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2015/09/09

菅官房長官9月8日記者会見での「戦後認識」について

菅長官「全国で皆が苦労した」 翁長氏の戦後認識に反論:朝日新聞デジタル(2015年9月8日16時12分)

 菅義偉官房長官は8日の記者会見で、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題で翁長雄志(おながたけし)知事が「戦後の土地の強制収用が原点」と主張していることについて、「賛同できない。戦後は日本全国、悲惨な中で皆が大変苦労して平和な国を築いた」などと反論した。

 翁長氏は移設問題をめぐる政府と県の集中協議で、「戦後、普天間の住民がいない間に強制収用されて造られた基地だ。危険になり老朽化したから(代替基地を)出せというのは理不尽だ」などと、政府が進める同県名護市辺野古への移設計画を批判していた。

 菅氏は会見で、こうした翁長氏の戦後認識に反論したうえで、「沖縄県には米軍基地が非常に多い」とも指摘。今春、米側から西普天間住宅地区(宜野湾市)が返還されたことなどを挙げ、「努力を一つひとつ積み重ねて沖縄県民の期待に応えたい」と語った。(星野典久)

この記事に対するはてなブックマークでの反応

はてなブックマーク - 菅長官「全国で皆が苦労した」 翁長氏の戦後認識に反論:朝日新聞デジタル

菅氏が論点をずらしている、認識がひどいというコメントが多い中で、「この朝日記事がわかりにくい」というコメントがある。

the_sun_also_rises 質疑応答の内容を変に解説して意味不明となった記事。

yas-mal どうも支離滅裂な記事だと思ったら、管氏の発言が元々支離滅裂だった(途中で失言に気づいて軌道修正したと見える)。

njgj この記事のニュアンスはどこまで正しいの? そこはちょっと気になるなあ。

nagaichi 基地問題の原点の話が、なぜこういう話にすり替わるのか。こんなのを「反論」と呼んではいけない。

SirVicViperSirVicViper この朝日新聞の記者はどういう了見で、記事中の官房長官の発言を「反論」と表現して掲載したのか。

shooma 論点がずれている、のではなく論点がずれた部分を反論として記事にした記者に問題があるのでは

noPeeP 会話がまったくかみ合ってないように見える、というか、この記事自体も何が言いたいのか不明

stand_up1973 なんだこのクズ記事。お互い何を主張してるのか全然分からんのだが。前後の文脈しっかり書けや

Flymetothemoon 割と本気で官房長官が何を言っているのかわからないんですが。

など。

この記者会見を報じた別の記事。
琉球朝日放送 報道制作部 ニュースQプラス » 菅長官・翁長知事の主張に「賛同できない」(2015年9月8日 18時34分)

集中協議を振り返り菅官房長官は会見で、「知事は頑な」と述べました。
普天間基地問題の原点は沖縄戦中、戦後のアメリカ軍による土地の強制接収にあるという翁長知事の主張に反論しました。
菅長官に記者が「知事の原点、いわゆる強制的に土地を取り上げられて基地が建設されて、代替施設を求められるのは理不尽だという主張には賛同できなかったと?」と質問しました。
それに対し菅長官は「それは賛同できません。戦後、様々な日本全国悲惨な中で皆さんが大変努力されて今日の豊かで平和で自由な国を築き上げたわけです」と答えました。
また、今後について菅官房長官は「法的な判断は行われた。地域の住民や自然環境に配慮しながら進めていくことは変わりない」と述べました。
で、実際の記者会見動画を見て、関連する部分を書き起こしてみた。

細かい言葉遣いにはこだわらず、言葉の趣旨が変わらないように簡略に文章化した。

菅氏は、普天間基地問題の「原点」についての認識が大きく食い違っているという話をしている。その中で、上記記事に関する発言が出てきた。

7分05秒頃からの発言

政府は19年前の普天間基地が世界一危険だといわれるなか、当時沖縄県から要請があって、危険除去と閉鎖を日米合意して取り組んできたところだ。この原点について、戦後の米軍による強制接収が原点であると、知事は非常に頑なである。ここについては、現職の知事として、普天間の危険除去、閉鎖、相手があることではあるが、19年間掛けて努力した結果今日を迎えているのである。そこの隔たりが最大であった。政府とすれば、法的な判断、行政判断が行われたのであるから、地域住民と自然環境に配慮しながら進めていきたい。

8分59秒から読売新聞記者の質問への答
今申し上げたが、原点が全く違っている。私も会談の中で、知事が県会議員のときに早く県内に移設すべきだと議会で演説しているではないかと申し上げた。しかし今は状況が変わって今は原点が変わったんだということであるから、そこはなかなか縮まらないということだ。

9分56秒頃から東京新聞への答
問い:知事の原点、強制的に土地を取り上げられて基地が建設されて代替施設が求められるのは理不尽だということには賛同できなかったと……

答:それは賛同できない。戦後日本全国悲惨な中で皆さんが大変ご苦労されて今日の豊かで平和で自由な国を築き上げていただいたわけである。ただ沖縄県には米軍基地が非常に多い。そういう中で安倍政権になってから基地負担軽減を目に見える形で行うと、オバマ大統領とも首脳会談で2回基地負担軽減について言及されている。結果として70年間変わらなかった西普天間の住宅地が初めて返ってきた。そして普天間にある空中給油機15機も初めて県外移設する。そういう努力を一つ一つ積み重ねていって沖縄県民の期待に応えたいと思うし、北部の訓練所、米軍が沖縄に所有している二十数パーセントの土地が件の強力をいただければ返ってくるわけであるから、今回の懇談の中で県に協力要請を強く申し上げた。

私の感想。
朝日の記事は分かりにくい。ただ、間違っているわけではなく、単に発言を記事にしたらこうなるだろうと思う。つまり、菅氏の「全国の国民が苦労した」=「沖縄だけが特別ではない」という発言が適切ではなかった。それが朝日記事の「わかりにくさ」を生んだ原因である。

菅氏は、県知事と政府との認識のズレについて、認識の「原点」が大きく食い違っていることを挙げている。そのズレとは、
知事:そもそも基地が作られた時点での経緯を出発点とする [A]
政府:19年前の基地撤去要請を出発点とする [B]
ということだ。これを菅氏は説明しようとしていた。

ところが、上記[A]への賛否を問われて、菅氏はつい[A]そのものへの論評をしてしまった。それが、「沖縄だけが大変だったのではない」という認識だった。そこを記事にされてしまったというわけだ。

朝日の記事がわかりにくいのは、菅氏のこの不規則発言が、政府が沖縄県の意向に反して辺野古移設を進めようとする理由のように見えてしまうことから生じている。

菅氏の会見全体では、
政府が移設計画を進める理由:19年前からの経緯と合意
だけであって、それ以上のものはない。

つまり、[B]のみに拠って話を進めるという態度だ。それなのに、[A]へ強く反論したものだから、

皆苦労した=沖縄だけが特別ではない→だから沖縄が今また苦労させられてもかまわない
という論法に見えてしまって、理屈が通っていないように見えるわけである。

しかし、朝日の記事をよく読むと、[A]への反論が辺野古移設の理由ではないことも分かる。だから、朝日の記事が悪いわけではない。記者会見の発言順序の通りでもあるし。

*****
結局、記者会見の趣旨は「知事との認識ギャップは縮まらなかったが、計画どおり進めていきたい」という、特に代わり映えしないものでしかなかった。そこに、菅氏個人の(そしておそらくは政府内共通の)対沖縄観が透けて見える発言があったものだから、そこを上手く記事にされたということなのだろう。建前を語る言葉の隙間からこぼれた本音を上手くすくい上げた。この点で、朝日記者の記事はジャーナリストらしい仕事だったと言えるのではないか。

そう考えると、上記の「はてなブックマーク」コメントの多くが菅氏の認識への怒りを表明しているのは間違っていないと言えるだろう。「俺たちだって苦労してるんだから、わがまま言うなよ、それぐらい我慢しろよ」という本音が見えたわけだから、「問題の本質が分かっていない」と批判されるのは当然だろう。


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