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2015/11/03

表層に囚われ感情に流されることの危険

はてなブックマーク - 「日本の女子中高生の13%が援助交際」…国連特別報告者の発言に憤りの声続々(1/2ページ) - 産経ニュース(2015/11/02 12:39)

ここのコメントが見事に「釣られて」いるし、まさに視野が「誇大な数字→根拠なき侮辱」という感情的回路に収斂してしまっている。

この数字が多いか少ないかは知らないが、この構図は他の事例を想起させる。

・朝日新聞の訂正記事
・南京大虐殺の人数

いずれも、本質的な問題へ向かう意識を表面的な過誤や曖昧さへの注目が阻害している事例だ。

本質的な問題とはたとえば以下のようなことだ。
・犠牲者とその周囲の人々への救済はいかにあるべきか
・このような悲劇を二度と起こさないためには何をすべきか、どのような歯止めが必要か
など。

従軍慰安婦問題についても世界記憶遺産についても、政府が率先して、このような表層的かつ感情的な反発の元凶となっているのだけれど、それに多くの報道や論説も引きずられている。

報道にはスキャンダラスな側面もあるので、そうした報道が出るのは防げない部分もあるが、論説記事など、本来は深い視点を提起するべき論考までがそれに引きずられてしまっている。思考の枠が、表面的な感情的な好悪に引きずられ、視野狭窄に陥ってしまっているのだ。あたかも、水面の強い風によって表層の水が流され、その動きに深層の水までも流されてしまうような状況である。

この背景には、「国辱」に敏感に反応し、自分個人の尊厳(自己像)が穢されたかのように感じてしまう心性があり、そしてそれがネットメディアやSNSを通して常に刺激され続けているという状況があるだろう。刺激的でスキャンダラスな言葉は常に流布されやすい。

こうした琴線に触れる言葉にまず感情を揺すぶられてしまうと、そこに意識が集中してしまう。
そうして、我々は、自分たちの社会に潜む問題を知り、それをどうやって改善していこうか、問題に直面している個人をどう救済できるか、人権侵害が起きづらい社会をどう作れるかと考える思考の筋を見失うわけである。

そして、この問題にずっと以前から取り組み、専門的に研究し、問題解決のために現場で活動している人々にとって、我々の「社会」や「国民」は、ひどく扱いにくい、話が通じない、エキセントリックな存在のように映ってしまうことになる。
その狭間で、問題に直面している人たちの状態は改善されず、そして同じ問題に苦しむ人々が再生産され続けることになる。

参考
1時間の会見内容に対し「30%(13%)ガー」しか言えないのが今の日本人の民度だということはちゃんと伝わったと思う - 誰かの妄想・はてな版

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追記(2015年11月4日)

JKビジネス、性被害の入り口 現場の実態、少女の声は:朝日新聞デジタル(2015年10月3日20時04分)

 少女たちの性を売り物にする「JK(女子高生)ビジネス」。警察は労働基準法や児童福祉法、児童買春・児童ポルノ禁止法など様々な法令を使って店や客を摘発するが、店側は形態を変えて営業し、いたちごっこが続く。そこでバイトし、性産業に組み込まれていく少女たちは、どんなことを考え、現場では何が行われているのか。

 「こんにちは。どこ行く感じですか」。待ち合わせ場所に白いブラウスにスカート姿の少女が現れた。東京23区内。眉の辺りで切りそろえた前髪の下から、人なつっこい目で笑う。少女がバイトする「30分3千円で一緒に街を探検できる」と宣伝する店に予約を入れ、落ち合った。

 「どうしようか」と尋ねると、「お客さんによるんですよね」とはっきりしない。カラオケに誘ってみると、少女は表情を曇らせ、なじるように言った。「うちの店ってエロ目的の人多いんですよ。知らないんですか。私、120分でも1千円しかもらえないんですよ」

 「途中で帰ってもいいから」となだめ、カラオケ店に向かった。記者であることを告げ、話を聞いた。

 高校3年の17歳。友人と撮った写真がたくさん貼り付けられた手帳を見せてくれた。日付の枠に「20000」「79000」と書き込まれている。「収入」を示す数字だという。「昨日はお客さん4人いて疲れた」。ホテルへ行き、性行為をして1回3万円ほど。「安いでしょ。意外とこういうことをする子、いるんですよ。だから市場価値が上がらない」

 昨年4月にバイトを始め、客に頼まれて今年に入って初めて性行為をした。「同僚」は高校生が多く、目的は大体、遊ぶ金欲しさだという。「後ろめたさは感じない。楽に稼げるっていうだけ。肉体的にはつらい時もあるけど」

 家族にはカフェでバイトをしていると偽っている。自宅ではことさらに「お金がない」と口に出し、財布を見られてもばれないよう、高額紙幣は手帳に挟んで隠している。学校の友達とは金銭感覚が合わなくなった。「ファミレスのドリンクバーで粘るでしょ。ああいうのはちょっと……」

 やめた方がいい。何度か促した。すると「社会的倫理として良くないのはわかるけど、他に稼げる手段がない」。ホストクラブに行くにはお金がかかるし、アイドルのコンサートのチケットはネットオークションで十数万円する……。

 ただ、いつまでも続けられるとは考えていない。「JKブランドが使えるのは2、3年。JD(女子大生)ブランドもあるけど、無限には続かない。今ならまだ引き返せるかなって」

 別の少女に、週末の夕方に取材した。

 長いまつげにくりっとした目。客とどこに行くことが多いか尋ねると「ご飯とかカラオケとか。あとホテルに行くこともあるよ」。

 この少女も17歳の高校3年だという。遊ぶ金と進学資金を稼ぐために始めた。家は貧しく、携帯電話の料金は自分で払っている。「スタイリストもやってみたいし歌もやりたい。介護も興味ある。やりたいことありすぎて困るんだよね」

 「お客さんはみんな良い人」と言い、危険な目に遭ったことはないと語る。

 やめるつもりはないのだろうか。「嫌々やってる子なんていないと思う。『つらいでしょ』とか言われるけど、嫌々やってたらとっくにやめてる」と笑って返され「抵抗はなんもない。ほんとなんにも考えてないもん」と繰り返した。

 ある店のホームページには今回の少女らと同じくらいの年頃の子の顔写真が100人以上並ぶ。「エッチなサービスはなし」とし、働く少女を募っている。

■警察は摘発強化、米報告書「少女売買春の温床」

 警視庁は9月末、女子高生との会話や占いを楽しむ「コミュニケーションルーム」(東京・池袋)の元店長(31)を逮捕した。「裏オプション」で性的サービスをさせていたという児童福祉法違反(児童に淫行させる行為)容疑だった。客も児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で書類送検する方針。こうした客の摘発にも力を入れる。

 JKビジネスが東京・秋葉原を中心に目立ち始めたのは2012年春ごろ。制服や下着姿でマッサージや添い寝をする「リフレ」という形態で、愛知や大阪にも広がった。

 翌年、警視庁は、18歳未満の少女に有害な仕事をさせたとして、労働基準法違反容疑で全国で初めて経営者らを逮捕。すると、有害な仕事にあたると認定しづらい「散歩」や「撮影会」などと業態を変えた新しい店が相次いで現れた。こうしたいたちごっこに、同庁は今年9月、映画館などの営業に許可が必要とする興行場法を初めて適用した。

 ただ、同庁によると、性的サービスを提供している可能性がある店舗は6月末時点で都内に42店ある。こうした店は「裏オプション」として、店内やホテルで性的サービスを行わせることが多いという。

 警察は「働く少女は買春やストーカーなど犯罪に巻き込まれる恐れがある」と警告。米国務省が7月に公表した世界の人身売買をめぐる報告書は、JKビジネスが少女売買春の温床になっていると指摘している。

■専門家「少女の背景を知ることも必要」

 居場所のない少女を支援する一般社団法人「Colabo(コラボ)」の仁藤夢乃代表の話 JKビジネスには、家庭や人間関係、経済的な困難を抱える少女や、虐待や性暴力など過去のつらい体験をなんともないことだと思おうとして関わる少女もいる。「やればやるほどお客さんは喜んでくれる。自分も必要とされていると感じる」と話す子もいる。やめさせるには、こうした少女の貧困、虐待といった背景を知り、介入することが大切だ。

 少女たちは、今は大丈夫と思っていても、後から心に傷を負い、自分を責める子が多い。困った時には、助けを求める勇気を持って欲しい。

 日本では「女子高生」が性的に価値のあるものとしてブランド化され、消費される文化がある。女子高生を売り買いすることを良しとしない社会をつくることも必要だ。

先日、某校の学園祭に行った。私服でかまわないはずなのに、大勢の女子高校生が制服で遊びに来ていた。反面、高校生らしき男子で制服を来ている人は見かけなかった。

なぜだろう?と知人に問うた。知人曰く「彼女らは自分たちの価値を知っている」と。
女子高校生というアイコンを利用できるうちに精一杯遊んでおこうということだというのだ。
かくのごとく「女子高校生」は商品化されており、その商品化は彼女らの内面に定着している。商品化された性の対象であることを自らのアイデンティティにすることは、奴隷が自らの奴隷性を誇りとし、理想的な奴隷であろうとする心性と同じ構造を持っている。


英国貴族の暮らしを舞台にしたダウントンアビーというドラマに、こんなシーンが出てくる。
召使いの男性が、主人にかしずく仕事に「誇りを持っている」と言ったところ、相手の男性から「男が誇りを持つような仕事ではないな」と言われてしまい、憮然とする。
従者であることを自らのアイデンティティとしている人にとって、自分を無にして主人に奉仕することは誇り以外の何者でもない。だがその「誇り」を聞かされた男性にとっては、自分の意志決定すら主人に捧げ、主人の純粋な道具となることを喜びとするのは奴隷の美学でしかない。そして彼の批判はこの従者には理解できない。これが内面化の一例である。


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