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2015年11月の22件の記事

2015/11/30

とりあえずメモ:名誉毀損を刑法犯とすることへの異論と朴裕河氏起訴への反応

朴裕河氏の名誉毀損での起訴については権力による言論弾圧という危険性を感じつつも、元慰安婦の人たちからの強い反発と告訴という事態があり、両義的性質があるなあと感じたまま、あまりフォローもしていなかった。
また、それ以前から名誉毀損には民事と刑事の両方があるのが不思議で、刑法犯とするのは過剰なのではないかという疑問を持っていた。
……だったら学説を調べたらいいだろう!という批判は当然受けなければならないんだけど。

で、ヒントになりそうな視点が示されていたのでメモ。

「朴裕河氏の起訴に対する抗議声明」に対する違和感と本来何を問題とすべきだったかについて - 誰かの妄想・はてな版

以下は私の直感的な感想にすぎない。
率直に言って、朴裕河氏の著作の内容に踏み込んで氏を擁護するのはいろいろと問題が多そうだと感じている。だから、今回の著名人による抗議声明にはかなりがっかりさせられた。割とまともな人たちが多く入っているのでなおさら。
私も人のことは言えないけれども、著書の内容と従軍慰安婦問題の文脈を踏まえているのだろうかという気がする。それでもなお朴氏の起訴を批判するならば、内容の如何を問わず権力が言論弾圧すべきではないという立場を取るのが一番無難(語弊があるけれど…)ではなかろうか。これは産経支局長の起訴への反対と同じ立場になる。支局長の言動は下劣きわまるものではあったが、それでもなお起訴は弾圧であるという理路と基本的には同じことだ。

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公共空間に浸透する「萌え」と性の商品化:美濃加茂市の例

とりあえずリンク先を記録しておく。

美濃加茂市とエロキャラとのコラボに非難殺到 - Togetterまとめ

コメント群
はてなブックマーク - 美濃加茂市とエロキャラとのコラボに非難殺到 - Togetterまとめ

公共空間における性的規範の変容を「萌え」現象が誘導しており、それが徐々に女性性の商品化への警戒感を鈍磨させていきつつあるのではないかという一つの例。

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追記(リンク追加)

のうりん 第6話 : アニメ好きオヤジの気まぐれな話

「エロ」自体をネタにする構造の作品のようで結構面白そうなのだけれど、文脈を共有していないところに高度に文脈依存的なものを浸出させるのは無理があるだろうという印象。特に「エロ」であればなおさら。(不道徳という意味でなく差別的だという意味で。)

萌(めぐみ)の錬金術師 - 男の魂に火をつけろ! <音楽映画ベストテン受付中>

作者側と市長との親しい関係がカギになったとか、ストーリーや作品の風刺性と現実とがかぶるとか、多重構造になった展開自体が一つのモダンアートになりつつある印象。
こういう展開は、「ハプニング」(1回限りで再現性も永続性もないアート)というのかしらん。

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さらに追記(2015年12月4日)

はてな匿名ダイアリーから目に付いたエントリを追加。

美濃加茂市、碧志摩メグに足りなかったのは、配慮ではない
  一読に値するが、表面的な批判をするなという火消し的な趣旨。
  断絶・不寛容を止めて建設的な議論をしよう!という意見。朴氏擁護論みたい。
  コメント欄が長く伸びていて、「萌え」の持つ本質的な差別性を理解できない人の多さ、言い換えれば「萌え」的視座を内面化してしまった、「萌え」に帰依してしまった人の多さが分かる。

萌え絵フォビアの正体
  「萌え」を正当な表現だとしてそれへの批判を差別だと切り捨てる。
  紋切り型でアホらしく途中で読むのを止めた。批判への反発の一つの典型。

高校生の頃、狂ったように女叩きの記事を読んでいた時期があった
  本論ではないが、少し本件に触れている。

まあ本件で少し良かったかなと思うことは、「萌え」が性の商品化と切り離せない表現だという気づきが少し広がったことぐらいかな。

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2015/11/29

福岡教育大学の教員処分問題について

「安倍はやめろ」「学長やめろ」で停職3ヶ月についての見解 on Strikingly(2015年11月27日)

以前下記のように意見を述べた件について当事者の先生から表明された見解である。
自殺する福岡教育大学:大学は政治的に偏向していてもよい。: 思いついたことをなんでも書いていくブログ

まとまった見解を述べる余裕がないので断片的な感想を。

・世間には受け入れられないだろう。また、火に油を注ぐ格好になっていて、本件を「政治的偏向」だと叩きたい人には格好のエサになるだろう。
・理路はそれなりに筋が通っているし、大学側の処分論拠が恣意的なことも分かる。

ただ、私自身としても一読して割り切れない思いが残る。
思想信条に沿って偏向した授業をすることは一向にかまわないと思うし、そもそも、この授業が「偏向」に該当するかもはっきりしない。けれども、
・コールの練習に学生を参加させようとしたこと
・コールの練習に、学長批判をとっさに混ぜたこと
が妥当だとは言えないのではないかという思いが残っている。

もちろん、仮に妥当でなかったとしても、それが懲戒処分に該当するかはかなり疑問ではある。私の今の意見は、仮に本件において授業内容に問題があったとしても、それを理由に懲戒処分することは本件においては不当だというものだ。

上記の授業内容への疑義は、十分考えていないのであまり論じられないが、
・授業において教師と学生とは対等ではないので、教師の指示で学生に行動させる場合には、思想信条の自由の侵害になる可能性があるのではないか。それは例えば日の丸君が代の強制と類似のことである。
・事前の文脈から安保法制反対は予期できたとしても、それに混ぜて学長批判を「練習」という形にせよ表明させられるということは、やはり学生の思想信条を尊重していないことになるのではないか。
というようなあたりが気になっている。

これらの論点については、講義のなされ方や受講者との合意(暗黙の合意も含む)なども絡んできて、どこまで文脈が共有されていたかが問題になるのではないか。
さらに、もっと根源的には、そもそも「大学の講義」とは何であるか、この科目はどういう趣旨の科目なのかというあたりとも関わるような気がする。

ご本人は、ラップでありジョークでありコールであって政治的ではないとしている。またその文脈は共有されていた(ジョークが受けた)という。しかし、私の意見としては、十分に政治的だし、政治的であってよい、政治的であらねばならないと思う、とりわけ、この種の題材を扱うのであれば。だから、授業の「偏向」を理由にした懲戒処分は正しくないと思う。ただ、この「ジョーク」やコールには全くおもしろさを感じないけれども。(まあこの授業や福岡教育大学の事情が分からないのでおもしろさが分からないということは大いにあると思う。笑いにはその場の乗りも非常に大事だし。)

もう一つ言うと、ご本人は、安保法制について賛否の踏み絵を踏ませたわけでもなく、賛成派を批判・攻撃したわけでもないという。だが、これは卒業式で日の丸を仰がせ君が代を歌わせる権力者の見解に類似しているように思う。もちろん、学生たちは先生の「ちょっと練習しようか」の呼びかけに対して、従わないことはできたし、実際に従わなかった学生も沢山いただろう。それに、従わなければ成績が下がるというような恐怖もほとんどなかっただろうから、日の丸君が代の強制とはかなり事情が異なる。日の丸君が代の場合は従わなければ懲戒処分だし、実際に君が代を声を出して歌っているかどうかをいちいち検査されるという念の入れようだからだ。このように大きな違いはあるけれども、それでもなお、教師という教室の支配者からの要求と、それに賛同する多数の――ジョークが大受けしたというのだから受講者の相当割合だったのだろう――学生たちの作る空気感とにあらがって非協力の態度を表明することには勇気が必要だったかもしれない。そうした点が気に掛かっている。

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この先生が処分を不服とし当局と戦うことは大いにやられてよいし、支持したい。
しかし、以上のような疑問がある。ただ、これらの疑問は直感的なもので、自分としてもその正しさが腑に落ちているわけではない。たぶん、授業や講義というものが思想信条の伝授・宣教という側面を本質的に持っていることと、受講者の思想信条の形成と自由の侵害という側面とについて、あまり整理できてないので混乱するのだと思う。これについては今後も考えて行かねばならない。

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2015/11/27

とりあえずメモ

#原子力発電_原爆の子: テッサ・モーリス=スズキ「安倍談話のお詫びを台無しにする歴史修正主義」~一方的に送りつけられた2冊の本(2015年10月31日土曜日)
関連リンクがいくつか。
その原文。
Historical revisionism undermines Abe’s apology | East Asia Forum(26 October 2015, Author: Tessa Morris-Suzuki, ANU)

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参院選 大阪選挙区 自民の擁立1人か NHKニュース(11月27日 6時47分)

自民党は、先の大阪府知事選挙と大阪市長選挙で、党が推薦した候補者がいずれも敗れたことを受けて、来年夏の参議院選挙で、大阪選挙区から2人の候補者を擁立するとしていた当初の方針を見直し、1人に絞り込む方向で調整に入りました。
自民党は、安倍政権が掲げる政策の実現に向けて、政権基盤を一層強固にする必要があるとして、来年夏の参議院選挙では、改選議席が4以上の大阪などの選挙区で、複数の議席の獲得を目指して、2人の候補者を擁立する方針でした。
しかし、先に行われた大阪府知事選挙と大阪市長選挙で、党が推薦した候補者がいずれも敗れたことを受けて、大阪選出の国会議員などから、「自民党に対する反感が広がっているのではないか」という懸念や、「党幹部や閣僚を応援に送り込んで敗れたことは、深刻に受け止める必要がある」という指摘が出ています。
このため、党執行部は、改選議席が4の大阪選挙区に2人の候補者を擁立すれば、共倒れして1議席も確保できないおそれがあるとして、確実に議席を獲得するため、候補者を1人に絞り込む方向で調整に入りました。
また、同じく改選議席4の神奈川選挙区についても、複数の擁立に慎重な意見が根強く、方針を見直すことも含めて検討することにしています。
直感的には橋下氏へ配慮する官邸の意向かと思われるけれども…。

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生活困窮者に「家」を提供すれば、社会保障費は削減できる|生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ|ダイヤモンド・オンライン(【第31回】 2015年11月27日)

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夫の趣味のコレクションを断捨離する妻とメシマズ嫁の問題の根っこは同じ - 斗比主閲子の姑日記(20151127)

自分は、妻が一方的に悪者ということではなく、根っこには違う問題があると考えています。メシマズ嫁問題でも同じで、それは、
妻が掃除、炊事をするのが当たり前ということになっている
夫婦の基本的なコミュニケーションができていない
という問題です。
ものすごく当たり前のことで、口に出すのもばかばかしい基本をわざわざ指摘する記事。
だがこれが記事として成立してしまう社会の現状が情けない。
自分が大人になる頃は、男性も女性も区別なく家事育児を分け合い、男女差などという観念自体が意識から消滅しているだろう…と思っていたけれど、自分よりも遙かに若い世代が明治か大正かと思うほどの男尊女卑的な価値観を持っているのを見ると、ただただ呆れる他はない。はてブも奇妙な解釈をしているコメントが散見されるし。

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出るべくして出た奇人たちの奇書『冒険歌手 珍・世界最悪の旅』 - HONZ
本書だけでなく、上がっている本がいちいち気になる。ていうか、前から気になっていた本も入っている。この勝峰富雄さんという編集者の仕事だったのか…。

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街の本屋復権へ独自品ぞろえ 京都、恵文社元店長が新刊店 : 京都新聞( 2015年11月26日 16時24分)

恵文社一乗寺店の元店長、堀部篤史さん(38)による新刊書店「誠光社」(京都市上京区中町通丸太町上ル)が25日、開店した。自ら選んだ独自の品ぞろえの本が真新しい棚に並び、読書好きの人々が次々訪れた。

 堀部さんは恵文社一乗寺店の店長を13年間務め、世界からも注目を集める本屋づくりをけん引した。今夏独立し、一軒家の1階で営業を始めた。

 小説や思想・哲学、美術、雑誌、漫画などの分野ごとに個性的な本がそろった。店の奥には小さいギャラリーも。堀部さんは「やっとこの日を迎えられた。さらに本を充実させていきたい」と話した。

中町通ってどこかと思ったら河原町通りの一つ東の筋だったのか。
ググったら、こんなおいしそうなお店が。

京都・河原町丸太町の路地裏カフェ ItalGabon ( アイタルガボン )食べログ
……全面喫煙可らしい。絶望。行くことはないな…。

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2015/11/26

重さ

とてもよい記事。心に響いた箇所をこの記事の後に抜き書きしておく。

アンネの義姉「重荷だった」 日記に書かれなかった苦難:朝日新聞デジタル(2015年6月11日05時08分)

 「アンネの日記」で知られるアンネ・フランク(1929~45)の「影」と呼ばれたユダヤ人女性がいる。同い年の友人で、後に義理の姉となるエバ・シュロスさん(86)。アンネはナチスの強制収容所で命を落としたが、エバさんは生還した。戦後70年の今、義妹アンネへの複雑な思いと激動の半生を語った。

 「アンネには、少女とは思えない、どこか近寄りがたいオーラがあった」

 ロンドン市内の自宅で4月、エバさんはアンネとの数奇な縁を語り始めた。

 エバさんは1929年5月、ウィーンで製靴工場を営むユダヤ人中流家庭に生まれた。両親と3歳年上の兄との穏やかな暮らしに暗雲が垂れこめたのは33年、エバさん4歳の頃。隣国ドイツにヒトラー政権が誕生し、ユダヤ人排斥のうねりは欧州に広がっていた。

 10歳になった39年、第2次大戦が勃発。一家は追われるように、オランダのアムステルダムに移り住んだ。近所に住んでいたのが、同い年のアンネ・フランクだった。

 「アンネはファッションやヘアスタイル、男の子にも興味があった。うぬぼれも強く、おしゃべり。私とは正反対だった」と、当時を振り返る。アンネは「友人の一人」に過ぎなかった。その後、2人の人生が複雑に絡み合うことなど予想もしなかった。

 まもなく、オランダにも独軍が侵攻。エバさん一家は抵抗組織の助けで、隠れ家に潜んだ。同様に身を隠したアンネに会うこともなくなった。潜伏生活が2年余り続いたある朝、「密告」を受けたナチス親衛隊に踏み込まれる。

 一家は拷問にも等しい取り調べを受け、ポーランド南部のアウシュビッツ強制収容所へ。最愛の父と兄から引き離され、エバさんは母のエルフリーデさんと共に近くのビルケナウ強制収容所に入れられ、飢餓と過酷な強制労働でやせ衰えていった。シャワー室に入れられるたびに「毒ガス」におびえ続ける日々。便所はバケツ1個。5人が一つのコップで奪い合うようにスープをすすった。家畜のような扱いに何度も高熱を出し、生死の境をさまよった。

 収容から約8カ月後の45年1月27日、ソ連軍が収容所を解放。エバさんは九死に一生を得た喜びをかみしめる間もなく、父と兄の悲報を知る。「兄は終戦の約1カ月前、父はわずか3日前に力尽きた。私と母が無事なことも知らずに」

 アンネも独北部の収容所で命を落としたが、生き延びたアンネの父オットーさんが戦後、エルフリーデさんと再婚。エバさんはアンネと義理の姉妹となった。

 「重荷だった。その後の私の人生は、まさに『アンネの影』だった」

■嫉妬を捨て「日記」の続編

 「アンネの日記」がオランダで初出版されたのは終戦直後の47年。その後、世界中に広まったが、そこには父オットーさんの熱心な「宣伝」があったという。

 「オットーは、アンネを救えなかった自分を責め続けた。アンネが残したメッセージに救いを求めた」と、エバさんは考える。

 だが、当時のエバさんの心に、アンネの言葉は「響かなかった」。アンネが日記の中で「人間の本性は善だと信じている」と吐露するが、エバさんは「収容所での経験をする前に書かれたものだから」と思わずにはいられなかった。収容所には冷酷なナチス将校だけでなく、生き残るためには他人を顧みない収容者もいた。極限状態の「人間の本性」を見せつけられた。

 エバさんの憎悪は、ナチスの残虐行為を止められなかった「世界」にも向けられた。アンネに執着する継父オットーさんへの複雑な思いもあった。心の中に渦巻くどす黒い感情。「この世にいないアンネばかり注目され、生き残った私は苦しみを抱えて生きている。それが許せなかった」

 救いの手を差し伸べたのは、他ならぬオットーさん。「人を憎めば自分を惨めにするだけだ」とエバさんに諭し続けた。いてついた心はぬくもりを取り戻していった。「私はアンネに嫉妬していたのです」

 エバさんは収容所体験を人前で語ろうとはしなかった。終戦直後、世間に過去を振り返る余裕はなかった。「数十年たって世間に心の準備ができた時、元収容者の多くは偏見を恐れて過去を語りたがらなかった。子どもたちに重荷を背負わせたくなかった」

 転機は40年以上たった86年。ロンドンで「アンネの日記」のイベントに招かれ、促されるままに収容所体験を初めて告白した。聴衆は衝撃を受け、「アンネの続編」を書いて欲しいという依頼が殺到。迷った末、受け入れた。「アンネの日記は素晴らしいが、収容所のことは書かれていない。それだけでは真のホロコースト(ユダヤ人らの大量虐殺)を伝えることはできない」と考えたからだ。

 エバさんは戦後、しばしば悪夢に襲われた。自分と母が、ガス室に送られる「死の選別」を受ける場面だが、「収容所体験の話を人前でするようになって、悪夢はとまった」と言う。

 戦後70年の今年、エバさんは各地のイベントや学校で講演している。終戦記念の5月8日の前後には、ドイツのテレビ特番にも出演した。

 ナチスの残虐行為について「ヒトラーの命令に逆らえなかった」と釈明する将校もいるが、エバさんは「多くの人が当時、残虐行為に喜んで手を染めていた」と憤る。一方で、ドイツ人の若い世代に、こう諭す。「祖父母のしたことに罪の意識を感じることはない。ただ歴史を学び、それを忘れないでいてほしい」(ロンドン=玉川透)

     ◇

 〈アンネの日記〉 アンネ・フランクはナチスのユダヤ人迫害から逃れるため、アムステルダムの隠れ家に家族とともにこもった。44年に逮捕され、ドイツの強制収容所で15歳の生涯を閉じた。隠れ家での生活、戦争や家族への思いをつづった日記は世界的ベストセラーになり、60以上の言語に翻訳されている。

以下に、印象的だった部分を抜いてみる。
だが、当時のエバさんの心に、アンネの言葉は「響かなかった」。アンネが日記の中で「人間の本性は善だと信じている」と吐露するが、エバさんは「収容所での経験をする前に書かれたものだから」と思わずにはいられなかった。収容所には冷酷なナチス将校だけでなく、生き残るためには他人を顧みない収容者もいた。極限状態の「人間の本性」を見せつけられた。
この段落の上に収容所生活の恐怖が少し触れられているが、そのものすごさがどれほどのものであったのか、ただただ言葉もない。
 エバさんの憎悪は、ナチスの残虐行為を止められなかった「世界」にも向けられた。アンネに執着する継父オットーさんへの複雑な思いもあった。心の中に渦巻くどす黒い感情。「この世にいないアンネばかり注目され、生き残った私は苦しみを抱えて生きている。それが許せなかった」

 救いの手を差し伸べたのは、他ならぬオットーさん。「人を憎めば自分を惨めにするだけだ」とエバさんに諭し続けた。いてついた心はぬくもりを取り戻していった。「私はアンネに嫉妬していたのです」

この箇所はものすごい。激烈な悲惨を経た上で、なお、複雑な愛憎の中にあり、その上で、その愛憎を引き起こした中心でもあった義父の、その呼びかけに響いていく心の動き。その多重構造の中で癒しが進んでいくというのは、エバ氏、オットー氏の双方の心情を思えば、ただ壮絶としか言いようがない。そして、そのような「ぬくもりの取り戻し方」があり得るのだということにも、ただ感嘆するしかない。
「数十年たって世間に心の準備ができた時、元収容者の多くは偏見を恐れて過去を語りたがらなかった。子どもたちに重荷を背負わせたくなかった」
被害者、犠牲者が、声を上げられない、声を上げることとためらう心情がここにも現れている。従軍慰安婦問題などで「今頃になって糾弾し始めるとは」という非難がしばしばあるが、そのような非難が全く失当であることの傍証になっている。
エバさんは戦後、しばしば悪夢に襲われた。自分と母が、ガス室に送られる「死の選別」を受ける場面だが、「収容所体験の話を人前でするようになって、悪夢はとまった」と言う。
まず、「死の選別」という言葉の恐ろしさ。
記事で「シャワー室に入れられるたびに「毒ガス」におびえ続ける日々」とあるように、収容者には、「シャワー室」が何を意味するかが知られており、その「選別」を何度も受けなければならなかったのだろう。その恐怖のすさまじさと、その後遺症の深刻さに身の毛がよだつ。
そして、その体験を話すようになって悪夢が止まったということの意味。PTSDの癒し方の典型でもあるが、心の苦しみ、抱え込んだものの吐露がいかに大切かを改めて考えさせられる。そのような場を周囲の人に自分が作ってやれているのかということも思わされる。
ナチスの残虐行為について「ヒトラーの命令に逆らえなかった」と釈明する将校もいるが、エバさんは「多くの人が当時、残虐行為に喜んで手を染めていた」と憤る。一方で、ドイツ人の若い世代に、こう諭す。「祖父母のしたことに罪の意識を感じることはない。ただ歴史を学び、それを忘れないでいてほしい」
「残虐行為に喜んで手を染めていた」という言葉は、非常に重い。自分がそうならないとも限らない、いや、もうそうなっているかもしれないと気づかされるから。もちろん、この「手を染める」という言葉は、直接に手を下すという意味にとどまらず、構造的暴力の一端を担っているという意味をも含むと解釈すべきだろう。
また、「罪の意識を感じることはない……忘れないでいてほしい」の下りには、複雑なものを感じる。確かに我々は、直接、当時の社会の犯罪に責任はない。しかし、その社会を引き継いでいるものとして、その犯罪への反省と償いを、その教訓の継承を、どれほどまともに行えているだろうか。当時の行為への直接的な罪は感じなくてもいいかもしれない。だが、その行為が残した課題をろくに果たせていないことへの罪の意識は持たざるを得ないのではないか。エバさんのこの言葉は、日本が引き起こした戦争の被害者たちの言葉と共通しているのだが、当事者であるエバさんからこのような言葉をかけてもらうことが、やはりとても切なく、かえって苦しい。

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この記事の関連としてリンクされていた記事を貼っておく。

「傍観者になるな」記憶の継承訴え アウシュビッツ式典:朝日新聞デジタル(2015年1月28日12時09分)

 ポーランド南部オシフィエンチムで27日開かれたアウシュビッツ強制収容所の解放から70年を記念する式典で、元収容者らがスピーチし、広がる過激主義や反ユダヤ主義への危機感と、ナチス・ドイツの残虐行為をめぐる記憶の継承を訴えた。

 式典は、ガス室で大量虐殺があったオシフィエンチム郊外のビルケナウ収容所跡で行われ、元収容者300人のほか大統領、国王らを中心に40カ国以上の代表団が出席。しかし、主催のポーランド国立アウシュビッツ博物館は元収容者の高齢化から「直接の記憶を引き継ぎ、証言を新しい世代へとつなぐ節目の式典」と位置づけ、各国代表団のスピーチは行われなかった。

 収容所ゲートを覆うテント内の会場で、演壇は鉄道の引き込み線がガス室施設へと続いた「死の門」の建物に設けられた。米国在住の元収容者ロマン・ケントさん(85)は、「今も恐怖は私の心にある。ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)も、現代の虐殺やテロ事件も伝えなくてはならない。偏見と憎しみが広がったときに何が起きたかを、次世代に伝えなくてはならない」と涙ながらに語り、「傍観者になるな」と訴えた。

 元収容者によるユダヤ教の鎮魂歌の独唱に涙する出席者も多かった。(オシフィエンチム=喜田尚)

「傍観者になるな」とは、本当に重い言葉。

戦争や虐殺ではもちろんだが、日常であっても「傍観者になるかどうか」が問われる様々な場面がある。仲間の嫌な言動に異を唱えられるか、友達のいじめを見て見ぬふりをするか、会議で少数意見を述べられるか、不当な賃金や待遇面での違法行為を告発できるか、「空気」を読まない発言をできるか、日の丸君が代の強制に反対できるか、政治的意見を表明できるか、目の前の差別を止められるか。
こうした小さな事々の積み重ねが、私たちの社会の「空気」を作り、時代を作っていく。その重さをどこまで引き受けられるのか。自己保身と家族を言い訳にした「傍観者」への強い誘惑にどこまであらがえるのか。
上の記事でエバ氏が述べた「残虐行為に喜んで手を染めていた」人々に自分がつながっていることを改めて思う。

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2015/11/20

朝日新聞の2001年当時の「自粛」に関する証言

辰濃哲郎「漂流するリベラル言論」週刊東洋経済2015年11月21日号, 89頁

2001年、アメリカの9.11と米英軍によるアフガニスタン空爆が起きた。その当時の朝日新聞社内が「自粛」へと向かっていった様子を伝えている。辰濃氏は当時、朝日新聞の社会部デスクだった。

2001年10月、それまで武力攻撃反対を社論として掲げてきた朝日新聞が、限定的武力攻撃を容認する社説を掲載した。

今になって思えば、この頃は保守陣営の圧力が強まってきた時期と重なる。朝日とは対極の歴史認識を主張する「新しい歴史教科書をつくる会」が1997年に旗揚げし、朝日の「自虐史観」を糾弾していた。また、「大東亜戦争」を肯定する漫画家の小林よしのり氏の『ゴーマニズム宣言』が若者の間で支持を集めるなど、右傾化が叫ばれていた。
一方、90年代後半にインターネットが急速に広がり、99年に開設された掲示板「2ちゃんねる」では、朝日はターゲットの一つとされていた。やがてネット上で国家主義的な発言をする「ネット右翼」が、リベラルな言論に対して、「反日」「売国奴」など辛辣な攻撃を仕掛けてくるようになる。
こうした右傾化は、戦後、一貫して訴えてきた反戦平和、反権力を信じて疑わなかった朝日の屋台骨を揺さぶった。空爆容認を打ち出した社説以降も、リベラル色が強い記事の扱いは小さくなり、デスクに対して編集部幹部から微に入り細にわたる注文がつき始めた。これは「平和・戦争」担当デスクだった私の実感だ。いわば、世の右傾化を忖度して、「不偏不党」に名を借りた「自粛」が始まり、思考停止に陥っていく。(強調は引用者)
「反日」や「売国奴」という悪罵を「辛辣」と評するのはどうかと思うが……。これらの悪罵のどこが「手厳しい」のだろう。

本コラムは、香山リカ、森達也、潮匡人、小林よしのりの「左右両陣営」のインタビューを並べた記事で、上記引用部はその冒頭に掲げられた一節。
全体を一読して、著者はずいぶんナイーブな人だなあと思ったが、実際、上記引用部が論じるように、世間の「右傾化」が朝日新聞の「自粛」を生んだのだとしたら、朝日新聞もずいぶんナイーブだったのだろう。つまり、ネット右翼の「辛辣な攻撃(笑)」は、確かに「リベラル言論」を萎縮させるに足る有効性を持っているというわけだ。

朝日社内に起きた事態の解釈はともあれ、事実として
「リベラル色が強い記事の扱いは小さくなり、デスクに対して編集部幹部から微に入り細にわたる注文がつき始めた」
のは、著者が体験として語っている部分であり、きっと確かなことなのだろう。朝日新聞の「自粛」体質は、2001年には既に現れていたということを示す貴重な証言だと言えるのではないか。

また、この体質が従軍慰安婦問題での記事取り消しに見る脆弱さとその後の萎縮状況とにつながっていると見るのは、ごく自然なことだろう。そして、もしこの「自粛」が「辛辣な攻撃(笑)」への反応なのだとしたら、朝日新聞は今後もますます「自粛」していくことになるのだろう。
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どうでもいいけど、「リベラル」って一体どういう意味で、それを論じることにどういう意義があるんだろう。

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せっかくなので、2001年に朝日新聞が「大きく社論を踏み越え」た社説を引用しておく。

2001年10月09日朝日新聞社説「限定ならやむを得ない アフガン空爆」

 米英両軍がアフガニスタン国内のタリバーン政権の軍事施設や、テロ組織アルカイダの拠点などを空爆した。同時多発テロへの軍事的反撃の始まりである。
 武力行使はできることなら避けることが望ましい。しかし、国際社会を標的にするテロ組織を壊滅させるには、訓練基地や軍事施設などに目標を絞った限定的な武力攻撃はやむを得ない、と考える。
 乗っ取った民間航空機で超高層ビルなどに突っ込み、5千人以上の市民らを犠牲にした無差別テロは、国際社会を根底から揺さぶった。まさに平和の破壊であり、二度と許すことはできない。

 ○イスラムが敵ではない
 事件の首謀者とされるアルカイダの指導者オサマ・ビンラディン氏は、中東のテレビ放送で「神は米国を破壊したイスラム教徒を祝福する」と、同時多発テロを称賛している。今後もテロを続けようとしていることは間違いないと見てよい。
 国連安保理は2年前からビンラディン氏の引き渡しとテロ基地の閉鎖などをタリバーン政権に求めていた。今回のテロを受けてブッシュ米大統領も同様な要求をしたが、タリバーンはビンラディン氏をかくまい続けている。
 こうした状況では、巨大テロの再発を防ぐためにも、ある程度の実力行使は避けられないだろう。ただ、以下のことだけは明確にしておきたい。
 第一に、軍事行動は極力、抑制的でなければならない。アフガンの一般住民が被害を被るような攻撃をしてはならない。「アフガン国民を攻撃している」と言われないためにも、米国が食糧や医薬品を投下するのは一つの方法だろう。
 第二に、軍事行動はできるだけ短期に終わらせ、戦線をイラクなど他の地域に拡大すべきではない。さもないとイスラム諸国の反発を招くことになりかねない。パキスタンの政情も流動化する恐れがある。
 第三に、米政府はビンラディン氏を首謀者とする根拠を改めて安保理で説明すべきだ。友好国の政府レベルでの納得は得られたが、一般市民を含む幅広い支持を固めるにはそれが欠かせない。
 反米感情の強いイスラム諸国を含む協調態勢を確立するためにも、もっとはっきりと根拠を示すことが大切だ。
 空爆開始を受けて小泉純一郎首相は「わが国はテロリズムと戦う今回の行動を強く支持する」と表明した。
 空前のテロの被害当事者でもある日本は傍観者であってはならない。憲法の許す範囲で、テロ撲滅のための国際協調行動に最大限の協力をすべきである。
 しかし、そのことは米国などの軍事行動に「白紙委任状」を与えることとは違う。今週から国会審議が始まる「テロ対策特別措置法案」には、米軍などへの支援のための自衛隊派遣の根拠や、自衛隊員が携行する武器の種類や使用条件の緩和など、綿密な点検を必要とする論点がいくつもある。

 ○説明責任を果たせ
 首相は新法案と憲法との関係について国会で「確かにあいまいさは認める。すっきりした法律的な一貫性、明確性を問われれば、答弁に窮してしまう」と語った。
 正直と言えば正直だが、発言の軽さ、無責任さに驚く。自衛隊法で「自衛隊の最高の指揮監督権を有する」とされる首相がこんないい加減な対応では、派遣される自衛隊員が不安になろう。
 空爆開始で、政府・与党内には法案の早期成立をめざすべきだとの声が一段と高まっている。「情報収集」を目的に、海上自衛隊の艦船を近日中にもインド洋などへ派遣しろ、という主張もある。
 しかし、米英軍の目下の行動に、日本が負う役割はほとんどない。政府は浮足立つことなく、国民への説明責任を十分に果たさなければならない。国会も多角的な視点から法案審議に取り組むべきだ。

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とりあえずブクマ

バッシングを浴びる「ツタヤ図書館」に見る増田宗昭氏の仕事術(前)|データマックス NETIB-NEWS

(前略)
非上場化してビジネスモデルを転換

 カードビジネスは当たったが、本業であるDVDのレンタルは、スマートフォンやタブレット端末を軸にしたネット配信の急速な普及に押されて減収を辿る。そこで、増田氏は2011年7月、MBO(経営者が参加する買収)を実施、非上場化。DVDのレンタル会社から企画会社にビジネスモデルの転換を図る。
 増田氏が言う企画とは、これまで世の中になかったビジネスを生み出すことだ。ポイントカード事業が典型。単なるレンタル店のポイントカードを、他の企業と提携することで大きなビジネスに育てることに成功した。
 Tカードとともに注力しているのが生活提案型の複合商業施設「T-SITE」の開発。東京・代官山を皮切りに神奈川県藤沢市に開業。さらに大阪・枚方市の近鉄百貨店跡にも建設中だ。
 既存の書店のように、品揃えだけで勝負しては、ネット書店には勝てないと考えた。コーヒーを飲みながら本を自由に何時間でも読むことができるなど、ネットとは対極の居心地を追及した。カフェ併設の大型店は当たった。
 その2匹目のドジョウを狙ったのがツタヤ図書館だ。図書館というより、カフェ併設の大型店の1つと考えればわかりやすい。武雄市図書館が今年9月に追加で購入した図書1万冊はすべて中古本だった。図書館は中古本を貸し出し、新刊本は併設する蔦屋書店での購入を促す。それがツタヤ図書館のビジネスモデルである。

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2015/11/18

ポリアモリーの新書が出ていたのか

記事は2週間ほど前のものだし、出版はさらに半年ほども前のことらしいのだけれど。

ポリアモリー:互いに合意の上複数の人を愛する 米国での研究成果、新書に 横浜育ちの深海菊絵さん出版 /神奈川 - 毎日新聞(2015年11月03日 地方版)

 横浜育ちで一橋大学大学院生の深海(ふかみ)菊絵さんが、互いに合意の上で複数の人を愛するあり方「ポリアモリー」についてアメリカでの研究成果をまとめた新書「ポリアモリー 複数の愛を生きる」(平凡社)を出版した。日本ではあまり知られていないテーマだけに、日本語で書かれた文献は少ない。深海さんは「愛もさまざまで、唯一の正しい形はないということを知るきっかけになれば」と話している。

 同書によると、ポリアモリー(polyamory)という言葉は、1990年代初頭にアメリカで作られた造語で、ギリシア語の「poly」(複数)とラテン語の「amor」(愛)に由来する。英語辞典では「同時に複数のパートナーと合意の上で深く関わる親密な関係を築く実践」と定義され、浮気とは異なる。アメリカには2009年の段階で約50万人のポリアモリー実践者(ポリアモリスト)がいるという推計もあり、多くの当事者グループが存在するという。

 深海さんは大学時代に関心を持った「複数愛」を研究しようと、2007年に大学院へ進学。友人の話からポリアモリーに興味を持ち、研究テーマに決めた。フィールドワークのため、08年に3カ月間、11〜12年に10カ月間渡米。60人以上のポリアモリストに会い、インタビューと参与観察を行った。

 夫婦と夫の恋人の3人が仲良くしているというポリアモリーの「現場」を初めて目にした時は、理解しているつもりでも衝撃を受けた。しかし20人ほどの実践者とは友人として時間を共にし、日常の中で彼らが時にけんかをし、互いに思いやる姿を目にしながら考えに触れるうち、深海さん自身の価値観が柔軟に変化していった。「なぜ自分だけを見てほしいと思わないのか」「嫉妬にどう対処しているのか」といった疑問もぶつけ、多くのポリアモリストが嫉妬を抱えながらもパートナーや仲間と悩みを分かち合い、自分自身や相手と誠実に向き合っていることを知った。そうした姿から学ぶことが多く、多くの人に伝えたいと出版を思い立ったという。

 日本にもポリアモリストはいるが、アメリカとは異なり当事者グループの数も少なく、「困難を抱えているかもしれない」と深海さんは話す。本の刊行後、日本のポリアモリー当事者から「相談相手もおらず悩んできたが、生きる勇気をもらった」と感想が届いた。深海さんは「一人で悩む人に届くのはうれしい。当事者でない人も、自分とは違う生き方から得られるものがあると思う」と話している。【藤沢美由紀】

 ◇日本にも集まり

 日本にもポリアモリーの人たちがいる。東京では2カ月に1回、高校生から中高年まで当事者らポリアモリーに関心のある人たちの集まり「ポリーラウンジ」が開かれ、悩みなどを語り合う。

 主宰者で川崎市在住の会社員、上村沙紀子さん(32)は、2012年にポリーラウンジに出会った。初恋から現在まで、複数の人を同時に好きになった時期がほとんど。自己否定し、苦しみ続けたが、他にも同じ境遇の人がいると知って「救われた」と話す。運営メンバーで出版社勤務の文月煉(ふづきれん)さん(32)も、初恋からずっと好きな人は同時に複数いて、現在は妻の理解を得ているという。

 上村さんは「ポリアモリーを広めたり勧めたりするつもりは全くない。ただ、情報も仲間もなく苦しんでいる人が大勢いると思うので、彼らに届くように活動を続けたい」と話した。

「ポリアモリー」という言葉は少し前に知った。考えさせられることが多くて興味深い。

ポリアモリー 複数の愛を生きる (平凡社新書) | 深海 菊絵 | 本-通販 | Amazon.co.jp

ポリアモリー的な人…というと、サルトルとボーヴォワールを思い出したりする。
この前読んだ「サルトル『実存主義とは何か』 2015年11月 (100分 de 名著) | 海老坂 武 | 本 | Amazon.co.jp」によると、ボーヴォワールは嫉妬に悩んだそうで、独占したいという欲はヒトに本源的な性質なのだろうかと思ったものだった。上の記事によれば、ポリアモリーな人(ポリガミー)であっても嫉妬に悩むこともあるそうだから、そこはアンビバレントな感情の間で揺れ動かなければならないということなのだろうか。

ポリアモリーとは、主義主張として主体的につかみ取る生き方なのだろうか。それとも性癖または性質として生まれつき備わっているものなのだろうか。
自分のことをいうと、ポリアモリーに近いのではないかという気がする。一人を好きになって他が目に入らないということが今までなく、気になる人は常に複数だった。また、全くなかったわけではないが、強い嫉妬を感じることもあまりなかった。ただ、こうしたことが先天的な性質の反映なのか、生育歴の中で後天的に獲得した対人関係への姿勢によるものなのか、それとも「かくあるべし」という哲学的・道徳的信念によるものなのかは自分でも判然としない。
また、知人に非常に独占欲の強い人を知っているが、それもその人の生まれ持った気質なのか、その後の経験で培われたものなのか、道徳的・倫理的姿勢の表れなのかよく分からない。たぶん、それらがまぜこぜになっていて、だからたぶん、人の愛し方とか人間関係への姿勢とかいうものは、体質や気質と価値観や倫理観が入り交じって簡単には分離できない……言い換えれば、理非曲直を議論できないわけではないが、しかし事の善悪を判定できる分かりやすい基準を設けることもできないというタイプのものなのだろう。

この本の書評を探したら、上の記事に出た人のブログがヒットした。

書評:深海菊絵『ポリアモリー 複数の愛を生きる』 - 僕が生きていく世界

こちらもまた興味深いし、上記深海氏の著書へのよい視点を与えてくれている。

・本書で扱われているのはポリアモリー主義者であってポリアモリー当事者ではない
・本書が観察・分析したのは先鋭的なアクティビストであり、先鋭的的で行動的な人々に共通の集団特性を、ポリアモリーな集団の特性と混同している部分があるのではないか

これらの指摘は鋭いし、当事者でなければ気づきにくかっただろう。
おとぎ話の嘘つき男爵みたいに、未知の世界を探検してきた人の土産話は、その世界が自分とは異質で謎に包まれているというイメージが強いほど、……好奇心が刺激される存在であるほど……、鵜呑みにされやすいだろう。この指摘はそういうときの転びの杖になってくれる。

で、この人が上の私の疑問へ答えてくれている。

ポリアモリーは「性質」か、「主義」かという議論がある。
……中略……
実際には、「ポリアモリー」については「性質」と「主義」のどちらもがあり、それぞれが別個に存在しているのだ、と僕は思う。
その上で、日本社会の制約の中で、ポリアモリーを意識的に実践したり、実践しなかったり、不倫や浮気になったり、悩んだり傷ついたりという様々な生き方への広がりを思いやっている。

******
モノガミー的な人からすると、ポリアモリーを許容すると、本来そうではない人でも複数の人と関係を持ったり遊んだりするようになり、一人の人と深い信頼関係を作るという倫理が廃れてしまうとか、いくらでも裏切りができ、裏切っても罪の意識も持たないような人をたくさん生み出してしまう、というような警戒が起きるだろう。

そしてもちろん、「伝統的家族観」とやらを称揚する愛国保守なアレな人たちにすれば、それは戦後民主主義と日教組、共産党がもたらした退廃の象徴となるだろう。ただ、そういうヨタ話は措いておいて(もちろん政治闘争的には重要だけれど)、性愛を伴う人間関係を、複数の、しかも長期には揺れ動く関係の中で、どう取り結んでいけるのかという問題、また、人によって少しずつ異なるポリアモリーの程度と方向性をお互いに認め合いながら、お互いがお互いの「自分らしさ」をどう築いていけるのかという問題は、個人の生き方としても、また社会の有り様としても、大きく重要なテーマであると思う。

この点ではLGBTの問題も基本的には同じ問を投げかけていると思うが、「男」や「女」という性へ自分のアイデンティティを帰属させることに何ら疑問を感じないマジョリティにとって、ポリアモリーの問題はLGBTよりも遙かに身近で、自分たちの「常識」を揺るがすものと映るだろう。もしこの概念が日本社会に一定の市民権を得ることがあるとすれば、社会的実践としては「正しいポリアモリーの作法」のようなものを作り、それが受容されていくプロセスが必要になってくるのだろうか。

******
人類学的な見地からは、ヒトは乱婚なのかどうかという論点があって、乱婚的傾向が強いという見地がある一方、それへの否定的見解もある。また、一夫一婦制もまた人類社会には広く見られる制度になっている一方で、もっと緩い婚姻関係や、複数との性的関係を容認する制度もある。

ヒトとはどういう性愛を持つ生物なのかという問には専門的知見を学ぶしかないだろうが、ただ、そのような知見が「私はどのような性愛を生きるべきか」という問や、「社会的に正しい性愛とは何か」という問への答にはならないということは留意しておく必要があるだろう。さもなくば、かつて社会進化論が犯したのと同じ誤りに陥ることになってしまう。

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2015/11/13

東芝と書いたら投資場と変換されて思わずうなった。

日経ビジネスの一連の連載リスト
社員が本誌に決死の告発 東芝 腐食の原点:日経ビジネスオンライン

毎日新聞の東芝報道の連載
東芝問題リポート | 編集部 | 毎日新聞「経済プレミア」

東芝 原子力事業の子会社で巨額減損処理 NHKニュース(11月13日 6時56分)

「東芝」はこれまで業績を開示していなかった原子力事業の子会社「ウェスチングハウス」について原発の事業環境が厳しかったことから2012年度からの2年間で、合わせておよそ1600億円に上る減損処理を行い、子会社単独で赤字に陥っていたことを明らかにしました。
東芝は、アメリカのウェスチングハウスを2006年に6000億円余りを投じて買収し、原子力事業の中心的な子会社としていました。
東芝はこれまでこの会社の業績を開示してきませんでしたが、東京電力・福島第一原子力発電所の事故のあと事業環境が厳しくなり、2012年度と2013年度一部の事業の資産価値を低く見直していたことが分かりました。
その結果、日本円に換算して合わせておよそ1600億円に上る減損処理を行い、子会社単独で赤字に陥っていたことを明らかにしました。ただ、東芝はウェスチングハウスは、将来的には利益が出ると判断しているためグループ全体の決算では減損処理を行っていません。
東芝はこれまで会計ルール上、子会社の業績について開示の義務はないと説明してきましたが、不正な会計処理が発覚したあとの決算の説明会では、主力の原子力事業の詳細についてアナリストなどから説明を求める声が相次いでいました。

スクープ 東芝、米原発赤字も隠蔽:日経ビジネスオンライン(2015年11月12日(木))

原発ビジネスは補助金無しでは儲からない不採算事業という話は以前からある。
ウェスティングハウスにしても、本当は安い会社なのに無駄に高い買い物をしたという話もあった。

日刊ゲンダイ|巨額損失処理の恐れ 東芝を襲う“米ウエスチングハウス爆弾”(2015年7月29日)

 06年に東芝陣営は54億ドル(約6000億円)でWH社を買収。東芝は42億ドル(約4800億円)を負担したが、買収額は相場の3倍ともいわれ、市場は「高い買い物では?」と危惧した。
2014年段階の記事でも原発事業が問題視されている。
原発投資で最大600億円規模 東芝を揺るがす減損リスク|週刊ダイヤモンドSCOOP|ダイヤモンド・オンライン(2014年4月23日)

東芝が抱える「アキレスけん」ウェスチングハウス | 東芝問題リポート | 編集部 | 毎日新聞「経済プレミア」(2015年7月28日)
東芝不正の背景にあった原子力事業買収の重荷 | 東芝問題リポート | 編集部 | 毎日新聞「経済プレミア」(2015年7月29日)

 話は2006年にさかのぼる。東芝は当時社長だった西田厚聡(あつとし)前相談役の「選択と集中」の号令のもと、半導体と原子力を事業の2本柱に位置づけた。米原子力大手ウェスチングハウスの買収は、原子力事業に投資を集中させる目玉中の目玉だった。

 長い交渉の末、同年10月に買収手続きが完了する。東芝のウェスチングハウスへの出資比率は77%で、買収額は約4900億円だった。

 その後、07年にカザフスタン国営原子力事業会社に10%分を約630億円で売り、逆に11年9月には米企業から20%分を約1250億円で買い増すことになった。この結果、現在は87%の株式を保有している。

ウェスチングハウス買収に当初から「高値づかみ」の見方

 だが、この買収は、当時から「高値づかみ」の見方が強かった。米ゼネラル・エレクトリック(GE)と日立製作所の連合や、三菱重工と競合し、当初言われていた金額の2倍ほどに買収額が膨らんだからだ。

 東芝は買収時、世界の原子力需要は20年までに、原子力発電所で約130基相当分拡大するとの見込みを明らかにした。当時の東芝の原子力事業の規模は約2000億円。ウェスチングハウスを傘下に収めたことで、15年に約7000億円、20年には約9000億円に拡大するとの予想も示した。

福島原発事故で、原発事業をめぐる状況が一変

 ところが、11年の福島第1原発の事故で状況が一変する。内外で原発事業計画の見直し機運が高まり、想定していたほどの新規受注が難しくなった。

 東芝は、ウェスチングハウスの「のれん」を4000億円前後、資産として計上している。これは、買収時の収益想定のもとで、東芝と監査法人が協議して決めたものだ。

 「のれん」とは何か。企業を買収する場合、相手のその時点の価値より高い買収額になることが多い。買収元の企業は、買収した相手の価値を資産として計上するが、その時点の価値だけを資産計上すると、買収額との差額が中ぶらりんになる。

 この差額を資産として認めないと、企業が価格を上積みして買収をした時に、損失を計上しなければならなくなる。そうなれば企業買収をしにくくなる。このため、この中ぶらりんの差額を「のれん」と名付けて、資産計上を認めているのだ。

 だが、それは買収によって収益が間違いなく拡大するという説明が成り立つ場合に限られる。収益拡大が見込めなくなれば、「のれん」は架空のものとなり、計上した資産額を減らさなければならない。これを「減損」と言う。減損によって、「高値づかみ」が現実になってしまうわけだ。

4000億円前後の「のれん」に減損の懸念

 東芝がウェスチングハウス買収で資産計上した4000億円前後の「のれん」について、原発事故後の状況変化で、「過大評価であり、減損が必要ではないか」という懸念があるのだ。

 今回の不正会計を受け、東芝は新日本監査法人とともに、15年3月期決算と有価証券報告書の作成を協議している。21日の会見で東芝の財務部担当専務は、「買収当時に比べウェスチングハウスの営業利益は大幅に拡大している」などと述べた。東芝はウェスチングハウスの「のれん」について、減損の必要はないと考えていることを示唆している。


誤算が続く東芝の原子力事業は立ち直れるか | 原発と被災地 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト(2014年05月09日)
決算の不正が発覚する前の記事。過去最高益に迫る大幅な増益(前期比47%増)を祝いつつも、アメリカでの原発事業が全くの不振だという状態を伝えている。

前期比47%もの増益は、驚異的な伸びといえるだろう。しかも事前の会社側予想数字2900億円とピタリと一致しており、何ら問題がないようにもみえる。

しかし、本当はそうではない。フラッシュメモリが想定以上に稼いだにも関わらず、その他の事業が軒並み足を引っ張った。特に痛かったのが、電力・社会インフラ部門のうち主力事業の1つである原子力事業。同事業だけで約600億円の一時的な評価損失を計上したのだ。

中でも、米テキサス州マタゴルダ郡でABWR型原子力発電所を2基新設する案件「サウス・テキサス・プロジェクト」が大きな誤算だった。同プロジェクトの事業性が不安視されていることから、現地の開発会社であるNINA社の資産価値を保守的に見直さざるをえなかったのだ。この1件だけで310億円の営業益押し下げ要因となっており、「NINA社の件がなければ過去最高益だった」と東芝の久保誠副社長は悔しがる。

今回の営業利益実績2908億円に310億円を単純に足し込むと3218億円となる。確かに、1990年3月期に記録した3159億円の過去最高益を24期振りに更新するはずだった。
……中略……
事業性を疑われるサウス・テキサス・プロジェクトでは、いったい何が起きているのだろうか。

同プロジェクトは日本企業が海外で初めて取り組む原発新設案件。東芝は2008年に同プロジェクトの主契約者となり、翌年にはプラントの建設を含めたプロジェクト全体を一括受注することに成功。これを足がかりとして、海外新設案件を強化することを目指していた。

だが、2011年3月11日の東日本大震災により東京電力福島第一原子力発電所の原子炉がメルトダウンを起こしたことで、状況は急変。東芝によると、米原子力規制委員会(NRC)は2012年半ばに建設許可を出す見込みと説明していたというが、現在も許可を出していない。久保副社長は、「2016年1月にも許可が出る見込み。許可が下りれば、(今回計上した損失310億円のうち)大半は利益として戻ってくる」と話す。もちろん、そうなる可能性もあるが、NRCの許可がさらに延期される可能性も否定できない。原発建設に出資する肝心の投資家も決まっていない。

9千億円の“巨額損失”が新たに発生? 東芝を食い潰した日米の原発利権 〈週刊朝日〉|dot.ドット 朝日新聞出版 (更新 2015/7/22 07:00)

前略
……ただ、東芝は買収によって、原発ビジネスが約2千億円から15年には約7千億円、20年には約9千億円に拡大すると計画していた。

「06年に経産省が『原子力立国計画』を発表し、既存原発の60年間運転、30年以降も原発依存度30~40%を維持、核燃料サイクルの推進、原発輸出を官民一体で行うとぶち上げました。東芝はその先陣を切ってコケた。計画を当時まとめたのが現在、安倍首相の秘書官として出向している経産官僚らです」(元政府高官)

 しかし、原発事業は東日本大震災による福島原発事故を契機に落ち込んだ。世界の原発マーケットも冷え込み、大きく歯車が狂い、結果的に6千億円という過大投資が経営の足を引っ張る原因になったと見ていい。

東芝の稼ぎ頭だった原発事業だが、欧米を中心に原発ビジネスのマーケットは縮小傾向だ。環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏は言う。

「アメリカでは建設のキャンセルが続いているし、チェコやハンガリーでは建設しようとしても、なかなか形にならない。その影響でフランスの原子炉メーカー・アレバは約6千億円の巨額負債を抱え、事実上倒産しました。フィンランドのオルキルオト原発などは原発ビジネスがうまくいかない代表的なケースで『原発経済界のチェルノブイリ』と呼ばれています」

 オルキルオト原発3号機は、アレバとドイツのシーメンスの合弁で09年の試運転を目指していた。しかし、当初の予算額をオーバーするなどして、シーメンスが撤退。いまだに営業運転のメドが立たない。

「コストアップの要因は、安全設備の複雑化にあります。原発では、小さなものを含めれば山のように事故が起きています。よって、規制が厳しくなり、それに対応するためのコストが増していくのです」(飯田氏)

 原発輸出に展望は見いだせない状況なのだ。細野氏は言う。

「第三者委員会が言っている1500億円だとかいう金額は枝葉末節のこと。本丸はウェスチングハウスの減損です。原発事業が落ち込むなか、ウェスチングハウスののれん代などの4千億円は減損しなければならないでしょう」

 減損すれば大赤字だ。そうなると、11年3月期に計上されていた5千億円の繰り延べ税金資産も取り崩す必要性が出てくる。

 繰り延べ税金資産は将来的に黒字になることを前提に資産に計上できる。赤字が続くと計上が認められなくなり、資産が一気に減る。

「4千億円+最大5千億円で、合計9千億円のマイナスで新たな巨額損失となります」(細野氏)

 ウェスチングハウスを減損すると繰り延べ税金資産が大幅に減り、債務超過となる危険性もある。原発事業の損失を他部門で埋めようとした焦りが、今回の利益水増しの動機になったとみられるのだ。

(本誌・永野原梨香/桐島 瞬)

この記事によらず、原発ビジネスの「誤算」は東日本大震災にあったという。だが、おそらくその見立ては間違っていて、それ以前から原発は電力業界にとって採算性の悪い発電方式になっていた。上で規制強化とコストアップが指摘されているのはその一例だ。化石燃料と代替エネルギーの発電コストが下がっていること、送電システムの改善と弾力的な電力需給の調整が徐々に可能になりつつあることなどがおそらくは長期的な要因だろう。

で、政府与党は原発輸出で市場拡大を目指すも欧米では市場がないので途上国に売り込みをかけている。特に安倍首相が熱心なようだ。

***********
さらに、原発では、もんじゅの運営について見直しが迫られている。……やっと、というか、なぜ今頃?というか、所詮は看板の掛け替えでお茶を濁すだけだろうというか、そういう気がするけれども。

もんじゅが多額の税金の垂れ流しであり、無数の不祥事を繰り返しつつも改善がないということは一種の伝統となっていて、今更わざわざ問題視しなければならないようなものではない。もんじゅがデタラメなのは日本の原発問題にとっては「日常風景」になってしまっているのだ。それをなぜわざわざ今頃に?という疑問が非常に沸いてくる。

もんじゅ:「運営主体の交代」勧告へ 廃炉も視野に - 毎日新聞(2015年11月04日 12時01分(最終更新 11月04日 12時28分))

 ◇規制委 日本原子力研究開発機構 安全管理上のミス相次ぎ

 原子力規制委員会は4日の定例会合で、安全管理上のミスが相次いでいる高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)について、現在運営主体となっている日本原子力研究開発機構の交代を求める勧告を、監督する馳浩文部科学相に提出することを決めた。規制委は、今後半年以内に原子力機構に代わる新たな実施主体を示すよう求めているが、それができない場合は廃炉も視野にもんじゅのあり方を抜本的に見直すことを求めている。

 規制委の田中俊一委員長は「もんじゅは同じようなミスを20年間繰り返してきた。今後も原子力機構に運転を任せるのは不適当だ」と、原子力機構の「退場」を明言。他の委員も「適切な組織を考える必要がある」などと述べ、文科省に対して来週にも勧告することで一致した。

 規制委は法律に基づき、原子力施設の安全対策で不備が改善されない場合には、他省庁に対して勧告できる。こうした勧告権の行使は2012年9月の規制委発足後初めてで、文科省は原子力機構に代わる新組織の検討を迫られた格好だ。

 もんじゅでは12年11月に、機器全体の2割に当たる約1万件で点検漏れが発覚。規制委は13年5月、原子炉等規制法に基づく運転禁止命令を出し、原子力機構に管理体制の再構築を求めた。

 しかしその後も、新たな点検漏れや機器の安全重要度分類のミスなどの不備が次々と発覚。原子力機構ではこの間、2人の理事長が交代し、昨年10月には組織体制を見直したが、改善されなかった。

 文科省の高谷浩樹研究開発戦略官は4日、もんじゅの勧告が出される見通しとなったことについて「重く受け止めている。民間や海外との連携も含めてすべて白紙で検討する」と述べた。【酒造唯、斎藤広子】

 ◇もんじゅ

 日本原子力研究開発機構(JAEA)が運営する高速増殖炉の原型炉の名称。知恵を象徴する文殊菩薩(もんじゅぼさつ)にあやかって命名された。使った以上の燃料を生み出すため「夢の原子炉」とも言われた。水を使う一般の商用原発と異なり、核分裂で発生した熱を液体ナトリウムで取り出す。ナトリウムは空気や水に触れると爆発することがあり、高度な技術が求められる。1994年に初臨界に達したが、翌95年にナトリウム漏れ事故(国際事故評価尺度レベル1)を起こし、稼働実績はほとんどない。


赤旗 政府、予算の使途を公開討論/「もんじゅ」是非 棚上げ(2015年11月12日(木))

 政府は11日、中央省庁の事業が効率・効果的に行われているかを公開の場で議論する「行政事業レビュー」を3日間の日程でスタートさせました。対象は原発や地方創生、正社員化、教育、東京五輪など10テーマ55事業。行改推進本部と有識者が、各府省の担当者にただしました。

原発

 高速増殖炉「もんじゅ」を開発している日本原子力開発研究機構への交付金が、使用済み核燃料運搬船「開栄丸」や、核燃料リサイクル機器試験施設などに使われていることについて「運用実績が極めて少なく、もんじゅも動いていないのに必要性があるのか」との意見が相次ぎました。

 しかし、原子力規制委員会でさえ、同機構が運営主体として不適格と勧告することを決めたにもかかわらず、「もんじゅ」の是非は棚上げにした議論にとどまりました。
……後略

ところが、今回、妙にこれが政治問題化していて、メディアも大きく取り上げている。

官房長官、もんじゅ運営見直し「不退転の決意で取り組むべき」  :日本経済新聞(2015/11/12 12:04)

菅義偉官房長官は12日午前の記者会見で、11日に始まった国の予算の無駄を外部有識者らが点検する「行政事業レビュー」で関連交付金が取り上げられた高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、運営体制の見直しに向け「不退転の決意で取り組むべきだ」と話した。

 「もんじゅ」を巡っては原子力規制委員会が機器の安全管理の不備が相次いでいるとして、運営体制の見直しを所管する馳浩文部科学相に勧告することを4日に決めている。菅官房長官は「国民の信頼を得る最後の機会だ」と強調。「文科省が前面に立ち、可能な限り速やかに課題の解決を図ることが極めて重要」との認識を示した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

ただし、これが核燃料サイクルの断念につながることは絶対にないだろう。いかに規制委員会や事業レビューで批判があろうとも、これらが「国策の是非」を問うものではないことは以下の記事にも出ている。ここでは、公開レビューの批判がもんじゅ以外にも拡大していることが示されているが、それ自体は「国策」停止を突きつける力を持たないと報じられている。

行政事業レビュー:核燃批判続々…4回運搬の船100億円 - 毎日新聞(2015年11月11日 21時48分(最終更新 11月12日 09時36分))

 政府の行政改革推進本部は11日、国の事業の無駄を点検する「行政事業レビュー」の公開検証を行った。高速増殖原型炉「もんじゅ」を運営する日本原子力研究開発機構については、ほとんど使われていない核燃料運搬船の維持費などに年間12億円かかっていることに「打ち切り、見直しも含めた将来的な選択肢」を示すよう注文が付くなど、批判が相次いだ。

 核燃料サイクル事業関連の経費の公開検証では、原子力機構の入札や契約資料に非公表部分が多く、河野太郎行革担当相は「国民に説明できないものにお金は使えない」と批判した。

 原子力機構が2006年度に建造した使用済み核燃料運搬船「開栄丸(かいえいまる)」は、03年に運転を終えて解体中の新型転換炉「ふげん」(福井県)の使用済み核燃料などを輸送するために造られ、開発費や維持費に延べ100億円がつぎ込まれたが、実際の輸送は4回のみ。09年11月以降は一度も使われていない。有識者から「なぜ必要なのか分からない」との意見が相次いだ。

 Jパワー(電源開発)が申請中の青森県大間町の大間原発に対する経済産業省の補助事業も批判が相次いだ。同原発は全炉心にウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)燃料を使う世界初のフルMOX商業炉。同省は1996年度以降、技術開発費補助金として290億円を同社に交付したが、この3年間の予算執行率は0〜4%。有識者は「執行率が極めて低く、抜本的に見直すべきだ」と指摘し、Jパワーに収益から交付額の相当分を国庫返納させるよう求めた。

 ただ、公開検証は国策の是非を問わない方針。政府がエネルギー基本計画に掲げる核燃料サイクル事業の必要性は議論の対象外で、もんじゅについても存廃は議論されなかった。

 この日は文部科学省が所管する全国学力・学習状況調査の実施費用(50億円)なども議論された。現在は小学6年と中学3年の全員が対象だが、「サンプル調査も検討すべきだ」「調査結果を積極的に公開する必要がある」と指摘された。

 行政事業レビューは、事業の廃止・存続を判定する「事業仕分け」とは異なり、各省庁が自らの事業の無駄をチェックして結果を公表する仕組み。今回は河野氏の意向で計55事業中、原発関連で19事業を公開検証の対象に選んだが、強制力はない。河野氏は来年度予算の編成に向け、各閣僚と折衝する意向を示している。【斎藤広子、青木純】

実際、核燃料サイクルを止めると「トイレなきマンション」である原発の「トイレ」問題が顕在化するし、六カ所の施設の帰趨問題にも火が付いてしまう。核燃料サイクルを政府は断念できない以上、もんじゅを維持するか、さもなくば新設するしかないわけで、その管理組織を多少いじっても、大本を変えることはできない。結局は看板の掛け替えあたりで済ませるほかはないだろう。

東芝も含めてこれらは全部原発依存を継続しようとするところに元凶がある。
他方、太陽光発電は、ちょっと補助金を積み上げたら補助金目当てにあっという間にパネルが林立して発電量が激増した。原発整備より遙かに早いレスポンスであり、明らかにビジネスの論理が異なる。おそらく今は過渡期で、電力事業のビジネスモデルが大きく切り替わりつつある時期なのだ。それに上手く対応し、放射性廃棄物という人類史上例を見ない厄介者をこれ以上増やさないようにしなければならない。

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2015/11/12

なんだこりゃ?釣り(フェイク)ですかね……

ブラック企業増加の理由は意外なところにあった!? - Togetterまとめ

何というか、kadyu@kadyu818氏の発言は中小企業経営者にありがちな認識……というか、よく聞く愚痴であり、あちこち誤解っぽいものも入っているが、まあ仕方ない。

ちょっと気になるのは「クッキー(修飾工房)@march1224voyage」氏のツイートのほうで、なんだか、説明コントのボケ役っぽい発言が続いている。いかにも「ものを知らず、今初めて真実を知ってびっくり!」みたいな。それに妙に政治的な(しかも浅薄で古い反共っぽい)話を持ち込んでくるし、なんだか微妙に気持ち悪い。

この一連のやりとりは、クッキー(修飾工房)@march1224voyage氏が以下のアンケートを採ったことから始まったようだ。

労働者の非正規雇用化!恐ろしい!経済界の陰謀に違いない!経済界は労働者を正規と非正規で分断!非正規雇用を安く雇うことで剰余価値をより搾取しようとしているのだ。このままでは日本国の労働者は貧困化し崩壊してしまう

45% ただの誇大妄想ですね。事実ではない!
55% 確かに雇用の非正規化は経済界の陰謀だ!
20票•最終結果

……いや、なんだこりゃ?ってなるでしょ、普通……。

で、このクッキー(修飾工房)@march1224voyage氏のほかのツイートを見ると、まあ見事にアレな人なわけで、そもそも「アンケートを作る時に左よりの本を読んだ」というのだが、一体どんな本をどういうふうに読んだのか。
そういえば、昔、統一協会が出した学習教材を読んだことがあるが、あれでもマル経をこんな感じに紹介していた。あれと似たようなものかねえ。

まあそれはともかくとして、気になったのは、この「まとめ」を作った人はkeroronsergeantというID。このtogetterを作るために作ったのかな?

kerorosunさんはTwitterを使っています: "Twitterはじめました。#はじめてのツイート"

これが 2:43 - 2015年11月12日 につぶやかれている。

11月12日20時の時点で「17時間前」という表示が出ているので、およそ午前3時頃にこのまとめが作られている。つまり、ツイッターアカウントを取って、すぐにこのまとめを作ったらしい。
そしてその後は何も活動していないみたい。

どういうことなんだろうか。

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上記のkadyu@kadyu818氏の一連のツイートのエッセンスは簡単に言えば、
「好きでブラック企業をやってるんじゃないわ!」
「中小企業の社長だって、従業員のために必死なんだよ!」
ということであり、それは「男はつらいよ」のタコ社長のぼやきと同じである。

ただまあ、山田洋次がすごいのは、それが結局、中小企業の経営者の立場からという一面的な意見であり、相対的な限界があることを示しつつ、だがその立場に縛られているからこその真実性があるということを、きちんと描いていることだ。

だから、kadyu@kadyu818氏の見解にはあまり文句をつける筋合いはない……というか、クッキー(修飾工房)@march1224voyage氏の方が、むしろ危ういのだけれど、ここでは、低価格だから劣悪な労働条件もやむを得ないという議論が持つ問題を提起しておきたい。

低価格が低賃金と関係しているという議論自体には、別に経済学的には「あり得る」ことであって(必然だとは言っていないことに注意)、それ自体は別にどうこう言うことではない。
ただ、「ブラックなのは商品価格が低いからだ」という言い方は結局は責任回避なのである。だから愚痴であれば容認できるが、それを根拠にして労働条件の劣悪さを正当化することは経営者の責任を無にすることはできない。
この論法の問題は、企業や経営者が、経営環境への合理的反応を行う存在(最適化機械)にすぎず、それ故に常に経済法則的にも道義的にも正しい、状況への消極的な関与者として責任を負えない存在だとみなしているところにある。
この考え方が、企業・経営者の主体性や能動性を否定して、その上に、企業・経営者の管理領域であるはずの組織ガバナンスの責任すら認めないという問題を持つことは言うまでもない。だが、仮にその考え方を敷衍しても、経営者や企業が環境への合理的反応機械であるならば、他の経済主体も同様に合理的な反応機械なのである。そうであれば、誰にも現状への責任はないことになり、「全ては世の中の仕組みが悪い」ということになって、「では仕組みを変えよう」ということになるはずだが、しかし、「ブラック企業化」を防ぐための経済制度とは何かという話には行かないわけである。……まあ、「全部デフレが悪いんや」と言う人はあちこちにいるみたいではあるが。

都合が悪い場面では、企業は環境適応を余儀なくされる反応機械にすぎないと免責し、そうでない場面では、イノベーションを導き社会変革のリーダーとなる野心的で能動的な主体だと称揚される。この種のご都合主義は、結局、企業や経営者を常に善的存在と見なそうとする意識を反映しており、そこに認識の偏りが現れているわけである。

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時事通信社もだんだん国防色が強くなりますね。

時事ドットコム:「民主解党」岡田氏に要請へ=前原、細野、江田氏が一致(2015/11/11-22:57)

 民主党の前原誠司元外相と細野豪志政調会長、維新の党の江田憲司前代表が11日夜、東京都内のホテルで会談し、野党再編に向けて民主党が「解党」を決断すべきだとの認識で一致した。自民党に対抗し得る野党勢力の結集を一気に進めるのが狙い。前原氏らは近く民主党の岡田克也代表に申し入れる見通しだ。

 民主、維新両党は合流を視野に政策協議を進めているが、維新分裂の影響もあって停滞気味だ。維新の松野頼久代表は、民主、維新の双方が解党した上で合流すべきだと主張。これに対し、岡田氏ら民主党主流派は党の再建を優先し、解党に慎重な立場を崩していない。
 民主党内でも若手を中心に解党論が出ているが、前原氏ら保守派が表立って解党を求めれば、党内の路線対立が深刻化し、岡田氏の求心力低下につながる可能性もある。

このニュースを見て、「ああ、これで改憲は決定的になったな」と思ったわけですが、民主党がいずれ分裂することは数年前から予想されていたことでもあり、それが強い安倍政権下というひどいタイミングで起きるのだなあという感慨であるわけです。数年以内の改憲の発議はもはや避けられないでしょう。それが、一見「柔らかい」改憲であろうとも、軟性憲法化は自民・日本会議的には絶対譲れない線でしょうし、一旦タガが外れれば以降の本丸落城はさほど遠くなくなるでしょう。

まあ、それはともかく、この記事の表示にくっついていた時事通信社の「おすすめニュース」見出しは以下の通り。

・現代の日本人「責任なし」=前原氏に全人代副委員長−中国
・「日本謝れ」だけでは駄目=武藤正敏前駐韓大使に聞く【戦後70年】
・韓国紙記者、出廷せず=産経前支局長の公判
・「反省なき民主」と批判=石破氏
・韓国、国連総長担えず=萩生田氏
・自衛隊機の緊急発進「停止を」=中国

見事なまでの、中国・韓国批判ばかり。
まあ時事らしいとも言えますが、産経などと見分けが付かなくなりつつあります。

時流におもねっているばかりではなく、もはや排外主義を積極的に煽る役割を担いつつありますね。
まあ、ほかの「保守系」メディアはどこも似たり寄ったりなので今更ではありますが。
ルワンダの悲劇を生んだ扇動的ラジオと同じことをしているわけです。

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2015/11/11

いろいろメモ

湯浅誠の朝日新聞紙面批評における「1億総活躍社会=ソーシャル・インクルージョン」論は最低だ。湯浅はもはや「強く批判されるべき対象」になった。湯浅は来年の参院選に自民党公認で立候補するのではないか - kojitakenの日記

安倍政権下の「1億総活躍社会」が戦前戦中の「1億一心」スローガンを想起させるという批判があり、さらに、菊池桃子氏がそれについて「ソーシャルインクルージョン」という観点を再確認して、社会的包摂、そして「新しい公共」について再注目されてきたという流れかな、と。

社会的包摂と新しい公共が、公的部門が社会保障、社会福祉から撤退し、民間活力や共同体主義に福祉をゆだねるという発想だという指摘は、これらが唱えられた頃からあった。
で、「1億総活躍社会」では、その側面がさらに強化されるのだろう、という話。
「小さな政府」と国家目標に資する「自治」という全体主義的構造へ「包摂」概念が絡め取られてしまうという。

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「小さな政府」という誤解 / 松尾匡:連載『リスク・責任・決定、そして自由!』 | SYNODOS -シノドス-

新自由主義が流布された経済的基礎条件について、という体の話かな。

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次は、沖縄の基地負担が軽減しないのは、日本政府が意図したことであり、日本政府が表明している見解(基地負担軽減)は、ほとんどウソ同然だ、という話。

アメリカが、「別に沖縄でなくてもいいし、基地を日本の外へ移動しても良い」と考えているらしいことは、以前からあちこちで報じられていた。沖縄は米軍の戦略上、必須の場所ではないという指摘も以前からある。

また、日本政府が米軍の駐留を引き留めているらしいことも昔から時々報じられていた。

岸信介の頃から、アメリカ、あるいは米軍に密着し、その体制に日本を組み込むことに熱心な人たちが政財界にいるらしいことはあちこちで指摘されていた。
沖縄の問題も、米軍の駐留が重要な利益になる人たちが東京にいるということなのだろうというふうに感じる。

普天間移設先「沖縄と言っていない」 モンデール元駐日大使、日本が決定と強調 - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース(2015年11月9日 05:05)

 【ワシントン=問山栄恵本紙特派員】1995年の米海兵隊員による少女乱暴事件当時に駐日米大使を務め、翌96年に当時の橋本龍太郎首相とともに普天間飛行場返還の日米合意を発表したウォルター・モンデール氏(元副大統領)が事件から20年の節目を迎えたことを機に、琉球新報のインタビューに7日までに応じた。モンデール氏は米軍普天間飛行場の移設先について「われわれは沖縄とは言っていない」と述べた上で「基地をどこに配置するのかを決めるのは日本政府でなければならない」との考えを示し、移設先は日本側による決定であることを強調した。名護市辺野古移設計画については「日本政府が別の場所に配置すると決めれば、私たちの政府はそれを受け入れるだろう」と述べ、米政府が計画見直しに柔軟な姿勢を取る可能性にも言及した。

 また、少女乱暴事件に対する県民の大きな反発を受け、在沖米軍や日米安全保障条約の存続問題へと議論が発展したことを説明し、しかし日本側が沖縄からの米軍撤退を望まなかったこともあらためて明らかにした。
 モンデール氏は少女乱暴事件について「身の毛のよだつような残酷なことで、少女に申し訳ない気持ちになった」と述べ「大衆の怒りが爆発した。デモの人たちが私のオフィス(駐日大使館)の外にもいたことを覚えている。私はとても取り乱した。本当に緊迫していた」と振り返った。その上で、「少女に起きたひどい出来事というだけでなく、日本との同盟条約を維持するかどうか、沖縄の人たちが米軍を周囲に置きたいかどうかの議論に変わっていった」と述べ、米政府が当時、在沖米軍の撤退を懸念していたことを明らかにした。
 一方、米国務省系研究機関による退任後のインタビューで、当時日本側が「われわれが沖縄を追い出されることを望んでいなかった」と証言したことについては「日本政府や外務省で関わった人たちのことを引用したのは確かだ」と述べ、日本側が普天間飛行場をはじめとする沖縄の米軍基地駐留の継続を求めていたとの認識を示した。
 県内移設の条件が付いた普天間飛行場の返還合意については「完全だったとは思わない」と振り返り、合意から19年たっても返還が実現していない現状に「こんなにも長い時間がかかるとは想像もしていなかった。当惑している」と述べた。
 沖縄県が求める日米地位協定の抜本改定については「協定は米軍駐留の基礎だ。私たちがしたように、少しのルール変更は可能だ」と述べ、否定的な見解を示した。

モンデール氏はこれと同様の話を1995年にしていたという1年前の報道が以下。

はてなブックマーク - 海兵隊の沖縄駐留「日本が要望」 元駐日米大使の口述記録 | 沖縄タイムス+プラス(2014/09/14)

米軍の沖縄駐留は、日本政府の要請に応えたものだというアメリカ政府の公文書

米、在沖海兵隊撤退を検討 復帰直後 日本が残留望む - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース(2015年11月6日 05:05)

 米国家安全保障会議(NSC)が1973~76年に、72年の沖縄復帰を契機とした政治的圧力で在沖米海兵隊を撤退する事態を想定し、海兵遠征軍をテニアンに移転する案を検討していたことが、機密指定を解除された米公文書などで分かった。遠征軍は米本国以外で唯一沖縄に拠点を置く海兵隊の最大編成単位。米海兵隊は普天間飛行場などを運用しているが、当時米側はその「本体」である海兵遠征軍ごと沖縄から撤退し、テニアンに移転することを想定していた。文書はテニアンに滑走路や港湾などを備えた複合基地を整備する必要性に触れ、同基地は「返還に向けて沖縄の戦略部隊や活動を移転できる」とした上で、対応可能な部隊として「最大で遠征軍規模の海兵隊」と挙げている。日米両政府が沖縄を海兵隊の駐留拠点にする理由として説明する「地理的優位性」の根拠が一層乏しくなった形だ。
米軍統合参謀本部史によると、73年に在韓米陸軍と在沖米海兵隊を撤退させる案が米政府で検討され、国務省が支持していた。同文書もテニアンの基地建設に言及しているが、計画は74年に大幅縮小された。理由の一つに「日本政府が沖縄の兵力を維持することを望んだ」と記し、日本側が海兵隊を引き留めたこともあらためて明らかになった。
 文書は野添文彬・沖国大講師が米ミシガン州のフォード大統領図書館で入手した。野添氏は統合参謀本部史でも詳細を確認した。
 フォード図書館所蔵の文書はNSCが73~76年に作成した「ミクロネシア研究」つづりに含まれている。海外の基地は「受け入れ国からの政治的圧力に対して脆弱(ぜいじゃく)だ」と分析し、米領内での基地運用を増やす利点に触れている。
 一方、米軍統合参謀本部史(73~76年)は、ニクソン政権が73年2月の通達に基づき太平洋の兵力を再検討、在沖海兵隊と在韓米陸軍の撤退を含む4案を議論したと記している。国務省は77~78年度にかけ最大の削減案を支持、軍部は最少の削減を主張した。73年8月、大統領は「現状維持」を選んだ。統合参謀本部史は「沖縄返還で当初予想された部隊移転を強いられることにはならなかった」と振り返っている。(島袋良太)
なお、記事写真には、公文書の文面が掲載されている。その箇所を文字おこししておく。
1973~76年に米政府がテニアンに米軍基地を整備することを検討していた計画案の文書

(d) The base development plan for Tenian includes reactivation and improvement of an airfield on the middle part of the island; restoration of the harbor; development of a port facility and a logistics complex; and establishment of a Joint Service maneuver and training area.(以上、記事写真では緑色のマーカーで下線が引かれている) When fully developed, this military complex would be capable of supporting Air Force strategic, tactical and theater airlift squadrons; an Army depot supply and maintenance unit, a NIKE artillery defense battery, and a Special Forces unit; a Navy ASW patrol squadron; and (以下、緑色のマーカーで下線が引かれている)USMC ground forces up to MAF size.

沖縄の復帰時に沖縄からの米軍移転が検討されていたことを記す米軍統合参謀本部史

Okinawa's reversion to Japan had not compelled the relocations that they originally anticipated. Apparently, for the next few years, Tokyo was willing to accept current US force levels on Okinawa.(以上、記事写真では緑色のマーカーで下線が引かれている) Second, no significant base denials had occurred in the western Pacific. Third, the military budget had grown tighter. In February 1975 Deputy Secretary Clements approved their recommendations about Tinian.

琉球新報の怒りは非常にもっともだ。

<社説>モンデール氏証言 米は辺野古見直し唱えよ - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース(2015年11月11日 06:02)

 米海兵隊の撤退や大幅削減の芽を、日本政府が摘んできたことがあらためて浮かび上がった。
 1993~96年に駐日米大使を務めたウォルター・モンデール氏が本紙インタビューに応じた。96年4月に橋本龍太郎首相との共同記者会見で普天間飛行場の返還合意を表明した人物だが、インタビューで移設先の選定を振り返り「われわれは沖縄だとは言っていない」と語った。
 同氏は「沖縄も候補の一つ」と述べた上で「基地をどこに配置するかを決めるのは日本政府でなければならない」と付け加えた。
 返還合意の際に付した県内移設の条件は日本側の要望に沿ったものであることを示唆した証言だ。同氏が2004年に米国務省外郭団体のインタビューで語った内容と照合すると、さらにはっきりする。
 95年の米兵による少女乱暴事件に関し、こう述懐している。「(事件から)数日のうちに米軍は沖縄から撤退すべきか、最低でも駐留を大幅に減らすかといった議論に発展した」が、「彼ら(日本側)はわれわれが沖縄を追い出されることを望んでいなかった」
 日本政府の意向で県外・国外移設の大きな機会を逸したといっても過言ではない。沖縄の犠牲を黙認するどころか、負担が劇的に軽減する機運を水面下でかき消していたとなれば、国民への背信にほかならない。犯罪的でさえある。
 海兵隊は米統治下にあった50~60年代、本土での反対運動を背景に沖縄に移転してきた。復帰直後の70年代前半には、米政府内で在沖海兵隊の撤退や大幅削減が検討されながら日本政府がこれに反対したことも分かっている。
 軍事的必然性ではなく、政治的理由から沖縄に負担が強いられていく構図は、辺野古の新基地建設問題につながる。モンデール氏は「日本政府が別の場所に決めれば米政府は受け入れるだろう」との見解を示した。安倍政権が移設作業を強行する非民主的な姿勢を改めることがまずは必要だ。
 ただ米国も当事者であることを忘れてはならない。合意から19年も返還が実現していないのは、移設計画の混迷を見ながら「日本の国内問題」として距離を置いてきた米側の責任も大きい。民意に反した基地建設やそれに基づく安全保障の在り方に対し、日本に再考を促すことこそが世界のリーダーを自任する超大国の最低限の義務であるはずだ。

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次は、安倍首相が報道の自由を国会で否定した、という話。
政府、政治家が、メディアに圧力をかけるのは当然だとのこと。

まあ、たいしたニュースにすらならなくなったという情勢が一番恐ろしい。

首相「事実まげない報道か確認 国会議員が議論は当然」 NHKニュース(11月10日 20時18分)

安倍総理大臣は、衆議院予算委員会の閉会中審査で、NHKの報道番組「クローズアップ現代追跡”出家詐欺”」など2つの番組を巡り、自民党の情報通信戦略調査会がNHKの経営幹部から事情聴取したことについて、「放送法第4条が求める事実をまげない報道だったかを確認したもので、議論するのは至極当然のことだ」と述べました。
衆議院予算委員会の閉会中審査で、維新の党の今井幹事長は、NHKの報道番組「クローズアップ現代追跡”出家詐欺”」など2つの番組を審議していたBPO=放送倫理・番組向上機構の委員会が、総務大臣がNHKに対し放送法を根拠に厳重注意をしたことは「極めて遺憾である」などと指摘したことや、自民党の情報通信戦略調査会がNHKの経営幹部から事情聴取したことを「政権党による圧力そのもの」などと指摘したことについて、「政権与党として、真摯(しんし)に受け止めるべきではないか」とただしました。
これに対して安倍総理大臣は、「法規に違反しているのだから、法的に責任を持つ総務省が対応するのは当然のことだ」と述べました。
また、安倍総理大臣は、「自民党が放送事業者に対して行ったヒアリングは、放送法第4条が求める、事実をまげない報道であったかを確認したものだと思う。国会で、NHKの予算が正しく使えているかどうかを責任を持って議論して、予算を承認しなければならないという責任がある。その責任がある国会議員が、事実をまげているかどうかを議論するというのは、至極当然のことだろうと思う」と述べました。
前回の記事でクリップした記事の通り、安倍内閣の支持率は上昇して50%近い訳で。闇はどんどんと深まっている。

自民党も当然のごとく、メディアへの介入を正当化しているらしい。
まあ、同じことを民主党政権がやったら鬼の首を取ったように「報道の自由の侵害」と大批判するんだろう。

「権力のおごりだ」 放送業界、自民党の反論に困惑と反発 : 47トピックス - 47NEWS(よんななニュース)(2015/11/10 10:13)

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が総務省や自民党を批判した意見書に対し、政府、自民から反論が相次いだ9日、放送業界には困惑が広がり、識者からは「まさに権力のおごりだ」と批判する声も上がった。

 「放送法は表現の自由のためにあるのか、それとも行政によるかせなのか」―。自民党が今後も放送局幹部を呼んで説明を聴く可能性を示し、ある放送関係者は、放送法の解釈をめぐる対立の深刻化を嘆いた。

 立教大の 砂川浩慶 (すなかわ・ひろよし) 准教授(メディア論)によれば、放送法が放送による表現の自由を保護しているとの解釈は研究者の定説だという。「自民の行為は表現の自由を侵しかねない。政権与党が個別の番組で放送局幹部を呼びつけるなんてことは、民主主義が成熟した国ではあり得ない」と非難する。

 政治家が個別の番組に異議を申し立てる事例は増えている。放送局関係者はこう言ってため息をついた。「選挙がらみの思惑が見え見えだ。政権党の議員には、自分の胸に手を当てて考えてほしい」
(共同通信)

ちょっと違うけど似ている話で、こんなものも。

非公開のはずが… 韓日首脳の発言 日本で相次ぎ報道 (聯合ニュース) - Yahoo!ニュース(11月10日(火)17時8分配信)

【東京聯合ニュース】韓国と日本の双方が非公開とすることで合意したとされる首脳会談の少人数会合での発言内容が相次いで日本のメディアで報じられている。韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領と安倍晋三首相は会談の前半、約1時間にわたり外相らを含めた少人数会合を行った。
 読売新聞は10日付の記事で、安倍首相が旧日本軍の慰安婦問題をめぐり、ソウルの日本大使館前に設置されている少女像を撤去するよう求めたことなど、会合での発言を紹介した。また、安倍首相が冒頭、「日本国民が慰安婦問題で感じていることを率直に言わせてもらう。大統領も正直に話してもらっていいので、(話した内容は)口外しないことにしませんか」と話したと伝えた。
 日本経済新聞も7日、慰安婦問題の解決案として韓国側が求めている法的責任について、安倍首相が「できないことはできない」と拒否したと紹介するなど、会談での両首脳の発言を報道した。
 韓国政府は日本メディアの報道について、「事実と距離がある」と表明するにとどめるなど、消極的な対応をしている。日本政府が慰安婦問題をめぐり都合の良い内容をメディアに公開し、それが既成事実として受け止められる側面を無視できない状況となっている。
 東京都市大の李洪千(イ・ホンチョン)准教授は聯合ニュースに対し、「両国の首脳が非公開を条件として発言した内容が片方のメディアに報道されるのは信頼の問題だと思う」と指摘。「基本的な信頼が構築されないと韓日関係の回復が難しい状況で首脳同士が約束したことが守られなければ問題がある」と語った。
安倍政権が反日の韓国に「がつんと言ってやったぜ!」的アピールをリークしているんだろう。

自民党にせよ現政権にせよ、基本的に他人への配慮という発想がないと思える。専横というか、私物化というか。

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意気盛ん。

日本会議の改憲集会に、安倍首相がメッセージを送った。
衛藤晟一首相補佐官、下村博文・前文部科学相などの国会議員も参加したとのこと。

改憲派が大規模集会 日本会議主導、首相がメッセージ:朝日新聞デジタル(2015年11月11日05時00分)


「憲法改正の賛同者が445万人集まった」と集会主催者が述べたそうだが、たぶんこれ。
憲法改正を実現する1,000万人ネットワーク | 美しい日本の憲法をつくる国民の会

賛同署名について | 憲法改正を実現する1,000万人ネットワーク | 美しい日本の憲法をつくる国民の会

憲法改正には国会発議とともに、国民投票で過半数(約3,000万票以上)の賛成が必要となります。そのため、私たちは今、「美しい日本の憲法をつくる1,000万人賛同者(ネットワーク)」を全国に呼びかけています。美しい日本を大切な子供たちに伝えていくため、どうか皆さんご協力ください。
「美しい日本」という文言が笑える。

で、この署名運動、日本青年会議所(JC)が実働部隊を担っている。

日本青年会議所が改憲に向けて行う、学校への『出前授業』 | ハーバービジネスオンライン

JCは、企業や市民向けのいろいろなセミナーや集会を開いているが、そこでも署名運動や動因を展開しているらしい。以前見かけたのだけれど見つからない……。

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2015/11/10

乱雑に感想。

はてなブックマーク - 北守さんはTwitterを使っています: "本当に本当の個人主義者(Der Einzige)だったら、「オタク」というくくりで罵倒されようが別にそ気にしないわけでしょ。でもオタクに限らず何か自分が属

本当に本当の個人主義者(Der Einzige)だったら、「オタク」というくくりで罵倒されようが別にそ気にしないわけでしょ。でもオタクに限らず何か自分が属してるくくりへの批判に対して瞬間沸騰しがちってのはまあ帰属意識滅茶苦茶高いってことなんだよね。
こちらの流れの続きみたい。

北守さんはTwitterを使っています: "つまり内在的には共有すべき目的を持たない「個人主義者」たちが、外在的な物語(一般人とは違うがゆえに差別されてきたという物語)を共有することで無媒介的に全体と一致する集団が「オタク」なわけだ。それをよく「統合」された集団というのだけれど。 @y_arim"

「とらのあな」難波店で、ヘイトスピーチ・レイシズム漫画を平積みしていたという件で、
廃墟/怖音さんはTwitterを使っています: "これを見ても何も言わず何も感じないんならオタクなんざ滅びろ。お前らどのツラ下げて中立とかぬかしてるんだ。"

というツイートに

有村悠%9/20砲雷撃戦18・C17さんはTwitterを使っています: "1)「オタク」と括るのは無理。日之丸街宣女子が好きなオタクは歓迎こそすれ怒る理由がない 2)「他人の趣味嗜好に文句をつけるべきではない」という規範意識が強いので「怒れ」という方が白い目で見られる 3)そもそも"サヨク"が嫌われている https://t.co/ysQhBs1Me1"

という反応があって、それへの続きということらしい。

有村悠氏は、「オタク」を擁護しているのか冷笑しているのかよく分からない。北守氏の理解はもっともだと思うけれど、はてブでは氏の言説を誤解している人もいるようだ。

そもそも、この発端となった件への反応が、まさに帰属意識の塊みたいだなと私も思っていたし。

はてなブックマーク - 廃墟/怖音さんはTwitterを使っています: "知人が難波のとらのあなでこんなことしてるって教えてくれた(;´Д`)死ねよオタク https://t.co/NBZQdsslvX"

まあ、「理系」とか「オタク」とか、逆鱗になっている人は結構多そうだ。帰属意識があるんだなあ。

それと、本件は「オタク」への論難というよりも憤懣混じりの呼びかけだと思うのだが、まあそれはともかく、これが「差別」に当たるかどうかについては、出自など本人が帰られない属性への攻撃ではないから差別に当たらないのではないかという論点と(そうすると宗教とかはどうなのかという話になる)、「差別」の概念がヘイトスピーチにばかり焦点化されているのではないかという論点とが出てくるように思う。

はてなブックマーク - 菊池誠さんはTwitterを使っています: "嫌韓本が現にたくさん出版されている以上、並べる書店はあるだろうし、フェアなどでプッシュする書店も出るのだと思う。もちろん、そういう本は置

菊池先生、レイシズムや差別とエセ科学、歴史修正主義とは精神のあり方として結びついているということを直視してほしいなあ……。

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ダブルチーズバーガー、なぜチーズバーガー2個より高い:朝日新聞デジタル(2015年11月10日07時31分)

マクドナルド広報によると、

「100円のハンバーガーと並び、チーズバーガーは単品としてのお得感を強く打ち出す『特別な商品』だからです」。ダブルが高いのではなく、チーズバーガーを特別に割安にしていると説明する。
とのこと。
ちなみにチーズバーガー2個とMサイズのポテト、コーラを単品で頼むと合計額は750円。ダブルチーズバーガーのセット(640円)より110円高い。
のだそうだ。商品ラインナップへの考え方が伺えて面白い。

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橋下氏、“赤服”の自民推薦候補に「どこまで共産党が好きなの」 (デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース(11月8日(日)16時27分配信)

 反維新陣営の府知事候補の元自民府議・栗原貴子氏(53)=自民推薦=に向け「(トレードマークの)赤い服ばっかり着て、どこまで共産党が好きなんだ。自民と共産が手を組むなんて大阪だけですよ」と揶揄。
いまさら、「政界を引退する」という話を信じる人は誰もいないだろうけど、そういう発言も水に流されているんだろうなあ。

赤色→共産党という低俗さは言うまでもないけど、こういう低俗なイメージを人々に流布して、共産党を「何となく危ないもの」と印象づけることには成功しているんだよなあ。
こういう漠然とした感情への植え付け(印象操作)は、デマでも何でも言った者勝ちだから困る。

大阪都構想への賛成が反対を上回ってきたという報道もあるし、毎日新聞などは連日、「維新か反維新か」、「都構想はどうなるか」などと、橋下氏らの設定した軸に縛られた報道ばかりを繰り返しているし、結局は、府も市も橋下氏らが勝ち、都構想が動き出すのではないかと想像している。

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安倍内閣 支持する47% 支持しない39% NHKニュース(11月9日 19時00分)

NHKの世論調査によりますと、安倍内閣を「支持する」と答えた人は、先月より4ポイント上がって47%、「支持しない」と答えた人は、1ポイント下がって39%でした。
再来年4月の消費税率の10%への引き上げにあたって、一部の品目の税率を10%よりも低くする「軽減税率」を導入するという政府の方針については、▽「賛成」が40%、▽「反対」が21%、▽「どちらともいえない」が33%でした。
「軽減税率」を巡って、「税の負担感を和らげるために対象品目を幅広くすべきだ」という考えと、「社会保障の財源を確保するために対象品目を絞るべきだ」という考えのどちらを優先すべきか聞いたところ、▽「対象品目を幅広くすべきだ」が28%、▽「対象品目を絞るべきだ」が37%、▽「どちらともいえない」が28%でした。
臨時国会について、野党側が憲法の規定に基づいて召集することを求めているのに対し、政府・与党側は臨時国会の召集は見送り、来年の通常国会を例年より早く召集することを検討していますが、政府・与党側の対応は適切だと思うか尋ねたところ、▽「適切だ」が20%、▽「適切でない」が30%、▽「どちらともいえない」が40%でした。
安倍総理大臣と韓国のパク・クネ(朴槿恵)大統領による日韓首脳会談で、いわゆる従軍慰安婦の問題を巡り、できるだけ早期に妥結するために協議を加速することで一致したことを評価するかどうか聞いたところ、▽「大いに評価する」が11%、▽「ある程度評価する」が48%、▽「あまり評価しない」が23%、▽「まったく評価しない」が11%でした。
南シナ海で中国が人工島を造成している問題で、アメリカがその周辺海域でイージス艦を航行させましたが、このアメリカの行動を日本政府が支持していることについて、適切だと思うか尋ねたところ、▽「適切だ」が61%、▽「適切でない」が8%、▽「どちらともいえない」が23%でした。
まあ、日本国民はよく飼い慣らされているなあ、と。

消費増税への賛否を聞いていないところがNHKらしいというか。

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右翼団体が国定教科書に反対する生徒を個人攻撃、学校には執拗な抗議電話 : 政治 : ハンギョレ( 2015.11.07 02:59修正 : 2015.11.07 05:36)

朴政権が歴史教科書の国定化を強く推進していることは知っていた。
しかしどこの国でもこういう陰湿な暴力を使う連中が現れる。この種の「愛国」は暴力を喚起する傾向があるのだろう。

ハンギョレとの電話インタビューで、落ち着いて話していた学生は、結局「先生方に申し訳ない」と泣き崩れた。国定化に反対して「左派的発言」をしたという理由で、国定化を支持する保守団体や個人がまだ若い女子高生に露骨な非難を浴びせている。この生徒が在学中の学校は殺到する抗議電話で業務が麻痺した状態だ。
攻撃され、被害の中心にいる本人が「申し訳ない」と謝る構図は日本の場合と同じだ。そして、この構図を攻撃者は狙っている。
キム・ミンテ京畿道学生人権擁護官は、「青少年の意思表現の自由は、国連でも保証するように勧告しており、大韓民国政府もこれに対するいかなる制限も加えないと約束していた。生徒たちを相手にした非難や攻撃はありえないこと」だとし「その学校が懲戒、強迫、懐柔せずに学生を保護できるように基本的な事項について勧告する」と述べた。
この「人権擁護官」という役職があるのは良い。どれほどの効力があるのか知らないが、この騒動の根源を作った朴政権はきちんと対応するのだろうか。植村氏の解雇が取りざたされても何らのコメントもない安倍政権と違いを出せるのだろうか。

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はてなブックマーク - 外務省が「日本の女子中高生の13%援助交際」と発言した国連特別報告者に抗議…「到底受け入れられない」発言撤回を要求(1/2ページ) - 産経ニュース(2015/11/09 21:31)

産経は触りたくないので、はてブで。

はてブコメントも数字に関心が集中し、本質的な性暴力への視点が抜けている人が多い。まあ、人々のニッポン愛を刺激して、女性搾取から問題をずらすことに成功したわけで、「愛国者」たちの狙いは成功したわけである。

それにしても、『国家の品格』を辱めることばかり安倍政権はやりますなあ。

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2015/11/08

戯画的なニッポン:「愛国保守(笑)」化する外務省

また笑える事案が登場(ブラックユーモア的な意味で)。

記憶遺産の件といい、従軍慰安婦問題での暗躍ぶりといい、外務省の行動がますます狂信的になってきてますな。
外務省内の、この手のアレな人たちが発言力を増してきているのかなという気がする。

まあ、人権関係やタバコ関係、労働関係、捕鯨関係などでは、昔から世界を唖然とさせてきているわけだし、慰安婦問題でもクマラスワミ報告のときなど、恥ずかしいことはさんざんやってきているので、平常通りという気もする。

東京新聞:「供与物資に日の丸明示を」 外務省指導にNGO困惑:政治(TOKYO Web)(2015年11月8日 朝刊)

 外務省の資金援助を受けた非政府組織(NGO)が機材や建物を外国に供与する場合、日本の国旗(日章旗)のシールや標識を付け、日本からの支援であることを明示するよう、外務省から指導されていることが七日、明らかになった。国際貢献をアピールする安倍政権の姿勢を反映しているが、NGOからは戸惑いの声も出ている。 (五味洋治)
 この援助は「無償資金協力事業」。日本のNGOが開発途上国などで行う経済や社会開発、緊急人道支援のプロジェクトに対し、外務省が審査のうえ、一千万円から一億円までの範囲で資金協力を行う。
 政府開発援助(ODA)の枠を広げるため、二〇〇二年度から開始。計百三十七カ国と一地域に中古の車いすを送ったり、病院施設などを建設したりしている。
 外務省はこれまで、現地に送った機材や物資、建築物に、日章旗か、日本独自の「ODAマーク」を付けるよう指導していた。ODAマークは一九九五年に外務省が一般公募して決めたもので、地球儀と日の丸をあしらっている。
 外務省は昨年、この方針を変更した。ODAマークをやめ、日章旗マークか銘板を付けるよう要求。無償資金協力事業を受けるNGO向け説明書にも、その方針を明記した。外務省は理由についてNGO側にはっきりした説明をしていない。ODAを拡大する中国に対抗して日本の貢献を国際社会にアピールする狙いとみられる。
 現地の国民感情や特殊事情がある場合は例外とされ、「どのマークを使うかは、NGO側が自主的に決める」(外務省民間援助連携室)と強制ではないとしている。だが、専門家からは「援助を受ける立場のNGOは、要請を断りにくい」との指摘が出ている。
 NGO関係者は「日の丸を付けることで、NGOが受けるデメリットはあるが、昨年から急に方針が変わった。NGOを政府と一体化させ、日本の支援をアピールする狙いではないか」と話した。
◆活動に危険の恐れも
 <内海愛子・恵泉女学園大学名誉教授の話> NGOの活動は、多国籍で行われていて、国境を越えるものだ。日本国籍の人だけで支えられているわけではない。日本政府によるODAの軍事化が問題とされている時、NGOを通した支援にまで日章旗を付けるように指導することは、NGOの中での分裂を招き、活動を危険にさらすことになりかねない。それが心配だ。
貧すれば鈍するとでもいうのか、次第に乏しくなるODAをますます恩着せがましく押しつけていては、ますます中国の大国ぶり(『国家の品格』(笑)とやら)を際立たせてしまいますなあ。
ホント、アレな方向へ頑張れば頑張るほど、日本の脇役ぶりというか雑魚キャラぶりというか小人物ぶりというか、小ずるくさもしい「国柄」が強調されて、「美しい国」がトリモロされていってご同慶の至りですな。

国際協力NGOの方々にとっては、ニッポンの「ご恩」宣伝部隊を演じないといけないわけで、同情に余りありますな。いっそのこと、日本のカネで建った施設や買った機械をことごとく紅白に塗り分けるODAでも現地のペンキ屋に発注してはどうだろうか。

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しっかり考えられている印象

【会見全文】翁長沖縄知事、国交相に公開質問状を送付 | 沖縄タイムス+プラス(2015年11月6日 12:54)

これはなかなかすごい。
政府は、正攻法では沖縄県の正当性を崩せないのではないか。

……まあ、だから制度の本来の趣旨を黙殺して、権力手段としてのみ利用しているのだろうけれど。


普天間基地の「危険除去」という政府の主張の根拠が、ウソだろうという指摘はなかなか重い。

・仲井真前知事が埋め立て承認をした根拠の一つが、首相・官房長官の「普天間基地の運用停止を5年以内にする」という言葉だった。
・だが、実はアメリカは、今でもそんな話は一切聞いていないとのこと。

・辺野古が完成するには長期間を要する。それまでの間は普天間は危険ではないのかという指摘。

これらに反論するのは難しいだろう。

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貝殻節の歌詞:民謡は口伝だったんだよなあという話

音で訪ねる ニッポン時空旅 - NHK

「へぇ~」と感心しつつ笑える楽しい番組。ちょくちょく聞いているが聞けない回も多いので、ポッドキャスト配信してほしいなあ。

今週は温泉の歌で、貝殻節が紹介されていた。

もともと鳥取市周辺でイタヤガイを採る労働歌だった。
何年に一度か、イタヤガイがものすごく採れる年があって、そういう時には一斉に漁に出る。あまりに採りすぎて沈没する船が出るぐらい採れたそうだ。
で、小舟や大船で出漁するのだが、10人ぐらい乗れる大船には舟子が何人も乗り、親方の指揮下一斉に艪をこぐ。重労働で大変だったそうだが、そのときに歌った歌なのだそうだ。

ところが、昭和4年だったか、なぜかその年を最後にぱったりと貝が採れなくなり、歌も廃れてかけていた。ところが、ちょうどその頃、新民謡運動というのがあり、近くの浜村温泉の人が貝殻節に目をつけて漁師さんから教えてもらい、歌詞に浜村温泉を盛り込んでコロムビアレコードからレコードを発売した。だから、元々の労働歌のバージョンと歌詞は変わっているのだそうだ。

へぇ、と思ってネット検索してみると、なるほど確かに歌詞にはいろいろあるみたいだ。ただ、1番は大体同じみたい。

……考えてみると、民謡なわけだから、定まった歌詞や節回しがあるわけでもなく、おそらく「貝殻節」と言っても、微妙に異なるさまざまなバージョンというかパターンというか、変異版があっただろう。ちょうど言葉や遊びが時・所によって微妙に異なっているように。

というわけで、世上流布する貝殻節はもとは浜村温泉とは関係なかったんだ、という話。

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2015/11/06

ブクマ:なぜか公安絡みばかり2件。

ブクマからですが。

琉球朝日放送 報道制作部 ニュースQプラス » 機動隊とのもみ合いその直前に(2015年11月5日 18時35分)

基地建設に抗議していた男性が、ここです、機動隊員を蹴ったとして公務執行妨害の容疑で現行犯逮捕されました。
しかしよく見ると、その直前、背後の機動隊員が手を伸ばし、男性を押しているのがわかります。
宜野座村に住む64歳のこの男性は、基地建設への抗議行動に参加していましたが、この時、路肩付近で機動隊ともみ合っていた市民らに、歩道へ下がるよう指示を出している様子がわかります。
そこに、背後から白い手袋をした機動隊員の手が伸び、不意を突かれた男性はよろけています。その後、足を出した男性は公務執行妨害の容疑で現行犯逮捕されました。男性は容疑を否認しています。
映像が「いかにも。」
機動隊員が挑発し、それに反応してしまうと……。
待ちかねたかのように、集団で一斉に襲いかかる機動隊員たちの様子を見ると、訓練された猟犬の群れのイメージがかぶってくる。

ニュースのナレーターの指摘。

政府は、「暴力に訴えるような激しい抗議があるため」と、昨日から警視庁の機動隊員を現場に投入しています。
ただ、映像を見る限り、先に手を出しているのは機動隊員です。本来は現場が混乱しないようにするための機動隊員。自ら挑発するような警備は絶対にあってはなりません。
当たり前すぎる正論。まあ、公安っていつもそうなのだけれど。暴力装置の尖兵である彼らの本質が垣間見える。

沖縄県民の強い反対、県庁まで動かす強い意志を、強権と暴力で圧殺する政府。
これほどまでの強い反対にすらこのような対応なのだから、我々に対してどのような態度で出てくるのかは推して知るべしである。

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「この国ちょっとおかしな方向に行き始めている」ピーター・バラカン|☆着物リメイク☆ 京 ☆(2015-10-31)

憲法9条のTシャツを着て歩いていたら警官に職質されたという気持ち悪い話。
戦前の憲兵に回帰するまであと一息ですな。……てか、順法精神に富んだ人を危険視し、誰何する警察って、一体彼らは何を守っているんですかね。

東京FMの「The Lifestyle MUSEUM」という番組(10月16日放送)で、ピーター・パラカン氏が語ったことみたい。

珍しく広尾の方から六本木に向かって有栖川公園の脇を歩いていると、
 まずひとりの警官にちょっと変な目で見られて、
 僕今日怪しい雰囲気を発しているのかな?と、一瞬思ったんです。

 もうちょっと先を歩くと、中国大使館のすぐ手前の所で、
 2人の警官に止められました。

 「あれ?どうしたんですか?」と言ったら
 「今日これから抗議をする予定ですか?」と聞かれたんですね。
 特にそんなことはないし「何故そんなことを聞くんですか?」と問うと
 「9条のTシャツを着ているから」と言う。

 僕は自分のフェスティバルのTシャツか
 9条のTシャツのどちらかをほぼ毎日着ているので、
 「それがどうしたんですか?」と聞くと
 「もしこれから抗議に行くのなら知っていた方がいいと思って」とか言うんです。

警官の台詞が意味不明だし、意図もよく分からない。「抗議」が何への抗議を、どのような活動を指すのか不明だし、「知っていた方がいい」のも誰が、何をという点が分からない。
けれど、「9条のTシャツを着ているから」という説明は、彼らが護憲的な人々をどう見ているのかがよく現れている。

まあ、平常運転の公安そのものだけれども、権力の暴力装置が、誰を警戒し、誰に暴力の矛先を向けているのかが良く現れた一幕だと言えよう。

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記憶遺産問題:日本政府、トンデモさん登用で恥の上塗りをするの図

世界記憶遺産:意見書 日本、「南京」否定派を引用 ユネスコ受け入れず - 毎日新聞(2015年11月06日)

記事タイトルの「ユネスコ受け入れず」が気になる。本文にそれらしき記述がない。

それはともかく、恥辱プレイのレベルをさらに上げてきたニッポン。どこまで行くつもりなのか。
あるいは世界の嘲笑を誘う自虐ギャグなのか。

・ただでさえ恥ずかしい記憶遺産へのクレームなのに、その意見書を高橋史朗氏に依頼。たとえて言うと、「都道府県大戦」で骨玉1つで大玉を倒しに行くぐらい無謀。(かえって分かりにくい?)
大川隆法氏を国連大使に任命して、松井石根の霊言で世界を折伏してもらう的な戦略。

で、高橋センセイの意見書がボロボロらしい。まぁ当たり前すぎるけど…。
・中国側史料の真正性を批判するはずなのに、なぜか史料の内容を批判してみたり。史料自体の真贋は疑ってないわけですね。しかもその内容批判も明後日の方向らしい。
・事件自体が後代の捏造だと言うならその証拠を挙げればいいのに、なぜか事件記述への疑義を述べ立てるだけ。

しかし何よりすごいのが、東中野修道氏の著書に依拠しているらしいところ。極めつけの笑いどころですな。
たとえて言うと、日本政府代表が、青森県にイエス・キリストの墓があるとする竹内文書を引用して、「エルサレムを聖地としているのは誤りだ」とバチカンで演説したぐらいの恥ずかしさ。

で、さらにひどいのが、外務省が高橋センセイをかばっているらしいこと。
「(高橋教授は)保守派の中ではバランスの取れた研究者」なのだそうで…(汗)。

ではここで高橋センセイの著作タイトルを少し見てみましょう。(出所:CiNii Articles 検索 -  高橋 史朗

・WGIP洗脳工作の源流を暴く : 日本を封じ込める心理戦はどこで進められたのか(Voice (453), 150-159, 2015-09)
・「河野談話」検証の虚妄 : 中韓の国を挙げたプロパガンダは激しさを増すばかり (総力特集 断末魔の朝鮮半島)(Voice (441), 92-99, 2014-09)
・読書の時間 BOOK LESSON 日本が二度と立ち上がれないようにアメリカが占領期に行ったこと 高橋史朗著 : 日本人よ目覚めよ! 歴史の糾弾は結局わが身にふりかかる(正論 (509), 368-371, 2014-06)

ええと、高橋センセイがこんな感じなのはたまたまじゃなくて、昔からなんですよね…。
・朝日と日教組が「歴史」を決めるのか(諸君 20(2), p26-44, 1988-02)
・「朝日」と「外圧」に歪められる歴史教科書(諸君 18(8), p26-38, 1986-08)
・またしても「ご注進屋」が対韓マスコミ工作 (教科書検定 「裏工作」に暗躍 河野洋平外相 野中広務幹事長 後藤田正晴元警視庁長官 汝ら、奸賊の徒なるや!)(諸君 32(12), 48-58, 2000-12)
・「家庭科」という環境ホルモン ファロスを矯めて国立たず--桃から生まれたももこちゃんは鬼と共生?いい加減にしろ、フェミニズムの腑抜けども(諸君 34(7ママ), 156-166, 2002-06)

ほかにも、高橋センセイはトンデモで有名な「親学」の熱心な推進者だし、育鵬社の教科書普及を推進する日本教育再生機構の理事でもある。

そんな高橋センセイですが、外務省的には「バランスが取れた研究者」なんだそうです……。さすが、アメリカで歴史学者や在米邦人団体に圧力をかけたりするだけのことはありますな。

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ちなみに、毎日新聞は、別に、高橋センセイや外務省に批判的な新聞社ではありません。
むしろ、今回の記憶遺産問題では、一貫して右派的な論調なんですよね。例えば、

70年ウオッチ:「平和のとりで」が歴史の戦場になる=論説副委員長・古賀攻 - 毎日新聞(2015年10月27日 東京朝刊)(本記事末に後掲)

という記事では高橋センセイのコメントを好意的に紹介している。記事につけられた写真では、ことさらに「犠牲者30万人」という記述に大きく焦点を合わせて、あたかも犠牲者の人数こそが問題の焦点であるかのような印象を作っている。
こんなふうに、毎日新聞は――朝日新聞などもそうですけど――記憶遺産を政治の道具にする中国・韓国を許すな!というのが主たる論調なわけです。要するに、「歴史戦」「情報戦」に負けるな!という点で、愛国トンデモな人たちと同じ主張をしている。

そんな新聞社が今回のような微妙に批判じみた記事を上げてきたわけです。今回の記事を書いた宮川裕章記者も、以前

記憶遺産への登録は中国の歴史認識にユネスコの「お墨付き」を与えかねない
などと、「中韓の歴史戦に負けるな!」的な記事を以前上げていましたから、元々右派に批判的な人だというわけでもなさそうだし、さすがにちょっとアレさがきつかったのかもしれませんな。

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世界記憶遺産:意見書 日本、「南京」否定派を引用 ユネスコ受け入れず - 毎日新聞(2015年11月06日)

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に登録された「南京大虐殺」に関する資料に対して日本政府が提出した民間研究者の意見書を疑問視する声が出ている。日本は、登録申請した中国に反論するため、外務省と専門家の意見書をユネスコ側に提出した。しかし、専門家意見書に南京事件否定派とみられている学者の著書が引用されるなどしたため、かえって日本の印象を悪くして逆効果になった恐れがあるという。

 意見書は明星大の高橋史朗教授が作成した。ユネスコ日本代表部の佐藤地(くに)大使の意見書などとともに、ユネスコ世界記憶遺産国際諮問委員会に9月末、提出された。

 高橋教授は意見書で、中国が一部公開した申請資料を分析。申請資料だけでは「内容の真正性について判断することができない」と指摘した。

 意見書は、「約100名の日本兵が『大虐殺』の存在を否定する本を出版している」と記し、南京市にいた中国人女性の日記についても「伝聞情報に依拠した記述ばかり」と記述。さらに、事件自体を否定する主張で知られる亜細亜大の東中野修道教授の著書を引用して、中国が提出した写真の撮影時期に疑問を呈し、「関連性が疑われる」とした。

 南京軍事法廷で中国人30万人虐殺の首謀者として死刑になった日本軍中将については、部隊が「南京城内に500メートル入ったところで移動を命じられ、虐殺は物理的に不可能であった」と結論づけた。

 欧州と日中韓の歴史認識の比較を研究する静岡県立大の剣持久木教授は「意見書は、南京大虐殺を否定する学派にくみしている印象を与える。ナチスによるユダヤ人虐殺を否定するのと同様の印象を世界に与えかねない」。東京外国語大の渡邊啓貴教授(国際関係論)も「日本に対する印象を悪化させて逆効果になった可能性がある」と懸念する。

 一方、高橋教授は「東中野教授に批判があるとしても、引用した研究内容は検証されたものだと評価している」と反論。外務省関係者は「(高橋教授は)保守派の中ではバランスの取れた研究者だ」と話している。

 日本政府は「非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できない」と認めている。2010年の日中歴史共同研究では、日本側は被害者数を20万人を上限に4万人、2万人などと推計。中国側は「30万人以上」と主張した。

 馳浩文部科学相は5日、パリで開かれているユネスコ定例総会で演説し、世界記憶遺産審査について「透明性の向上を含む改善を早急に実現する」ために加盟国が議論を進めていく必要があると指摘した。【宮川裕章、パリ賀有勇】


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70年ウオッチ:「平和のとりで」が歴史の戦場になる=論説副委員長・古賀攻 - 毎日新聞(2015年10月27日 東京朝刊)
 旧日本軍による「南京虐殺」の資料が歴史文書としてユネスコの世界記憶遺産に登録された。

 「審査した国際諮問委員会の14人は文書管理が専門のアーキビストばかり。中国側の資料が『真正性』や『完全性』などの登録要件を満たしているのか大いに疑問だ」。明星大の高橋史朗教授(65)は残念そうに語る。

 国際諮問委員会は今月4日から3日間、アラブ首長国連邦のアブダビで開かれた。高橋教授は外務省の依頼で会場に足を運んでいる。

 発言を求めるつもりだったが、日本が関係する討論への参加は認められず、外で待機しなければならなかった。パリのユネスコ本部が南京事件の登録を発表したのは、その3日後だ。

 中国は「国際社会公認の歴史的事実になった」と胸を張った。一方、菅義偉官房長官は「歴史の政治利用になる」と反発し、ユネスコ分担金の支払い停止を検討すると踏み込んだ。

 「心の中に平和のとりでを」と憲章にうたうユネスコが、歴史をめぐるいさかいの主戦場になりつつある。今年は「明治日本の産業革命遺産」でも日韓が対立した。日本は2年後に中韓が慰安婦を共同申請してくると警戒を強める。

 高橋教授は、資料の中身も委員会の論議も公開されないで登録が決まる審査のあり方を問題視する。中韓に比べて、日本は諮問委につながる人脈作りでも出遅れているという。「このままでは日本は蚊帳の外に置かれ続ける」

 確かに記憶遺産の制度には改善の余地がありそうだ。しかし、今回は日本もシベリア抑留者の引き揚げ記録などを登録している。意に沿わぬ決定への腹いせのように分担金の拠出拒否に言及するのは、外交の品位に欠ける。

 自民党内からは「自衛のための対抗措置が必要だ」との声まで出ている。保守政権の鼻息は荒いが、戦略目標もないまま「自衛」を振りかざすのは危なっかしい。中国の独善的な振るまいをたしなめつつ、決着が見込めない不毛な歴史戦争からは距離を置く冷静さがほしい。

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松浦氏インタビュー記事:愛国保守化する毎日新聞。南京事件の認識も間違ってるし。

前前ユネスコ事務局長の松浦晃一郎氏へのインタビュー。
本当かな?と思うことがいくつかある。

「南京」については、日中それぞれに記録があり、研究者の間では以前から異論があったにもかかわらず、日本側の記録は反映されず、反論の場も与えられなかった。
日本側の記録が反映されていないのは、中国側の事情というよりも日本側の事情だったのではないか?「反論」と言うが、日本側がしようとしていたのは、南京事件の史料の交流や突き合わせなどではなくて、日本側の主張をただ述べ立てようとしていただけだったのではないか?
−−今後、日本がとりうる措置はありますか?

 まずは中国が提出した11の文書を専門家が吟味し、日本側の冷静な反論をユネスコ側に伝えることです。理論的な可能性だけでいうと、もし文書が「真正性」のない、つまりインチキなものだったら、取り消しや修正ができないわけでもない。

史料の真正性について「冷静な反論」ができるのならやったらいいけれど、それは果たして日本政府や南京事件否定論者が満足するようなものになるかな?
戦争にかかわるような記録の場合、少なくとも関係国の意見は聞いて、遺産としてふさわしいかどうかを審議する必要があるでしょう。
「中立性を」と言いながら、歴史資料の評価に国際政治の介入を求めるような議論。松浦氏が日本政府の権益を主張するのは当然だけれど、それならば彼を「元ユネスコ事務局長」と紹介するよりも「元外務省官僚」と紹介すべきだろう。少なくともユネスコの理念からはほど遠いことを主張しているわけだし、あからさまな政治介入の要求がユネスコで通るとも思えないし。
松浦氏の主張よりもっと問題なのは、この主張が「中立」を担保するための仕組みであるかのように報じている毎日新聞の姿勢だ。政治バランスが歴史資料の評価を決めるという仕組みを「中立」だと思ってしまう時点で、戦争責任問題を政治紛争の文脈でしか見ることができない認知のゆがみが現れている。
南京大虐殺文書

……中略……(犠牲者数は:引用者注)研究者間では「数千から数万」という説が多い。

毎日新聞のこの解説はひどく間違っている。「南京大虐殺」の範囲をどう考えているのだろうか。それに、東京裁判などで扱われた数字も知らないのだろうか。何を見て書いたのだろうか。

あと、どうでもいいけど、松浦氏は山口県出身なのな。安倍首相と同じ長州藩か。

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そこが聞きたい:世界記憶遺産 松浦晃一郎氏 - 毎日新聞(2015年11月04日 東京朝刊)

 ◇審議の透明性に課題 前ユネスコ事務局長・松浦晃一郎氏

 ユネスコ(国連教育科学文化機関、本部パリ)の「世界記憶遺産」に中国が提出した「南京大虐殺文書」=1=が登録されたことの波紋が広がっている。「人の心の中に平和を」とうたったユネスコ憲章の採択から11月で70年。高らかな理念の一方で、世界の遺産の選考方法に課題はないのか。前ユネスコ事務局長の松浦晃一郎氏(78)に聞いた。【聞き手・森忠彦、撮影・内藤絵美】

−−まず「世界記憶遺産」とは?

 私は「ユネスコの3大文化遺産事業」と呼んでいます。一つは誰もが知っている「世界遺産」。これは歴史的な建造物や遺跡が対象。次に私が事務局長だった2003年に採択された「無形文化遺産」。形がない芸能や祭りなどが対象で、日本からは歌舞伎や和食などが登録されています。もう一つが1991年のユネスコ総会で決まった「世界の記憶」、日本では「世界記憶遺産」と呼ばれます。貴重な文献や記録を後世に残すのが狙いですが、デジタル保存し、インターネットで公開することも目指しています。ベートーベンの交響曲第9番の自筆譜やフランスの人権宣言、アンネの日記など歴史的な記録を、世界中の人が閲覧できるようになりました。

−−記憶遺産について日本での認知は遅かったように思いますが。

 92年から制度が動き出し、97年から登録が始まったのですが、私たちがパリから運動してもなかなか日本政府は乗ってこなかった。ほぼ20年間、日本は無関心だったと言っていい。最初の登録となる「山本作兵衛による筑豊炭坑の記録画」(11年)も、10年ほど前に始まった「明治日本の産業革命遺産」(今年、世界文化遺産に登録)の現地調査の段階で、海外の委員から「これは世界の記憶を狙える」と勧められて初めて、動き出したほどです。その点、中国は92年段階から記憶遺産には積極的でした。

 条約で決まった世界遺産や無形文化遺産とは違って記憶遺産は総会決議で、選考過程も異なります。クローズされた関係者だけで進められ、経過も非公開。最終決定は本部の国際諮問委員会(14人)の承認を得て事務局長がサインして成立しますが、その前の登録小委員会(9人)で選考が行われます。基準は「世界的な重要性」があるか、本物の価値がある「真正性」があるか。今回、中国が出してきた「南京」は認められましたが、「慰安婦」はここで却下されました。そのほか、諮問委の下部組織として地域委員会(日本関係はアジア・太平洋地域)があります。

 残念ながら現在、諮問委にも小委にも地域委にも、日本人は入っていません。中国は当初から熱心で現在も地域委に議長を出しています。当然、情報は多いし、諮問委との人脈もある。部外者は小委の内容はもちろん各国が提出してきた文書も知ることができません。「南京」については、日中それぞれに記録があり、研究者の間では以前から異論があったにもかかわらず、日本側の記録は反映されず、反論の場も与えられなかった。背景には近年の日中間の政治的関係の悪化という事情があるでしょう。

−−今後、日本がとりうる措置はありますか?

 まずは中国が提出した11の文書を専門家が吟味し、日本側の冷静な反論をユネスコ側に伝えることです。理論的な可能性だけでいうと、もし文書が「真正性」のない、つまりインチキなものだったら、取り消しや修正ができないわけでもない。もう一つは来春、ベトナムで開かれる地域委の総会に代表団を送り込み、日本として積極的に選考に加わってゆくことです。国際的な人的ネットワークの薄さが日本の弱い点です。

 また、ユネスコ本部では記憶遺産の審議プロセスに透明性を持たせるように働きかけるべきです。今回、「南京」を受けて、ロシアが日本のシベリア抑留者の記録についてクレームをつけてきましたが、ロシア政府も途中経過を知らなかったようです。戦争にかかわるような記録の場合、少なくとも関係国の意見は聞いて、遺産としてふさわしいかどうかを審議する必要があるでしょう。

−−ユネスコ分担金=2=の削減や停止の声も出ています。

 これは賛同できませんね。「南京」の登録を受けて政治サイドがとりあえず怒りを表明した気持ちはわかりますが、結局は一番損な選択です。分担金(年間約37億円)は加盟国の義務で、たとえ一時停止しても、再開時には払わなければなりません。分担金からは日本が熱心な世界遺産関連の経費も出ています。その間、日本は「金も払わないのに」と言われながら、肩身の狭い中で活動しなければなりません。

−−パリの本部では3日、ユネスコ総会が始まりました。日本からは文部科学相も出席します。

 いいことです。米国が拠出を止めている今、日本は最大の拠出国です。総会には各国が閣僚級を送り込んできます。せっかくなら演説だけで帰るのではなく、数日滞在して、閣僚同士のネットワークをつくってほしい。日本に不足しているのが、まさにこの国際的な人脈、ネットワークなのですから。

 ◇聞いて一言

 日本初の記憶遺産まで約20年。これは世界遺産の条約採択から日本の加盟までに要した時間と同じだ。ブームが起きると過剰に盛り上がるが、立ち上がりが遅いのが日本人の欠点か。松浦さんは「外務省と文科省の、行政の壁もあって……」と苦笑する。さらに深刻なのが学者や公務員などの国際ネットワークの弱さだ。留学志望の若者も減少している。ここのてこ入れが急務なのではないか。

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 ■ことば

 ◇1 南京大虐殺文書

 中国が提出した記録は計11。1937年12月、中華民国の首都だった南京に侵攻した日本軍が起こした虐殺事件の犠牲者を「30万人」としている。日本側の政府見解は「あったことは否定できないが、被害者数は諸説ある」。研究者間では「数千から数万」という説が多い。

 ◇2 ユネスコ分担金

 加盟国の経済力を勘案して決まる。2014年は(1)米国(22%)(2)日本(10.8%)(3)ドイツ(7.1%)の順だが、米国は11年にパレスチナが正式加盟したため、国内法により停止している。このほか、任意の拠出金がある。

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 ■人物略歴

 ◇まつうら・こういちろう

 1937年生まれ、山口県出身。外務省入省後、北米局長、駐仏大使などを経て99〜2009年にユネスコ事務局長。現在はNPO「世界遺産トーチランコンサート協会」特別顧問。日仏会館理事長。

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2015/11/04

歯がゆい

東京新聞:植村氏 雇用打ち切りも 北星学園大「脅迫で警備費増加」:社会(TOKYO Web)(2015年10月24日 夕刊)

 元朝日新聞記者で従軍慰安婦報道に関わった北星学園大(札幌市)の非常勤講師植村隆氏(57)が、同大の田村信一学長から、来年度の非常勤講師の雇用契約を打ち切る可能性もあると伝えられていたことが二十四日、関係者への取材で分かった。
 関係者によると、学長は植村氏と支援者らに、学内の警備費が昨年度より増えていることなどを説明し、「雇用打ち切りを求める教職員も多い。契約打ち切りもあり得る」との趣旨を伝えたという。植村氏らは雇用継続を求めている。
 大学は雇用を継続するかどうかについて十一月中には決定する見通し。
 植村氏は一九九一年に韓国の元慰安婦の証言を取り上げた朝日新聞の報道に関わった。週刊誌記事などで「捏造(ねつぞう)」などと批判され、大学に脅迫の電話や抗議文が届いた。
遠くから見守るだけというのが歯がゆい。

たとえば、いかに極右的主張を持つ人物であろうと、排外主義と差別とを授業で流布する人物であろうと、その人やその人を雇う学校に対して、「殺す」だの、家族に危害を加えるだの、学校や大学関係者を襲うだのといったたぐいの脅迫が殺到するということはあまり考えられない。(もちろん全くないという保証はないが傾向的に少ないだろう。)

5.15や2.26の事件は言うまでもなく、浅沼社会党委員長が刺殺された事件も、朝日新聞社襲撃事件も、本島長崎市長射殺事件も、みな「愛国者」たちの起こした事件だった。今回の事件もその延長線上にある。
そして、これらのテロと脅迫は、一握りの異常者が起こしているのではなく、自らの正義と倫理に従い、反社会勢力を滅ぼそうと行動する多くの一般市民が実際に関わっているし、これらの脅迫を容認している。

このままでは、植村さんが裁判で完全勝訴しようとも、仮にメディアや政府が「卑劣な脅迫は許さない」と繰り返し強調したとしても、

「警備費用が増えている」

だけの理由で、個人を自由に追い込めることになってしまう。穏健で、社会的にまっとうな方法では、これらの脅迫には対抗できないということになってしまう。
社会的ムードが脅迫を容認し、暴力を先鋭化しているとしても、個別直接的な脅迫、すなわち、特定困難な場所から防衛困難な箇所への暴力をちらつかせ、社会や組織に個人切り捨てを要求するという脅迫。この種の脅迫への対抗策をどうしたらいいのか。

実際、大学には

雇用打ち切りを求める教職員も多い
という。そう唱える人が少なくないことは肌感覚で理解できる。そしてそこに深い闇を感じる。
しかし、その言葉の裏には、

雇用継続を求める教職員もまた多い

という事実もまた潜んでいるはずだ。植村氏と北海学園を支えようとする人々へのリンクを貼っておく。

植村応援隊
負けるな北星!の会 - マケルナ会

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追記

毎日新聞にもう少し詳しい記事が出ていた。社会を人質に取って言論の自由を破壊する行為が非常に大きな効果を持つことがにじみ出ている。
ともあれ、詳報はありがたい。継続報道を願う。

北星学園大:元朝日記者の雇用で揺れる 慰安婦記事巡る批判警戒 - 毎日新聞(2015年11月02日 東京朝刊)

 24年前に書いた慰安婦問題を巡る記事を理由に人格攻撃を受けた元朝日新聞記者、植村隆さん(57)を非常勤講師として雇用している北星学園大(札幌市厚別区)が、来年度の雇用を継続するかどうかで揺れている。「脅迫に屈する理由はない」「言論の自由を守れ」という意見の一方で、警備費用の負担や学生の安全を重視する立場から打ち切りを容認する声も聞こえる。大学側は年内に結論を出す方針だ。【山下智恵、青島顕】

 ◇15年度は「継続」

 植村さんは1991年8月の朝日新聞大阪本社版に、かつて慰安婦だった韓国人女性の証言を他のメディアに先駆けて報じた。記事の中で「『女子挺身(ていしん)隊』の名で戦場に連行され」と表現したことにより批判を受けた。「挺身隊」は軍需工場などに動員された人々を指し、「慰安婦」とは異なる。ただ、同様の誤用は当時、毎日、読売、産経の各新聞にもあった。

 昨年8月、朝日新聞が過去の慰安婦報道の検証記事を掲載し、植村さんの記事について「意図的な事実のねじ曲げはなかった」と判断したことで、インターネット上に植村さんや家族を批判する書き込みが増えた。非常勤講師を務める北星学園大には脅迫状や抗議の手紙が送りつけられた。「学生に危害を加える」との内容もあり、大学側は同10月、学生の安全確保を理由に次年度の雇用を打ち切る方針を示した。

 これに対し、脅迫や暴力に屈せず言論や学問の自由を守ろうと、市民や有識者らが北星学園大支援に立ち上がり、全国の弁護士有志380人が脅迫事件として刑事告発した。田村信一学長は同12月、「暴力と脅迫を許さない社会的合意が形成されつつあり、卑劣な行為への抑止力となりつつある」と一転して2015年度の雇用継続を決めた。

 一連の問題で北星学園大には14年度、嫌がらせや抗議の電話が約700件、メールが約1700件あり、電話口で怒鳴られ続けて体調を崩す職員も出た。さらに、大学祭の警戒強化などで1700万円の警備費用負担を強いられた。関係者によると、既に電話やメールは沈静化しているものの、今年度は危機管理のコンサルタント契約や監視カメラの増設などで警備費用は3000万円以上になっている。

 ◇警備負担や反発も

 教員からは「植村さんがいる限り学生の安全は確保されない」「1年間守り切っただけでも十分」(いずれも経済学部教員)など来年度の雇用継続に消極的な声も漏れる。大学関係者は「学内には今も恐怖感が続き、深い疲労感が漂っている」と明かす。植村さんは今年7月と9月、田村学長から「警備負担や教職員の反発があり、来年度の雇用打ち切りもあり得る」と伝えられたという。

 一方、植村さんを支援してきた勝村務・経済学部准教授は「脅迫する者に『相手を疲弊させれば、最終的に目的を達成できる』と思われ、昨年の頑張りが無になってしまう。暴力を許さず、踏みとどまった北星の頑張りの意義を再認識してほしい」と話す。勝村准教授ら教員の「有志の会」は10月28日、大学側に雇用継続を求める申し入れをした。

 大学を運営する学校法人「北星学園」の理事会は9月、安全保障関連法を批判する声明文「戦後70年にあたって」を採択したが、「職員向け内部文書」として教職員向け広報誌に掲載するにとどめた。慰安婦報道問題のような批判にさらされることを恐れたとみられ、理事会関係者は「社会に波風を立てることを恐れ、意思の発信を自粛してしまった。自由に意見を発信できなければ社会はどんどん苦しくなる」と指摘する。

 ◇「自由な選択可能に」

 脅迫事件の刑事告発で共同代表を務める郷路征記(ごうろまさき)弁護士は「継続して危害を加えるような組織力を持った相手がいるとは考えられないが、相手が見えないから必要以上におびえてしまう」と大学の現状を分析する。その上で「恐怖があると『大学の民主主義を守れ』と言っても厳しい。大学が自由な選択をできる環境を作ることが、言論や学問の自由を守ることになる。改めて大学を支援する必要がある」と各界に呼び掛ける。

 植村さんは朝日新聞在職中の12年から北星学園大で非常勤講師を務め、1年ごとに雇用契約を更新してきた。韓国、台湾、中国からの留学生らを対象に週1回、90分の授業2コマを担当し、新聞を題材として、日本語の読解力を高めるとともに日本社会への理解を助ける授業をしている。歌やそば打ちなど日本の文化も体験してもらっている。

 14年度後期に授業を受けた韓国人留学生(25)は「日本の新聞記事を読んで自分の考えを表明する授業は楽しかったし、先生の解説もおもしろかった。先生の雇用を継続してほしい」と話す。今年度の講義を受ける4年の男子学生(21)は「暴力によって講義が打ち切られる理由はない」と訴える。

 14年春に32年勤めた朝日新聞社を退職した後、植村さんは月約5万円の大学からの給与が主な収入源になっている。

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2015/11/03

表層に囚われ感情に流されることの危険

はてなブックマーク - 「日本の女子中高生の13%が援助交際」…国連特別報告者の発言に憤りの声続々(1/2ページ) - 産経ニュース(2015/11/02 12:39)

ここのコメントが見事に「釣られて」いるし、まさに視野が「誇大な数字→根拠なき侮辱」という感情的回路に収斂してしまっている。

この数字が多いか少ないかは知らないが、この構図は他の事例を想起させる。

・朝日新聞の訂正記事
・南京大虐殺の人数

いずれも、本質的な問題へ向かう意識を表面的な過誤や曖昧さへの注目が阻害している事例だ。

本質的な問題とはたとえば以下のようなことだ。
・犠牲者とその周囲の人々への救済はいかにあるべきか
・このような悲劇を二度と起こさないためには何をすべきか、どのような歯止めが必要か
など。

従軍慰安婦問題についても世界記憶遺産についても、政府が率先して、このような表層的かつ感情的な反発の元凶となっているのだけれど、それに多くの報道や論説も引きずられている。

報道にはスキャンダラスな側面もあるので、そうした報道が出るのは防げない部分もあるが、論説記事など、本来は深い視点を提起するべき論考までがそれに引きずられてしまっている。思考の枠が、表面的な感情的な好悪に引きずられ、視野狭窄に陥ってしまっているのだ。あたかも、水面の強い風によって表層の水が流され、その動きに深層の水までも流されてしまうような状況である。

この背景には、「国辱」に敏感に反応し、自分個人の尊厳(自己像)が穢されたかのように感じてしまう心性があり、そしてそれがネットメディアやSNSを通して常に刺激され続けているという状況があるだろう。刺激的でスキャンダラスな言葉は常に流布されやすい。

こうした琴線に触れる言葉にまず感情を揺すぶられてしまうと、そこに意識が集中してしまう。
そうして、我々は、自分たちの社会に潜む問題を知り、それをどうやって改善していこうか、問題に直面している個人をどう救済できるか、人権侵害が起きづらい社会をどう作れるかと考える思考の筋を見失うわけである。

そして、この問題にずっと以前から取り組み、専門的に研究し、問題解決のために現場で活動している人々にとって、我々の「社会」や「国民」は、ひどく扱いにくい、話が通じない、エキセントリックな存在のように映ってしまうことになる。
その狭間で、問題に直面している人たちの状態は改善されず、そして同じ問題に苦しむ人々が再生産され続けることになる。

参考
1時間の会見内容に対し「30%(13%)ガー」しか言えないのが今の日本人の民度だということはちゃんと伝わったと思う - 誰かの妄想・はてな版

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追記(2015年11月4日)

JKビジネス、性被害の入り口 現場の実態、少女の声は:朝日新聞デジタル(2015年10月3日20時04分)

 少女たちの性を売り物にする「JK(女子高生)ビジネス」。警察は労働基準法や児童福祉法、児童買春・児童ポルノ禁止法など様々な法令を使って店や客を摘発するが、店側は形態を変えて営業し、いたちごっこが続く。そこでバイトし、性産業に組み込まれていく少女たちは、どんなことを考え、現場では何が行われているのか。

 「こんにちは。どこ行く感じですか」。待ち合わせ場所に白いブラウスにスカート姿の少女が現れた。東京23区内。眉の辺りで切りそろえた前髪の下から、人なつっこい目で笑う。少女がバイトする「30分3千円で一緒に街を探検できる」と宣伝する店に予約を入れ、落ち合った。

 「どうしようか」と尋ねると、「お客さんによるんですよね」とはっきりしない。カラオケに誘ってみると、少女は表情を曇らせ、なじるように言った。「うちの店ってエロ目的の人多いんですよ。知らないんですか。私、120分でも1千円しかもらえないんですよ」

 「途中で帰ってもいいから」となだめ、カラオケ店に向かった。記者であることを告げ、話を聞いた。

 高校3年の17歳。友人と撮った写真がたくさん貼り付けられた手帳を見せてくれた。日付の枠に「20000」「79000」と書き込まれている。「収入」を示す数字だという。「昨日はお客さん4人いて疲れた」。ホテルへ行き、性行為をして1回3万円ほど。「安いでしょ。意外とこういうことをする子、いるんですよ。だから市場価値が上がらない」

 昨年4月にバイトを始め、客に頼まれて今年に入って初めて性行為をした。「同僚」は高校生が多く、目的は大体、遊ぶ金欲しさだという。「後ろめたさは感じない。楽に稼げるっていうだけ。肉体的にはつらい時もあるけど」

 家族にはカフェでバイトをしていると偽っている。自宅ではことさらに「お金がない」と口に出し、財布を見られてもばれないよう、高額紙幣は手帳に挟んで隠している。学校の友達とは金銭感覚が合わなくなった。「ファミレスのドリンクバーで粘るでしょ。ああいうのはちょっと……」

 やめた方がいい。何度か促した。すると「社会的倫理として良くないのはわかるけど、他に稼げる手段がない」。ホストクラブに行くにはお金がかかるし、アイドルのコンサートのチケットはネットオークションで十数万円する……。

 ただ、いつまでも続けられるとは考えていない。「JKブランドが使えるのは2、3年。JD(女子大生)ブランドもあるけど、無限には続かない。今ならまだ引き返せるかなって」

 別の少女に、週末の夕方に取材した。

 長いまつげにくりっとした目。客とどこに行くことが多いか尋ねると「ご飯とかカラオケとか。あとホテルに行くこともあるよ」。

 この少女も17歳の高校3年だという。遊ぶ金と進学資金を稼ぐために始めた。家は貧しく、携帯電話の料金は自分で払っている。「スタイリストもやってみたいし歌もやりたい。介護も興味ある。やりたいことありすぎて困るんだよね」

 「お客さんはみんな良い人」と言い、危険な目に遭ったことはないと語る。

 やめるつもりはないのだろうか。「嫌々やってる子なんていないと思う。『つらいでしょ』とか言われるけど、嫌々やってたらとっくにやめてる」と笑って返され「抵抗はなんもない。ほんとなんにも考えてないもん」と繰り返した。

 ある店のホームページには今回の少女らと同じくらいの年頃の子の顔写真が100人以上並ぶ。「エッチなサービスはなし」とし、働く少女を募っている。

■警察は摘発強化、米報告書「少女売買春の温床」

 警視庁は9月末、女子高生との会話や占いを楽しむ「コミュニケーションルーム」(東京・池袋)の元店長(31)を逮捕した。「裏オプション」で性的サービスをさせていたという児童福祉法違反(児童に淫行させる行為)容疑だった。客も児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で書類送検する方針。こうした客の摘発にも力を入れる。

 JKビジネスが東京・秋葉原を中心に目立ち始めたのは2012年春ごろ。制服や下着姿でマッサージや添い寝をする「リフレ」という形態で、愛知や大阪にも広がった。

 翌年、警視庁は、18歳未満の少女に有害な仕事をさせたとして、労働基準法違反容疑で全国で初めて経営者らを逮捕。すると、有害な仕事にあたると認定しづらい「散歩」や「撮影会」などと業態を変えた新しい店が相次いで現れた。こうしたいたちごっこに、同庁は今年9月、映画館などの営業に許可が必要とする興行場法を初めて適用した。

 ただ、同庁によると、性的サービスを提供している可能性がある店舗は6月末時点で都内に42店ある。こうした店は「裏オプション」として、店内やホテルで性的サービスを行わせることが多いという。

 警察は「働く少女は買春やストーカーなど犯罪に巻き込まれる恐れがある」と警告。米国務省が7月に公表した世界の人身売買をめぐる報告書は、JKビジネスが少女売買春の温床になっていると指摘している。

■専門家「少女の背景を知ることも必要」

 居場所のない少女を支援する一般社団法人「Colabo(コラボ)」の仁藤夢乃代表の話 JKビジネスには、家庭や人間関係、経済的な困難を抱える少女や、虐待や性暴力など過去のつらい体験をなんともないことだと思おうとして関わる少女もいる。「やればやるほどお客さんは喜んでくれる。自分も必要とされていると感じる」と話す子もいる。やめさせるには、こうした少女の貧困、虐待といった背景を知り、介入することが大切だ。

 少女たちは、今は大丈夫と思っていても、後から心に傷を負い、自分を責める子が多い。困った時には、助けを求める勇気を持って欲しい。

 日本では「女子高生」が性的に価値のあるものとしてブランド化され、消費される文化がある。女子高生を売り買いすることを良しとしない社会をつくることも必要だ。

先日、某校の学園祭に行った。私服でかまわないはずなのに、大勢の女子高校生が制服で遊びに来ていた。反面、高校生らしき男子で制服を来ている人は見かけなかった。

なぜだろう?と知人に問うた。知人曰く「彼女らは自分たちの価値を知っている」と。
女子高校生というアイコンを利用できるうちに精一杯遊んでおこうということだというのだ。
かくのごとく「女子高校生」は商品化されており、その商品化は彼女らの内面に定着している。商品化された性の対象であることを自らのアイデンティティにすることは、奴隷が自らの奴隷性を誇りとし、理想的な奴隷であろうとする心性と同じ構造を持っている。


英国貴族の暮らしを舞台にしたダウントンアビーというドラマに、こんなシーンが出てくる。
召使いの男性が、主人にかしずく仕事に「誇りを持っている」と言ったところ、相手の男性から「男が誇りを持つような仕事ではないな」と言われてしまい、憮然とする。
従者であることを自らのアイデンティティとしている人にとって、自分を無にして主人に奉仕することは誇り以外の何者でもない。だがその「誇り」を聞かされた男性にとっては、自分の意志決定すら主人に捧げ、主人の純粋な道具となることを喜びとするのは奴隷の美学でしかない。そして彼の批判はこの従者には理解できない。これが内面化の一例である。

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2015/11/01

予想通り橋下氏がしっぽ切り発言。+ いろいろ勉強になるなあという話。

ここ数日、メディア露出がことに活発な橋下氏界隈。
「新党」なるものを結成したとか。

で、その報道の陰で、現在「維新の党」が訴訟に持ち込んでいるとのこと。

そうしたら、橋下氏は

「僕は離党して、維新の党の党員でもないので、全く無関係だ。」

と述べたとのこと。

維新の党が大阪組を刑事告訴&民事裁判を提訴。橋下市長「僕は離党して党員でもないので、全く無関係だ」 - Everyone says I love you !

毎日新聞とNHKを見ていて「新党結成」は目立つけど、こっちの報道は気づかなかった。
情勢を考える上では、こっちの方が大事だと思うけどなあ。

それで、「新党」が、正しく政党(政党助成法に基づく政党)なのかも、報道では分からなかった……というか、政党になるんだろうなあという印象を受けたのだけれど、実際には、政党ですらない「政治団体」でしかないよ、という話が出ている。

米山隆一の10年先のために - 「おおさか維新の会」と称する政治団体の設立 ~多分政党ではありません~(2015/11/01 02:36:11)

この米山氏は維新の党の人。だから橋下組に批判的なのは当然としても、上の記事によれば、橋下組の方の諸手続の根拠が結構ガタガタみたい。

こういう解説的な記事をこそ新聞などには期待したいのだけれど……。
こういう事件でもないと、政党の認定条件など知る機会もないし、勉強になる。

いずれにせよ、こうなると、ますます橋下氏の

「僕は離党して、維新の党の党員でもないので、全く無関係だ。」
という発言が光りますなあ。

********
維新 党員名簿や通帳で新党側を提訴や告訴 NHKニュース(10月30日 17時55分)

維新の党の執行部は、大阪市の橋下市長が近く結成する新党側の議員らが、党員名簿の返還に応じず不法に所持しているとして、名簿の引き渡しを求める訴えを大阪地方裁判所に起こしました。さらに、新党側が銀行口座の預金通帳や印鑑についても返還に応じず、業務を妨害したとして、新党側の議員らを威力業務妨害の疑いで東京地方検察庁に告訴しました。
維新の党の執行部は、党の事実上の分裂で延期していた代表選挙を、一般の党員も参加して、ことし12月6日に実施することを決めましたが、代表選挙に必要な5万2000人余りの党員名簿は、大阪市の橋下市長が結成する新党側の議員らが保管していて、執行部側が返還するよう求めています。
こうしたなか執行部側は、新党側が党員名簿の返還に応じず不法に所持しているとして、30日に名簿の引き渡しを求める訴えを、大阪地方裁判所に起こしました。
また、執行部側は、新党側が銀行口座の預金通帳や印鑑についても返還に応じず、業務を妨害したとして、新党側の議員らを威力業務妨害の疑いで東京地方検察庁に告訴しました。
松野代表は国会内で記者団に対し、「代表選挙を実施する党務に支障が出ている。本当に断腸の思いだが、名簿を返してもらいたいという思いで、提訴に踏み切った。新党側が所持している、銀行口座の預金通帳や印鑑の返還も求めていく」と述べました。
一方、新党側が、維新の党の代表としている馬場伸幸衆議院議員はNHKの取材に対し、「われわれが正式な執行部であり、名簿をお渡しする理由はない。代表選挙は松野氏らが勝手に言っていることであり、コメントすることはない。司法の場で判断して頂ければいいと思う」と述べました。
大阪市の橋下市長は記者団に対し、「僕は離党して、維新の党の党員でもないので、全く無関係だ。被告になっているなら、今後訴状をみて対応する」と述べました。

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