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2015/07/06

英文解釈:「forced to workとの表現は強制労働を意味するものではない」そうです。

早稲田大学から長期信用銀行に入った俊才、現在は外務大臣を務めていらっしゃる岸田文雄さんによれば、「forced to work」を強制労働と訳すと間違いだとのこと。

ただ、なんて訳すのが正解かはおっしゃっていない様子。正解を教えてほしいにゃぁ~。
下記記事によれば、岸田外務大臣は、

「1965年の韓国との国交正常化の際に締結された協定により、朝鮮半島出身者の徴用の問題を含め、日韓間の財産、請求権の問題は完全かつ最終的に解決済みであるという立場に変わりない」

「韓国政府は今回の発言を日韓間の請求権の文脈において利用する意図はないと理解している」

と発言したとのこと。この「今回の発言」ていうのは、以下のようなものらしい。

Japanese representative at the UNESCO, Kuni Sato, acknowledged at Sunday's meeting that a large number of Korean and other people "were brought against their will and were forced to work under severe conditions" at some of the Japanese industrial sites as the Japanese government implemented a policy of forced recruitment during World War II.
Japan sites gain UNESCO listing after agreement with S. Korea - 毎日新聞(July 06, 2015, 共同通信配信)

要するに、強制労働の存在を認めると日本が賠償請求訴訟等で不利になると恐れていたみたい。自意識過剰ではないのかしら…ていうか、まだ植民地支配への反省が足らないみたいですな。
そもそも加害者が「合意したんだし、もう済んだこと」とか自分から言っちゃうのって、日本社会では「反省していない証拠」と見なされる言動ですよね。

で、韓国側は、
「意思に反して労働させられた」=「強制労働」
と考えているそうで(まあ当たり前ですが)、岸田外相は、「それ、まちがっているよ」って韓国政府に教えてあげたらどうでしょうかね。

*******
日本政府の得意技の一つですが、

・英語では割とまともなことを言う
・日本語ではひどいことを言う

という二枚舌。今回の日本語での弁明が韓国政府への裏切りにならないといいのですが。
相手が怒るかもしれないだけじゃなくて、せっかく妥協してくれた相手を国内世論からの批判にさらすとかしたら、せっかく政府間の手打ちをやろうという話が出ているのに水を差しかねない。
まあもっとも、いくら政府間で妥協しても国民個人レベルでは到底「解決」などになるわけもないのですがね…。

今回の世界遺産騒動、せっかく産業遺産の歴史的意義を深める好機で、韓国側がいいボールを投げてくれたのに、それを生かせず歴史を直視する勇気を持てないあたり、政権と我々社会の未熟さを感じましたね。
今回の世界遺産登録、なんでも松下村塾が入ったりしてキモチワルイことになっているそうですが、韓国側の努力のおかげでせめて強制労働の情報センターが設置されるというので、それはまあ前進だったかなあ、と。
ただ日本政府にそれを実現する気はほとんどないのではないか、と思っていますが…。

クローズアップ2015:日韓、歴史の溝深く 明治産業遺産、1日遅れの登録 - 毎日新聞(2015年07月06日 東京朝刊)

 日本が世界文化遺産に推薦する「明治日本の産業革命遺産」の審議が5日、世界遺産委員会で行われ、登録が決定された。審議が1日延期されるほど調整が難航したのは、韓国側が求めていた「戦時中に朝鮮人の徴用工が強制労働させられた」との内容をどう反映させるかだった。決着はみたものの、日韓両国の関係改善にとって、歴史認識が依然として最大のネックであることが改めて浮かんだ。

 ◇関係改善ムードに水

 「1日延びたことについては、相手のある話です。事務レベルの調整については詳細を明らかにすることは控えなければならない」

 世界遺産委員会での登録決定を受けて5日夜、岸田文雄外相は外務省で記者団にこう述べた。

 今回最後までネックとなったのは、産業革命遺産で「朝鮮人の徴用工が強制労働させられた」との韓国の主張を、どう反映させるかだった。岸田氏は、日本側代表が世界遺産委で登録決定後、「厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいた」と発言したことについて「1965年の韓国との国交正常化の際に締結された協定により、朝鮮半島出身者の徴用の問題を含め、日韓間の財産、請求権の問題は完全かつ最終的に解決済みであるという立場に変わりない」と強調。「韓国政府は今回の発言を日韓間の請求権の文脈において利用する意図はないと理解している」とクギを刺した。

 産業革命遺産を巡っては、先月21日の日韓外相会談で、韓国が推薦した百済歴史遺跡地区とあわせて両国が登録に協力することで「完全に一致」(岸田氏)したはずだった。しかし、4日に百済歴史遺跡地区の登録が決定する一方、産業革命遺産は審議自体が先送りになっていた。

 韓国側は、朴槿恵(パククネ)大統領が5月20日、訪韓中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)のボコバ事務局長と会談した際、「日本は施設の一部で非人道的な強制労働が行われた歴史から目を背けている」と訴えた。韓国外務省幹部は「意思に反して労働させられたという意味がしっかり入っていないといけないので、強制労働と言っている。政府内で検討したうえで使っている表現だ」と強調していた。

 結局、日本側は世界遺産委の発言で「against their will(意思に反して)」「forced to work(働かされた)」との表現を用いた。岸田氏は「forced to workとの表現は強制労働を意味するものではない」と説明した。

 徴用工を巡っては、韓国で損害賠償を求める裁判が係争中であることも関係している。日韓基本条約で、両国と国民の間の請求権問題は「完全かつ最終的に解決された」と確認され、2005年に盧武鉉(ノムヒョン)政権も請求権は解決済みとの立場を表明した。しかし、12年に韓国最高裁が韓国人元徴用工の裁判で「個人請求権が消滅していない」と初判断。日本側としては、徴用工の表現ぶりが請求権問題にも影響するとの見方から、過敏にならざるを得ない事情があった。

 今年は日韓国交正常化50周年。両国は今春以降、まだ開催されていない安倍晋三首相と朴大統領との首脳会談について、初秋が想定される日中韓首脳会談などの場での実現に向け、環境整備を進めてきた。尹炳世(ユンビョンセ)外相が6月に就任後初めて訪日し、岸田氏との間で産業革命遺産の登録について合意したことは、関係改善に向けた象徴的な出来事と受け止められた。

 しかし、当初「技術的な問題」と見られた徴用工を巡る表現についての調整が最後まで難航し、世界遺産委の現場にまで持ち込まれた末、他の委員国まで両国の対立に巻き込んだことで、関係改善に向けた楽観ムードが水を差された印象は否めない。さらには韓国が求める慰安婦問題の解決への道筋は見えておらず、安倍首相が8月に発表する戦後70年談話も、内容によっては韓国側の反発が予想される。今回の世界文化遺産登録を巡る衝突は、歴史認識に関する両国間の隔たりを改めて浮かび上がらせた。【小田中大、ソウル米村耕一】

 ◇持ち越し回避、日本奔走

 世界遺産委員会が開催されているボンの国際会議場。「明治日本の産業革命遺産」の登録が決まると、議場の佐藤地(くに)ユネスコ日本代表部大使、青柳正規文化庁長官らの表情が緩んだ。伊藤祐一郎・鹿児島県知事は「日韓外相会談以降いろいろあったが、きちっと日韓で整理できた。今後の日韓関係にとってプラスであってほしい」と、安堵(あんど)感を漂わせた。

 日本政府関係者によると、議長国のドイツは採決で多数決を取る事態を憂慮し、5日も日韓双方の代表者を交えて最終調整を続けたようだ。審議前、議場内では、日韓の橋渡しをしているというベトナム大使に佐藤大使が近寄り、長時間耳打ちする姿も見られた。

 日本としては、議長国のドイツが混乱を嫌い「審議延期」ということになるのだけは、どうしても避けたい事情があった。そうなると審議は来年以降に回される。しかし、日本政府はすでに来年の世界文化遺産登録を目指す案件として「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(長崎、熊本両県)の推薦を決めている。そのため「教会群」を押しのけて来年の産業革命遺産の登録を目指すことは難しいからだ。

 さらに、世界遺産委員会の委員国である日本の任期(4年)が今年で切れることもある。一方、韓国は委員国として残る。登録の可否は委員国が意見を述べ合い、原則全会一致で決まる。審議が来年以降に回れば、委員国の資格がなくなることは日本にとっては大きなマイナスだ。

 会議場近くのホテルで記者会見に臨んだ和泉洋人首相補佐官は「私が日本代表団として現地入りした段階で調整は終わっていなかった。昨日の夕刻までに日韓の理解ができた」と、ぎりぎりの交渉が続いていたことを明かした。

 ボン入りしてからも各国のユネスコ大使と面会し「文化財としての評価をお願いしたい」と訴えた田上富久・長崎市長が会見で言った。「決してゴールではなく、世界遺産の街としてのスタート。長崎の果たしてきた役割に誇りを持ち、責任を感じたい」【三木陽介、ボン中西啓介】

Japan sites gain UNESCO listing after agreement with S. Korea - 毎日新聞

Japan sites gain UNESCO listing after agreement with S. Korea

BONN (Kyodo) -- The UNESCO World Heritage Committee unanimously decided Sunday to add the "Sites of Japan's Meiji Industrial Revolution" to the World Cultural Heritage list after South Korea withdrew its opposition on condition that Japan publicly acknowledge that Koreans had been coerced to work at some of the sites during World War II.

Under the decision at a meeting in Bonn, Germany, the 23 facilities in eight Japanese prefectures will be listed as proposed by Japan, without any changes. They represent Japan's industrialization over a period of just 50 years from the late 19th to the early 20th centuries by rapidly adopting Western technologies.

The UNESCO committee decided the previous day to add eight historical sites in South Korea, including the Gongsan-Seong Fortress of the Baekje Dynasty.

South Korea had opposed adding the Japanese sites to the World Heritage list, saying Koreans had been forced to work at seven of the sites when the Korean Peninsula was under Japanese colonial rule between 1910 and 1945.

At a June 21 meeting of their foreign ministers, Japan and South Korea reached a basic agreement to cooperate on heritage listings of each other's sites.

Still, the decision was postponed from Saturday as initially scheduled to give Japan and South Korea time to coordinate their positions at the last minute.

Japanese representative at the UNESCO, Kuni Sato, acknowledged at Sunday's meeting that a large number of Korean and other people "were brought against their will and were forced to work under severe conditions" at some of the Japanese industrial sites as the Japanese government implemented a policy of forced recruitment during World War II.
Sato also said Japan is prepared to take steps to remember the victims, including setting up an information center.

In his address to the committee, South Korea's second vice foreign minister Cho Tae Yul called the decision an important step to keep the victims' sufferings in people's minds, adding that his country backed the listing with the expectation that Tokyo will carry out what it has promised to do.

Japanese Prime Minister Shinzo Abe hailed the decision in a statement, saying, "I'm glad from the heart. We will renew our resolve to preserve these wonderful heritage sites that tell the accomplishments of our ancestors and pass them on to the next generation."

Despite acknowledging the forced labor, Foreign Minister Fumio Kishida told reporters in Tokyo there has been no change to Tokyo's position that the issue of wartime reparations has been "fully and finally resolved" between the two countries.

In Seoul, South Korean Foreign Minister Yun Byung Se told a press conference that he is glad the decision was made in a way to reflect his country's "legitimate concern."

The Japanese sites approved Sunday include the Hashima Coal Mine in Nagasaki, known as "Battleship Island" because of its shape, and some facilities that are still at least partly in operation, such as the Nagasaki shipbuilding yard.

Next year the committee will consider whether to add churches and other Christian locations in Nagasaki and Kumamoto prefectures, southwestern Japan. In the past two years, both the 3,776-meter Mt. Fuji and Tomioka Silk Mill were added to the list of World Heritage sites.

The council also asked Japan to report on measures to preserve Battleship Island and other deteriorating facilities by Dec. 1, 2017.

The additions will raise the number of World Heritage sites in Japan, including group listings, to 19 -- four natural and 15 cultural sites.

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興味深い指摘。

「強制労働」という言葉ではなく「徴用」という言葉が多くなってきた背景を推察 - 誰かの妄想・はてな版

別途、新聞報道等で「強制労働」から「徴用」へ語の利用が変化してきたかを調べてみたいですが。

日本政府は「徴用」という言葉を国民徴用令という法律に基づく徴用に限定しており、1959年時点で日本に在住している朝鮮人徴用労務者は245人だと外務省が発表しているように(1959年7月11日)、強制連行・強制労働犠牲者の極々一部しか、日本政府用語での「徴用」の被害者として扱われていません。
明らかに日本政府は、「募集」「官斡旋」による強制連行被害者については言及する気がない、とわかりますね。「自らの意思に反して幾つかの産業革命遺産に連れてこられ、厳しい環境下で労働を強いられたこと」とは徴用のことであって、「募集」「官斡旋」は「自らの意思」に反していないとみなしている日本政府の解釈からすれば、「募集」「官斡旋」について一切言及しなくても、発言内容に背くことにはなりません。
韓国側は、……中略……日本側に上手く騙されたということでしょうね。……中略…… さすがに日本外交は巧みだといわざるを得ません。
言葉のダブルミーニングを狡猾に使って、相手側の要求を聞いたかのように見せかけるテクニックはさすがです。韓国政府がこれに気づくにはもう少し時間がかかるでしょうし、国際社会はもっと時間がかかるでしょう。国内はマスコミに圧力をかけて“韓国が悪い”という排外主義を煽らせれば、手も無く騙せます。

やはり日本政府は韓国政府に対して、狡猾さにおいて一枚も二枚も上手でしたね。


以前、「「弱腰日本外交」というマボロシ」という記事を書きましたが、どうも私は、“日本は外圧に弱い”というのが都市伝説なのではないかと考えています


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