで経済産業省は、2013年12月6日に公表した「エネルギー基本計画」原案の中で、NUMOが公募する方式から、国が主導して候補地を選び、地元に提示する方式に改める方針を盛り込んだ。地層や地下水の流れを分析し、安全とされる場所を全国から100カ所程度選び出し、国が調査して、その情報を地元に提供するという手順である。

 経産省はこの基本計画で、原発を「重要なベース電源」と位置づけ、核燃料サイクルの継続も明記した。経産省の諮問機関である総合エネルギー調査会は、「重要なベース電源」の前に「基盤となる」の文言を加え、さらに原発の必要性を強調した。

 ◇廃炉作業は未知との闘い

 もう一つの放射性ごみは、廃炉によって発生するスクラップだ。

 原発は建設から40年で運転を終了し、廃炉にすることを原則としている。事故を起こした福島第一原発の廃炉が決まる前、日本で運転停止した原発は5基、そのうち最初に解体されたのは、日本原子力研究開発機構のJPDR炉(茨城県東海村)である。この原発は1963年、日本最初の原子力発電に成功した記念すべき試験炉で(初臨界した10月26日がのちに「原子力の日」となった)、1976年に所期の目的を達して運転終了、10年ほどをかけて解体を完了した。

 もっとも、使用済み燃料さえ取り出せば、一般の原発の解体で生じる廃棄物の9割以上が放射性廃棄物ではなく、法的には一般の廃棄物と同様の処分が可能となる。しかし、周辺住民の意識は複雑で、日本原子力研究開発機構の新型転換炉「ふげん」を廃炉にした際は、汚染されていないコンクリートを漁礁に再利用しようとしたが、風評被害を恐れる地元漁協の反対にあって断念した経緯がある。

 福島第一原発の事故が起きるまで、54基の原発が稼動していた日本では、毎年1基ぐらいずつ運転停止する原子炉が出る計算で、放射性廃棄物の安全な処理など、廃炉技術を磨きながら、海外への技術輸出を含め、これをビジネスとして成立させようとしていた。

 だが、放射性の汚染水にまみれた福島第一原発の廃炉作業は、そうした経験がまったく役に立たない、未知との闘いといってよい。東京電力は11月18日、4号機の使用済み核燃料をプールから取り出す作業を開始。2011年12月から始まった廃炉工程表の第2期に入った。このあと、2021年頃から、第3期として正念場の原子炉内に残る溶けた燃料の処理にとりかかる。1〜3号機は4号機よりはるかに放射線量が高いため、作業はさらに困難になる。終了までには早くて30年、遅ければ40年はかかる事業だといわれる。

 福島第一原発の廃炉を進めるにあたって、首相を本部長とする政府の原子力災害対策本部の下に「廃炉対策推進会議」や「廃炉・汚染水対策チーム」ができたが、全体を継続して監督する組織がない。経済産業省では、原子力損害賠償支援機構を改組し、東電がおこなう廃炉作業を最終段階まで監督する役割を追加する方針を立てている。改正法案が2014年の通常国会を通れば、新機構が4月に発足、名称は「原子力損害賠償廃炉支援機構」になる見通しだ。(日本の論点編集部)

| コメント (0) | トラックバック (0)

2015/02/11

認知の枠組みのこと。数年前の思い出から

まさに備忘として思いつきを書き付け。

人と対話していて「話が通じない」という経験をしたことがある人は多いと思います。
私自身が数年前(もっと前だったかな)に経験したのは、自分自身の中でのことでした。

当時、南京虐殺が「あった」「なかった」の「論争」(?)がインターネット上で盛んでした。
そのしばらく前から、南京事件の証拠とされるものは多くが根拠がなかったり捏造だったりするものだという話を何となく見知っていました。一番古い記憶だと、90年代にはそういう本が売られているのを見たような気がします。
※今ちょっと検索したら、『ゴーマニズム宣言』が1992年からだったんですね。確かに自分の時代感覚に合っています。

自分の中では、こうした反動的な議論にはどこか違和感を感じつつも簡単に否定できないような気がして、やがて南京虐殺事件は従来考えられていたほどの確実性はなくて、多くの部分で不明なことが多いのかもしれないと漠然と思うようになっていきました。
そういう印象のまま何年かが過ぎたときに、何がきっかけか忘れましたが、南京事件を巡ってあちこちのブログなどが「炎上」状態にあるのを知ったのです。初めは野次馬的な興味から「炎上」を見て回っていましたが、そのうちに「何だろう、これは」と思うようになっていました。
そのときの気分を振り返ると、私は「どっちもどっち派」や「中立派」と言えるものだったと思います。「あった」か「なかった」か今となっては分からないことが多いのだから、不確かな根拠で片方の立場からの解釈を言いつのっても意味がない。結局、自分好みの情報だけを選んで、自分の偏見や政治的な好み、イデオロギーを自己強化し、他人をやり込めて自己満足しようとしているだけだ、と。だから冷静に判断するためには、まず「あった」「なかった」の両方の意見と主張を良く聞き、確実な証拠資料に基づいて問題を整理し判定するべきだと思っていたのです。そしてその観点からすれば、南京事件には多くの疑問が挙げられているのだから、まずは「あった」と即断するのは避け、疑いを持って一つ一つの資料を見ていくべきだ。そしてその多くが「誤りだ」「根拠がない」と言われているのだから、南京で捕虜や民間人の殺害や強姦などがあったことは揺るがないにせよ、その規模や範囲は従来考えられていたよりもかなり小さなものと見ても、現段階ではいいのではないか。そのような感覚で、「炎上」を眺めていました。

そうした折に、自分が納得できる「中立」的な意見を書いている人が「あった」派の人たちと論争し、手厳しく批判されているのを見ました。そこでなされていた批判が私に混乱をもたらしたのです。
私は昔から心情的に日本政府の戦争責任回避に対しては強い反感を持っていました。ですから南京を含む中国各地で日本軍が起こした残虐行為を追及することは正しいことだと思っていました。しかし、これらの戦争の経験を中国政府が政治的に利用したり、中国国民が現在の日本への偏見を強化するための材料にしたりすることもまた十分あり得るだろうと思っていました。中国人からすれば、多少あやふやで不確かなことであっても「あった」として日本を批判したり責任を追及したりするバイアスはかかりうるだろう、だからそうした誤解を解くことは必要なことだとも思っていました。中国には中国の立場があるように、日本には日本の立場があるのだから、それは主張すべきであって、そうした主張をお互いに交わして落としどころを探っていくことこそが、よりよい相互理解と外交関係につながるはずだ。そしてこれは決して日本の戦争責任を否定しているものではない。こうした考えは十分に筋が通っていると考えていました。それなのに、正にその考え方を、日本の戦争責任を追及する、言わば私と同じ立場の人たちが厳しく批判しているのを見て、私は「この人たちは何を問題にしているのだろうか」と思うようになっていったのです。

それで、その「炎上」でなされていた議論をあれこれと読みあさり、南京事件「あった」派の人たちのブログやそこで紹介されている様々な資料(そのほとんどがウェブ上にまとめられた記事でしたが)を読んでみたりしました。そして、厖大な史料についての非常に多くの論考が何十年も前から積み重ねられていたのを知りました。そうして、南京事件には自分が思っていた以上のことが分かっている(それ故に「分からないこと」と「分かること」との区別が簡単ではないことも分かっている)ことが分かりました。また、南京事件を疑うときの論法や認識の偏りについても知りました。しかしそれでもなお、なぜ「中立」が批判されねばならないのか、「あった」派の人たちが何を批判し何を問題視しているのかは分かりませんでした。否定派の人たちの論拠が誤りであったのなら、南京での虐殺を否定する根拠がなくなったのだから、「あった」と判定すればよい。単に天秤のバランスが「あった」の方に傾いただけのことで、天秤を使うこと自体を非難されるいわれはない。そのように感じたのです。

認知のフレーム

南京事件だけでなく、日本の戦争責任に関して上記のような天秤を使うことは、今では「相対主義」とか「自称中立」とか「どっちもどっち論」などと言われて揶揄されるようになっています(相対主義という一般的な語自体はもっと大きな広がりを持っていますが)。それは、こうした「中立」の立場が実は中立ではなく、片方(大抵は戦争責任を認めない方)を支持しているのにそれを認めない、あるいはそれを自覚できていないという点への批判になっているわけです。しかし、私は当初それに気付くことができませんでした。この論点の持つ重さ、言わば認識の陥穽を問題とする論点の存在に気がつかなかったために、何を批判されているのかが分からない、批判自体が的外れで、考え方を勘違いされたままおかしな理屈で攻撃されていると感じていたのです。

この「中立」の考え方に潜む自分自身の無意識の政治性を問われている、その自らの政治的立場と社会的責任とをどう考えるのかをこそ明確にせよと問われていると私が気付いたのは、「あった」派の人々の長文の(と言っても長くて数万字もない位でしょうけれど)の論考をいくつも読んで、その主張の再現を自分なりに試みたり、自分が知っている類似の議論(例えば政治的中立という立場が成り立ちうるかという議論や、構造的暴力への抵抗としての暴力は許されるかという議論や、旧植民地宗主国の国民はいつまで旧植民地への加害を懺悔し続けなければならないのか、そもそも国民がなぜ国家の罪を悔いなければならないのかという議論など)と比較してみたりして、「この人は何を問題視しているのか」をあれこれ考えたことがきっかけでした。

自分のことながら自分で興味深いと思うことは、「自らの政治性を自覚せよ」という主張自体は私も昔から知っていて、しかもそれは正しいと思っていたのに、正にそこへの無自覚さ、無邪気さを突かれているということに私が気づけなかった、その認識に至るのにかなり労力を要したということです。
今となってはあやふやに回想するしかないのですが、このことに気づいたとき、私は「自分が社会的存在であること、私が住む地域や国の社会・政治状況から逃れることができず、またどのような形にせよ関与せざるを得ず、そしてそれ故に何らかの形で必ず自らの責任を考えざるを得ないこと」を引き受ける覚悟を要求されたように感じました。
実は、こうした覚悟については、私は以前に何度も考える機会がありました。いくつかの社会運動に関わる中で、第三世界人民の抑圧・搾取やベトナムや沖縄の状況や寄せ場や原発の労働者、在日や被差別部落の差別の問題において、「先進国」の「日本人」の「多数派」である私や「私たち」が自分たちの「責任」をどう考えるのかは、しばしば議論になったことでもあるし、また、運動を広げる上でどう一般に訴えるかということも良く議論になりました。政治性を自覚せよという論点は基本的な常識であったと言えます。それなのに、この「覚悟」に私は気付いていなかった、いや、頭では分かっていたのですが、腑に落ちていなかったのでしょう。この「覚悟」に気付いたとき、自分が真に社会の一員であり、そして社会の一員でない人などたった一人もいないということに腹の底で納得したということだったのだろう、と今は思います。

以上のような思考の過程を経て、南京事件「あった派」の人たちの批判を(自分なりに)理解したことは、私自身の認識の枠組みを変えました。認識方法が変わったと自覚することはあまりありませんが、このときは違いました。そして認識の枠組みが変わったという感覚はとても刺激的で面白いものです。学校の勉強で分からなかったことが分かるようになったときの喜びというか、問題の構造を見切ることができるようになった快感というか、それに似たものを感じます。しかし、そうした変化を自覚するほどに、自分にとってこの問題は認識枠組みの大きな転換であったようです。何度もそれを問われる現場におり、また人にも問うてきたことであったのに、分かっていたはずのことが分かっていなかった、そしてそこを脱するのには相当の労力を要したという経験は、私に認識の枠組み(フレーム)を知ることの難しさと大切さを教えてくれました。

もっとも、フレームの転換を自覚しているからといって、自分が自分のフレームから自由になれたとは思いません。むしろ、今回の転換が「腑に落ちた」のは、私の心のさらに深いところにあるフレームと上述の「覚悟」が親和的であったからで、その結果、この深いところのフレームによる偏見は一層強化されてしまったのかもしれません。実際、今回の「覚悟」は社会への責任を自覚し行動せよという倫理規範となっていますし、社会構造から生み出される「弱者」や「マイノリティ」や差別へのまなざしを重視する立場になっているという点で自分の心情とも整合的です。その意味で、私は私自身を教化し原理主義的にしてしまったのかもしれません。
しかし、私はこうした囚われからすっかり自由になるべきだとは思いません。生きていく上では何らかの立場と利害関係、他者への関与が避けられない以上、あらゆる立場を超越した認識を絶対の出発点にする意味はそれほどないと思われるからです。それよりはむしろ、自分の立場や囚われを自覚的に把握して言語化できるようにすること――その言語の多くは正当化の論理になってしまうかもしれませんが――の方が、社会を生きる存在としては有意義ではないかというふうに思っています。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2015/02/10

大阪の件で公明党が自民党に借りを作ってしまった、という文藝春秋の記事。

安保協議直前、負い目を抱えた公明 | 赤坂太郎 - 文藝春秋WEB(2015.02.10 07:00)
さて…?
どこまで信憑性があるのか分からないけれど、大阪の件は創価学会幹部と官邸が動いて…という話は以前からネットの噂になっていたので、そうかもね?という感じ。公明党は「平和の党」というキャッチフレーズほど平和主義に信念を持っているとは思えないので、安保関係で自民党に従順なのは以前通り、予想通りというぐらいの印象。コラムの中で出てくる解釈は、コラムの中で紹介されている事実関係から見る限りでは、結構強引なようにも見える。

 通常国会に2015年度予算案が提出されるとともに、安倍晋三首相の施政方針演説で国会論戦が本格化する。年頭記者会見で、「総選挙における国民の負託にしっかりと応えていかなければならない」と述べ、与党で3分の2の議席を確保する大勝を収めたことへの高揚感をにじませた。

 その安倍に、冷や水をかけるような事件が起きた。1月20日、イスラム過激派組織「イスラム国」と見られるグループが、後藤健二さん、湯川遥菜さんの命と引き替えに身代金2億ドルを要求してきたのだ。

「それは本物なのか? そもそもあの2人なのか?」

 後藤さんと湯川さんが覆面姿の男の左右に跪かせられているような動画がインターネットの動画サイト「ユーチューブ」で流れた20日午後2時50分すぎ。中東外遊中で留守の安倍に代わって首相官邸を預かっていた菅義偉官房長官が、動画の件を伝える外務省出身の秘書官らに指示したのは、動画の真贋の確認だった。

 連絡を受けた安倍が歴訪中の中東から指示したのも「情報収集」。2人を拘束したのがイスラム国のようだと判断するまでにもかなりの時間がかかっている。このタイムラグに、今回の事態の深刻さが表れている。首相の中東歴訪中を狙って日本人を人質に取って身代金を要求してくる。その状況を本格的に想定していなかったのだ。

 湯川さんが拘束されたと見られるのは昨年8月、その湯川さんを救出するためにシリアに入った後藤さんが行方不明になったのが10月。その後、後藤さんの妻にイスラム国と見られるグループから拘束を知らせるメールや、身代金を要求するメールが届き、相談を受けた外務省はその事実を把握していた。

 昨年8月にはヨルダンに現地対策本部も設置していた。にもかかわらず、これまで十分なシミュレーションがされた形跡がない。

 実は外務省中東アフリカ局には、重要な資金源となっている密輸原油の価格急落でイスラム国が財政的に苦しくなっていると見て、殺害予告を伴った身代金要求を行ってくるのではないかという見方もあった。

 しかし、今回の歴訪を含む中東政策を立案する過程で、「積極的平和主義」にこだわる官邸と、「テロとの戦いに消極的」と見られることを嫌う外務省上層部の意向で生まれたのは、日本独自の「ガラパゴス的」対応方針だった。

「人道分野での支援を積極的に果たすが、あくまでも医療など非軍事に限る」ことにこだわり、中東と宗教上、歴史上の問題をはらみ、イスラム国と敵対関係にある米英、欧州との「差異化」を図るという結論に至ったのだ。

「日本は人道支援だ。イスラム国の言い分は言いがかりじゃないか」

 事件の一報を聞いた安倍や菅は一様にそう述べたという。今回の中東歴訪に際して策定された、中東への「ガラパゴス的」対応こそ最善だという思いが強かったからであろう。

 ところが、安倍は支援対象について「イスラム国と戦う周辺国」と説明した。米欧との「差異化」どころか、動画で覆面の男が発したように「日本はイスラム国から8500キロも離れていながら、進んで十字軍に参加した」と思われる言い回しだった。

 1月24日には、殺害された湯川さんとみられる写真を持った後藤さんの画像が公表され、身代金ではなく、ヨルダンに収監されている女性テロリストの解放を要求してきた。

 その後も、後藤さんを使った要求が相次いだが、「交渉はヨルダン政府にまかせるしかない状況」(外務省幹部)。日本独自の動きとしては、トルコのシリア国境やヨルダンで、マスコミなど日本人が新たに被害に遭わないように目を配っていることくらいだ。

ライス米補佐官の懸念

 この事件は、今後の集団的自衛権行使容認問題にも暗い影を落とす。

 行使容認で自衛隊を中東・ホルムズ海峡まで派遣できるようにし、後方支援でも「戦闘現場」以外での活動を可能としていけば、いくら首相が「戦争に参加するのではない」と繰り返し強弁したところで、イスラム国からは「日本が軍隊を前面に出してきた」と受け止められるだろう。

 そうなれば、いざ中東に自衛隊員が派遣された際、死傷者が出る可能性が高くなるどころか、在留邦人がイスラム国やテロリストの標的になる恐れが格段に増す。国家安全保障会議(NSC)の事務局スタッフは人質事件の最中、率直に「安保法制の整備に悪影響が出かねない」と漏らす。

 安倍は「積極的平和主義」によって「国民の平和と安全を守り抜く」と繰り返すが、その自衛隊の海外派遣拡大で、日本人が危害に遭うリスクが高まる。今回の人質事件は、この負のスパイラルに陥ることへの警鐘でもある。

 その「安保法制の整備」は、通常国会の最大の争点だ。

 与党内でも、焦点となる集団的自衛権行使を容認する新たな要件「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」というケースの解釈をめぐり、自公の溝は埋まっていない。安倍は中東のホルムズ海峡での機雷除去も可能と主張するが、公明は日本有事の寸前に限定されるとの立場を崩していない。

 外務、防衛両省が描いている今国会以降のシナリオはこうだ。自公協議を経て、4月末から5月初旬のゴールデンウィークに日米外務・防衛閣僚会合(2+2)で、自衛隊と米軍の役割分担を定める「日米防衛協力指針(ガイドライン)」の改定内容を合意し、すぐに首相が訪米してオバマ大統領と成果を自賛し合う――。

 ガイドライン改定は、昨年末までに合意するはずが、日本側が「自公の調整が済まなければ、安保法制と表裏一体のガイドラインを改定できない」と申し入れ、先送りになっていた。

 ただ、その米国も日本に懸念を抱えている。安倍内閣発足から半年余りたった2013年7月。スーザン・ライス大統領補佐官は、安倍の外交ブレーンである谷内正太郎・内閣官房参与(現・国家安全保障局長)に対し、こう言い切った。

「米国は従来、日本政府に集団的自衛権を行使できるよう繰り返し求めてきた。だが、このタイミングで進めることには懸念をもっている。中韓両国の反発だ。まずは両国との関係改善を進めてほしい」

 オバマ政権からすれば、歴史認識問題で、中韓両国との関係を悪化させる安倍とその盟友たちの言動は迷惑でしかない。日本は中韓両国との関係を改善し、核・ミサイル問題を抱える対北朝鮮政策で足並みを揃えてほしい――米政府の苛立ちはそこにあった。

 その後、オバマ政権は、南シナ海を含め、周辺国との軋轢を強める行動をとり続ける中国の習近平政権に失望したことの裏返しで、安倍政権に対する姿勢を軟化させた。昨夏の集団的自衛権の行使容認の閣議決定についても歓迎の立場を示した。だが、安倍政権の歴史認識問題への懸念が燻っているのは間違いない。

自民が押し切り協議再開

 有事法制をめぐっては、自民党の高村正彦副総裁と公明党の北側一雄副代表が昨年12月の衆院選直後から水面下で接触、自公の“裏交渉”は始まっている。自民党は1月の通常国会召集前に大筋で合意点を見いだし、与党協議会を経て、早期に正式合意に持ち込みたい考えだった。だが高村、北側の交渉でも溝は埋まっていない。

 公明党は4月の統一地方選で1600人余が改選を迎える。その重要性は他党の比ではない。支持母体の創価学会が最初に政治に進出したのが1955年の統一地方選で、いわば原点だ。何より地方議員こそが学会員の様々な要望に応えて政策実現を果たす要として党の基盤を支えている。

 その統一地方選の最前線を担う婦人部には、今なお自衛隊の海外派遣そのものに慎重論が強い。党幹部は口々に「選挙前に安保法制の論議で自民党とゴタゴタしたくない。公明党が押し切られた印象を持たれれば運動員の足が鈍る」と懸念する。政府、自民党との協議を統一地方選後に先送りしたいというのが、公明党の本音だった。だが、自民党との与党協議会を早急に開かなければ、安保法制の準備は遅れて通常国会での成立が困難になり、ガイドラインの改定にも赤信号がともる。

 結局、公明党は自民党に押し切られた。2月に協議会を再開することになったのだ。その裏には、昨年の衆院選で公明党が政府、自民党に大きな「借り」を作った事情が存在する。

 舞台は大阪。衆院の解散話が急浮上した昨年11月、維新の党の橋下徹共同代表(当時)と松井一郎幹事長(当時)は当初、衆院選で公明党の現職議員が立候補する大阪3区と16区に立候補する構えを見せていた。ところが、公示の1週間前に急転直下、出馬を見送ったのだ。

 もともと公明と維新は蜜月関係だったが、橋下の従軍慰安婦発言などで旧日本維新の会は次第に勢いを失い、距離が広がった。公明党は連立与党を組む自民党との関係を大阪でも強めて、都構想にストップをかけたことで修復不能に陥った。

 ところが、橋下は同月23日、突如として公明党が候補者を立てる大阪・兵庫の選挙区で自らも含む維新の候補者擁立の見送りを表明した。橋下は理由を問われても「大阪のためになると判断した」としか語らなかった。

「公明 維新」妥協の理由

 互いに罵り合ってきた両党がなぜ急転直下、妥協できたのか。

 動いたのは最近、永田町でその名を知られるようになった創価学会副会長(広宣局長)佐藤浩だった。

 維新の党と全面対決となれば、公明党は小選挙区で候補を立てる関西6選挙区で苦戦が避けられない。創価学会は、全国の会員をこの6選挙区に動員したり、電話作戦に従事させたりする必要に迫られる。そうなれば全国の比例票の獲得に支障をきたし、公明党の勝利は覚束ない――危機感を強めた佐藤の動きは素早かった。

 昨年11月中旬、佐藤は菅と都内で密会して、こう切り出した。

「このままだと北側さんも危ない。公明党と維新の党は全面戦争になってしまう。橋下さんや松井さんと親しい安倍首相も菅さんもそれは望んでいないでしょう?」

 そして、大阪都構想の住民投票が可能になるよう創価学会本部から大阪の学会や公明党に働きかけるので、橋下や松井を説得してほしいと頼み込んだ。菅はこれを受け入れ、安倍も了解した。首相官邸が「保証人」になる形の妥協だった。

 佐藤が言う通り、安倍にとっても今後の政権運営、とりわけ憲法改正の発議に必要な3分の2の勢力の確保を考えれば、公明党と維新の全面対決は避けたい。官邸が創価学会の頼みを聞き入れて公明党を勝利に導いた意味は決して小さくない。創価学会と公明党は安倍や菅に大きな「借り」をつくってしまったのだ。

 しかも、官邸に助けられて当選した当事者の1人が、安保法制の与党協議を主導する北側だった。公明党は自民党に候補者擁立を見送ってもらったばかりか、他党(維新)の候補者降しまで手助けしてもらった以上、負い目を抱いて協議に臨まざるを得ない。

 公明党は今回の協議で、どこまで「平和の党」の主張を貫くことができるのか。衆院選で連勝して強気の安倍政権に対し、今まで以上に難しい対応を迫られる。苦悶するのは安倍だけではない。

(文中一部敬称略)

| コメント (0) | トラックバック (0)

2015/02/09

私たち人間は他人を偏見で判断してしまうという運命にあらがう存在なんだよね、という話

極右が何人寄ってもアメリカ人に「理解」してもらえるための知恵なんて出ない - Apes! Not Monkeys! はてな別館
のコメント欄を見て思いついたこと。

AJAX 2015/02/09 01:06
(前略)
>朝鮮半島出身の将軍や将兵を大勢いましたよ。
格助詞を間違えるのは外国語を母語とする日本語学習者によく見られる現象なんですよね。一番多いのは英語母語の人間ですけど、どの格にどの言葉を使うかってのは言語ごとに異なるので、中国人なんかでも同じミスはしたりします。

と、こういう思考様式って正しいのでしょうか?

正しくないのは当然なのですが、その理由は二つあって、一つは論理的に正しくないこと。類型で個別事象を判断するのが正しくないという意味ですね。もう一つは倫理的・社会的に正しくないというか、偏見と差別につながるからですね。

ただ、この種の類型化と個別の人への当てはめは日常的に行われているような気がします。典型的には、
「あの人は……な振る舞いをしている。だからあの人は……だろう。」
というタイプの判断ですね。例えば、
「あの人の血液型はB型に違いない」とか「ああ、なるほどやっぱりB型だったか」とか。
「あの人のしゃべり方には中国人特有のなまりがある。中国人だろう」とか「『…アルヨ』というのは中国人」とか。
「あの人はアスペルガーじゃないか」とか「ちょっと鬱病になりかかってるんじゃないか」とか。
さらに微妙になっていくと、
「あっ、妊婦さんだ」と思ったら、単に太っている人だったりとか。
「あの人、風邪を引いているのでは」とか「気分が悪そうだね、乗り物酔いしているの?」とか。

こうしてみると、この種の思考方法は明らかに差別であるものからそうでないものまで幅広く使われていることが分かります。
実際、その人の特徴を類型に当てはめてその人を理解するという方法は医療の世界では本質的な方法だと思うんですね。診断基準というのがそういう構成ですし、個体群の特徴分布から類型を分類するという統計的手法が使われていたりしますし。

類型を個別への当てはめて判断することは、たぶん人間という種に本質的な認識の方法なんだと思います。見方によって壺に見えたり人に見えたりするような錯覚現象もそういうことが原因になっているものもありますよね。実際、そうしないと認知の能率が低くなりすぎて生きていけなかったのだろうなあと想像しています。

で、警察の人は挙動不審者…怪しい人を見つけたり話のウソを見抜くのが上手いとか、入管の人はどこの国の人かを見抜くのが上手いとかいう類のことが時々言われますし、そういう人が自分の判断に自信を持っていたりすることがあります。お医者さんが自分の診断に自信を持っているようなことと似ていますが。
で、多くの場合はそれで該当するのでしょうけれど、時々多分間違えるんだと思います。その間違いが時に一層大きな間違いのきっかけになったりして問題化することがあるのだと思います。例えばえん罪のようなものはその一例でしょう。
予断を排して虚心坦懐に見ることが、類型化に熟練すればするほど大切になるのだと思いますが、それは学術研究や教育の世界にも通じることだなあという、何のことか分からなくなってきた辺りで話を止めたいと思います。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2015/02/07

日本を代表する公党が自信を持って世界にお勧めするレイシズムと自己中心主義

このブログでは、個人の投稿している記事を批判的に紹介するときはなるべく参考や傍証以上には利用しないようにしているのですが、この方は一応公人でもあるし、記事内容も自民党の活動紹介でもありますからまあいいかな、ということで。

2月5日 日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会|佐藤正久オフィシャルブログ「守るべき人がいる」Powered by Ameba

「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」だそうですよ。
まずもってこのネーミングがもう彼岸に行ってしまっています。ああ…という残念な感じ。
「特命委員会」ってのもいい味が出てます。テレビ番組かよ?って突っ込むところですね、漫才なら。
これを日本最大の選良、日本が誇る良識ある大人たちの集まりたる公党が堂々と掲げているんですから。モンティ・パイソンも真似できないブラックジョークですよね。

まあネーミングはいいとしましょう、所詮ネーミングだし。
で、櫻井よしこ氏を招いて勉強会をした、と。
それで、のっけからこの一文ですよ。

 櫻井よしこ氏は主に米国での慰安婦問題に関する情報戦の対処方法について話された。
慰安婦像や碑など、史実に基づかない情報を打消すには、日本文化と朝鮮文化の比較を通して、史実との齟齬を突いてはどうかという意見だ。
はぁ?
もうね、意味が分からない。何があったかなかったか、何をしたかしていないか、そのことにどういう意味があったのかなかったのか。そういう「史実」に関する議論をしたいはずなのに、出てくる方向性が「文化比較」ですよ。
何か上手く言えませんけど、「水は何度で凍るか」という問題をどうやって調べるのがいいかという議論をしている中で、「水の大切さについての考え方が人によって違うことを利用したらどうか」という提案がされたみたいな、あるいは会社の会議とかで、突然流れをぶった切るような明後日の方向から意見を語り出す人を見た瞬間というか。思わず「あっ…」と声が出そうになるような、そういう微妙な空気。

ところがですね、この勉強会ではこれで話が通じるみたいなんですね。
まあ実際、櫻井よしこ氏は、史実でないものが史実だと強く誤解されていて、正攻法ではその誤解がなかなか解けないのでどうやって納得してもらえるか、を論じたいみたいなんですね。
それならとりあえず分からないことはない。初めからそれを書いてほしいですよね。びっくりしました。

で、その「文化の比較」による誤解の解消方法ですが、櫻井よしこ氏の基本的発想は以下の通り。

慰安婦に対し行われたとされる処し方(主に拷問や処刑方法)など、日本人がするはずがない
あっ……
スミマセン、思わず声が出てしまいました。
でも話はまだ続きます。
中国の歴史書である資治通鑑を紐解けば、そこに書かれている中国古来の拷問方法が、かつて日本が慰安婦に対して行ったとされる行為とそっくりそのままである。この中国の処罰・処刑方法をまず英訳し、広めなければならない。
その上で、慰安婦がされたことになっていることは、中華文化、その影響下にあった期間が長かった朝鮮文化の下で行われる内容であり、日本文化とは相いれるものではないということを、これも英語で伝えなければならない。
もうね、何というか。
ズレの距離が大きすぎると突っ込みもできない。漫才にもできない巨大すぎるボケ。
これをたくさんの「選良」の皆さん(議会で圧倒多数を占める与党の)が、大まじめに受け止めていらっしゃるわけですから!
いや、ものすごい国です、我々の日本は。こういうのをコントでなくて見られるんですからね。

個人的には、「英訳し」・「英語で」っていうところにグッと来ました。国際化の時代(死語)にはやっぱり英語ですよね!これからの時代は英語が大事っ!うんうん、わかるなあ……。

まあ櫻井よしこ氏の論旨を素直に受け止めれば、

「中国→朝鮮半島って伝わったのなら、その次は日本にも伝わったんじゃね?」

って思うんですけれど、それは聞いちゃダメなところですからね。
処罰方法の伝播については、中華文化の影響を長く受けないといけないそうですよ。なんでか知らないけれど。

それから、下記は櫻井よしこ氏の意見なのか佐藤まさひさ氏の意見なのか分かりませんが、

情報戦はこちらに都合の良い情報とそうではないものがあるが、どんな分野であれ、内外の研究者にこちらが持つ情報を提供し、その対価として彼らの研究結果は全て明らかにしてもらうことが必要だ。
とされているんですね。

情報の取引として、
自民党側:「持っている情報」を提供 →で、「その対価として」
研究者側:「研究結果を全て明らかにする」

「全て」ですって!いやはや、この自己中心的というか上から目線というか分かってなさというか…。
研究結果の「全て」って何をもって「全て」って言えると思ってるんだろう。研究っていうか、ものをまともに考えたり学んだりしたことがあるんだろうか、この人たち…。櫻井さんも物書きだと思うんですけれどねえ。

そもそもこの「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」が持っている情報って、何一つ役に立つものはないでしょ。ゴミと引き替えに研究者の知見と労働力、研究時間を全部ごっそり頂こうって、どういう取引なの……(汗)

で、最後ですけど、

情報戦の主戦場である米国などは民主主義の開かれた国なので、
いや、さすがにここまでで笑いすぎて、もはや反応することもできませんが。ユートピアはアメリカにあったんやね!

……鬼畜米英やったんとちゃうんかいな。

しかし、くどいようですけど、こういうことを大まじめに勉強会している国会議員さんたちが、わが国最大の議会勢力なんですよ。
これ、自民党の公認の委員会ですからね。オタクの趣味の集まりとか「有志連合」とかじゃないですからね。

稲田政調会長「いわれなき非難に断固として反論を」 慰安婦誤報受け特命委が初会合 | 党内活動 | ニュース | 自由民主党(平成26年10月30日)

慰安婦に関する誤報が国際社会に与えた影響などを踏まえ、わが党は政務調査会の下に日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会を設置、10月30日に初会合を開きました。
「次世代の党」とかなら「まあ、やりそうだよね」で済ませられるんですけどねえ……。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2015/02/06

そう言えばNHKのニュースもすっかり見なくなった。「団地ともお」ぐらいしか見るものがない。

Listening:<記者の目>NHK・籾井会長の1年=望月麻紀(東京学芸部) - 毎日新聞2015年02月04日

 ◇現場に広がる「そんたく」

 NHKの籾井勝人会長(71)が先月25日、就任1年を迎えた。就任会見で特定秘密保護法について「政府が必要だという説明だから、様子を見るしかない」など公共放送トップの資質を問われる発言を連発したが、その後、取り消し、「私の考え方は変わっていないが、個人的な見解を放送に反映させることはない」と述べた。国会答弁や記者会見では、放送の公平公正、不偏不党を誓い、「放送法の順守」をまじないのように繰り返して乗り切り、3年の任期全うに意欲を見せている。

 だが、NHK内では、政権におもねる籾井会長の言動をそんたくする風潮が強まっていると聞く。それでも心ある放送人たちが、格差や貧困、原発など社会問題を浮き彫りにする番組を作り続けていることに勇気づけられるが、その役割を果たし続けることができるのか危機感も覚える。

 衆議院解散直前の昨年11月20日、自民党の萩生田光一・筆頭副幹事長らはNHKを含む在京のテレビ6局に「公平中立、かつ公正」な選挙報道を求める要請文を渡した。要請文には、出演者の発言回数及び時間から街頭インタビューや資料映像の使い方まで詳細な指示が書かれている。

 NHKは、要請文を受け取ったことも明らかにしようとしない。籾井会長は、自らも街頭インタビューについて「アンケートでも何でもない」「誤解を与える」と発言しており、要請文の内容も正しいと考えているようだ。「公平さ」とは批判を招かないことと同義ではないこと、「公正さ」とは放送局側が自ら判断して多角的な意見を紹介することであるというメディアの一翼を担うものとして当然のことを理解していない。

 ◇トップ意識欠如、予算承認で露呈

 実際、公共放送のトップとしての意識の欠如は、与党議員でさえもあきれさせる。籾井会長は昨秋、与党幹部の前で「NHK予算は与党が賛成してくれればいい」と発言、逆にたしなめられた。

 そのわずか半年前の国会で、NHKの2014年度予算案は与党とみんなの党(当時)による賛成多数で承認された。全会一致にならなかったのは、職員の不祥事が相次いだ直後の06年度予算案以来8年ぶりだった。NHK経営委員の上村達男早稲田大教授は「NHK予算は、正反対の意見の人々も立場を超えて賛成する。そこに、広く国民的立場に立つNHKのあり方が反映されてきた」と指摘。会長の個人的見解が批判を受けて全会一致が崩れたことに「反省を」と苦言を呈していた。にもかかわらず、与党幹部への発言が出たのだ。

 一方で籾井会長は、組織の掌握に熱心に取り組んできた。管理職の異動を不定期化させ、執行部の理事の任期を現行の2年から1年に短縮したいと経営委員会に提案した。またムチだけでなく、アメも用意した。14年末の職員賞与を加算。その額は、一般職員の場合は2万〜3万円だが、管理職に至っては20万〜50万円の大盤振る舞いだった。

 ◇「政治的な内容」自主規制の風潮

 その結果、籾井会長が直接的に番組内容に介入しなくても、放送の現場が自律的に政治的な内容、とりわけ与党の方針に異を唱える内容を自主規制する、いわゆる「そんたく」する風土が強まっているという。複数の職員がそう証言する。

 たとえば、昨年の衆院選の選挙期間中には、俳優の宝田明氏が番組で戦争体験を語り、「戦争は人間の大罪」と断じた上で、投票の重要性を説こうとしたところ、男性アナウンサーがインタビューを終わらせようとした。

 問題が表面化するのはごく一部に過ぎない。番組を統括する立場にある職員は「人事異動の不定期化の実例を目の当たりにして、自分や上司に汚点が付かないよう、番組作りを自主規制している風潮がある」。別の職員は「そんたくの横行に無自覚な人が多い」と危機感を募らせる。

 1月31日、経営委員会が視聴者の意見を聞く会を水戸市で開いた。「見た番組の分だけ支払う制度に変更できないのか」など、放送サービスは受信料支払いへの対価との認識を持つ人が多かった。「財政面で政治や商業主義からの自主性を維持する」という公共放送を支える受信料制度の理念が浸透しているとはいえない。

 籾井会長とNHK職員はこの現実を直視すべきではないのか。政治家や上司の顔色をうかがうのではなく、視聴者に必要な情報、視聴者の期待に応える番組を放送する。その姿勢なくしては、受信料収入から3000億円超をあてる放送センターの建て替え計画も、インターネットでの番組視聴を有料化する受信料制度の見直しも理解されないだろう。


NHK会長:慰安婦問題番組「政府スタンスで放送考える」 - 毎日新聞2015年02月05日 22時53分(最終更新 02月05日 23時00分)
 NHKの籾井勝人会長は5日の定例記者会見で、戦後70年にあたり従軍慰安婦問題について番組で取り上げるかを問われ「政府の正式なスタンスがまだ見えないので、放送するのが妥当かどうかは慎重に考えないといけない」と述べ、政府が8月にも発表する「戦後70年談話」の行方を見て判断する意向を示した。自律的な放送を放棄するかのような発言は批判を呼びそうだ。

 また従軍慰安婦に関する政府見解は見直す余地があるかを聞かれ、「その手の質問には答えを控える」と述べた。さらに、答えない理由について問われると「しゃべったら、大騒動になる」とコメントを避けた。【望月麻紀】

| コメント (0) | トラックバック (0)

地味に深刻かもしれない。

********************
追記(2015年2月19日)

調査報告の計算ミスだそうで、訂正が出ています。
第7回「男女の生活と意識に関する調査」報告、一部訂正のお知らせ

全文表示 | 若い男性の草食化、「セックス離れ」はウソだった 「性交経験率5割超えは29歳」、実は20歳だった : J-CASTニュース(2015/2/19 19:07)

男性の性交経験率が5割を超える年齢は29歳――。驚きのデータとして各メディアで「若い男性のセックス離れ」と報じられ波紋を広げた調査に、実は誤りがあった。
 正しくは20歳で、調査を行った団体によると、調査データの計算やまとめ方のミスがあったためだという。
というわけで、下記の記事の当該部分は数値が違っているということになりました。そもそもその部分は気にしてなくてむしろ夫婦の問題に注目していたので気付いていなかったんだけど。
********************
以下本文

興味半分で読んでいたらだんだん気が重くなってきました。世の中の閉塞感の象徴のような気がしてきます。その反面、性産業大国で海外での買春も相変わらず盛んな様子。考えてみると我々の社会はいろいろと歪んでいるように思えてきます。決して生きやすい社会ではないのだなあ、と。

セックス離れ:若い男性、性の「絶食化」 3000人調査 - 毎日新聞2015年02月05日 09時52分(最終更新 02月05日 18時42分)
図「セックスに「関心がない」「嫌悪している」合わせた回答者の割合」
図「夫婦のセックスレスの主な理由」 魚拓

 若い男性の「セックス離れ」が進んでいることが、一般社団法人日本家族計画協会がまとめた「男女の生活と意識に関する調査」で分かった。夫婦の約半数がセックスレスという実態も判明。専門家は「男性は『草食化』どころか『絶食』傾向。若年層の労働環境の悪化など、社会背景も関係しているのではないか」と分析している。

 ◇10代後半の3割超

 調査は昨年9月、全国の16〜49歳の男女3000人を対象に実施し、1134人(男519人、女615人)から有効回答を得た。2002年から隔年の調査で、7回目になる。

 今回、特に目を引いたのが、29歳以下の男性の性行動を巡る事情だ。性交経験率が5割を超える年齢は「29歳」で、08年の「23歳」、10、12年の「26歳」と比べて一気に高年齢化した。一方、女性は「28歳」で、過去の調査結果(24〜27歳)より高かったが、男性ほどの変化はなかった。

 また、セックスについて、「あまり、まったく関心がない」と「嫌悪している」を合わせた男性の割合が18.3%で過去最高に。特に若年層ほど関心が低く、16〜19歳で34.0%▽20〜24歳で21.1%▽25〜29歳で21.6%−−となり、45〜49歳(10.2%)も上回った。

 若い男性のこうした傾向は10年の調査で初めて明らかになった。以降、「無関心」または「嫌悪している」割合が年々高くなり、今回は08年に比べほぼ倍増した。「草食男子」だった10代が20代半ばになっても草食のままで、かつこうしたケースが珍しくなくなってきたのかもしれない。なお、女性の場合、08年に比べすべての年齢層でセックスへの無関心・嫌悪の傾向が広がった。

 ◇学歴・収入負い目?

 なぜ若い男性の草食化が進んでいるのか。調査を分析した医師の北村邦夫・同協会理事長によると、異性との関わりを面倒と感じたり、結婚に利点がないと考えたりしている男性に、その傾向が強かったという。「相手との関係を築くには相応の時間とお金と労力がかかる。セックスに至るまでのコミュニケーションを難しいと感じる男性が増えているのではないか」。北村さんはこう話したうえで、「一般的に男性は相手より優位に立ちたいと考えがちだ。学歴や収入面で同年代の女性に負い目を感じれば、結果的に関わりを避けるのかもしれない」と分析している。

 .非正規で余裕なく

 一方、夫婦の間で1カ月以上セックスのない、いわゆる「セックスレス」の割合は44.6%(男性36.2%、女性50.3%)で、年々増え続けている。セックスに消極的な理由は、男性では「仕事で疲れている」(21.3%)、「出産後何となく」(15.7%)、女性では「面倒くさい」(23.8%)、「仕事で疲れている」(17.8%)の順に多かった。「趣味など他にセックスより楽しいことがある」といった前向きな理由を選んだのは、男性4.5%、女性5.9%で少数派だった。

 北村さんによると、前回の調査では、1週間の労働時間が計49時間を超えるとセックスレスになる傾向が顕著だったという。また、総務省などによると、若年者(学生除く15〜24歳)の3分の1、30〜34歳の既婚男性の4分の1が非正規雇用に就いているというデータもある。「若年層を中心に非正規雇用が増え、精神的な余裕のなさも関係しているのではないか。男女ともにワーク・ライフ・バランスに配慮するなど労働環境の見直しが必要だ」と指摘する。【鈴木敦子、小川節子】

 ◇ピル避妊使用、少なく

 調査は、出産や中絶、避妊などについても聞いた。

 医学的な出産適齢期は35歳ごろまでとされているが、「最後の子どもを出産する理想年齢」を尋ねたところ、最も多かったのが「30〜34歳」で男性34%、女性41%だった。しかし、「35〜39歳」も男性25%、女性18%に上り、理想の年齢と適齢期の間にずれがあった。

 中絶経験率は、2002年は17%だったが、今回(14年)は13%と減少傾向だ。中絶の理由は「経済的余裕がない」(24%)、「相手と結婚していない」(23%)、「相手が出産に同意しない」(10%)などが続いた。中絶時の女性の気持ちは、胎児に申し訳ない46%▽自分を責めた15%−−などで、半数以上が否定的な感情だった。

 避妊している女性は、「コンドーム」の使用が86%で最多だった。認可から16年たつ低用量経口避妊薬(ピル)は5%で、認知度は02年67%、14年65%と横ばいだ。「使いたくない」は71%に上り、副作用が心配51%▽毎日飲むのが面倒9%−−などが理由だった。

 避妊に失敗した時、性交後72時間以内に緊急避妊ピルを飲んで妊娠を防ぐ「緊急避妊法」の認知度は、04年の21%から年々増え、今回は39%だった。また、日本では未認可だが、世界57カ国で承認されている「経口中絶薬」は、22%が「あれば使いたかった」と答えた。

 北村さんは「中絶手術より女性の体にダメージが少ない経口中絶薬の認可へ向け努力したい。また産婦人科医はピルの効果をきちんと説明し、性感染症はコンドーム、避妊はピルという意識を定着させなければならない」と話す。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2015/02/05

安倍氏のいう「責任」とは何なのだろう。

安倍氏としてはアメリカも含めた各方面からの圧力を見極めるためにギリギリまで言質を取られるようなことはいいたくないのでしょうね。今後「指導者の責任」の内容について問われるでしょうけれど。

戦後70年談話:首相「戦争指導者に責任」…衆院予算委 - 毎日新聞(2015年02月04日 21時29分(最終更新 02月04日 21時42分))

 安倍晋三首相は4日の衆院予算委員会の集中審議で、8月にも発表する「戦後70年談話」に関連し、「多くの日本人の命が失われ、国土は焦土と化した。結果に対して政治の指導者、戦争の指導者に大きな責任があるのは当然のことだ」と述べ、当時の指導者の責任に言及した。民主党の細野豪志政調会長への答弁。ただ「国策を誤ったか」との問いには直接答えず、談話の内容に関しても慎重な発言に終始した。【佐藤慶】

 「戦争の犠牲者の中に戦争指導者は入るのか」「我が国は国策を誤ったと認めるべきではないか」。細野氏がただすと、首相は「政治指導者に多くの責任があるのは当然のことで、私は一貫して言ってきている」と強調。国策を誤ったかについては、「それぞれの判断がある。歴史については歴史家に任せたい」と述べるにとどめた。

 「国策を誤り」との表現は、1995年の村山富市首相談話に盛り込まれたが、2005年の小泉純一郎首相談話にはない。首相は、両談話を含めた歴代内閣の立場を「全体として引き継ぐ」とする一方で、表現の踏襲には否定的な見解を示している。

 これに対し、石破茂地方創生担当相は「国土を焦土と化し、大勢の人々が死んでいったことに対し、誤っていないとは言えない。それは村山談話も言っていることだし、政府として堅持している」と述べ、閣内に温度差があることも顕在化した。

 菅義偉官房長官は4日の記者会見で、戦争の犠牲者に指導者が入るかを問われ「政府としてはサンフランシスコ平和条約で東京裁判を受諾しており、それに異議を唱える立場ではない」と述べるにとどめた。

 一方、民主党の辻元清美氏は「国策を誤り」「痛切な反省」など過去の談話の表現について、個別に「引き継いでいるか」とただしたが、首相は「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる。今後も引き継いでいく」と繰り返すにとどめた。

| コメント (0) | トラックバック (0)

終わりの始まりの始まりか。

事態は予断を許しませんがとりあえず論評抜きで記録しておきます。

まあ国土が灰燼に帰し長崎に「新型爆弾」が落とされた後ですら大本営は本土決戦と戦争継続を主張する人が多くいましたし、敗戦直後ですら国体護持と帝国憲法にこだわる人たちが多かったわけですし、敗戦の悲惨を痛感した後ですら再軍備と核保有とに邁進する人はたくさんいたわけですし、最近の事例では原発が爆発した後ですら原子力発電を拡大しようとする人たちは強力にその政策を推進しているわけです。
亡国の徒というのは、実際に国を滅ぼした後ですらその滅びの道を進もうとするわけで、こういう人たちの業の深さにはおののくしかないのですが、もっとおののくべきことは、彼らによって実際に滅ぼされるのは我々であって、彼らが滅ぶことはないということです。

ボクタチの考えた美しい国ニッポンとかいう小学生のマンガみたいな妄想が現実のものになろうとしています。
大きな子どもたちの国づくりゴッコに付き合わされ振り回されて破滅していくのは私たちと私たちの子どもや孫の世代です。

憲法改正の発議は来年参院選後に NHKニュース(2月4日 19時10分)

安倍総理大臣は自民党の船田・憲法改正推進本部長と会談し、最初の憲法改正の発議と、それに続く国民投票は来年の参議院選挙のあとになるという認識で一致し、衆参の憲法審査会で改正の中身の絞り込みに向けた議論を丁寧に進めるよう指示しました。

憲法改正を巡っては去年、改正に必要な国民投票の年齢を18歳以上に引き下げることを柱とした改正国民投票法が成立し、必要な手続きが整いました。
自民党の船田・憲法改正推進本部長は総理大臣官邸で安倍総理大臣と会談したあと、記者団に対し、憲法改正について、最初の憲法改正の発議とそれに続く国民投票の時期は、「国会でのこれからの議論の進み具合を考えると来年の参議院選挙の後になる」という見通しを安倍総理大臣に示したのに対し、安倍総理大臣も「それが常識だろう」と述べたことを明らかにしました。
また、会談の中で、安倍総理大臣は「1回目の憲法改正の中身を絞っていくことは、丁寧にやっていくべきだ。大いに議論してもらいたい」と述べ、衆参の憲法審査会で改正の中身の絞り込みに向けた議論を丁寧に進めるよう指示したということです。
また、船田氏は記者団に対し、「1回目の憲法改正は手続きをきちんと行い、実現することが非常に大事だということに安倍総理大臣からもご理解をいただいた。予算委員会での来年度予算の基本的質疑が終わる頃には議論を始めたい」と述べ、今の国会中に改正の中身の絞り込み作業を始めたいという考えを示しました。

| コメント (0) | トラックバック (0)

« 2015年1月 | トップページ | 2015年3月 »