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2015/02/10

大阪の件で公明党が自民党に借りを作ってしまった、という文藝春秋の記事。

安保協議直前、負い目を抱えた公明 | 赤坂太郎 - 文藝春秋WEB(2015.02.10 07:00)
さて…?
どこまで信憑性があるのか分からないけれど、大阪の件は創価学会幹部と官邸が動いて…という話は以前からネットの噂になっていたので、そうかもね?という感じ。公明党は「平和の党」というキャッチフレーズほど平和主義に信念を持っているとは思えないので、安保関係で自民党に従順なのは以前通り、予想通りというぐらいの印象。コラムの中で出てくる解釈は、コラムの中で紹介されている事実関係から見る限りでは、結構強引なようにも見える。

 通常国会に2015年度予算案が提出されるとともに、安倍晋三首相の施政方針演説で国会論戦が本格化する。年頭記者会見で、「総選挙における国民の負託にしっかりと応えていかなければならない」と述べ、与党で3分の2の議席を確保する大勝を収めたことへの高揚感をにじませた。

 その安倍に、冷や水をかけるような事件が起きた。1月20日、イスラム過激派組織「イスラム国」と見られるグループが、後藤健二さん、湯川遥菜さんの命と引き替えに身代金2億ドルを要求してきたのだ。

「それは本物なのか? そもそもあの2人なのか?」

 後藤さんと湯川さんが覆面姿の男の左右に跪かせられているような動画がインターネットの動画サイト「ユーチューブ」で流れた20日午後2時50分すぎ。中東外遊中で留守の安倍に代わって首相官邸を預かっていた菅義偉官房長官が、動画の件を伝える外務省出身の秘書官らに指示したのは、動画の真贋の確認だった。

 連絡を受けた安倍が歴訪中の中東から指示したのも「情報収集」。2人を拘束したのがイスラム国のようだと判断するまでにもかなりの時間がかかっている。このタイムラグに、今回の事態の深刻さが表れている。首相の中東歴訪中を狙って日本人を人質に取って身代金を要求してくる。その状況を本格的に想定していなかったのだ。

 湯川さんが拘束されたと見られるのは昨年8月、その湯川さんを救出するためにシリアに入った後藤さんが行方不明になったのが10月。その後、後藤さんの妻にイスラム国と見られるグループから拘束を知らせるメールや、身代金を要求するメールが届き、相談を受けた外務省はその事実を把握していた。

 昨年8月にはヨルダンに現地対策本部も設置していた。にもかかわらず、これまで十分なシミュレーションがされた形跡がない。

 実は外務省中東アフリカ局には、重要な資金源となっている密輸原油の価格急落でイスラム国が財政的に苦しくなっていると見て、殺害予告を伴った身代金要求を行ってくるのではないかという見方もあった。

 しかし、今回の歴訪を含む中東政策を立案する過程で、「積極的平和主義」にこだわる官邸と、「テロとの戦いに消極的」と見られることを嫌う外務省上層部の意向で生まれたのは、日本独自の「ガラパゴス的」対応方針だった。

「人道分野での支援を積極的に果たすが、あくまでも医療など非軍事に限る」ことにこだわり、中東と宗教上、歴史上の問題をはらみ、イスラム国と敵対関係にある米英、欧州との「差異化」を図るという結論に至ったのだ。

「日本は人道支援だ。イスラム国の言い分は言いがかりじゃないか」

 事件の一報を聞いた安倍や菅は一様にそう述べたという。今回の中東歴訪に際して策定された、中東への「ガラパゴス的」対応こそ最善だという思いが強かったからであろう。

 ところが、安倍は支援対象について「イスラム国と戦う周辺国」と説明した。米欧との「差異化」どころか、動画で覆面の男が発したように「日本はイスラム国から8500キロも離れていながら、進んで十字軍に参加した」と思われる言い回しだった。

 1月24日には、殺害された湯川さんとみられる写真を持った後藤さんの画像が公表され、身代金ではなく、ヨルダンに収監されている女性テロリストの解放を要求してきた。

 その後も、後藤さんを使った要求が相次いだが、「交渉はヨルダン政府にまかせるしかない状況」(外務省幹部)。日本独自の動きとしては、トルコのシリア国境やヨルダンで、マスコミなど日本人が新たに被害に遭わないように目を配っていることくらいだ。

ライス米補佐官の懸念

 この事件は、今後の集団的自衛権行使容認問題にも暗い影を落とす。

 行使容認で自衛隊を中東・ホルムズ海峡まで派遣できるようにし、後方支援でも「戦闘現場」以外での活動を可能としていけば、いくら首相が「戦争に参加するのではない」と繰り返し強弁したところで、イスラム国からは「日本が軍隊を前面に出してきた」と受け止められるだろう。

 そうなれば、いざ中東に自衛隊員が派遣された際、死傷者が出る可能性が高くなるどころか、在留邦人がイスラム国やテロリストの標的になる恐れが格段に増す。国家安全保障会議(NSC)の事務局スタッフは人質事件の最中、率直に「安保法制の整備に悪影響が出かねない」と漏らす。

 安倍は「積極的平和主義」によって「国民の平和と安全を守り抜く」と繰り返すが、その自衛隊の海外派遣拡大で、日本人が危害に遭うリスクが高まる。今回の人質事件は、この負のスパイラルに陥ることへの警鐘でもある。

 その「安保法制の整備」は、通常国会の最大の争点だ。

 与党内でも、焦点となる集団的自衛権行使を容認する新たな要件「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」というケースの解釈をめぐり、自公の溝は埋まっていない。安倍は中東のホルムズ海峡での機雷除去も可能と主張するが、公明は日本有事の寸前に限定されるとの立場を崩していない。

 外務、防衛両省が描いている今国会以降のシナリオはこうだ。自公協議を経て、4月末から5月初旬のゴールデンウィークに日米外務・防衛閣僚会合(2+2)で、自衛隊と米軍の役割分担を定める「日米防衛協力指針(ガイドライン)」の改定内容を合意し、すぐに首相が訪米してオバマ大統領と成果を自賛し合う――。

 ガイドライン改定は、昨年末までに合意するはずが、日本側が「自公の調整が済まなければ、安保法制と表裏一体のガイドラインを改定できない」と申し入れ、先送りになっていた。

 ただ、その米国も日本に懸念を抱えている。安倍内閣発足から半年余りたった2013年7月。スーザン・ライス大統領補佐官は、安倍の外交ブレーンである谷内正太郎・内閣官房参与(現・国家安全保障局長)に対し、こう言い切った。

「米国は従来、日本政府に集団的自衛権を行使できるよう繰り返し求めてきた。だが、このタイミングで進めることには懸念をもっている。中韓両国の反発だ。まずは両国との関係改善を進めてほしい」

 オバマ政権からすれば、歴史認識問題で、中韓両国との関係を悪化させる安倍とその盟友たちの言動は迷惑でしかない。日本は中韓両国との関係を改善し、核・ミサイル問題を抱える対北朝鮮政策で足並みを揃えてほしい――米政府の苛立ちはそこにあった。

 その後、オバマ政権は、南シナ海を含め、周辺国との軋轢を強める行動をとり続ける中国の習近平政権に失望したことの裏返しで、安倍政権に対する姿勢を軟化させた。昨夏の集団的自衛権の行使容認の閣議決定についても歓迎の立場を示した。だが、安倍政権の歴史認識問題への懸念が燻っているのは間違いない。

自民が押し切り協議再開

 有事法制をめぐっては、自民党の高村正彦副総裁と公明党の北側一雄副代表が昨年12月の衆院選直後から水面下で接触、自公の“裏交渉”は始まっている。自民党は1月の通常国会召集前に大筋で合意点を見いだし、与党協議会を経て、早期に正式合意に持ち込みたい考えだった。だが高村、北側の交渉でも溝は埋まっていない。

 公明党は4月の統一地方選で1600人余が改選を迎える。その重要性は他党の比ではない。支持母体の創価学会が最初に政治に進出したのが1955年の統一地方選で、いわば原点だ。何より地方議員こそが学会員の様々な要望に応えて政策実現を果たす要として党の基盤を支えている。

 その統一地方選の最前線を担う婦人部には、今なお自衛隊の海外派遣そのものに慎重論が強い。党幹部は口々に「選挙前に安保法制の論議で自民党とゴタゴタしたくない。公明党が押し切られた印象を持たれれば運動員の足が鈍る」と懸念する。政府、自民党との協議を統一地方選後に先送りしたいというのが、公明党の本音だった。だが、自民党との与党協議会を早急に開かなければ、安保法制の準備は遅れて通常国会での成立が困難になり、ガイドラインの改定にも赤信号がともる。

 結局、公明党は自民党に押し切られた。2月に協議会を再開することになったのだ。その裏には、昨年の衆院選で公明党が政府、自民党に大きな「借り」を作った事情が存在する。

 舞台は大阪。衆院の解散話が急浮上した昨年11月、維新の党の橋下徹共同代表(当時)と松井一郎幹事長(当時)は当初、衆院選で公明党の現職議員が立候補する大阪3区と16区に立候補する構えを見せていた。ところが、公示の1週間前に急転直下、出馬を見送ったのだ。

 もともと公明と維新は蜜月関係だったが、橋下の従軍慰安婦発言などで旧日本維新の会は次第に勢いを失い、距離が広がった。公明党は連立与党を組む自民党との関係を大阪でも強めて、都構想にストップをかけたことで修復不能に陥った。

 ところが、橋下は同月23日、突如として公明党が候補者を立てる大阪・兵庫の選挙区で自らも含む維新の候補者擁立の見送りを表明した。橋下は理由を問われても「大阪のためになると判断した」としか語らなかった。

「公明 維新」妥協の理由

 互いに罵り合ってきた両党がなぜ急転直下、妥協できたのか。

 動いたのは最近、永田町でその名を知られるようになった創価学会副会長(広宣局長)佐藤浩だった。

 維新の党と全面対決となれば、公明党は小選挙区で候補を立てる関西6選挙区で苦戦が避けられない。創価学会は、全国の会員をこの6選挙区に動員したり、電話作戦に従事させたりする必要に迫られる。そうなれば全国の比例票の獲得に支障をきたし、公明党の勝利は覚束ない――危機感を強めた佐藤の動きは素早かった。

 昨年11月中旬、佐藤は菅と都内で密会して、こう切り出した。

「このままだと北側さんも危ない。公明党と維新の党は全面戦争になってしまう。橋下さんや松井さんと親しい安倍首相も菅さんもそれは望んでいないでしょう?」

 そして、大阪都構想の住民投票が可能になるよう創価学会本部から大阪の学会や公明党に働きかけるので、橋下や松井を説得してほしいと頼み込んだ。菅はこれを受け入れ、安倍も了解した。首相官邸が「保証人」になる形の妥協だった。

 佐藤が言う通り、安倍にとっても今後の政権運営、とりわけ憲法改正の発議に必要な3分の2の勢力の確保を考えれば、公明党と維新の全面対決は避けたい。官邸が創価学会の頼みを聞き入れて公明党を勝利に導いた意味は決して小さくない。創価学会と公明党は安倍や菅に大きな「借り」をつくってしまったのだ。

 しかも、官邸に助けられて当選した当事者の1人が、安保法制の与党協議を主導する北側だった。公明党は自民党に候補者擁立を見送ってもらったばかりか、他党(維新)の候補者降しまで手助けしてもらった以上、負い目を抱いて協議に臨まざるを得ない。

 公明党は今回の協議で、どこまで「平和の党」の主張を貫くことができるのか。衆院選で連勝して強気の安倍政権に対し、今まで以上に難しい対応を迫られる。苦悶するのは安倍だけではない。

(文中一部敬称略)


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