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2015/10/11

引き続き、南京大虐殺の記憶遺産認定の記事

毎日新聞がずいぶん大きく取り上げているが、そんなに大きなことかな。むしろ大騒ぎしていることから、南京事件の存在をどうしても認めることができない日本社会のトラウマが見えてくるような気がする。加害の事実と正面から向き合わない限り、この情けなく愚かな反応は永遠に続くだろう。

世界記憶遺産:中国、対日圧力強める 「南京大虐殺」登録 - 毎日新聞(2015年10月10日 12時39分(最終更新 10月10日 14時08分))

同じ記事でも複数のページがあるのでリンク先をどこにするか困りますな。

 ◇日本からの「政治利用」指摘に「誤った態度」と批判

 【北京・工藤哲、ソウル米村耕一】国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に南京大虐殺が登録されたことは、歴史認識を巡る中国の対日圧力が一層強まったことを意味する。中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)副報道局長は9日の定例会見で、申請理由について「日本を含む各国の人々が侵略戦争の残虐性を認識し、歴史を心に刻み、平和を大切にし、共同で人類の尊厳を守るためだ」と説明した。

 日本政府が「ユネスコの政治利用」と反発していることについては「歴史問題での日本の誤った態度をまさに示している。日本側は孫やその後の世代まで責任ある態度で、誠意を示して問題を処理することでアジアの隣国や国際社会の信頼を得ることを希望する」と批判した。

 中国政府高官によると、中国が日本への警戒感を再び高めたのは、2013年末の安倍晋三首相の靖国神社参拝がきっかけだ。各国に駐在する中国の外交官が地元メディアで参拝を批判するなど国際発信を強化。中国国内で各地の記念館の改修を進めてきた。中国メディアによると、中国側がユネスコに資料を提出したのは昨年3月だった。

 今年9月3日に北京で開かれた「抗日戦争勝利記念日」の関連行事にも国連の潘基文(バン・キムン)事務総長やユネスコ幹部を招待し、被害国、戦勝国としての中国の立場をアピールした。

 韓国との関係でも、中国メディアは昨年2月、中韓の学者の間で慰安婦問題に関する記録の調査で協力を強める動きが出ていると報道。学者はこの分野で日本やフィリピン、北朝鮮とも協力するとしていたが、今後中国政府が国際的な連携を一層推進する可能性もある。

 一方、韓国政府関係者は「現時点では、歴史問題で中国と歩調を合わせるつもりはない。日本側にもそう説明している」と明言する。だが、韓国側は独自に慰安婦問題関連資料の作成も進めており、中国が申請した南京大虐殺の記憶遺産登録を受けて歴史問題での連携が進むことも予想される。

世界記憶遺産:「南京大虐殺」登録 「改革を」政府、ユネスコに要求へ - 毎日新聞(2015年10月11日 東京朝刊)

 国連教育科学文化機関(ユネスコ、本部・パリ)が重要な歴史文書などを認定する世界記憶遺産に、中国が申請した「南京大虐殺」に関する資料を登録した。日中では南京大虐殺の犠牲者数などで見解が分かれており、日本政府は9、10の両日、「ユネスコの政治利用だ」と中国外務省に抗議した。ユネスコにも制度改革を申し入れた模様だ。

 戦後の南京軍事法廷の記録など関連資料11件が登録された。中国は申請書類で「極東裁判(東京裁判)での中国人犠牲者数は遺棄された遺体が含まれておらず、南京軍事法廷は『少なくとも30万人の中国人が殺害された』と結論付けている」と指摘。「具体的な人数は諸説ある」とする日本政府の公式見解との食い違いをみせた。

 川村泰久外務報道官は10日に発表した談話で「中国の一方的な主張に基づき申請され、(登録基準の)完全性や真正性に問題がある」と指摘。中国に抗議するとともに、登録したユネスコにも「政治利用」されないよう制度改革を求める考えを示した。

 一方、中国外務省の華春瑩・副報道局長は10日、「南京大虐殺は国際社会が公認する歴史事実となった」と述べ「提出資料は、特に真正性の面で登録基準に完全に合致する」と強調。日本側の抗議を「申請につべこべ言わず、ユネスコの正常な業務を妨害するのは即刻やめるべきだ」と批判した。【小田中大、パリ賀有勇】

日本政府が抗議したその内容が情けないのは当然。子供っぽく横暴でエキセントリックな国という印象を強化した。
ただ、中国の副報道局長の論調も穏やかではない。「国際社会が公認する歴史的事実」という言い方は問題がある。また、「つべこべ言わず」と訳した原語がどういう表現だったのか、翻訳段階で歪んでいる可能性があるが、言わなくてもいい言葉だったのではないか。南京事件が記憶遺産に認定されることには文句なしの正当性があるのだから、中国としては単にその事実を淡々と強調するだけで良かった。いわば横綱相撲の貫禄を示せば良かったはずだ。

クローズアップ2015:記憶遺産に「南京大虐殺」 「東京裁判」引用際立つ - 毎日新聞(2015年10月11日 東京朝刊)

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に、中国が申請した「南京大虐殺」が新たに加わった。記憶遺産には奴隷制度や戦争など負の歴史を刻むものも多い。だが、南京大虐殺は犠牲者規模などを巡り中国と日本の見解が異なるため、日本政府は「ユネスコの政治利用」と中国政府に抗議し、歴史認識を巡る日中両政府の摩擦が表面化した。ユネスコの「お墨付き」を得て中国は新たな歴史カードを手にしたのか。登録された関連資料などから影響を読み解く。

 ◇中国、客観性を強調

 <極東国際軍事裁判(東京裁判)は、以下のように指摘した。「日本兵は南京市各地でさまざまな残虐行為に及んだ」「最初の6週間に南京及び近郊で殺害された民間人と捕虜は20万人以上」−−>

 中国がユネスコに提出した申請書の記述で目立つのは、東京裁判への言及だ。申請書類の冒頭にある趣旨説明の半分近くが、東京裁判からの引用になっており、A4判11ページの申請書類の中に「東京裁判」の文字が8回登場。国連の母体となった第二次大戦の戦勝国が軍事法廷で虐殺を認定した点を強調して、中国だけの主張ではないことを示した。当時南京にいた欧米人の目撃証言にも繰り返し触れて「客観性」を強調し、政治利用の色をぬぐい去る意図がうかがえる。

 記憶遺産に登録された関係文書11件=表=は、生存者の日記や写真フィルム、軍事法廷の判決など。中国側はいずれも「(旧日本軍が)南京で行った虐殺、性的暴行、放火、略奪を含む犯罪行為を正確に記録している」と主張する。

 「南京」を巡っては、虐殺の規模など日中間で現在も激しい論争が続く。中国側は犠牲者を「30万人以上」と主張しており、南京大虐殺記念館(南京市)では「300000」と犠牲者数を刻んだ巨大レリーフが来館者を迎える。

 一方、日本外務省は公式サイトの「歴史問題Q&A」で「非戦闘員の殺害や略奪行為などがあったことは否定できないが、被害者の具体的な人数は諸説あり、正しい数を認定することは困難」との公式見解を示す。日本の研究者による推計も20万人から数万人で、中国側と大きな隔たりがある。

 記憶遺産の申請書では、犠牲者数について、戦後の東京裁判の「20万人以上」、南京軍事法廷の「少なくとも30万人」とする判断を両論併記して自説の根拠とした。ユネスコの記憶遺産に登録されるためには資料が歴史的に重要であるだけでなく、資料やその説明の「真正性」も求められる。

 資料の登録によって、ユネスコが中国側の主張を認めた印象を与えるのは避けられない。しかし、資料全体の信頼性を判断する作業と、個々の記載内容を幅広い角度で検証して歴史的事実を結論付けることは意味合いが異なる。ユネスコは近く登録理由を公表する見通しだが、「30万人」とする中国側の説明に言及するかどうかも注目されそうだ。

 登録された文書の一部を保管する南京大虐殺記念館の朱成山館長は10日に配信された新華社通信のインタビュー記事で「南京大虐殺の歴史が世界の共通認識になったことを意味する」と説明。申請活動は2009年から本格化し、翌10年から国の後押しを受けたという。

 日中関係が尖閣諸島問題などを巡って悪化した時期と重なり、政治的な思惑もうかがえる。【河津啓介】

 ◇対日強硬姿勢、国内アピール

 「2013年12月の安倍晋三首相の靖国参拝がきっかけだった」と中国政府高官は打ち明けた。習近平指導部は歴史問題で日本に直接働きかけるだけでなく、ユネスコなどの国連機関を巻き込みながら対日圧力を強めている。

 「我々は戦争を人類から遠ざけ、世界の子供たちを平和の下で幸せに成長させなければならない」。安倍首相の靖国参拝から約3カ月後の昨年3月、習主席はパリのユネスコ本部を訪れ、こう演説した。

 09年から進めていた南京大虐殺の記憶遺産申請に最終的にゴーサインを出したのはこの頃だった。習氏自ら戦争廃絶を訴えることで「南京」「慰安婦」の遺産登録を働きかけたのだろう。

 中国の指導者にとって対日関係での失策は大きなリスクだ。なかでも日本首相の靖国参拝を許すことは最大級の失策と言える。当時の習氏は中国共産党トップの総書記に就任して1年余り。権力基盤がまだ盤石ではなかったとされる。

 この時期は1990年代を中心に歴史問題で日本に厳しい姿勢を示し続けた江沢民氏の影響も強く残り、対日問題で強い姿勢を示さなければ政権基盤が揺らぐ可能性も残っていた。「南京大虐殺」の記憶遺産申請は習指導部にとって対日強硬姿勢を国内向けにアピールするためにも格好のカードだった。

 習指導部が対日関係改善に動くのは、昨年夏以降だ。

 転機は、江氏に近かった周永康前政治局常務委員を14年12月に逮捕し、反腐敗キャンペーンの山場を乗り切って権力基盤を一層安定させたころといわれる。「中国は日本の政権と民間を切り離し、民間との協力強化を模索し始めた」(北京の外交関係者)

 しかし、今年は「抗日戦争勝利70年」の節目でもあり、歴史問題では依然として日本に妥協できない事情がある。

 習主席は9月3日の軍事パレード後のレセプションで「あの年代の人であろうと、その後生まれた人であろうと、歴史の教訓を心に刻まなければならない」と発言し、安倍談話を暗に批判するなど硬軟両様の構えを見せる。

 今回登録されなかった慰安婦問題に関する資料は台湾や韓国、北朝鮮、インドネシアなどの各国と連携しやすい問題でもある。習指導部は今後、安倍政権をけん制する材料として「歴史問題の国際包囲網」を利用し続けるとみられる。【北京・工藤哲】

 ◇歴史認識、対立再燃も

 中国政府やユネスコに働きかけてきた日本政府は落胆を隠せない。「日中関係に大きな影響を与えるものではない」(政府関係者)と冷静に受け止める向きもあるが、日本国内で中国への反発が広がれば、安倍晋三首相の戦後70年談話で沈静化したかに見えた日中間の歴史認識問題が再燃しかねない。

 「今回の登録で『南京大虐殺はでっちあげだ』という極論が国内に広がるのはまずい」。自民党の三役経験者は10日、こう指摘し、対中感情の悪化に警戒感を示した。

 中国外務省が申請を発表した昨年6月以降、政府は大使館を通じて再三、中国側に抗議。提出資料の開示や日本の専門家による調査を求めてきた。ユネスコに対しても首相や岸田文雄外相が慎重審査を要請したほか、国際諮問委員会の専門家14人に政府関係者が個別に接触し、懸念を伝えた。

 しかし、諮問委には各国の公文書館長など文書管理の専門家が多く、「政府の働きかけに不快感もあった」(外務省幹部)といい、登録回避の有効な手立てはなかったのが実情だ。

 外務省は中国に抗議したが、同省幹部は「感情的に反応したり、対立をエスカレートさせたりすべきではない」と強調しており、日本政府としては改善に向かい始めていた日中関係を維持したい意向だ。

 首相は10月末にも開催予定の日中韓首脳会談の際、中国の李克強首相と個別に会談したい考えだ。9日には、訪中する公明党の山口那津男代表に習近平国家主席への親書を託している。

 ただ、国内の反発を背景に記憶遺産問題で日中間の対立が激化すれば、首脳会談で「歴史認識」というトゲが再びクローズアップされるのは必至だ。【高本耕太】

 ◇審議、勧告内容も非公開

 世界記憶遺産の審査は2年に1回で、申請は各国2件まで。14人の専門家によるユネスコ国際諮問委員会が登録の可否を審査。同委の勧告を尊重してユネスコ事務局長が最終決定する。

 同じユネスコの遺産事業である世界遺産と無形文化遺産は、登録の審議が公開されるが、記憶遺産は審議も勧告内容も非公開であり、透明性の向上を求める声も上がっている。【三木陽介】

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 ◇世界記憶遺産に登録された「南京大虐殺に関する資料」

<1>国際安全区の金陵女子文理学院の宿舎管理員、程瑞芳の日記
<2>米国人のジョン・マギー牧師の16ミリ撮影機とそのオリジナルフィルム
<3>南京市民の羅瑾が死の危険を冒して保存した、旧日本軍撮影の民間人虐殺や女性へのいたずら、強姦(ごうかん)の写真16枚
<4>中国人、呉旋が南京臨時(政府)参議院宛てに送った旧日本軍の暴行写真
<5>南京軍事法廷が日本軍の戦犯・谷寿夫に下した判決文の正本
<6>南京軍事法廷での米国人、ベイツの証言
<7>南京大虐殺の生存者、陸李秀英の証言
<8>南京市臨時(政府)参議院の南京大虐殺案件における敵の犯罪行為調査委員会の調査表
<9>南京軍事法廷が調査した犯罪の証拠
<10>南京大虐殺の案件に対する市民の上申書
<11>外国人日記「南京占領−目撃者の記述」(新華社通信から)

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 ◇日中関係を巡る近年の主な動き

2012年

  11月 中国で習近平氏が共産党総書記に就任
  12月 第2次安倍内閣が発足
  13年
   3月 中国全人代で習体制が正式に発足
   9月 安倍首相と習主席がロシアで初接触
  11月 中国が東シナ海上空に防空識別圏を設定
  12月 安倍首相が靖国神社を参拝<1>。直後から中国が国際的に対日けん制を強化

  14年

   3月 中国が南京大虐殺と慰安婦問題の資料をユネスコ世界記憶遺産に登録申請
   3月 中国の習主席がパリのユネスコ本部を訪問
   7月 福田康夫元首相が習主席と非公式に会談
  11月 日中首脳が北京で会談
  12月 中国で周永康氏の逮捕を決定<2>

  15年

   4月 日中首脳がジャカルタで会談
   5月 二階俊博自民党総務会長ら3000人規模の訪中団が習主席と面会
   8月 安倍首相談話を閣議決定
   9月 北京で抗日戦争勝利70年記念式典を実施<3>
   9月 日本で安保関連法成立


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