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2015/12/25

抑圧が尖鋭化を招くという話。ほか2件

「春画の色恋 江戸のむつごと『四十八手』の世界」白倉敬彦 著 | Kousyoublog

買おうかと思いつつ書名が悩ましい。

「色恋」と「性愛」の違いという指摘が興味深い。
そういえば、プラトニックラブという概念も明治以降のものだったか。

その一方で、「色恋」が性行為の口実にも使われるという側面もあったのではなかろうか。
北原進『百万都市江戸の経済』は、郭や岡場所の隆盛は男性過多の江戸社会における性欲のはけ口だったと論じているが、この解釈は「性愛」概念に染まった現代日本人の偏見なのだろうか。

面白いなあと思ったところ。

好色本の禁止という事実は、逆にその好色なるものへの人々の意識を先鋭化させた。いわば禁止というのは、その禁止した対象を内面化させるということであり、それがひとたび方途を示せば、たとえそれが徐々にでは会っても知らず知らずの内にでも深化する。
続く寛政二年(1790)、寛政の改革ではさらに進んで春画だけでなく美人画に遊女や芸者の名を出すことを禁じたことで、色恋から色遊び色が強まっていた春画をむしろ色事に集中させ、先鋭化させることになった。十九世紀に入ると情愛や遊戯的なものが減少して趣向競争が激化、性暴力的だったり差別的だったり過激な春画が多くなるのだという。
たしか、SMプレイという変態趣味も、ヌードなどがわいせつ物とされる規制を逃れるための苦肉の表現であったのが転倒して深化していったものだ、という話を読んだことがある。

学生運動の進展に見られるように、弾圧が過激化を生むというのは表現の世界にとどまらないようだけれども、しかしその発現するメカニズムはかなり異なっていそうではある。

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他2件。

夫婦(選択的)別姓問題 …そこで「くじ引き」ですよ。 | Where Angels Fear To Send Trackbacks

とりあえず婚姻届の際に「どちらかの姓から申請者が選ぶ」んじゃなくて、クジ引きでランダムにどちらか決まるという法律を通したら(これは保守派のいう「夫婦の一体性」を毀損せず男女が公平になる法律だから、あんまり反対の論理はないはず)、たぶん1年経たずに別姓法が通るんじゃなかろうか…。
こういうウィットに富んだ皮肉をつぶやける頭の良さを持ちたいなあ。……無い物ねだり。

大学入試新テストはOECD-PISAテストがモデルか? | Where Angels Fear To Send Trackbacks

PISAが、社会的・政治的論争を含む問題を取り上げ、対立する主張の読み解きと根拠への注意力を要求している、という話。その裏には、市民として社会参加・政治参加することの必要性への合意がある、と。

それに対して、文科省は、和魂洋才というか、相変わらず表面的なテクニックの導入にとどまるというか、換骨奪胎して本質を歪めるというか、ということのようだ。

 ここで提起したいのは、これまでセンター試験的な問題が求めて来たのは、この「社会的、政治的文脈の読解」と獲得した知識を用いた「現代社会への積極的な参加」を、「あえてしない」で、提示された問題の枠内で答えるに留める「知性」(「空気を読む」知性)だったのではないか、ということである。そして、今回の出題者が、PISAを念頭に置いた上で、交通事故統計の問題を出して来たのだとすれば、そこでもやはり「電磁波問題」と「交通事故問題」の統計的データの扱いが含む、社会的、政治的文脈の違いを「認識しない」能力が求められている、ということなのではないか、ということである。

これまでの文科省の方針は「国際社会で活躍できる」ことを求めると声高に主張しながら、実際行って来たことは「国内では空気を呼んだ従順な労働者/消費者」であることを求める教育である。記述式試験の導入も、ここが問題にされないのであれば、まったく意味はないと思われるが、実際はやはり同じ構造が繰り返されているように思われる。

もう一つ、無視できない指摘が。
もうひとつ、PISAは市民としての知的能力を求める問題であり、専門家予備軍としての試験ではない、ということである。そして、PISAのような試験の存在が示しているのは、専門家としての判断をすることと、市民としての判断をすることは、本質的に異なる、ということが重要だ、ということでもある。一方、大学入試で問われるのは、もちろん市民的判断力の部分もあるだろうが、実際は専門家予備軍としての部分もある。
大学とは何であるか、という問題にも関係してくるところだが、文科省の言ういわゆる「L型大学」であれば、それこそPISAがふさわしいのではないかという反論もあるかもしれない。


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