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2015/08/07

戦後70年談話に関する報告書:韓国政府から不快感を表明されそうな。

安倍首相の戦後70周年談話の文言を検討する会議。
その報告書が出た。

新聞各紙の報道は「侵略」という語を明文化したという点に焦点を合わせている。

確かにその点は「安倍政権の立場からは一歩踏み込んだかな」と思わないでもない。
けれども、もともと先の戦争が侵略戦争だったことは初めから明白だったから、こんな 1+1=2 みたいに当たり前なことが盛り込まれたからといって「スゴイ!」みたいになるのは何なのか?と言いたくなる。
こんな当たり前のことがニュースになるのは、それほどまでに安倍政権の姿勢が右翼的・歴史修正主義的だということの現れだとも思う。

で、その報告書が首相官邸のウェブページにある。
20世紀を振り返り21世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会(21世紀構想懇談会)

懇談会の構成メンバーがすごい。専門化じゃない人が結構いるし、見事に「保守」的な人たちで固めている。
考えようによっては、このメンバーで「侵略戦争だった」みたいな報告書が出たことの方が驚きかも……。

で、報告書本文の方なのだけれど、ざっと目を通した。以下感想。

1.戦争を始めたのは悪かった、間違っていた、とは認めている。けれども、「仕方なかったんだよ~。欧米の帝国主義的時代だったんだし~」と、弁解している。潔くない。

2.ところどころ、日本会議や安倍政権に釘を刺しているところもある。
・憲法や戦後の民主化を押しつけではないとしている(13ページ)
・先の戦争をアジア解放のための戦いではないとしている(4ページ)

3.現在の安倍政権的情勢認識に迎合している
・先の戦争が「自存自衛」のためであり、日本の戦争がアジア諸国の独立を招いたとしている(4, 31ページ)
・「積極的平和主義」が世界への貢献に必要だとし、集団的自衛権が必要だというニュアンス(11-12, 16, 33ページなど)
・9条1項は認めるが、2項には言及しない(5ページなど)
・天皇の責任には全く言及しない
・アメリカ主導の世界体制に追随するのが正しいとしている(11, 32ページなど)
・「湾岸戦争において巨額の財政援助をしたにも拘わらず、国際社会に評価されなかった」としている(16ページ)(「国際社会」って?)
・TPP推進(34, 37ページ)
・方針の反対者には「丁寧な説明」で理解を得るべき(34ページ)
・辺野古移設の推進(37ページ)

4.各国との「和解」については、アメリカが4ページ、ヨーロッパ・オーストラリアが3ページ、中国が4ページ、韓国が4ページ弱、東南アジアが2ページ。
一読して、戦争とそれ以前の侵略、植民地支配のことが完全に「他人事」のように描かれている印象。当事者・当事国の一方というよりも、無関係の第三者が「そんなこともあったよね~」「まあ、悪いのはどっちもどっちだよね」「悪いことをしたんだから、ちょっとは反省して、まあこれから頑張りなさい」という感じ。

この節の記述が他人事にとどまっているというのは、以下のようなことである。
「和解」については、とりわけ中国、韓国、東南アジアについて、日本側の「和解」への主体的努力がほとんど描かれていない。戦後補償やODA、アジア女性基金、各種の談話などへの言及はあるが、「反日感情」について、相手国側の事情や都合からの説明にとどまっていて、それらの「反日感情」をどのように理解し、どのように対応し、その結果どのような変化が起きたのか、また、この「反日感情」との対応の歴史を踏まえてそこにどのような教訓があったのかについては、全く述べられない。そもそも、教科書問題や靖国参拝、折々の「南京虐殺はなかった」などの政治家のトンデモ発言、当時を美化する動きなど、相手の心情を逆なでする事件が繰り返し起きていることが全く触れられていない。他方で、民間レベルで強制労働などの加害の史実を発掘したり、謝罪と和解の取り組みが続けられてきたり、平和教育や反差別教育が進められてきたりしたことなども全く触れられていない。つまり、「反日感情」はほとんど相手国の折々の情勢に原因があるというだけの認識しか示されない。そこに踏み込んで、関係を構築するための主体性や努力の過程を反省して将来展望を拓くという発想がないのである。

4-1. 欧米との和解については、嫌みたらしくこんな文章が。

戦争を戦った国々においては、終戦後二つの選択肢が存在する。一つは、過去について相手を批判し続け憎悪し続ける道。そしてもう一つは、和解し将来における協力を重視する道である。日本と米国、豪州、欧州は、後者の道を選択した。血みどろの戦いを繰り広げた敵との間でなぜ日本とこれらの国々は和解を遂げ、協力の道を歩むことができたのか。日本との関係で一つ目の道を選択し、和解の道を歩まなかった国々との違いはどこにあるのか。その解は、加害者、被害者双方が忍耐を持って未来志向の関係を築こうと努力することにある。加害者が、真摯な態度で被害者に償うことは大前提であるが、被害者の側もこの加害者の気持ちを寛容な心を持って受け止めることが重要である。これは、日本と米国、豪州、欧州の関係のみならず、独仏関係においてフランス側が、独・イスラエル関係においてイスラエル側がそれなりに寛大であり、ドイツとの関係改善に前向きであったことが現在の良好な関係に繋がっていることによっても証明されている。(強調は引用者)
このパラグラフが中国や韓国を標的にしているのは言うまでもないだろう。
このビジョンは本当によく日本国内で見られるわけだが、これが卑怯だと思うのは、
「被害者も考えたれや」
「お前らも寛容になったれや」
これを加害者が被害者に言うわけである。
さらにお笑いなのは、ドイツを引き合いに出していることである。立派に更生した元犯罪者が受け入れられているのを見て、全く反省の色も見せないで「被害者も~」とか言っている重罪人が、「俺らも許されてもええんとちゃうの?」とか言っているわけである。

こういう見解が堂々と公表されているのを見ると、「ああ、日本は駄目だな」というイメージを強化するばかりだと思うのだが。

4-2. 中国との和解については中国側の「許し」を評価する一方、韓国についてはひどい書き方になっている。

率直に言って、韓国を日本の属国扱いにしているし、反日感情の理由を全て韓国側に押しつけており、
「でもニッポンは寛容にも彼らの言い分を認めようと努力してるんだよ~」
という記述であふれている。
東南アジアに対する記述も傲慢だと思うが、韓国への記述が一番ひどい。
この独りよがりの記述は韓国を侮辱していて、大丈夫かと思うのだが、まあ今の安倍政権は韓国を「共通の価値観を持たない国」として敵視しているようだから、喧嘩を売ってちょうどいいのかもしれない。

あと、気になるのは北朝鮮への言葉がないことである。
日本は北朝鮮を認めていないので言及しないのは分かるのだが、しかし朝鮮半島北部でも日本はひどいことをしてきたわけで、それへの言及がないのは良くないと思うのだが。


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