「貧乏なのに進学した罰」を巡る一般的な?反応
朝日新聞のシリーズ「子どもと貧困」の一つ。:子どもと貧困に関するトピックス:朝日新聞デジタル
「貧乏なのに進学した罰」 風俗で働く短大生:朝日新聞デジタル(後藤泰良 2015年10月15日11時55分)
■子どもと貧困風俗産業を「セーフティネット」という表現には違和感を覚える、この語の使用法に怒りや皮肉を込めているとしても。大阪市の一等地にあるマンションの一室が、その風俗店の待機部屋だ。20歳前後の女性たちが試験勉強したり、お菓子を食べたり。予約が入ると従業員に客の特徴を聞いて、バッグを手に部屋を出る。
短大2年の女性(20)もその一人。高卒より上の学歴があれば、大きな企業に就職して貧困から抜け出せるのではないかと期待して短大へ進んだが、資金的にも精神的にも行き詰まり、週2、3回、働いている。
嫌だったが、お金が欲しかった。「貧乏なのに進学した罰」だと思った。
幼い頃、小さい会社を経営する両親と裕福に暮らした。小学生のとき両親が離婚。母親と2人暮らしになり、生活保護を受けた。母は代わる代わる男性を家に連れ込んだ。親をあてにできず、高校の学費は食品会社の箱詰めなどのアルバイトで賄った。学費の心配に目をつむって進学した。
短大の学費は年間約120万円。入学前に必要な費用は親戚や知人に借りた。学費の大部分は有利子の奨学金をあて、交通費や教科書代、生活費と借金の返済は、居酒屋のアルバイト代だけが頼りだった。
午前9時前には学校へ行き、終わると午後6時から午前0時まで働いた。土日も夏休みも入れるだけシフトに入った。時給は約1千円で月約7万~10万円。バイト仲間からカラオケに誘われても、「明日も早いから」と断った。
授業の合間に勉強し、いくつか事務系の資格を取った。参考書代や受験料は計数万円。未来への投資と思い、生活を切り詰めた。
進学から数カ月。息苦しい生活に限界を感じるようになった。居酒屋に飲みに来る学生を見てはお金と時間が欲しいと強く思った。
もっと時給の高い仕事はないかとインターネットで探し、風俗店の求人を見つけた。「簡単な仕事」「嫌なことはしなくて大丈夫」「学生さんも多数在籍」。考えてもいなかった選択肢が、急に現実的に思えてきた。数日悩んで体験入店。つらさより、居酒屋1日分のバイト代を1時間で稼げたことに驚いた。
就職活動のため、時間とお金がより必要だと考え、居酒屋をやめて風俗に絞った。直後に、インターンシップ先の評価は一緒に行った同級生の方が高かったと知った。その子は自分より裕福だった。自分でも驚くほどむなしくなった。
立ち止まる余裕はないと焦りながら、日銭を受け取ると、「ま、いいか」と思ってしまう。そんな日が続いた。常連客に就職活動のことを聞かれても、「うまくいってないんです。誰かお金持ちのお嫁さんになります」とはぐらかした。
9月に入り、別れた両親がまた一緒に事業を起こすことになった。「同じ失敗すると思うけど」。文句を言う声に、家族がもとに戻るのではとの期待がにじむ。夢見た大手への就職は厳しいが、条件のいい個人経営の就職先を探そうと資格試験の勉強を再開した。
「卒業したら風俗はもうやらない」。気持ちは前向きになったが、就職先はまだ決まらない。(後藤泰良)
■「一部女性のセーフティーネット」
風俗店で働く女性らを支援する一般社団法人「Grow As People」代表の角間(かくま)惇一郎さんは「病気や育児、就活などで短時間しか働けない女性が生活費を稼ごうと思うと選択肢は限られる」と話す。一時的でも風俗を仕方なく選ぶ女性もいるという。
角間さんは「行政の支援は個々のニーズに対応しきれていない面がある」と指摘。「住居や託児所などを用意する風俗店もあり、一部の困窮した女性にとってセーフティーネットになっている」とみる。特にここ数年は風俗店で働く学生が増えているといい、「風俗以外の現実的な解決策を社会が用意する必要があるのではないか」と話す。
中京大学の大内裕和教授(教育社会学)は「学生に学ぶ時間を提供できない教育政策に問題がある」と指摘する。経済協力開発機構(OECD)の加盟34カ国中、半数の17カ国が大学の授業料を無償化。日本は有償の国の中でも授業料が高額な部類に入るうえに唯一、国による給付型の奨学金がない。「日本の高等教育予算は先進国最低。親の所得に関係なく学べるように、諸外国並みに学費を下げ、給付型奨学金を導入すべきだ」と話す。
◇
シリーズ「子どもと貧困」は今後も随時掲載し、貧困の現状、支援のあり方や制度の課題など解決の糸口を考えていきます。
女性が助かっていることが事実だとしても、風俗産業側が彼女たちを搾取し食い物にしている面を隠蔽してはならないから。「従軍慰安婦を日本軍が守っていたのだ」という論調に通じる危うさを感じてしまう。
で、「一般」の反応。
http://www.asahi.com/articles/ASHB54PP6HB5PTFC00P.html - Twitter検索
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認識論的障害という言葉を思い出す。
日本の公的教育支援が「先進国」の中で最低レベルであり、「発展途上国」の一部にも追い抜かれていることは、日本政府や行政の怠慢ではなく、日本社会がまさにこの状態を肯定し、歓迎すらしていることの現れなのだととてもよく分かる。
それゆえにこそ、貴重な記事とシリーズだと思う。
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