« ブックマーク的なメモ | トップページ | チャリティ売春ってのもアリだよね?という話 »

2015/12/22

記憶遺産:複数の国・組織に関わる資料は共同で申請するよう求める

ユネスコ 「記憶遺産」申請の新指針発表 NHKニュース(12月18日 7時42分)

ユネスコ=国連教育科学文化機関は、「記憶遺産」について、複数の国や組織に関わる資料を登録したい場合は、共同で申請するよう求める新たな指針を発表し、制度の改善を求めていた日本の主張を一定程度、反映したものとみられます。
ユネスコは、ことし10月、中国が申請した「南京事件」を巡る資料を後世に伝える価値があるとする「記憶遺産」に登録しましたが、日本政府は、見解が異なるなかで登録が行われたとして、ユネスコに対し、透明性と中立性の確保を強く求めていました。
ユネスコは17日、「記憶遺産」の申請に関する新たな指針を発表し、複数の国や組織に関わる資料の登録を求める場合は共同で申請することや、一般の団体や個人からの申請は、各国が設けた選考委員会などの審査を受けるよう求めています。
日本政府は去年、ユネスコにおよそ37億円を分担金として拠出していますが、「南京事件」を巡る資料の登録を受けて、拠出の停止も含めて検討していました。
日本の分担金の額は加盟国の中で最も大きく、停止されることになればユネスコの今後の運営にも関わることから、制度の改善を求めている日本の主張を一定程度反映したものとみられます。
ユネスコは、新たな指針の発表に伴い、次回の「記憶遺産」の申請期限について、来年5月末までに延長すると発表し、さらに新たな指針に基づいて申請された提案については優先して審査する意向を示しています。

日本の分担金への影響抑えるねらいか

ユネスコ=国連教育科学文化機関が記憶遺産の申請を巡って、新たな指針を示した背景には、日本が拠出する分担金への影響を抑えるねらいがあるものとみられています。
ユネスコは、加盟国の分担金などを財源に運営を行っていて、日本政府は去年、およそ37億円を拠出し、全体の10%余りを負担しています。
分担の割合では、アメリカの22%に次いで2番目ですが、アメリカは2011年にユネスコがパレスチナの加盟を認めたことに反発して拠出を凍結していることから、実質の負担額では日本が最も大きくなっています。
このため、「南京事件」を巡る資料の登録に関連して、日本が分担金の支払いを停止すれば、ユネスコの運営に大きな支障が出るおそれがあります。それを防ぐためにも日本が求めていた制度の改善を、一定程度実現しようとしたのではないかとの見方が広がっています。

ニュース後半部分の解釈はどうでもいいが、「関わる」の含意が微妙かもしれない。

このニュースの元ネタはたぶんこれ。

UNESCO Memory of the World Programme calls for new nominations for the International Register 2016-2017 nomination cycle | United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization(16.12.2015 - Communication & Information Sector)

該当部分を引くと、

In addition, two or more governments, institutions, organizations, groups or individuals may put forward joint nominations where collections are shared among several owners or custodians. Such prior collaboration is strongly encouraged.
In the case of documentary heritage which exists in several locations, or several owners or custodians, full details of each component, owner or custodian are to be provided.
要するに「申請する文書が複数の国や団体等の間で分散している場合は」という話である。

記憶遺産に申請する文書は、その対象とする事象(例えば南京大虐殺)に関して網羅的である必要はない。網羅的であることを条件にしたら、認定すべき資料の範囲が果てしなくなるからだ。実際、例えば南京大虐殺の申請・認定に際しても、日本側が持つ資料は含まれていなかった。
このユネスコのアナウンスを文字通り受け止めれば、例えば従軍慰安婦関連資料を申請する場合でも、日本側が保有する資料を範囲に含めなければ、従来通りの申請と変わらないことになる。

また、共同申請せよという方針も、国と個人などの申請でも良いかもしれない。例えば日本の個人が中国政府と共同申請することも原理的には可能なように読める。もっとも、ユネスコは、申請する際は各国のユネスコないし記憶遺産選考委員会を通すように求めているので、この場合でも日本の個人が関わっているということで日本の選考委員会が中国の選考委員会と協議する形になるのかもしれない。あるいはどちらか片方の選考委員会で処理することになるのかもしれない。このあたりはちょっと曖昧に読める。

******
記憶遺産の本旨からすれば、今回の方針は、文化・歴史的な観点から見て後退だと言える。
政治的紛争を避ける趣旨があるのだろうと察せられるし、それが日本の圧力である可能性はもちろん否定できないが、これによって戦争や人道の罪に関する資料を「記憶遺産」に含めることが難しくなってしまった。
戦争にせよ人道の罪にせよ、これらの文書や史跡、遺物、証言は、後世に残さないようなバイアスがかかりやすいものである。このことは、人類が過去を忘れ、反省と教訓を無にし、再び同じような残虐と悲惨と破滅とを引き起こすことにつながる。記憶遺産の一つの効用は、こうした過去の抹消への動きをいささかでも食い止めようとするところにあった。それがまた無にされようとしている。愚かなことである。


« ブックマーク的なメモ | トップページ | チャリティ売春ってのもアリだよね?という話 »

世界記憶遺産問題」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/83801/62916547

この記事へのトラックバック一覧です: 記憶遺産:複数の国・組織に関わる資料は共同で申請するよう求める:

« ブックマーク的なメモ | トップページ | チャリティ売春ってのもアリだよね?という話 »