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2015/11/04

歯がゆい

東京新聞:植村氏 雇用打ち切りも 北星学園大「脅迫で警備費増加」:社会(TOKYO Web)(2015年10月24日 夕刊)

 元朝日新聞記者で従軍慰安婦報道に関わった北星学園大(札幌市)の非常勤講師植村隆氏(57)が、同大の田村信一学長から、来年度の非常勤講師の雇用契約を打ち切る可能性もあると伝えられていたことが二十四日、関係者への取材で分かった。
 関係者によると、学長は植村氏と支援者らに、学内の警備費が昨年度より増えていることなどを説明し、「雇用打ち切りを求める教職員も多い。契約打ち切りもあり得る」との趣旨を伝えたという。植村氏らは雇用継続を求めている。
 大学は雇用を継続するかどうかについて十一月中には決定する見通し。
 植村氏は一九九一年に韓国の元慰安婦の証言を取り上げた朝日新聞の報道に関わった。週刊誌記事などで「捏造(ねつぞう)」などと批判され、大学に脅迫の電話や抗議文が届いた。
遠くから見守るだけというのが歯がゆい。

たとえば、いかに極右的主張を持つ人物であろうと、排外主義と差別とを授業で流布する人物であろうと、その人やその人を雇う学校に対して、「殺す」だの、家族に危害を加えるだの、学校や大学関係者を襲うだのといったたぐいの脅迫が殺到するということはあまり考えられない。(もちろん全くないという保証はないが傾向的に少ないだろう。)

5.15や2.26の事件は言うまでもなく、浅沼社会党委員長が刺殺された事件も、朝日新聞社襲撃事件も、本島長崎市長射殺事件も、みな「愛国者」たちの起こした事件だった。今回の事件もその延長線上にある。
そして、これらのテロと脅迫は、一握りの異常者が起こしているのではなく、自らの正義と倫理に従い、反社会勢力を滅ぼそうと行動する多くの一般市民が実際に関わっているし、これらの脅迫を容認している。

このままでは、植村さんが裁判で完全勝訴しようとも、仮にメディアや政府が「卑劣な脅迫は許さない」と繰り返し強調したとしても、

「警備費用が増えている」

だけの理由で、個人を自由に追い込めることになってしまう。穏健で、社会的にまっとうな方法では、これらの脅迫には対抗できないということになってしまう。
社会的ムードが脅迫を容認し、暴力を先鋭化しているとしても、個別直接的な脅迫、すなわち、特定困難な場所から防衛困難な箇所への暴力をちらつかせ、社会や組織に個人切り捨てを要求するという脅迫。この種の脅迫への対抗策をどうしたらいいのか。

実際、大学には

雇用打ち切りを求める教職員も多い
という。そう唱える人が少なくないことは肌感覚で理解できる。そしてそこに深い闇を感じる。
しかし、その言葉の裏には、

雇用継続を求める教職員もまた多い

という事実もまた潜んでいるはずだ。植村氏と北海学園を支えようとする人々へのリンクを貼っておく。

植村応援隊
負けるな北星!の会 - マケルナ会

*************
追記

毎日新聞にもう少し詳しい記事が出ていた。社会を人質に取って言論の自由を破壊する行為が非常に大きな効果を持つことがにじみ出ている。
ともあれ、詳報はありがたい。継続報道を願う。

北星学園大:元朝日記者の雇用で揺れる 慰安婦記事巡る批判警戒 - 毎日新聞(2015年11月02日 東京朝刊)

 24年前に書いた慰安婦問題を巡る記事を理由に人格攻撃を受けた元朝日新聞記者、植村隆さん(57)を非常勤講師として雇用している北星学園大(札幌市厚別区)が、来年度の雇用を継続するかどうかで揺れている。「脅迫に屈する理由はない」「言論の自由を守れ」という意見の一方で、警備費用の負担や学生の安全を重視する立場から打ち切りを容認する声も聞こえる。大学側は年内に結論を出す方針だ。【山下智恵、青島顕】

 ◇15年度は「継続」

 植村さんは1991年8月の朝日新聞大阪本社版に、かつて慰安婦だった韓国人女性の証言を他のメディアに先駆けて報じた。記事の中で「『女子挺身(ていしん)隊』の名で戦場に連行され」と表現したことにより批判を受けた。「挺身隊」は軍需工場などに動員された人々を指し、「慰安婦」とは異なる。ただ、同様の誤用は当時、毎日、読売、産経の各新聞にもあった。

 昨年8月、朝日新聞が過去の慰安婦報道の検証記事を掲載し、植村さんの記事について「意図的な事実のねじ曲げはなかった」と判断したことで、インターネット上に植村さんや家族を批判する書き込みが増えた。非常勤講師を務める北星学園大には脅迫状や抗議の手紙が送りつけられた。「学生に危害を加える」との内容もあり、大学側は同10月、学生の安全確保を理由に次年度の雇用を打ち切る方針を示した。

 これに対し、脅迫や暴力に屈せず言論や学問の自由を守ろうと、市民や有識者らが北星学園大支援に立ち上がり、全国の弁護士有志380人が脅迫事件として刑事告発した。田村信一学長は同12月、「暴力と脅迫を許さない社会的合意が形成されつつあり、卑劣な行為への抑止力となりつつある」と一転して2015年度の雇用継続を決めた。

 一連の問題で北星学園大には14年度、嫌がらせや抗議の電話が約700件、メールが約1700件あり、電話口で怒鳴られ続けて体調を崩す職員も出た。さらに、大学祭の警戒強化などで1700万円の警備費用負担を強いられた。関係者によると、既に電話やメールは沈静化しているものの、今年度は危機管理のコンサルタント契約や監視カメラの増設などで警備費用は3000万円以上になっている。

 ◇警備負担や反発も

 教員からは「植村さんがいる限り学生の安全は確保されない」「1年間守り切っただけでも十分」(いずれも経済学部教員)など来年度の雇用継続に消極的な声も漏れる。大学関係者は「学内には今も恐怖感が続き、深い疲労感が漂っている」と明かす。植村さんは今年7月と9月、田村学長から「警備負担や教職員の反発があり、来年度の雇用打ち切りもあり得る」と伝えられたという。

 一方、植村さんを支援してきた勝村務・経済学部准教授は「脅迫する者に『相手を疲弊させれば、最終的に目的を達成できる』と思われ、昨年の頑張りが無になってしまう。暴力を許さず、踏みとどまった北星の頑張りの意義を再認識してほしい」と話す。勝村准教授ら教員の「有志の会」は10月28日、大学側に雇用継続を求める申し入れをした。

 大学を運営する学校法人「北星学園」の理事会は9月、安全保障関連法を批判する声明文「戦後70年にあたって」を採択したが、「職員向け内部文書」として教職員向け広報誌に掲載するにとどめた。慰安婦報道問題のような批判にさらされることを恐れたとみられ、理事会関係者は「社会に波風を立てることを恐れ、意思の発信を自粛してしまった。自由に意見を発信できなければ社会はどんどん苦しくなる」と指摘する。

 ◇「自由な選択可能に」

 脅迫事件の刑事告発で共同代表を務める郷路征記(ごうろまさき)弁護士は「継続して危害を加えるような組織力を持った相手がいるとは考えられないが、相手が見えないから必要以上におびえてしまう」と大学の現状を分析する。その上で「恐怖があると『大学の民主主義を守れ』と言っても厳しい。大学が自由な選択をできる環境を作ることが、言論や学問の自由を守ることになる。改めて大学を支援する必要がある」と各界に呼び掛ける。

 植村さんは朝日新聞在職中の12年から北星学園大で非常勤講師を務め、1年ごとに雇用契約を更新してきた。韓国、台湾、中国からの留学生らを対象に週1回、90分の授業2コマを担当し、新聞を題材として、日本語の読解力を高めるとともに日本社会への理解を助ける授業をしている。歌やそば打ちなど日本の文化も体験してもらっている。

 14年度後期に授業を受けた韓国人留学生(25)は「日本の新聞記事を読んで自分の考えを表明する授業は楽しかったし、先生の解説もおもしろかった。先生の雇用を継続してほしい」と話す。今年度の講義を受ける4年の男子学生(21)は「暴力によって講義が打ち切られる理由はない」と訴える。

 14年春に32年勤めた朝日新聞社を退職した後、植村さんは月約5万円の大学からの給与が主な収入源になっている。


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