「最終決着」などあり得ない。
札びらで頬を叩く日本人。
強姦被害者に「告訴を取り下げるなら、現場を盗撮したビデオを処分してやってもいいぞ」と持ちかけた弁護士がいたのを思い出す。
慰安婦問題、決着明記要求へ…受諾なら新基金 : 政治 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)(2015年12月25日 14時31分)
日本政府は、28日にも開かれる日韓外相会談で、慰安婦問題に関する合意文書に最終的な決着であることを明記するよう韓国側に求める方針を固めた。権力で個人を踏みつけるような方法をいくら「決着」と称しても、加害責任という本質から逃げるばかりでは「決着」になるわけがない。韓国側が要求を受け入れれば、元慰安婦への人道的支援を行う新たな基金を創設する方向だ。岸田外相が尹炳世ユンビョンセ外相との会談で提案する。
日本政府は、合意文書を交わす条件として慰安婦問題の妥結が「最終かつ不可逆」的なものであることを明記するよう要求する。
これに関連し、菅官房長官は25日午前の記者会見で、慰安婦問題について「日本が主張してきたのは最終的解決だ」と語り、協議の妥結には、韓国側が問題を蒸し返さない確約が必要との認識を示した。
韓国政府は、慰安婦問題を反人道的な不法行為と位置付け、1965年の日韓請求権協定の対象外だとして、日本側の責任の認定と賠償を求めている。
また、日本側の正当性を声高に言い立て、侵略と加害、残虐の過去を否定する言動がこの「決着」とやらで止むはずもない。それゆえ韓国側も応戦せざるを得なくなる。韓国政府の態度硬化は世論を反映したものであったことを忘れるべきではない。いかに日本政府がタガを填めようとも、填めきれるものではない。
だが、「蒸し返さないという約束を破った」と称して、自らの加害責任という根本原因にはほおかむりしつつ、韓国側を非難し、そうしてますます嫌韓と排外主義とを募らせていくのだろう。そしてそれは「愛国」的な人々を喜ばせ、差別的な風潮を強化する。こうして「保守」がますます支持され、日本はますます極右化し、それに応じて中国・韓国との外交的な溝はさらに深くなるのだろう。
****************************
追記(2015年12月28日)
日韓外相会談 慰安婦問題で最終的解決を確認 NHKニュース(12月28日 16時17分)
韓国側の報道ではまた異なったニュアンスやここで言及されていない内容が出るかもしれないが、とりあえずNHKのニュースを引いておく。
日本と韓国の外相会談がソウルで行われ、慰安婦問題を巡って、日本政府は責任を痛感しているとしたうえで、日韓両政府は韓国政府が設置する財団に日本政府の予算からおよそ10億円の資金を拠出し、元慰安婦の心の傷を癒すための事業を行うことで合意しました。また、両政府は、こうした事業の実施を前提に、この問題が「最終的かつ不可逆的に」解決されたことを確認しました。このニュースを読んでも、上で書いた印象は変わらない。事態はますます困難になっていくだろうという思いしかない。
日本と韓国両政府は、両国の関係改善の大きな障害となってきた慰安婦問題の最終的な妥結を目指し、28日、韓国のソウルで、岸田外務大臣とユン・ビョンセ(尹炳世)外相による日韓外相会談を行いました。
会談のあと、両外相はそろって記者発表を行い、合意事項について発表しました。この中で、岸田外務大臣は「慰安婦問題は、当時の軍の関与のもとに、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している」と述べました。そのうえで、岸田大臣は「安倍総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦としてあまたの苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」と述べました。
さらに、岸田大臣は「日本政府の予算により、すべての元慰安婦の方々の心の傷をいやす措置を講じる」としたうえで、韓国政府が設置する財団に日本政府の予算でおよそ10億円の資金を一括して拠出し、「日韓両政府が協力し、元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒しのための事業を行う」ことで合意したことを明らかにしました。
そして、岸田大臣は、両政府間でこうした事業を着実に実施するという前提で、この問題が「最終的かつ不可逆的に」解決されたと確認したことを明らかにしました。また、日本政府として、韓国政府とともに、国連など国際社会で慰安婦問題を巡って互いに非難・批判することを控える考えを示し、今回の合意について、「日韓首脳の指示に基づいて行った協議の結果であり、これをもって、日韓関係が新時代に入ることを確信している」と述べました。
一方、ユン外相は、元慰安婦に対する事業が着実に実施されることを前提に、日本政府とともに、「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と述べたうえで、日本政府の実施する元慰安婦の心の傷をいやす措置に協力する考えを示しました。
また、ユン外相は、ソウルの日本大使館の前に設置された、慰安婦を象徴する少女像に関して、「日本政府が、大使館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行うなどして、適切に解決されるよう努力する」と述べました。
そして、ユン外相も、岸田外務大臣と同様に、韓国政府として日本政府とともに、今後、国連など国際社会において、この問題について互いに非難・批判することを控える考えを示しました。「歴史的、画期的な成果」
岸田外務大臣は記者団に対し、「今回の合意により、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認した。このような合意ができたことは歴史的、画期的な成果であると考える。これにより、日韓関係は未来志向の新時代へと発展すると考える。また、日韓、日米韓の安全保障協力も前進させる素地ができたと思う」と述べました。
ただ、今回の「合意」に注目する一つのポイントとしては、日韓請求権協定の扱いがどうなったのかということがある。
この「合意」の前日の報道では、韓国側の立場は次のようだった。
時事ドットコム:慰安婦問題は未解決=請求権協定の立場不変-韓国外相(2015/12/27-15:58)
【ソウル時事】韓国の尹炳世外相は27日、日韓請求権協定に関し「われわれの立場は変わりないし、今後も変わらない」と述べ、慰安婦問題は請求権協定の対象外で、解決していないとの従来の考えを強調した。ソウルで記者団に語った。この点について、今回の「合意」の記者会見で、岸田外相は日本は、慰安婦問題は同協定で法的に解決済みとの立場で、28日の日韓外相会談を控え、改めて見解の差が浮き彫りになった。
尹外相は「先月の韓日首脳会談を契機に、協議が加速している。この時期に韓日外相会談を行うのは時期的に非常に重要だ」と強調。さらに、「われわれの立場を最大限反映させるよう努力を尽くす。局長級協議に臨む李相徳東北アジア局長に、韓国政府の確固とした立場を指示してある」と語った。(2015/12/27-15:58)
日本政府は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」との立場。岸田氏はこうした日本政府の立場について「従来と変わらない」と記者団に語った。とのこと(時事ドットコム:慰安婦問題、日韓が合意=日本政府「責任を痛感」-「最終、不可逆的に解決」確認)。
【ソウル時事】日韓両国間の大きな懸案となってきた、いわゆる従軍慰安婦問題をめぐる両政府の協議が28日、合意した。合意文書によると、日本政府は同問題で「責任を痛感」するとともに、安倍晋三首相が「心からおわびと反省の気持ち」を表明。元慰安婦支援のため、韓国政府が財団を設立し、日本政府の予算で10億円程度の資金を一括拠出する。NHKによれば、韓国側の首相と韓国の朴槿恵大統領はこの後、電話で会談し、合意を確認する。日韓両政府は今年、国交正常化50年を迎えたことを踏まえ、慰安婦問題の妥結を急いだ。懸案決着への道筋が付いたことを受け、双方は関係改善に全力を挙げる。
岸田文雄外相と尹炳世韓国外相がソウルの韓国外務省で会談、合意に達した。会談後の共同記者発表で、岸田氏は「日韓両政府は、慰安婦問題について不可逆的に解決することを確認するとともに、互いに非難することを控えることで一致した」と表明。尹外相も日本政府による合意事項の履行を前提に、「この問題が最終的、不可逆的に解決することを確認する」と述べた。
また、ソウルの日本大使館前に設置された慰安婦問題を象徴する少女像について、尹外相は元慰安婦支援団体「韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会(挺対協)」を念頭に、「可能な対応策を関連団体と協議し、適切な解決策へ努力する」と述べた。日本政府は少女像の撤去を求めている。
元慰安婦の請求権を含む法的問題について、日本政府は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」との立場。岸田氏はこうした日本政府の立場について「従来と変わらない」と記者団に語った。 (2015/12/28-16:43)
ユン外相は、元慰安婦に対する事業が着実に実施されることを前提に、日本政府とともに、「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と述べたとのことだが、この「最終的かつ不可逆的に解決されること」の意味が、韓国と日本で異なった解釈を許容する形になっている可能性がある。
また、少女像の撤去問題については、韓国側の「努力」という形になっており、撤去を約束する形にはなっていない。像の設置主体は韓国政府ではないのでこれは当然だけれども、この約束が現実になるのはなかなか大変だろう。土地所有者がソウル市だそうなので、最終的には裁判か行政命令で撤去させることになるのかもしれないが、その強権性は波乱を呼ぶだろう。
そして、日本政府が要求していたというアメリカでの少女像設置などの抑制は、どうやら全く認められなかったようだ。そんなことは全体主義国家でもなければ到底無理な話なので、これもまた当然とは言える。
先に述べたように、韓国政府が外交的配慮を優先して(……まあ、もともと彼らはそういう方向性で、日本政府と角を立てたいわけではなかったのだけれど、安倍政権下のアレな人たちが続々と愚行を繰り返して韓国政府を先鋭化させたわけである)、今回の合意を作ったとしても、それが「決着」にならないことはいうまでもない。日本側が加害責任に真摯に向き合わない限り、つまり、せめて河野談話が示している取り組みの一つでも日本国内で誠実に行っていかない限り、「決着」などできるはずもない。歴史教科書から「慰安婦」に関する記述が姿を消しているなどという現状で、「歴史的、画期的な成果」(岸田外相の談話)など得られるはずもない。そして、このような形での日本政府の取り組みは、今回の合意では一切約束されていないのである。
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 日本大使館、正しい日本理解「日本は検閲の国」というイメージ広報に成功。(2019.11.06)
- 伊勢市教委、日本の戦争責任批判・犠牲者の鎮魂は許さないという姿勢を明瞭にする。(2019.10.31)
- 歴史修正主義の走狗となりアメリカで破廉恥な圧力を掛ける日本外務省(2019.10.30)
- 反天皇や日本の戦争責任を問う展示は中止、朝鮮人差別の展示は続行。(2019.10.28)
- 朝鮮学校の無償化訴訟、東京と大阪で敗訴が確定。(2019.09.03)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント