中国の労働運動の記事
「世界の工場」中国で活発化する労働運動 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News(2015年06月15日 17:40 発信地:北京/中国)
確か中国ではいかにも建前的な官製の労組があるという話だと思っていたので。
以下、メモ用のポイント。
・労組連合は政府系の一連合しか認めていない。
・ストライキや職場放棄の組織は中国で合法だが、「公共秩序混乱を目的とする集会」は違法。
・中国政府は過去10年の間に、雇用主による社会保険料や工場移転に伴う補償金の支払いなど、労働者の権利を守るための画期的な法案をいくつも可決した。
中国において労使関係、労働秩序がどう形成されていくのかは興味深いところ。まさに巨大な実験場のような歴史的イベントの最中だと思う。
この記事が少し面白いのは、中国が社会主義国だという前提を微塵も感じさせない書き方になっているところ。中国においては資本家と労働者の階級闘争があり、国家は資本家の味方で労働者の敵だという認識が当たり前のように現れている。それがなかなか率直でいかにも海外メディアらしいと感じられる。
【6月15日 AFP】中国の靴工場の労働者たちが、安い料理店に集まってストライキについて話し合っていると、警官が押し入ってきてリーダー格の何人かを連行した。「彼らはドアを突き破って入ってきて、私たちに動くなと命じた」と、ある女性労働者はAFPに語った。暴力を振るわれたという証言もあり、背中をけがし、大きな包帯を巻いた女性もいた。ジーンズからスマートフォンまであらゆるものの工場が立ち並ぶ中国南部・広東(Guangdong)省。伊高級ブランド「コーチ(Coach)」などの靴を製造しているという同省番禺(Panyu)のライド(Lide)工場では、従業員2000人以上が道具を置き、工場の外に派手な色のマットを敷いて泊まり込み、未払いの手当てを要求した。
ストライキを組織した人々は拘束されたが、24時間以内に釈放された。全従業員による先月のこのストライキで工場の生産はとどこおり、数週間後には労働者たちが勝利を手にした。
「世界の工場」と呼ばれる中国の労働者たちはかつて低賃金でもおとなしく働いていたが、最近では賃上げや環境改善を求めて立ち上がることが増えている一例だ。
■抗議行動、過去3年で3倍に
低賃金労働者は中国の経済成長を長く支えてきた要だが、最近の新しい運動の動きは当局を不安がらせている。
楼継偉(Lou Jiwei)財政相は先月、労働力に牽引される経済から、もっと労働集約度が低く付加価値がより高い産業へとシフトできる前に、高賃金によって製造業の利益が出なくなれば、中国は「中所得国の罠」にはまると警鐘を鳴らした。同氏は、労使交渉を促す法律は「恐ろしい」と述べ、米国の自動車業界で破産が相次いだのは行き過ぎた「労組の力」のせいだと非難した。
香港の労働権利保護団体、中国労工通報(China Labour Bulletin、CLB)によれば、中国で昨年起きた労働者による抗議行動は1379件。過去3年で3倍以上の増加だ。
ここ数十年で中国最大のストライキが起きたのも昨年だった。ナイキ(Nike)やアディダス(Adidas)などの靴を製造している裕元工業(Yue Yuen Industrial)の広東省の工場で働く数万人の労働者が決起。逮捕者が出たものの経営側の譲歩を勝ち取った。
一党独裁の中国共産党は独立した労働運動を恐れており、労組連合は政府系の一連合しか認めていない。この連合は2億9000万人の組合員がいると称しているが、姿勢は経営者寄りである。しかし労働運動家らによれば、生産年齢人口の減少による労働力不足と、最近の法改正で労働者の権利が広がったことで労働者たちは勢いづいている。「労働者たちは自分たちの権利だけではなく、自分たちで運命を決める力と能力をつけつつある労働者階級の一部であることに目覚めている」とCLBは述べている。
■「与えられるべき社会的地位」
活動家のウー・グイジュンさんが、製造業の中核である広東省深セン(Shenzhen)に13年前に来たときには、月給数百元という低賃金にもかかわらず、ストライキなどほとんど聞いたこともなかった。「労働者は一人一人であがいていて、自分たちの権利を守ることについては、ほとんど話していなかった」という。
現在、地方から深セン市に出稼ぎにくる労働者の月給は平均2864元(約5万7000円)と、2013年から10%上昇している。労働者たちは意欲に燃えていると、ウーさんはいう。「生活水準が高まり、与えられてしかるべき社会的な地位を求め始めている」
ウーさんは13年に勤務していた家具工場の突然の閉鎖で、従業員たちの抗議を率いて以来、労働運動家となった。ストライキや職場放棄の組織は中国で合法だが、「公共秩序混乱を目的とする集会」を組織したとして、起訴が取り下げられるまで1年間勾留されたことがある。現在は労働者の権利擁護団体を立ち上げ、若い労働者たちにストライキの戦術や、ソーシャルメディアの活用の仕方などを助言している。警察からは常に嫌がらせや拘束の脅迫を受けているが、構わない。
当局は、統治を正当化する重要な要素として一般の人々の生活水準を上げることと、当局幹部と密接なつながりを持っていることが多い地元産業に、健全な利益を確保することの間でジレンマに直面している。同時に彼らは、社会の混乱を嫌い、経済成長を望んでいる。だが中国は労働コストにおいて、他のアジア諸国との激しい競争にさらされてもいる。
格差が広がる中、中国政府は過去10年の間に、雇用主による社会保険料や工場移転に伴う補償金の支払いなど、労働者の権利を守るための画期的な法案をいくつも可決した。しかし靴工場のライドは、当局が誰の味方かをよく知っている。「政府はただ、私たち従業員に圧力をかけてくる。雇用主を代弁しているんだ」と勤続10年以上の従業員はいう。一方、どの企業も警察も、AFPの取材依頼に対してコメントしようとしなかった。
6日間のストライキの後、ライドの従業員たちは、十分な譲歩を引き出せたとして仕事へ戻った。「私たちは基本的には求めていたものを手にした」と、ある女性従業員は語った。「でも給料はまだ低いから、満足はできない」(c)AFP/Tom HANCOCK
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