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2015/05/31

控えめだが重要かつ当然な声明

「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明 - 九州歴史科学研究会HP

私が「控えめ」というのは、この声明の批判対象が直接には一部政治家やマスメディアにとどめられている点である。
公式には政府見解は河野談話を転換してはいないものの、報道されている外務省の一連の動きや教科書検定を巡る文科省の動き、閣僚の発言、そして何より公的な政府見解であるはずの河野談話に書かれている

歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意
の実現を全く進展させる様子がないことなどに鑑みると、政府を名指しして批判対象に含めるべきであったのではないかと思うからである。

しかしながら、この声明はきわめて当たり前のことを明快かつ直裁に表現しており分かりやすいこと、歴史学関係の広範な専門家団体が連名で声明しており、安倍首相の言う「歴史家の判断」として十分な重みがあり、非常に有意義な声明であることは間違いない。これらの理由から下記に転載し、万一リンク先が読めなくなっても参照可能なように保存しておくことにする。

これもまたきわめて当然のことだが、安倍首相は、自らが「歴史家の判断にゆだねる」と言っていたにも関わらず、決してこの声明を認めることはしないだろう。なぜなら彼が「歴史家の判断にゆだねる」と言ったのは、自らが「先の戦争は誤りであった」と言わざるを得ない状況から逃げるための方便でしかなかったからだ。彼は「日本軍、日本の国家、日本人?は正しかった」という信念(妄想)を強固に持ち続けており、それを否定することはおそらく彼の政治家としての存在意義自体を自ら否定することと同義なのだろう。しかしながら、おそらく彼自身もこの信念が誤りであることは気づいていて、それ故に追及され返答に窮すると言い逃れを連発するしかないのである。
そうした彼の言動は「大人」の政治家とは思えない稚拙さで、見ていて滑稽でもあり哀しくもある。しかし何よりも悲しく思うことは、このような人物が我々の首相という地位にあり、かつ彼のこうした愚かな言動を掣肘することができない政治状況にあり、そして彼がどれほど愚かであろうとも、彼の支持率が一向に下がる気配がないということである。

「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明 - 九州歴史科学研究会HP

 『朝日新聞』による2014年8月の記事取り消しを契機として、日本軍「慰安婦」強制連行の事実が根拠を失ったかのような言動が、一部の政治家やメディアの間に見られる。われわれ日本の歴史学会・歴史教育者団体は、こうした不当な見解に対して、以下の3つの問題を指摘する。

 第一に、日本軍が「慰安婦」の強制連行に関与したことを認めた日本政府の見解表明(河野談話)は、当該記事やそのもととなった吉田清治による証言を根拠になされたものではない。したがって、記事の取り消しによって河野談話の根拠が崩れたことにはならない。強制連行された「慰安婦」の存在は、これまでに多くの史料と研究によって実証されてきた。強制連行は、たんに強引に連れ去る事例(インドネシア・スマラン、中国・山西省で確認、朝鮮半島にも多くの証言が存在)に限定されるべきではなく、本人の意思に反した連行の事例(朝鮮半島をはじめ広域で確認)も含むものと理解されるべきである。

 第二に、「慰安婦」とされた女性は、性奴隷として筆舌に尽くしがたい暴力を受けた。近年の歴史研究は、動員過程の強制性のみならず、動員された女性たちが、人権を蹂躙された性奴隷の状態に置かれていたことを明らかにしている。さらに、「慰安婦」制度と日常的な植民地支配・差別構造との連関も指摘されている。たとえ性売買の契約があったとしても、その背後には不平等で不公正な構造が存在したのであり、かかる政治的・社会的背景を捨象することは、問題の全体像から目を背けることに他ならない。

 第三に、一部マスメディアによる、「誤報」をことさらに強調した報道によって、「慰安婦」問題と関わる大学教員とその所属機関に、辞職や講義の中止を求める脅迫などの不当な攻撃が及んでいる。これは学問の自由に対する侵害であり、断じて認めるわけにはいかない。

 日本軍「慰安婦」問題に関し、事実から目をそらす無責任な態度を一部の政治家やメディアがとり続けるならば、それは日本が人権を尊重しないことを国際的に発信するに等しい。また、こうした態度が、過酷な被害に遭った日本軍性奴隷制度の被害者の尊厳を、さらに蹂躙することになる。今求められているのは、河野談話にもある、歴史研究・教育をとおして、かかる問題を記憶にとどめ、過ちをくり返さない姿勢である。

当該政治家やメディアに対し、過去の加害の事実、およびその被害者と真摯に向き合うことを、あらためて求める。

2015年5月25日

歴史学関係16団体

日本歴史学協会

大阪歴史学会

九州歴史科学研究会

専修大学歴史学会

総合女性史学会

朝鮮史研究会幹事会

東京学芸大学史学会

東京歴史科学研究会

名古屋歴史科学研究会

日本史研究会

日本史攷究会

日本思想史研究会(京都)

福島大学史学会

歴史科学協議会

歴史学研究会

歴史教育者協議会


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