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2015/03/04

一日のうちに「搾取」という言葉に2度も出会ったのでメモ。

楽天三木谷発言は、一般労働者の搾取が目的(今野晴貴) - 個人 - Yahoo!ニュース(2015年3月3日 13時36分)

文章は読みやすいのですが、自分なりに少し論旨を整理してみました。
たぶん、最も大事な点は、

1.三木谷氏の発言には重大なごまかしが入っていて、経営者的立場の人たちの話と一般社員の話とを混同して重要な弊害を隠し、労働者を雇う側の本音をごまかしている

2.思い切り仕事をしたいという情熱を持って熱く頑張る人をダメにするのか!
という批判に対しては、
いや、それはもう普通にできますから。今でも、何も問題なく。
という反論で議論終了

ということだと思います。

*******
●三木谷氏の発言
「ベンチャー企業というのは夢を見て24時間働くというのが基本だ」
ゆえに
「そういう会社に残業云々と言われても正直言って困る」

●この発言の意図を知る上でのポイント。

1.経営者であれば業種を問わず現時点でも労働時間規制の対象からは外されている。
2.実際に、経営者でなく雇われている労働者の中でも、自社の株を何割も持っていたり、経営者と実質的に同じ立場にある人も……(中略)すでに労働時間規制の対象外となっている。

つまり、現在でも、すでに、
「会社と立場を同じくする」ために、労働法の規制の必要性は薄いと判断されているのである。だから、ベンチャー経営者やその同志たちの労働時間を規制する法律は今のところ存在しない。

ということで、
「ベンチャー企業というのは夢を見て24時間働くというのが基本だ」
という人たちは、
「残業云々と言われて」困る
事態にはなっていないし、産業競争力会議ではこういう人たちの残業は問題になっていない。

従って、三木谷氏が「残業云々」と言っているのは、

会社が成長することで直接的には何の利害も得られない「一般労働者」も24時間、経営者に付き合わされることを自由にしろ、ということなのである。いわば、「定額¥働かせ放題」を合法化せよ、ということだ。

●長時間労働の弊害

1.「100年以上前から国民の健康を損ない、平均寿命すら下げることが知られている。」
2.「一度健康を損なってしまうと次に働くまでに膨大な費用がかかってしまう。これは国全体にとっての損失だ。」
3.「一般の社員を使い潰して行われる成長は、日本社会全体の成長や生産性を犠牲にした、身勝手なやり方である。日本全体の生産性の観点からも、「ベンチャーなら規制を外してもいい」ということには、到底ならない」
4.事故やトラブルは企業の被害も甚大にする。

●三木谷氏の発言の問題
1.三木谷氏個人は、規制緩和の政策推進者として、「数多くのベンチャー企業の社員の「命」と「健康」、健全な業務遂行」、「日本のITビジネスに対する信用」の毀損が起きても、彼個人は責任をれない。
2.現在でもすでに裁量労働制や労働管理監督者制度の悪用で「長時間労働を強いられ、過労死や過労自死、鬱病に追い込まれる労働者がごまんといる」
3.「一般の社員に対し、「お前は経営者だ」とうそをついて煽り立てる…企業はまさに戦略的に若者を煽って使い潰すことによって利益を出している。」「今回の三木谷氏の発言も、この広がりつつある「ブラック企業」の戦略に通ずるものがある。」

●まとめ
「大半の裁量労働制や管理監督者の適用は、今はまだ「違法」だということだ。ブラック企業に嫌気がさせば、社外の専門家に頼ることで、多額の残業代を求め、転職の原資にすることができる。」
しかし、三木谷氏の主張のようにこの規制も外されれば、このような救済もできなくなってしまう。

*******
というわけで、

思い切り仕事をしたいという情熱を持って熱く頑張る人をダメにするのか!

という批判に対しては、

いや、それはもう普通にできますから。今でも、何も問題なく。

という反論で議論終了ということです。

*********************
格差問題で竹中平蔵氏「正規が非正規を搾取」 : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)(2015年03月02日 23時03分)

 竹中平蔵・慶大教授と山口二郎・法大教授が2日、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、安倍首相の経済政策「アベノミクス」を巡る格差の問題について議論した。

 竹中氏は、「雇用者報酬が実質で増えていることは重要。日本でも(格差が)拡大しつつあるが、世界の中で見れば客観的に低い」と強調。そのうえで、「正規が非正規を搾取する構造になっている。正規と非正規の壁をなくさなければいけない」と述べた。

 一方、山口氏は、「個人消費が伸びず、実質賃金も低下し続けている。マクロ経済の数字の改善が(国民経済の)成功指標であるという関係は21世紀に入って崩れた」と指摘。「普通の働く人に力点を置かなければ、経済回復の道筋は描けない」と訴えた。

さっそく、はてなブックマークで、

「労働者が労働者をどうやって搾取できるんだよ」
「搾取してるのは資本家だよ。マルクスな。」

などと、まったく正当に突っ込まれていました。

今の大学院生なら知らなくても「しかたないなあ」と苦笑いする程度なんですが、竹中氏の世代は「原論」は当然のように勉強したはずで、剰余価値論とかは普通に語れるはずなので、この「搾取」はきっとマルクスの言う意味ではないのだろうと思いますが(希望的観測)、しかし、仮にも経済学者(しかも理論系の)が「搾取」などという術語をルーズに使うのはいかがなものかなあ…と愚考する次第です。
……人材派遣会社の役員という資本家としての仕事に忙しくて、まさか「搾取」の定義すら忘れてしまったとは思いたくないです、さすがに。慶應義塾大学の教授でもいらっしゃるわけなので。


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