« 「潮目が変わった」のか単に学者が叫んでいるだけになるかは、我々国民次第。 | トップページ | なんて名前を付けたらいいだろう。 »

2015/06/16

「わかるだろ、な?」:陰湿な強制は常に明示されない。

文科相 国旗・国歌で適切な判断を要請 NHKニュース(6月16日 16時55分)

下村文部科学大臣は、国立大学の学長らを集めた会議に出席し、入学式などでの国旗や国歌の取り扱いについて、「国旗掲揚や国歌斉唱が長年の慣行により広く国民の間に定着している」などと述べたうえで、各大学で適切に判断するよう要請しました。
安倍総理大臣は、先の国会審議で、国立大学の入学式や卒業式で国旗掲揚や国歌斉唱を行っていないケースがあると指摘されたのに対し、「国立大学の運営が税金で賄われていることに鑑みれば、教育基本法の方針にのっとって正しく実施されるべきではないか」などと述べました。
これに関連して、下村文部科学大臣は、16日国立大学の学長らを集めた会議に出席し、入学式などでの国旗や国歌の取り扱いについて、「国旗と国歌はどの国でも国家の象徴として扱われている。国旗掲揚や国歌斉唱が長年の慣行により広く国民の間に定着していることや、平成11年に国旗および国歌に関する法律が施行されたことを踏まえ、各国立大学で適切に判断いただけるようお願いしたい」と述べました。
今回の要請を巡っては、国内の大学教授らで作るグループが「学問の自由と大学の自治を揺るがしかねない」などとして反対する声明を発表しています。
下村大臣は16日の要請のあと記者団に対し、「最終的には各大学が判断されることであり、要請が大学の自治や学問の自由に抵触することは全くない。昔と比べると、国旗や国歌に対する国民の意識も変わってきたと思うので、時代の変化を各大学で適切に判断していただきたい」と述べました。
安倍、下村の鉄壁ラインなので当然の発言だが、大臣としての発言ゆえに強力に作用する。

このニュースによれば、
0.議員(次世代の党の松沢成文氏)が「国立大学が日の丸君が代やってないよ」と指摘
1.安倍首相が「大学も日の丸君が代を敬え」と国会答弁
2.文科省が国立大学の学長を集めて「君ら、分かってるよな?」と訓辞
という流れ。

状況:文部科学大臣が、国立大学の学長らを集めて訓辞。

1a.「国旗掲揚や国歌斉唱が長年の慣行により広く国民の間に定着している」
1b.「平成11年に国旗および国歌に関する法律が施行された」
2.以上を踏まえ、各大学で「適切に」判断するよう「要請」。

安倍首相の発言
「国立大学の運営が税金で賄われていることに鑑みれば、教育基本法の方針にのっとって正しく実施されるべきではないか」など。

下村文科相の発言
「国旗と国歌はどの国でも国家の象徴として扱われている。国旗掲揚や国歌斉唱が長年の慣行により広く国民の間に定着していることや、平成11年に国旗および国歌に関する法律が施行されたことを踏まえ、各国立大学で適切に判断いただけるようお願いしたい」
「最終的には各大学が判断されることであり、要請が大学の自治や学問の自由に抵触することは全くない。昔と比べると、国旗や国歌に対する国民の意識も変わってきたと思うので、時代の変化を各大学で適切に判断していただきたい」

「適切な判断」を「要請」という嫌らしさ。
今回は、「適切な判断」のための考慮条件まで言及して「わかるだろ?」とほのめかしている。

しかしなぜ婉曲的な表現にとどまっているかというと、こういう思想信条の強制ができないという憲法上の制限があるからなので、そうした歯止めがいかに大切かがよく分かる。
思想信条や良心に干渉しようとする企ては、このように常に現れる(日本ではとりわけ天皇教への帰依を軸として滅私奉公・お上に楯突くな型の右翼的圧力が公権力からかかることが多い)ので、こうしたものにはいちいち反対・抵抗する必要があるし、歯止めを増やす努力をしつづけなければならない。

****
1.「運営が税金でまかなわれている」ことを論拠とするなら、国立大学といえどもその活動費が100%税金であるわけではないのだから、およそ税の恩恵を受けている者は全て国等の規制に従うべきとするか、受けている恩恵の程度によって従う義務があるかどうかの線引きを行うしかない。極端に言えば、公道を利用する者は税の恩恵を受けているのであるし、優遇措置等で法人税の減免を受けている企業(大企業等では毎年軽く億を超える減免を受けている)もまた、税の恩恵を受けていると言える。
前者であれば、全ての国民、あらゆる法人に「要請」してはどうか。教育基本法はともかくとしても、国旗国歌法は全ての国民・法人にかかるだろう。後者であれば、大企業はもちろん、福祉法人や生活保護世帯においても、儀式等の都度の口元チェックを義務づけてはどうか。
冗談はさておき、「金をもらうなら言うことを聞け」ということが公共目的においても全て通用するのなら、人権も何もあったものではない。次に、仮にそれが通用するとしても、スポンサーは国民である。納税者の総合的意思をどう判断するかは非常にやっかいな問題であって、世論や議員や議会の議決等で決められるというのはプリミティブに過ぎる。

2.教育基本法に従えという趣旨は、同法第2条5項の「我が国と郷土を愛する」という目的=日の丸掲揚君が代斉唱ということだろうが(この文言自体、彼らが改悪して入れ込んだものだ)、同法には「学問の自由の尊重」や特定の政治教育・政治的活動の禁止や特定の宗教教育・宗教的活動の禁止も規定されている。日の丸君が代は自民党など特定政党の根本思想の一つであって、政治問題の一つである上に、天皇教という宗教の重要祭祀の一つであるから、日の丸掲揚・君が代斉唱は特定の政治・宗教に荷担する行為に他ならない。ゆえに、教育基本法に従えば、日の丸君が代は排除せざるを得ない。
ゆえに、安倍氏の教育基本法の則れという表現そのものが嫌らしさを多分に含んだ権力的な物言いになっている。

*********************
参考1:参議院会議録情報 第189回国会 文教科学委員会 第7号(2015年4月23日)
共産党の田村議員がこの問題についての文科省の見解を質している。

田村議員:こういう要請そのものもやめるべきだと思いますが、いかがですか。
下村大臣:(前略)今回の要請はあくまでも要請でありまして、大学に対して圧力となるようなものではございません。
田村議員:しかし、今回、文部科学省が二〇一三年度、二〇一四年度の入学式、卒業式の国旗・国歌の取扱いを調査した、これが明らかになった。このような調査と大臣の要請ということが結び付くと、これは、大学の側はこの要請を単なるお願いとは受け取れない、要請に応じることを求められているんじゃないかというふうに受け止めるんじゃないかというふうに思うんですね。(後略)
田村議員:(前略)やはり、これ、要請をする、調査をする、また要請する、調査する、こういうことをやったらお願いじゃないと思う。(後略)
下村大臣:元々これは松沢委員が予算委員会で質問したことが端を発して、衆議院、参議院における文部科学委員会や文教科学委員会でも結構再三再四質問されていることでありますし、私の方もそれに対して、それぞれ各大学の自主的な判断に委ねられているということも申し上げているわけでありますから、これは強制的なことではなくて、各大学がそれぞれ適切に判断されることだと思います。
田村議員が攻め切れていないのがもどかしい。

・次世代の党の松沢成文議員が繰り返し圧力を掛けていて、それに内閣が呼応している。
いわば松沢氏は安倍内閣の露払い・尖兵の役割を果たしている。

・大学の自主判断だといいながら「適切な判断」を「要請」している理由については逃げられてしまっている。
いくら松沢議員から再三質問されても「それは各校の自主判断の領域だから省として関知しない」と回答することは可能だったし、調査を行っても「特段の要請は行わない」とすることもできたはず。

・それでもなお、この委員会答弁では、「適切な判断」とは各大学の自由な判断基準によるものだという解釈も可能だった。今回のNHK報道に出てくる発言では、そうした解釈の余地もなく、日の丸君が代を積極的に扱えという意味で「適切な判断」という語が使われている。

参考2:教育基本法


« 「潮目が変わった」のか単に学者が叫んでいるだけになるかは、我々国民次第。 | トップページ | なんて名前を付けたらいいだろう。 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/83801/61751967

この記事へのトラックバック一覧です: 「わかるだろ、な?」:陰湿な強制は常に明示されない。:

« 「潮目が変わった」のか単に学者が叫んでいるだけになるかは、我々国民次第。 | トップページ | なんて名前を付けたらいいだろう。 »