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2016/02/24

滅びの道は私たちが作っている

声優さんがまさかの方法で痴漢を捕獲→痴漢青ざめて逃走「すげえ」「そりゃ双方驚くよ」 - Togetterまとめ
はてなブックマーク - 声優さんが痴漢を捕獲した方法がスゴ過ぎて話題に→痴漢青ざめて逃走「そりゃ双方驚くよね」 - Togetterまとめ

朝、女性がエレベータを待っていると、後ろの男性が尻に指を突っ込んできたという話。
この女性が笑い話のように語る調子に引きずられたのか、後に続くコメントが皆軽い。

その中で、これが笑い話ではないことを指摘したり、女性が日常的にこうした危険に向き合っていることを指摘しているコメントは少ない。

笑い話みたいになってるけど、笑えんよな。本人が明るいからそう見えるってだけ。
ただの笑い話で済まさんで欲しいよな見てる人は。
笑えるように書いてあるけど…これ、エレベーターで後ろから突然、股間の奥に向けて指を突っ込まれたって話。深夜でもない、朝。かなりの恐怖体験だから。でも、こういう卑劣な痴漢、本当に多いんだ。満員電車だけじゃなく、あらゆるところで。笑った後に、身近な女性の(幼児も男性も遭う)被害に、どうか気がついてあげて欲しい。
強調は引用者による。

この記事を思い出した。

男性は知らない。すべての女性がやっていることを。 | Gretchen Kelly(投稿日: 2015年12月07日 20時21分 JST 更新: 2015年12月12日 21時33分 JST)

私たちは怒りや恐怖や失望を、表に出すことはありません。笑顔を取り繕ったり、軽く笑ったりして、何もなかったかのように振る舞うのです。おおごとにならないよう努めるのです。心の中でも態度でも騒ぎ立てたりはしません。そうしなければ、大きな対立を招くかもしれないからです。

そうする方法を、私たちは子供のころから学びます。それに名前をつけたり、他の女の子も同じことをしているのかなんて考えたこともありませんでした。それは独学で得るものです。観察して、自分の行動がどんな結果を招くかを素早く察知するのです。

友達がそういう目に遭っているのを、私たちは知っています。そうしたことを何度も聞いて、当たり前になっています。真剣に考えることもありません。ある日、自分が本当に危険な状況に直面するまで、体の関係を迫った男友達が強姦の罪で告訴されるまで、大晦日に一人で働いている時にボスがやってきて無理やり年越しのキスをするまで、真剣に考えないのです。

こうしたあまりにひどい出来事が起きた時は、それも友達や恋人た夫に話すかもしれません。でもそれ以外のことは? 結局何も起こらなかったけれど、私たちを嫌な気持ち、不安な気持ちにさせた出来事を、わざわざ非難したりはしません。

それが女性の現実なのです。

嫌な気持ちになっても笑って済ませます。なぜなら他に選択肢はないと思えたから。

当事者が笑い飛ばしていても、問題が小さいとは言えない。状況のコミカルさに目を奪われると、痴漢問題の深刻さが隠されてしまいかねない。

ずっと以前、知人の女性の何人かから痴漢や声かけ、セクハラに類する被害経験について話を聞いたことがあるのだが、出てくる経験談の多さに驚いた。女性は皆ごく当然のように日常的にこの種の危険と不安の中に生きているんだと思わされたのを覚えている。

こうした認識のズレはかなり広範なものだ。日常的な性的リスクについて男女間の意識ギャップが大きいという話は、次の記事からも伺える。

レイプから身を守るためにアメリカの女性たちが身につける護身用グッズ(画像集)(投稿日: 2015年05月13日 21時19分 JST 更新: 2015年05月13日 21時19分 JST)

女子学生たちが多くの護身用グッズを持っていたことは、本人たちにとってはまったく驚きではなかったが、男子学生たちにはショックだったようだ、とヨコムさんは話す。
……(中略)……
自身のウェブサイトでヨコムさんは、女子学生が手にしている武器は「女性が毎日直面している現実を表すものであり、レイプ問題に悩む社会で『常に警戒している』ための必需品」だと説明している。
……(中略)……
ヨコムさんは「『女性のほうも求めていた』と言われたり、酔っぱらっていたことを責められることに、女性がどう向き合っているのかを、この写真集で表現したい」と話している。
軽く語られているからといって軽く受け止めてはいけない。全く語られていないからといって問題がないわけではない。非当事者である我々が受け流してしまうことが問題の温存につながっていく。

********
大阪市の教科書採択で、育鵬社を推す運動に企業ぐるみの動員がかかっていた。

同一文面で育鵬社「支持」 大阪市教科書アンケート、動員か - 共同通信 47NEWS(2016/2/22 23:06)

 大阪市教育委員会が昨年8月の中学社会科教科書採択で参考にするため保護者らを対象に実施した無記名のアンケートをめぐり、採択された育鵬社版を支持した回答中、1人で10枚以上記載したと疑われるケースが多数あることが22日、分かった。文面や筆跡が似通っていた。企業の動員が背景にある可能性もあり、採択の公正さをどう担保するか議論を呼びそうだ。

 市教委は採択審議冒頭、育鵬社に肯定的な意見が約7割、否定的な意見が約3割と報告した。市民団体が情報公開請求で回答の写しを入手。共同通信が分析したところほぼ同じ文面で筆跡の似た回答が10枚以上あるケースが少なくとも8例あった。

詳細が以下のブログ記事に書かれている。

大阪市の育鵬社採択で新たな不正が発覚!2/23大阪市議会で追及予定! - グループZAZA(2016-02-22 07:17:16)
「子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会」のブログ
同会が大阪市議会に提出した陳情書の記事

これらによると、この動員の本体はフジ住宅らしい。
フジ住宅については、過去に何回か記事にしたことがある。
フジ住宅と今井光郎氏の研究会: 思いついたことをなんでも書いていくブログ
「一般社団法人今井光郎幼児教育会」が助成した幼稚園と保育園: 思いついたことをなんでも書いていくブログ

今回の動員のきっかけは、フジ住宅の今井会長に育鵬社の関係者が「数多く教科書アンケートを記入していただければ、育鵬社に採択される可能性が高くなる」と告げたことだったという。

そして、数字からするとアンケートで育鵬社を支持する意見の大半がこの動員によるものだと思われる。
また、
・勤務時間中の活動を認め、時間給を支払う
・制服や社章を取るなど、会社の関与を隠す工作を支持
・アンケート用紙を大量に持ち帰らせ、秘書室で分別管理、例文を示す
など、動員が会社ぐるみだったらしいことも伺える。

これについて、教育委員会は
「アンケートは参考資料。教委の責任で公平に採択した」
「アンケートの結果は重視しておらず、採択の決め手ではない」
と市議会で答弁しているそうだ(下記朝日新聞記事)。

大阪市教委の教科書巡る住民調査に動員か 育鵬社版採用:朝日新聞デジタル(2016年2月24日09時02分)

 昨夏にあった大阪市立中学校の歴史・公民教科書の採択の参考となった住民らを対象にした市教委のアンケートをめぐり、「組織的動員で育鵬社版への肯定意見が多数を占めた疑いがある。育鵬社版は公平に採択されたのか」という指摘が、23日の市議会の委員会で相次いだ。市教委は「アンケートは参考資料。教委の責任で公平に採択した」としている。

 昨年8月、市教委は委員6人による多数決で今春から使う歴史・公民の教科書に「新しい歴史教科書をつくる会」の元幹部らが編集した育鵬社版を採択した。採択前の同6~7月、市教委が市内の教科書展示会場で住民らにアンケートした結果、育鵬社版に肯定的な意見が全体の約7割の779件を占めた。

 これについて、大阪の教員らでつくる市民団体「子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会」が情報公開請求でアンケートの回答の写しを入手。自由記述欄に育鵬社版以外を「自虐史観に満ち溢れた教科書ばかり」などとほぼ同一の文面で記され、筆跡も似たものが複数あったとして、市議会に真相究明を求める陳情書を提出していた。

 この日の市議会で、市教委の大森不二雄委員長は「アンケートの結果は重視しておらず、採択の決め手ではない」と答弁。ただ、アンケートは匿名で実施したことから「組織的動員はあったかもしれない」とし、実施方法の改善を検討すると述べた。(長野佑介)

ただ、「アンケート結果は審議に影響ない」とする市教委の立場は、上のブログ記事によれば、かなり疑わしい。というのは、

・市教委は、採択会議の冒頭で市民アンケートの結果(育鵬社に肯定意見が約7割、否定意見が約3割)を報告したが、市教委が特定教科書の賛否数(割合)だけを報告するのは初めてのことであった。
・アンケートの回答内容を一読すればその異常さが明らかであったにもかかわらず、大阪市教委はこれをわざわざ数値化し、採択会議の冒頭で報告した。
・そもそも、「アンケート結果が採択に重要だ」ということをなぜ育鵬社が事前に知っていたのか。

ということで、市教委がもともと育鵬社に肩入れしていたらしいことが伺えるからである。

育鵬社の問題は、よく知られているように、自民党などが各地で採択運動を行っているが、ちょうどこの時期、次のような記事があった。

保守色系教科書推す自民 月末期限の採択に合わせパンフ:朝日新聞デジタル(2015年8月21日07時03)(魚拓

 自民党が教育現場への関与を強めようとしている。8月末が期限の4年に1度の教科書採択に合わせ、保守色の強い教科書を選んでもらうためのパンフレットを作成。地方議員が議会で質問することなどを通じ、採択権限を持つ市町村教委にはたらきかけることをねらう。さらに、政治的中立を私立高校の教員にも求める法改正も検討している。

 「より良い教科書を子供たちに届けるために」

 安倍晋三首相に近い議員でつくる議員連盟「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長=古屋圭司衆院議員)は先月、こんなタイトルのパンフレットを作り、全国の自民の地方議員に配った。

 パンフレットには「議会質問用参考資料」とも書かれており、冒頭で「安倍内閣の教育再生の成果として、教科書は大きく変わった。しかし、記述にはいまだバラツキがある」と指摘。第2次安倍政権で初めて作られた今回の社会科教科書は、領土問題や近現代史で政府の見解や立場を強調する記述が盛られているが、まだ満足できないとの認識で「都道府県議会、市町村議会でのしっかりした検証」を求めている。

 さらに、「国旗・国歌」「領土」「自衛隊」「拉致問題」「外国人参政権」「南京事件」「慰安婦」などの項目について出版社8社の教科書の記述を比較。「圧力」との批判を防ぐため、特定の社を支持する明確な表現はないが、保守色の強い教科書に対しては、国旗や国歌について「特集ページで詳しく記述している」などと好意的に紹介している。

 一方、それ以外の教科書に対しては、拉致問題について「索引に拉致問題が載っていない教科書があります」「子供たちが参照しやすいように改善することが求められる」と評したほか、北方領土についての表現を「ソ連・ロシアの行為を不法とは記述していません」と指摘するなど、否定的なニュアンスをにじませている。

教科書採択は今月末までに各地で終わる予定で、これまでに大阪市教委や横浜市教委が「新しい歴史教科書をつくる会」の流れをくむ育鵬社の歴史・公民教科書を選定。17日には沖縄県石垣市と与那国町の中学校で、同社の教科書の採択が決まった。

 議連幹部の一人は「今回は全教科書がおおむね、我々のストライクゾーンに収まったが、まだ自虐的な表現の教科書はある。このパンフを見れば、党の地方議員がどの教科書がいいか分かるはずだ」。保守色の強い教科書を採択するよう、地方議員を通じて地元教委に働きかけてもらうねらいが透ける。

■教員への規制拡大案も

 一方、自民党は教員に対する「政治的中立」の要求を強める。政治的中立を逸脱した公立高校教員に罰則を科す法改正を安倍首相に提言したのに続き、対象を私立にも広げようという動きを見せる。

 小中学校の教員が対象で、罰則規定が盛り込まれている「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」について、「義務教育」を「公教育」に変え、私立高校まで規制を拡大させる案が浮上している。

 党内の「日教組(日本教職員組合)が偏向教育をしている」との声を受け、対象を公立高に絞っていたが、党幹部は「私立の影響力が強い地域もある。公立教員だけでは不十分だ」と話す。

 来夏の参院選から、選挙権年齢が18歳以上になることに合わせた動きで、子どもたちに政治参加を促す「主権者教育」のあり方を議論する中で、最終的な方針を決める見通しだ。しかし、党内には「政権党として特定の団体を『狙い撃ち』するようなやり方はすべきではない」(文部科学部会幹部)との意見も根強くある。(相原亮)

そして、大阪市教委での教科書採択に関して、育鵬社の採択運動に動員がかかっていることも以前から報じられていた。私もその記事は読んでいたのだが、うかつにも記述を見落としていたのだった。

育鵬社教科書の採択運動「強要され苦痛」 勤務先を提訴:朝日新聞デジタル(2015年9月1日10時59分)

 「新しい歴史教科書をつくる会」の元幹部らが編集した育鵬社(いくほうしゃ)の中学教科書をめぐり、勤務先から採択推進運動に協力を求められ苦痛を受けたなどとして、東証1部上場の不動産大手・フジ住宅(大阪府岸和田市)で働く在日韓国人の40代女性が8月31日、会社側に慰謝料など3300万円の賠償を求める訴訟を大阪地裁岸和田支部に起こした。

 女性は2002年からパート社員として勤務。訴状によると、社内では一昨年ごろから中国や韓国を批判する書籍や雑誌記事のほか、それらを読んだ社員が「中国、韓国の国民性は私も大嫌い」などとする感想文のコピーがほぼ連日、フジ住宅の会長(69)名で社員に配られたという。

 今年5月には、太平洋戦争について「欧米による植民地支配からアジアの国々を解放」するとの目的が掲げられた点などを強調した育鵬社の教科書を称賛する文書を配布。各地の教育委員会が採択するよう、社員が住所地の市長や教育長らに手紙を書き、各教委の教科書展示会でアンケートに答えるよう促し、「勤務時間中にしていただいて結構です」と書き添えていた。

 原告女性は、社内文書について「(韓国人は)利己的な人が多い」「噓(うそ)が蔓延(まんえん)している民族性」など差別的表現が多いとし、提訴後の会見で「偏見で社内が盛り上がっていくのが怖かった。私のような存在の居場所がなくなる」と心情を説明。会長が社員に採択運動への協力を求めることは事実上の強要であり、憲法が保障する人格権の侵害だとして、会社と会長には賠償責任があると訴えた。

 フジ住宅は「訴状が届いていないのでコメント致しかねる」としている。

 育鵬社の教科書の全国シェアは今年度、「歴史」「公民」とも業界5位の約4%だったが、今夏、大阪市や横浜市など都市部で来年度用に相次ぎ採択され、さらに伸びるとみられる。原告側によると、フジ住宅の社員らが実際に手紙を送ったとみられる自治体は関西に40以上あるという。(阿部峻介)

この記事にはフジ住宅が動員を呼びかける文書の一部が写真として掲載されている。その一部を書き起こしておく。
R)各教科書展示会場にアンケート用紙置いてあると思いますが、中学校、高校のアンケートは別々に書かれた方が良いと思います。

S)市長や教育庁にお手紙を書かれたり、FAX、メールをされたり、又会いに行かれたり、あるいは教科書アンケートに行かれる場合は、勿論勤務時間中にしていただいて結構です。この件は子供達、日本の為ですので。せめて子供達には良い教科書を使ってあげたい!!と強く強く思っております。

T)市長や教育長の方にお手紙やメール、FAXをされました方は、私(会長)のみで結構ですのでご報告して下されば、ありがたく思います。

(所々の表記のおかしな箇所は文中ママ)。

今回悲しいのは、これに応じて多数のフジ住宅の社員らがやらせアンケートに協力したこと。おそらくあまり関心がなかった人も含まれているのではないか。会社の働きかけに唯々諾々と従って「民意」を行使した結果、日本第2位の大都市の公立学校が全て右翼的教科書で勉強するというとんでもない事態を引き起こしてしまった。

重大さに無自覚なままユダヤ人迫害に荷担していった昔のドイツの人々のようだ。
「いいえ、あなたたちは知っていた」という印象的なフレーズを思い出す。

NHK「新映像の世紀」第3集。現実を直視し、当事者としての自分を自覚すること。 - 三十歳の原点~LIFE SHIFT~(2015-12-21)

ドイツ降伏後、連合軍のアイゼンハワー最高指揮官は、各収容所を隅々まで見て回ったという。そして、死体の山が築かれた収容所に、アメリカ軍部隊や報道関係者を呼び寄せ、この惨状がまぎれもない現実であることを知らしめた。

また一番ショッキングだったのは、ブーヘンヴァルト収容所の話。ここでは、ドイツ降伏後に米軍が2,000人のドイツ市民を収容所へ連行し、自らの指導者が行った惨状を強制的に見せた。将来、この出来事を在りもしないでっち上げだと言う人が出たとしても、「私が見ていました」と現実を伝えられる証人をたくさん作ったという。市民は並んで死体の山の横を歩きながら、恐怖におののいたことでしょう。

(あまりの現実に)女たちは気を失い、男たちは顔を背けた。
「知らなかったんだ」と言う声が上がった。
すると、解放された収容者たちは怒りをあらわにこう叫んだ。
「いいえ、あなたたちは知っていた。」
NHKスペシャル | 新・映像の世紀第3集 時代は独裁者を求めた(NHKオンライン)

*****
参考:教科書採択に関しては、次のような事件が明るみに出ていて問題化している。

教科書各社:不正まん延、苦しい弁明「良い本つくるため」 - 毎日新聞(2016年1月22日 12時21分(最終更新 1月22日 17時33分))
検定中教科書:教育長も閲覧 育鵬社・14年度 - 毎日新聞(2016年2月23日)


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