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2015/09/02

フジ住宅と今井光郎氏の研究会

(2015年9月2日15時03分若干の追記とリンク抜けを修正)
さらに追記(2015年9月14日20時42分)神谷宗幣氏の樋渡氏との記事を追加。
さらに追記(2015年9月25日20時03分)ラジオNIKKEIと読売新聞大阪の記事を追加。
さらに追記(2015年11月20日10時46分)産経WESTの記事を追加。
さらに追記(2016年2月24日13時58分)市民アンケートにフジ住宅が大量動員していた→滅びの道は私たちが作っている: 思いついたことをなんでも書いていくブログ
*****

下記に触発されて少し調べてみた結果をメモしておく。

フジ住宅がヘイトスピーチ文書を大量配布し提訴された件、いろいろ恐ろしい模様 - NAVER まとめ

差別や教科書採択運動で訴訟されたフジ住宅について | 興味乱舞に引きこもれず

企業活動の一環として右翼運動を行っている企業といえばおかきの播磨屋が有名だ。
参考:日本一おかき処 播磨屋本店

アパグループの方が有名かもしれない。
真の近現代史観 懸賞論文

悪質さで言うと、播磨屋さんよりも圧倒的にアパグループの方がひどいと思う。
フジ住宅は、このアパグループと基本的に同じベクトルを持っているように見える。

ともあれ、下記に調べたことを簡単にメモしておく。
調べたことは、フジ住宅会長が作った団体が助成金を出した先がどんなところかということと、転職サイトにあるフジ住宅の口コミだけである。

なお、資料は、フジ住宅が(正確には「一般社団法人今井光郎文化道徳歴史教育研究会」が)公表している下記の文書である。

一般社団法人今井光郎文化道徳歴史教育研究会、助成先決定について

1.今井光郎氏の「研究会」について

一般社団法人「今井光郎文化道徳歴史教育研究会」(名前が長い……汗)
「日本人として正しい文化・道徳・歴史・教育を広く後世へと伝えていく」のだそう。

「株式会社フジ住宅従業員共済会」が株式を寄付して2014年11月に設立。

設立が比較的新しいので、未だ病が昂進中ということかな。

なお、この「従業員共済会」、今井光郎氏が代表取締役。
「従業員の自発的総意で研究会に寄付」という形を取っているように見える。…見える…。
この「研究会」に寄付した株式は2,561,000株で、2015年7月23日にはその配当金が5700万円だったとか。
で、そこから2000万円あまりを下記へ助成したとのこと。
下記の田並劇場保存会のブログに出てくるが、使い道を申請して、それを審査して助成するという手順を取っているようだ。

2.「研究会」が助成した先について

●呉善花氏:著書の英訳版3千部をアメリカの政治家、研究科、図書館に送付

●テキサス親父日本事務局:国連本部調査団、UNESCO対策団

要するに国連に押しかけたときの旅費とかじゃないかな。

この二つについては冒頭に掲げた二つの記事を参照されたい。一言で言うとトホホ…な思いを禁じ得ない。

●(株)グランドストラテジー:日本史解説動画、古事記の紙芝居作成

吹田市議の神谷宗幣氏の会社。
神谷宗幣氏は「龍馬プロジェクト全国会」会長。
参考:CGS公式グッズの販売 神谷宗幣グッズやDVDを販売
古事記の紙芝居などが「グッズ」として売られている。
「龍馬プロジェクト」についても冒頭の記事を参照されたい。まあ何というか…汗。

************
追記(2015年9月14日20時42分)
神谷氏は樋渡啓祐氏と仲良しのようである。
樋渡氏とは、元佐賀県武雄市長であり、今はCCC子会社の社長であり、武雄市が市民病院を売却した相手である一般社団法人巨樹の会の理事である。

神谷 宗幣さんはTwitterを使っています: "樋渡市長の左手が、、、 私をこそばしています(^^;; 沖縄から佐賀の武雄市に移動し、龍馬プロジェクト九州ブロックの行政視察。 テーマは、ICT教育、民間と連携した教育、市立図書館です。... http://t.co/Rc7VkF0Kqg"

樋渡市長の左手が、、、

私をこそばしています(^^;;

沖縄から佐賀の武雄市に移動し、龍馬プロジェクト九州ブロックの行政視察。

テーマは、ICT教育、民間と連携した教育、市立図書館です。... http://fb.me/6RJqCwJEu

高木一郎 ‏@takagiichiro 10月21日
@jinkamiya くすぐられてどんな気分でしたか。
神谷 宗幣 ‏@jinkamiya 10月22日
@takagiichiro いつも市長にはやられますf^_^;
高木一郎 ‏@takagiichiro 10月22日
@jinkamiya 仲良しですね。今度やり返してみてください。
神谷 宗幣 ‏@jinkamiya 10月22日
@takagiichiro 樋渡市長はくすぐりに強いんですf^_^;

参考:【閲覧注意】武雄市樋渡市長のマウンティング - Togetterまとめ

佐賀 武雄市の挑戦 反省しない | 政治家 神谷宗幣(かみやソウヘイ)の公式サイト政治家 神谷宗幣(かみやソウヘイ)の公式サイト

今日は那覇から福岡経由で佐賀の武雄市にきました!
……中略……
市長からもプレゼンをお願いしました。
……中略……
3期を迎えた樋渡市長はますますパワーアップされ、笑にも磨きをかけられてました。
8月に出された本も買ったのでまた帰りの新幹線で読みます。
************

●大樹会(和歌山市):皇居勤労奉仕活動

大樹会の内容は検索でははっきりしない。「大樹」という名は医療・福祉法人に多数ある。また「大樹会」・「大樹」という団体には、特定郵便局長らの政治団体「全国郵便局長会」もあり、その団体は以前国民新党に献金していた。官報に記録がある。
他方、和歌山にある「大樹会青年部」という組織がたびたびNPO法人「震災から命を守る会」に協力しているようだ。このNPOは「危機管理セミナー」を2014年5月に開き、ヒゲで有名な佐藤正久参議院議員を招いたとのこと。この「大樹会青年部」が今回の助成と関係がありそうだが、よく分からなかった。
参考:もし、和歌山に地震や災害が起こったら?   守ろう、わかやま!!:「危機管理セミナー」のご報告

なお上述した神谷宗幣氏のお知り合いである樋渡啓祐氏が武雄市民病院を売った先は「巨樹の会」という名前である。

●田並劇場保存会:田並劇場再生プロジェクト

直接関係なかったが、人づてに関係が付いてしまったらしい。
参考:プロジェクトのブログ2015年7月16日の記事「田並を故郷に持つ方々がつないでくれた縁で、この助成を知り応募しました。」とのこと。

●株式会社ママピット:「赤ちゃん先生クラス」受託事業

「赤ちゃん先生クラス」で検索すると、「ママの働き方応援隊」というNPO法人がヒットする。(サイト

「赤ちゃん先生」とは、「赤ちゃんとママが教育機関や高齢者施設、企業、団体に訪問し、学び・癒し・感動を共有し、人として一番大切なことを感じてもらう人間教育プログラム」とのこと。

このサイトでは、「人として一番大切なこと」とか「赤ちゃんには、人が元々持っている善なるこころを引き出すチカラがあります」とか「いのちの偉大さ」とか「赤ちゃんによる癒しと子育て文化継承」という言葉が踊っている。そして、「赤ちゃん先生」は商標登録されており、かつ、「赤ちゃん先生」の「ママ講師」や「インストラクター」になるにはこのNPOの講座を受講して認定されねばならないとのこと。また、別事業の「ママ脳大学」では「ママ脳を使って夢を叶えよう」というタイトルが見える。保守系スピリチュアル育児ビジネスの流れをくんでいるようだ。
役員には、恵夕喜子、上野至大、宝田ひか里、入江優子という人たちが挙がっている。

恵夕喜子氏には次のページがある。
未来の名刺 5年先のあなたの名刺 - 世界をちょっとよくする夢を名乗る
ここに書かれたプロフィールが下記。
「「赤ちゃん先生プロジェクト」を主催
赤ちゃんのエンパシーを使い、日本の無縁社会を解消することで高齢者には生きる希望を!
子どもたちにはいじめのない教育環境を!
子連れで働く仕組みを次々と生み出し、「育児中がメリットになる働き方を創る」をミッションに、ママの働き方に革命を起こします。」

「エンパシー」というある種のキーワードが出ている。あと乳児を「使う」という表現が少し気になるなあ。
ちなみに、この「未来の名刺」サイトは、「ワタミグループ創業者渡邉美樹・みんなの夢をかなえる会主催」が主催しているとのこと。

●吹田夢☆志団:夢☆親子座学「日本を知って未来を考えよう」

吹田夢☆志団(こころざしだん)は、2010年頃にできた高校生ぐらいまでの子供のダンス・演劇サークルのようだ。
参考:吹田夢★志団 | ラコルタ"Raccolta"(吹田市立市民公益活動センター)

この団体の代表者は瀬川昇という人だが、この人が青年会議所の関係でか、神谷宗幣氏と知り合いのようだ。
参考:2010年度公益社団法人吹田青年会議所新規事業報告書
ここに吹田青年会議所の2010年度の「夢☆志委員会」委員として二人の名前が挙がっている。
その関係があるためだろうか、神谷宗幣氏の公式ブログで、吹田夢☆志団の公演案内が取り上げられている。
参考:吹田夢★志団・龍平カンパニー 音楽劇「君よ生きて」 | 政治家 神谷宗幣(かみやソウヘイ)の公式サイト政治家 神谷宗幣(かみやソウヘイ)の公式サイト

「日本を知る」というのが、事実をつまみ食いした一面的な紹介と偏狭な愛国心とに彩られていないことを祈る。

3.フジ住宅の社風について

フジ住宅の評判/評価/社風のクチコミ【転職会議】
なお、このサイトで口コミ全文を見るには登録に加えて自分の勤務先の口コミを書き込まなければならない。二段階で個人の情報提供を求められるので要注意。

こちらを見ると、

地域差別発言
とにかく社風が異質。皆が一様に気を使い合い、表面上にこにこしている様は客観的に見ると異様に違いない。会社や上司、同僚に対するちょっとした愚痴・批判もうっかり口にできない雰囲気が社内に蔓延している。少しでもそれっぽい発言や行動を上司に見つけられると、個室に呼ばれ1対1で徹底的に指導(洗脳)される。(中略)会長からは毎日のように「右寄り」の記事が載った雑誌などのコピーが配布される。それに関して個人的には特に何とも思わなかったが、そこでよく批判している北朝鮮の体質にこの会社も似ているのは何とも皮肉(会長礼賛および全体主義気質)。
まず会長はすごい話から始まり、前職の悪口を話した後の、フジ住宅に転職してよかった話、さらにはお客さんの苦労話を聞きだし、人間関係をつくるみたいなトークをさせられます。営業中はその会話を全て録音しておいて、後で上司にチェックされます。
また人間関係もうわべだけで愛想のいいフリをしている従業員がほとんど。本音を言うと後々360度評価システムで悪口を書かれ自分の評価が下がってしまうので、誰も本音を話さない。
また毎日のように戦争や俗にいう右翼系の記事(新聞の切り抜きやネットの記事)が山積みのように渡される。読んでる者は評価されるので、みんな読んだフリして捨てていました。
その他、感想文を書かされたり、いろいろ面相くさいことが山積みです。
普通の不動産営業会社と思っていたら痛い目にあいます。はっきり言って宗教団体です。
逆に上司にゴマをすると社員になれます。
会社として、明確な昇格、降格制度はなく、タダ単に気に入られるか?気に入られないか?だけ。
「聞けばいいだけ言えばいいだけの精神があるのでストレスなく業務が出来、なんでも意見具申できる」と聞いていましたが、そのため「愚痴も上司に言え」という方針で同僚が社外で会うことが禁止されていました。(実際社員同士が休日に外で会っていたのを他の方が上司に伝え、始末書を書かされていました)そのため友達はできません。360度評価制度で悪いところも書かれるため、みんなその対策からか自分のことをあまり話さないようになり業務や政治の話ばかりでした。正直信頼できる人がいませんでした。
愛車(ママ)精神が高く、創業者の考えに共感出来る人材が求められております。その実は愛車精神が高い振りが出来、創業者に共感出来る様に振る舞える人材とも言えます。(中略)
評価制度は360度評価といい上司や同僚、パートさんまでをも評価出来る制度です。本当に人間性の良い方にとっては良い制度ですが、印象が悪く取られてしまいがちな方にとっては色んな方からこっそり悪い評価をされるので残念な制度です。会社のグチを誰かにこぼそうものなら、その方からこっそり告げ口される事になります。年に二回評価の時期がありますので、その評価時期前には社員の態度が急に良くなるのが面白いです。
まず、経営理念を徹底的に理解するように上司から指導されます。そして、毎月一回経営理念に関する作文を書かされます。この作文は、いかに会長を褒め称えるか、そして、会社、会長や上司に対しての感謝の言葉を、退社するまで、ひたすら書き続けることになります。残業は、毎日夜遅くまでありますが、残業代を請求すれば最後、退社することになります。
などなど、興味深い記述が出てくる。戦前の日本社会を彷彿とさせるが、この今井光郎氏が設立発起人をしている「日本教育再生機構」が目指しているのは、確かにこういう社会なのだから、非常に腑に落ちる話ではある。

また、

会社・上司は社員教育に大変力を入れてくれており、社内回覧文書は仕事上役立つものもありますが、人間力を高めるもの等もあったり、会社の費用で書籍を配布してくれたりもします。
という記述もある。口コミという形式ながら、会社が文書や書籍を配付しているという訴状に挙げられた事実を傍証していると言えよう。

*****
追記(2015年9月25日20時03分)

フジ住宅の社風について興味深い記述を見つけたので記録しておく。

ラジオNIKKEI 朝イチマーケットスクエア アサザイ「11月13日放送「今日の1社」フジ住宅(8860)の取材後記です!」(2013/11/13(水))(魚拓

ラジオNIKKEIの井上哲男氏がフジ住宅取締役の石本賢一氏にインタビューしたときの取材後記とのこと。

井上氏は、フジ住宅が顧客から広く支持される理由として定性的な企業の魅力を挙げている。その例として井上氏は次の二つを挙げる。曰く、

1.「ホームページ全てが血の通った人間の言葉で出来ていること」
2.「会長から新入社員まで同じ経営理念で結ばれていること」

である。少し引用する。

一見、何も奇をてらっていない普通のホームページではあるが、右下の「創業者 今井光郎の哲学」と「株主・投資家情報」を見ていくにつれて、このホームページが只者ではないことに気がつくと思う。お勧めの読み方としては、まずは「創業者 今井光郎の哲学」をクリックして最下段にある「家族からはじまる物語」を読み、それから、「フジ住宅が出来た理由」、「創業者 今井光郎の哲学」の細目を見たのちに、「株主・投資家情報」で社長のコメントに入っていくパスである。ここまで来ると、このホームページ全てが血の通った人間の言葉で出来ていることが分かる。そして、会長から新入社員まで同じ経営理念で結ばれていることも、である。
これだけ言葉を尽くしても、私は同社の定性面での素晴らしさを十分の一も伝えられていないと思う。……中略……最後に一つ加えるとしたら、お話頂いた石本取締役が、会長、社長、社員の話をしだしたら止まらなくなってしまったということである。まるで子煩悩な親が子供の話を続けるようにである。経営理念を会長から新入社員まで同じ熱さで感じている企業は間違いなく強い。
このように井上哲男氏は、フジ住宅では取締役が社員を我が子のように愛しており、会長から平社員までが同じ経営理念の元に結ばれていることが同社の魅力を生んでいるとしている。
これを上に拾い上げた口コミと対比させると、いかにも戦前戦中に称揚された麗しき家制度の美徳とその裏にある面従腹背のリアルとが透けて見えてくる。
そして、この家族的な愛情に彩られた麗しい欺瞞に感動し、それを礼賛し、競争市場が優位性を実証する合理性として受け止めてしまう評論家の存在もまた、日本軍の強さを信じ、礼賛した往時の記者や知識人の姿を彷彿とさせてくれる。

ついでに、読売新聞+竹田恒泰氏というタッグがフジ住宅社長の宮脇宣綱氏にインタビューした記事のリンクを置いておく。

FUJI フジ住宅株式会社:読売新聞大阪本社魚拓

いくつか印象深い文言を抜粋する。

その企業姿勢は、社員を家族のように大切にし、「お客様の幸せ」をひたむきに追求する経営理念に貫かれています。社員から父・兄のように慕われる宮脇宣綱社長が、作家の竹田恒泰さんと対談。目先の利益より「世のため人のため」に尽くす意義と、そこから生まれるプラス効果を語り合い、フジ住宅の“強さ”の源を探りました。
 経営陣は社員に生き生きと働いてもらおうと知恵を絞り、社員はお客様に喜んでもらおうと努力する――それが良い循環を生んでいます。
「だれかのため」が良い連鎖を生む例が「親孝行月間」です。年に1度、全社員約1100人に1万円を支給し、親孝行を呼びかけます。一見、仕事と無関係ですが、人を喜ばせる力がつき、自己肯定感が高まります。実施後は「お客様に喜んでもらいたい」「仕事への意欲が高まった」など、前向きな感想が寄せられます。
……中略……
(※)親孝行月間
毎年4月1日にパート・派遣を含む全社員約1100人に1人1万円を支給。平成16年から導入し、必ず親のために使う(用途は自由)ことと、どのように使ったかを感想文として提出することを課している。
フジ住宅は、社員が明るく、率先して仕事に取り組んでいて、社員を家族のように大切にする社風が伝わってきます。
ここにもまた儒教的家族主義の麗しさへの陶酔と、その背後にある建前の強制とが見られる。
*****
追記(2015年11月20日10時46分)

産経は見ないことにしているのだけれど、本項の目的は気持ち悪い記事を記録することにもあるので、やむを得ず記録しておく。2013年の記事。

【わが社のオキテ】「親孝行月間」に1000万円を支給 フジ住宅が社員に求めるものは… - 産経WEST(2013.1.27 07:00更新 )

 大阪府を中心に分譲住宅事業などを手がけるフジ住宅は、毎年4月を「親孝行月間」と定めている。全社員に“金一封”が手渡され、親孝行のためならどう使おうと自由。そこには「一社会人である前に、一人の人間として立派であれ」という社員へのエールが込められている。ともすれば、人を押しのけてでも“結果”で勝負するのがビジネスの世界。もちろん、それを一概に否定するわけにはいかないが、人として最も大切なものは何か、とこの制度は社員に問いかけている。


■4月1日、全社員に1万円の「寸志」を支給

 「自分の家族を大切にできないような社員が、取引先を大切にできるはずがない。感謝の気持ちを常に持ってほしい」

 「親孝行月間」導入のねらいについて、石本賢一取締役はこう説明する。

 親孝行月間は平成16年に導入した。毎年4月1日、宮脇宣綱社長が「寸志」と書かれた封筒を社員全員に渡す。その額1万円。正社員だけでなく、契約社員やパート社員も含めた全在職者が対象で、支出額は1千万円を超え、半端な金額ではない。

 それでも「それに見合うだけの効果は十分にある」と石本取締役は断言する。その理由は何だろう。

 社員は1万円をどのように使ったかを文書で報告することになっている。その内容を見ていて、社内外に対して思いやりのある、優しい社員の比率が高くなっていることを実感するからだという。


■「母を焼き肉を食べに連れて行った」とある社員

 設計管理課に所属するある社員は「母が少し前から行きたいと言っていた焼き肉を食べに行った。母が喜んでくれたことがとてもうれしかった」という文書を提出した。

 また、あるパート社員は「鹿児島の母の墓前に花を手向けた。母も喜んでくれていると思う」と記し、合わせて会社への感謝の気持ちをつづった。

 他愛もない内容かもしれないが、こうした“ちょっとした行為”に、家族への「感謝」の気持ちが十分に見てとれる。

 この親孝行月間を導入したのは創業者の今井光郎会長。貧しい家庭に生まれた今井会長は、家計を助けるために進学をあきらめた兄や姉のおかげで高校を卒業することができた。

 そうした自身の経験が、会社創業時に掲げた『社員のため』『社員の家族のため』という経営理念になり、現在の親孝行月間につながっている。

 一方、同社には親の誕生日など、社員それぞれの記念日に会社から花束を贈る制度もある。

 また、一風変わった「表彰推薦書制度」というものもある。『社員のため』という経営理念を具体化したので、全社員が推薦権を持ち、会社に対して特に貢献した社員(契約社員、パート社員を含む)の表彰を要望するというもの。


■家族への感謝の気持ちは、やがて社外に向かう

 推薦者は推薦したい社員や社内のグループなどについて、表彰推薦書に推薦理由を明記。その表彰推薦書は上司(部門長)に回され、上司の承認が得られれば、宮脇社長のもとに届けられる。そして、最終的に宮脇社長が表彰の有無を決定する。

 表彰式は年4回実施。それぞれの行為や貢献度に応じて賞金などが贈られる。表彰推薦書は全社員に回覧され、「ほかの社員に評価されることで、大きな自信とやりがいにつながる」(石本取締役)という。

 家族や社員に対する感謝の気持ちを育て、社員が「人」として成長する。その姿勢は自然と社外に向かうのが人というもの。同社発展のカゲには「感謝の経営」がある。

(香西広豊)

◇会社データ◇

本社=大阪府岸和田市土生町1-4-23

設立=昭和49年4月

事業内容=住宅分譲など

売上高=715億円(平成24年3月期)

従業員数=1026人(同9月末現在、パート含む)

「感謝の経営」…。こういう主語と目的語が欠けたコトバには要注意だ。きちんと表現すれば「経営者が従業員に感謝を強制する経営」という意味だろう。

フジ住宅の経営は儒教的な価値観に彩られているようだが、こうした観念を持つ経営者は少なくない。
一見麗しく平和的に見える儒教的な価値観だが、その中核をなす仁愛には強い排他性と差別性があるという批判をしたのが墨家なのだとどこかで読んだ覚えがある。

つまり、孝悌を基本とする儒教的な仁愛では、自分の親や祖先、目上の者への敬愛と従順を中心とし、そこから隔たるにつれて徐々に敬意の量を低めていく。これが差別性と排外性を生んでいるというのである。

孔子が説いた相手は本来支配者であって、支配者の身を慎むための哲学であったはずのものが被支配者の従順を引き出すための道具として使われることにそもそもの転倒があるのではないかという気がするのだが、目下の者を躾けることも儒学的には大切なことであろうから、結局は支配者の自己愛の肥大と増長とを促す作用を必然的に持っているのかもしれないなあと思ったりもする。


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