自民党の大西英男議員はある意味で正しいと思う。
大西氏が重ねて持論を述べた模様。
・党から厳重注意処分を受ける
・しかし発言は変わらず。
「(発言に)問題があったとは思わない」
「(報道機関を)懲らしめようという気はある」
「言論や表現の自由は民主主義の根幹で、それを否定する発言はしていない」
「誤解、曲解を与える発言は反省している」
言論の自由という概念を全く分かっていないのは言うまでもないが、ある意味でこの種の誤解は自民党のエートスに根ざしているので、分からないのももっともだと思う。
だから、下記の朝日新聞記事では、
・党執行部の指導力が及んでいないことが明らかになった
・安倍首相の対応が問われる
と述べているけれども、見方が表層的であるように思う。
すなわち、大西氏の発言は自民党の理念に沿っており、自民党的価値において全く正しいので、その主張を枉げることは政治家としての信念からできないというのは当然だろうし、圧力に抗してその信念を貫くという点では立派な振る舞いなのである。
したがって、発言の間違いを反省するように党執行部に言われたとしても、大西氏からすれば、党の理念をゆるがせにする執行部こそ間違っているのであり、また本心は党の理念を守るとしても、世間の逆風に対して党の体面を取り繕うために処分してみせたということであれば、そのいい加減さはやはり信条を国民に問うて信を得るべき政党としては許し難いことだということになるだろう。
だから正しい政治家たらんとすればするほど、「党執行部の指導力」には抗せざるを得ないし、安倍氏の対応としても「大局を見てここは矛を収める度量も持つのが一流の政治家だ」みたいに言わざるを得ないだろうけれども、そもそもそういう「賢さ」自体のごまかしが政治家的に正しくないという感はぬぐいがたいだろう。
要するに、大西氏は自民党内の原理主義者みたいなものなので、原理論的に正しい主張をゴリゴリと押してこられるのを「世間体」みたいなものでなだめるのは簡単ではないし、そうした説得に簡単に応じて反省してみせる人は「話が分かる人」ではあるけれども政治家として高潔かと言えば疑問符がつくだろう。
これがまあ例えば(今の)共産党的であれば、「マスコミを懲らしめる」という発言自体が党の理念にそぐわないので、議員辞職勧告と除名という処分になって簡単だろうが、自民党ではややこしいだろうなあということなのである。
要するに、私は今回の一連の騒動は、安倍執行部になってから自民党がより自らの理念・政治的理想に向かって先鋭化して(要するに極右的になって)いく過程にある中で起きた現象だと解釈している。こうした傾向に敏感に染まった「跳ねっ返り」にとってみると、従来の現実妥協的・打算的・利益誘導的な自民党の政治的立場が、建て前と本音の使い分け、理念への現実主義と称する裏切りと映っているのではないかということである。
大西氏、報道機関を「懲らしめる気はある」 重ねて発言:朝日新聞デジタル(2015年6月30日19時55分)
自民党議員の勉強会「文化芸術懇話会」での発言について、党から厳重注意処分を受けた大西英男衆院議員(東京16区)は30日、国会内で記者団に「(発言に)問題があったとは思わない」と述べた。また、「(報道機関を)懲らしめようという気はある」と重ねて語った。党の処分直後だけに、党執行部の指導力が個々の議員に及んでいないことが明らかになる一方、党総裁としての安倍晋三首相の対応が問われる。二階俊博総務会長は30日、大西氏の発言について「党という看板を背負ってやる以上、個人の立会演説ではない。もっと慎重であるべきだ」と批判した。
大西氏は25日の党本部での勉強会で「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番。日本を過つ企業に広告料を支払うなんてとんでもないと、経団連などに働きかけしてほしい」などと述べていた。
大西氏は30日、自らの発言について「問題があったとは思いません」としたうえで、「安全保障法制について事実無根の『戦争に導く』という報道をしている一部マスコミを懲らしめなければいけない。いい知恵はありませんかと(講師で作家の百田尚樹氏に)尋ねた」と説明。また、「誤った報道をするようなマスコミには広告を自粛すべきだと、個人的には思う」とも主張した。
一方、大西氏は「言論や表現の自由は民主主義の根幹で、それを否定する発言はしていない」「誤解、曲解を与える発言は反省している」とも語った。
追記:発言詳細が出ていた。
大西英男議員、記者団とのやりとり詳細:朝日新聞デジタル(2015年6月30日23時25分)
■自民党の大西英男衆院議員と記者団とのやりとりは次の通り。いつも思うことだけれども、百田氏にしても安倍氏にしても同じで、この種の人たちはどうしてこんなに被害者意識が強いのだろう。逃げも隠れもしないから下がりなさい。皆さんにお話ししておきますけれども、常にマスコミの皆さんはつまみ食いするんだよ。都合のいいところだけ編集して、そして全く本人の意図と違うような報道の仕方が極めて多いんだよ。
まず最初に申し上げるけれど、私は一言も、政治家や党が財界に圧力をかけて、そしてマスコミを懲らしめろなんてことは一言も言ってない。それがいまそういう報道されているでしょ。そんなことはない。
私が言わんとしたことは、政治家や政党がそういう言論の自由を抑圧するようなことを言ってはいけないということをはっきり言っているんだから、あの中で。しかし、百田(尚樹)先生が講師だから、百田先生、こうしたマスコミの一部の、例えば朝日新聞の……、ここ、朝日新聞の人いるか? 従軍慰安婦の捏造(ねつぞう)記事。あれが世界をめぐって、日本の名誉や信頼がどれだけ傷つけられたかわからない。
あるいは、今の安保法制について、全く事実無根の戦争に導く、あるいは徴兵制、全く関係ないじゃないか。日本が戦争に巻き込まれないための抑止力を高めようとしているのに、そう報道している一部マスコミがある。こういうことを懲らしめなければいけないんじゃないか。マスコミのやりたい放題じゃないか。
そういうことで、何か良いお知恵はありませんかと百田先生にお尋ねをしたんだよ。勉強会の中で。これ何か問題がある? そしてまた問題があるというところだけ、どこかのテレビが報道しかねないから、私はあえて言わないですけれどもね、そういうことですよ。真意は。
――大西議員の口から「広告料をなくした方がよい」「規制をする」という発言はないということか。
自由主義世界で、資本主義社会で、広告料をなくすなんてことができるの? だから広告を出す企業は、自らの信念と良識に基づいて選択をしなさいというのが私の気持ちですよ。日本の国を過てるような、そういった誤った報道をするようなマスコミに対して、私は広告なんかはね、自粛すべきじゃないかなとは個人的には思いますよ。
だけど、政治家として、政治権力を使うとか、政党の力でそういうことをやるというのは、民主主義の根底を揺るがすことですよ。言論の自由や表現の自由っていうのは民主主義の根幹ですよ。
――与党の衆院議員が発言することで、メディア規制につながるとの懸念はないですか。
それは今の安保法制に対する論議と同じ。全くそんな考えがない。ないんですよ。そんなことが今の日本国憲法の中でできるんですか? マスコミ規制だとか表現の自由を規制するなんてことが。できるはずがないでしょ? ましてや日本国憲法を変えようと言ったら、国民の支持が得られるはずがないでしょ?
そんな道なんか我々は全く考えてない。自由民主党ですから。自由な言論、民主的な政治制度、それによって国民の幸せを追求していこうというのがわが自由民主党ですから。そんなマスコミ規制をするとか、言論の弾圧をするなんてのは絶対にあり得ないことですよ。
――結果的に木原稔青年局長が更迭され、3人が厳重注意処分を受けたことをどう考えるか。
いま安全保障法制、日本の将来にとって大事な法律が審議されている。この安保法制に全く関係のない、党内の私的な有志の集まりの勉強会での発言について、事実無根の発言、表明すらされている。野党がそれを党利党略に使っているってことは事実ですよ。
しかし、我々がここでそれを主張しても、野党の固い石頭には通じないでしょう。私どもは自ら退くことは退いて、安倍晋三首相や多くの関係者が心血を注いで、この問題にあたっているんですよ。そういう方にご迷惑をかけないように、それぞれが責任を取ったということですよ。
――ご自身が勉強会で発言したことは、問題があったと思わないということか。
問題があったとは思いませんけれども、ただ、われわれ政治家として、こういう誤解、曲解を与えるような発言、こうやって皆さんに説明しなければ分かってもらえないような発言は今後、慎んでいかなければいけないという反省はしてますよ。
あなたたちは勝手なところだけ自分たちの思いでつまみ上げて、そして自分たちの考えで記事を捏造することが……みなさん、全てじゃないですよ。そういう方々もいらっしゃることなんだよ。そういう新聞もあることなんで、私どもは、どんな角度から皆さんが追及しようとも、あるいは曲解しようとも、誤解を与えないように、これからね、気をつけていかなければいけないと思っていますよ。
――しかし、報道各社の取材では、ご自身が「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなることが一番だ。われわれ政治家には言えない。ましてや安倍首相は言えない。文化人、民間人が経団連に働きかけてほしい」と。各社こう報道している。裏付けをとった上で取材をしている。「働きかけて欲しい」というのは、それは圧力をかけるように要請しているということではないのか。
それはね、よく私の表現を聞いて欲しいと思うんだけれども、百田先生に質問しているんですよ。「そういう方法もあるんじゃないですか」ということをお尋ねしているんですよ。ですから、私どもはマスコミを懲らしめるという、その発言はちょっと、穏当を欠いていましたね。
だけど、私たちも腹が煮えたぎっているんですよ。それは日本の名誉を陥れ、日本の信頼を傷つけた朝日新聞の捏造記事。これに対して朝日新聞は社会的な責任、何も取ってないじゃないですか。こんなことが許されるんですか。
それによって世界の……、これはね、みなさん、みなさんの子どもたちの中で、留学している子どもたち。「おい、従軍慰安婦!」ね?「女性差別の日本人!」って言って、学校でいじめにあっているんですよ、米国やその他で。私どもが聞いているのは、朝日の記者も海外特派員の中でそうやっていじめにあった子どもがいたということも聞いていますよ。そういうことが許されていいんですか?
マスコミだけが第三の権力? 第一の権力? 何も問われない。言論の自由という美名の下で、そういうことではね、日本の国を過つし、日本国民の尊厳、名誉が汚されると思うんですよ。私はそれについて、申し上げたわけでございまして、私は極めて民主主義的な考え方を持っています。
言論の自由、表現の自由、そして多くのマスコミの人たちがそれぞれの、自分たちの思想信条をどのように語ろうとそれは自由ですよ。それが民主主義社会の根本じゃないですか。それについて、否定するような発言は一言もしていません。それはよく報道してくださいよ。以上ですか?
――批判するのは自由だが、経団連を使って圧力をかけることに言及するのは、やはり言論弾圧をしようとしているのではないか。
そんなことはありませんね。例えばみなさんが何でこうやって給料をもらってらっしゃるの? それは広告料でしょ? そして新聞は購読料でしょ? だから、そういう国民の信頼を得なきゃいけませんよね。だからマスコミにきちんとただす、マスコミがしっかりとその意義に基づいてね、あるいは民主主義的な原点にかえって、おやりになるんであれば広告……、スポンサーも大事にしなきゃいけませんね。
そして、視聴者もあるいは購読者も大事にしなきゃいけないでしょ。それなのに、信頼を勝ち得ていかなきゃいけないじゃないですか。お互いですよ。
私も政治家として、選挙で選ばれてきているんですから。もうあなたたちの生まれる前。私は28歳から政治の世界に飛び込んでね、地方議会、40年余。それで国会にようやく66歳で当選しましたよ。そうした中で、私も「信なくば立たず」。私を支えてくれる、あるいは国民の信頼を得られなければ、われわれ政治家は働いていくことができないんですよ。
私のいま、事務所やあれですね、ブログを含めて多くの人たちが「頑張れ」と。「よく言ってくれた」と。そういう激励のね、声が多いですよ。そしてみなさんね、ブログ見てください、私の。全部いま言ったことが書いてあります。昨日、今日じゃないんです。もうブログを書き続けて、毎晩遅くまでかかって大変ですけれどもね、これだけは私は有権者への責任だと思うから、義務と責任だと思うから。書き続けていますから。
その中に一言もそんな民主主義をね、冒瀆(ぼうとく)するような言葉がないはずですよ。たまたまあの発言の前日のブログには沖縄のことについても、私触れていますよ。いま、だから沖縄の皆さんとの悲しみを、苦しみを共有しなきゃいけないんですよ、われわれの本土が。
――趣旨としては、例えば朝日新聞の報道を考えたとき、あの場でははらわたが煮えくりかえってしまい、思わずああいう発言をしたけれども、それは真意ではないということか。それとも、あのような事例を考えるとそうすべきだということか。
ご意見を伺ったんですよ。勉強会ですから。あれは。百田先生を講師としてお招きをして、我々がこういった問題について、どういう指針をね、受けたらいいか。あるいはそういう参考の意見があるか。広くいろんな方々の意見を聞かなきゃダメでしょ? それで、私たちの政策を固めていくわけで。
――意見でなく質問だということか。
質問ですよ。あくまで。それはよく、読んでくださいよ。我々公人ですから。全くの非公式の会をICレコーダーか何かで盗聴したと言っても言い過ぎではないような形でね、それを鬼の首でもとったようにね、われわれの発言を批判するというのは、われわれ自由な勉強できないじゃないですか。だけど、我々これから気をつけますよ。もうみなさんがね、常に壁に耳をあてていることを考えて、本音の勉強なんか、できないでしょうな。
――一部マスコミを懲らしめるためには、いまでも場合によって経団連などに働きかけをするのはありだとお考えか。
私はそういう考えはありません。そういう方法もあるでしょう。ですから、百田先生の文化人のご意見を伺ったんですよ。質問したんですよ。私はそうすべきだというようなことは一言も言っていません。
――ご自身、そういうやり方があると思ったのでは。
ありません。ありませんねえ。
――どうしてあの場でその質問をしたのですか。
だから、マスコミにとって何が一番困るんですか? 広告料収入が入らないことでしょう。ですからそういう意味では、そういう方法もあるんじゃないですかと、一つの方法論として、私はお尋ねしたまでですよ。
――そういう方法論を考えているんだったら、言論の自由を規制しようという考えがあるのではないか。
だから、全くないんですよ。日本国憲法の中で言論の自由を規制するなんてことができるはずがないでしょ? そしてそんなことはあってはならないことですよ。お互いに意見をただしあう、戦いあわす中で、あるいはお互いの異なった主張であっても、主張をしあう中で、われわれはより良いあしたをつくっていこうというのが議会制民主主義の根本じゃないですか。
その時に、そんな一つの私たちの自民党のイデオロギーだけを金科玉条として、あとの意見は抑圧していくっていうんじゃ、戦前のファシズムじゃないですか。そんなことは絶対に許されない。
――懲らしめる気がないのに、なぜ広告料を引きあげるべきだという選択肢が思いつくのですか。
だから懲らしめようという気はあるんですよ。
――あるのですか。
あるんですよ。一部マスコミですよ。だって、社会的制裁を受けてないじゃない。朝日新聞はどうしたんですか? 日本や日本国民の名誉や信頼を傷つけて。いま世界中をあたかも従軍慰安婦で、女性を抑圧したというのはね、広がっているじゃないですか、世界に。これ、いいんですか? これ逆にいいんですか、みなさん、そんなことで。ええ? そういうことで、私はこれは何らかの国民的な方法を考えていかなきゃいけないな。それについて百田先生のご意見を伺ったということです。では、ここで終わります。
――はっきり確認したいのですが、朝日新聞という特定の会社を挙げましたが、そうした報道をしている社に対して、経団連を通じて広告収入を断つという方法で懲らしめるという考えが前提としてあったのか、なかったのか。
ありません。断じてありません。
――今回、党の処分に関しては、メディア側が曲解して書いたことによって、野党が強く出ているから、迷惑をかけたとして身を引いたのであって、自身の発言に問題があったとは思わないということか。
私の発言に、誤解や曲解を受ける部分が全くなかったとは言いません。だから冒頭言ったでしょ? 私もこれから議会人として、誤解や曲解を受けないように発言には慎んでいきたいと思っていますよ。そして、政党人として、この難局の時に私たちの、私たちは「あんな発言はない、誤解だ誤解だ」と言ったって、マスコミの皆さん、許さないじゃないですか。国会でも許さないじゃないですか。
そういうことで、この大事な安保法制の審議が遅れるということは日本人の一人としても、座視できない。快く党の先輩がお考えになった処分であれば、それを謹んで受けよう、早く国会、円滑化して欲しいですよ。本来の日本の平和を守るためにはどうしたらいいかを論議してほしいですよ。以上です。
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