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2015/05/11

思いは分からないでもないが、個を見られず属性で見てしまう人の性か。

すげえ腹立つわ|愛情料理研究家 土岐山協子の 『料理はしないんだけど料理研究家のブログ』(2015-05-08 05:44:46)

小さい子を置いてイベントなどに出かける母親を許せない!
という怒りをぶちまけている話。

問題点の指摘や批判は下記に既出なのでこれらの点は再論しない。
はてなブックマーク - すげえ腹立つわ|愛情料理研究家 土岐山協子の 『料理はしないんだけど料理研究家のブログ』
父が子育て身代金を減額した話 - wHite_caKe

この土岐山さんという方が激怒した状況が分からないので、事情を詳しく知れば「なるほど怒りももっともだ」と思うかもしれない。また、この記事によると、この方は教員経験があって、そのときにいろいろと問題を抱えた家庭を見た経験があるようで、そのときにネグレクトのような親への憤りを感じてもいたようだ。
子供を守るために外部からの介入が要請されるような緊急性の高い状況で、子供への責任感を全く欠いた親たちがいる。そういう状況をイメージした文章なのではないか。これが一読した感想だった。この観点に基づけば、土岐山さんの文章は、怒りを誘発した状況の説明や怒りの対象の限定が不足していて、全ての家庭(とりわけ母親)への一般的な呼びかけだと受け止められたことが「炎上」の一つの要因だと言えるだろう。つまり非常に限られた深刻なケースへの言及を念頭に置いていたのに、問題ないケースをも包含して問題視しているかのように受け止められた、という解釈である。……もっとも、ご本人の意図もまた一般的な言及であった可能性はもちろん低くないのだが。

ただ、それでも下記の論点は残るだろう。
・問題を抱えた家庭において、親を叱責したり督励したりするのは一般的にはそれほど有効な方法ではないだろう。モラルを呼びかけても親には親の事情があり、モラルを守れない・守る気になれない場合はとても多い。もちろん親自身の未発達というケースもある。ただ、カウンセリングにせよソーシャルワークにせよ、状況の受け止めがまず大切で、叱咤激励はよほど相手をよく知り時宜に適わないと問題を複雑化する恐れが高い。従って、子供を置いて遊びに行く親へ「子供を愛せ」とか「親の責任」とかを大所高所から語ってもさほどの効果があるとは思えない。そもそもそういうお題目自体は誰でも知っているからである。

・子供を置いて外出する理由が仕事なのか遊びなのか、必要なことなのか不必要なことなのかの線引きは恣意的にならざるを得ない。外からは分かりづらい事情がある場合もある。育児から一旦離れることが育児を継続する上で重要な意味を持つこともある。

・激怒するまでに問題が大きいと感じたなら、ましてやそれが教員経験をも踏まえた憤りなのであれば、それは親への叱責や憤慨へ直結させるべきではなく、しかるべき機関なりへとつながれるように働きかけるべきではなかったか。自らの感情のはけ口のネタとしてその人の存在を使ったと受け止められかねないだろう。

・この記事が誰かへのメッセージや意見表明ではなく、第三者に読まれることを意図しない単なる怒りや愚痴のぶちまけ、あるいは身内や友人内のプライベートな雑談のようなものであるとしても、一般公開の場での表明である以上、周囲の人たちには一定の波紋が広がるだろう。今回の怒りの対象者への改善を促すアプローチとしては、これは余り望ましい経路ではないのではないか。

……などと控えめな視点を出してみた。

話は変わって、この種の主張をする人には特徴があるなあと思ったので、以下では気がついたポイントをメモしておく。

・タイトルコピーから
「日本女性の」「しなやかな」「強さ」と美しさを応援します。とある。カギ括弧で示した部分がポイント。
・プロフィールから

戦後70年をかけて崩れつつある日本の食文化を立て直すための事業をして行く志を30歳の時に抱き、平成26年10月1日に、「おだしプロジェクト」を立ち上げ、沢山の団体様と連携しながら、食の大切さを伝える活動をしております
「愛情料理研究家」という肩書きで、母親が愛情を持って子どもの料理を作ることの大切さも、様々な角度から発信させていただいております
わたくし達は自分の口に食が届くまで様々な方の苦労があったことを忘れてはならないと思います
食文化を見つめ直すことは身体の健康を考えることは元より、そこから感謝の気持ちと謙虚な心を身に付けることに繋がります
まずは母親となる女性からそのことを意識して取り組む必要があると思います
感謝の気持ちと謙虚な心を持つ女性は美しい
そういう女性が増えれば増えるほど日本の国力は上がると心から思っております
皆さんのお力が必要です
「戦後70年をかけて崩れつつある日本の食文化」
「立て直すための事業をして行く志」
「母親が愛情を持って子どもの料理を作ることの大切さ」
「感謝の気持ちと謙虚な心」
「母親となる女性」
「感謝の気持ちと謙虚な心を持つ女性は美しい」
「日本の国力」
……ほとんど全部になってしまった。
桜井よしこ氏などと気が合いそうな人である。

********
蛇足だが。
1.妻には子供や家庭に埋没しないでほしいと願っている。妻には妻の人生があり、妻の生き甲斐がある。この世に生を受けた一人の人間として充実した人生を送ってほしい。それと育児とを両立させることはできるはずだし、その両立を助けるのが夫の役割だと考えている。ていうか、育児は妻の「仕事」ではない。
2.母はフルタイムの共稼ぎであり、また仕事以外にいくつかの活動を掛け持ちしていたから、不在のことが多かった。だがそのことで母を恨んだ覚えはない。成長してからしばしば思うことは、この諸活動を行っている母の姿や母の友人たちが自分の意識の成長に強い影響を与えたということだ。生き甲斐の持ち方、世事との折り合いの付け方、多忙の中でのやりくり、趣味の世界に集う多様な大人たちとのやりとり、そういう諸々の状況を見続けさせてもらえたのは、自分の生き方・世渡りを見つけていく上で大いに役だった。そして何より、個を確立し個を尊重し合うことの気持ちよさや難しさを教えてもらった。これは幸せな経験だったと今にして思う。


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