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2016/07/20

環境保護を身にまとった排外主義+α

下記の運動。

奄美大島のすばらしい自然を残すため、中国人客5,400人を乗せた22万トン級クルーズ船の寄港地建設計画をやめてもらいたい!

この短い呼びかけ文の中に「中国人」が6回出てくる。

現在建造中で2018年完成予定の世界最大級のクルーズ船が上海から九州に向かう途中で奄美に寄港する計画。そのために奄美大島龍郷町芦徳の浜に350mの桟橋を建造し、中国人観光客のために芦徳半島はテーマパークにするという。
寄港を予定しているクルーズ船…
226,000トン、全長362m、幅65m、高さ72m、81,500馬力のエンジン
(比較として、世界最大のニミッツ級原子力空母より大きい)
乗客は中国人5,400名(乗組員2,100名)
つまり、寄港日は龍郷町にいる人の半分以上が中国人になります。
龍郷町民約6,000人に対して、中国人観光客5,400人プラス乗組員2,100人という、島のキャパシティを超えた規模の船が来たなら、奄美ならではの心地良さを壊してしまうでしょう。
”中国人の観光地”のイメージがつくと、日本人観光客や日本人移住者は必ず減少します(差別的な考えではなく、島の規模と対応力の問題です)。現在移住してきているIターン者も、生活環境の悪化があれば島外への転居を考えざるを得ません。
「差別的な考えではなく」なのだそうだ。頭が痛い。
大型クルーズ船の発着場とレジャー施設建設に反対するのに、なぜ「中国人」を連呼しなくてはならないのだろう。たとえばこれが日本や欧米からのクルーズだったらどうなったのだろう、「日本人」とか「欧米人」とかを6回も連呼しただろうかとつい思ってしまう。

もっとも、静かな村に外国人が大挙して押し寄せるというイメージに地元民が不安を覚えることも理解できる。その不安に乗じて排外主義は忍び寄る。だから、この不安をほぐす努力が必要だ。それはもちろん開発推進側がすべきことではあるけれど、寄航施設の建設への反対の本義が自然環境の破壊と住民生活への影響、そして強引な進め方にあるのなら、反対側も自分たちが排外主義に巻き込まれないように、そして住民の不安をあおらないように留意しなければならない。第三者の誰かへの差別感情を強化することは運動の目標とは関係ないし、長い目で見れば地域社会を毀損するのだから。

ちなみに、中国台湾発のクルージングツアーの多くでは寄港地滞在は朝から夕方まで、つまり長くて12時間程度しかいない。そして奄美大島に寄港する船は一年に数十もないだろう。そして、龍郷町は大島の中でも端にあるから移動も不便で、島内を縦横無尽にツアーバスが走り回るということもないだろう。そもそも動員できる観光バスがそんなにないし。大型クルーズ船を当て込んでバスを買い込んだらたぶん持て余す。常時観光客があふれるほどにはインバウンドを期待できないからバスの稼働率が上がらないだろう。
ほかにも観光客の行動管理や入管・警察との絡み、住民の治安への不安などいろいろ混ざって、結局ツアー客は限定された場所で囲い込まざるをえないだろう。したがって、町内を外国人観光客が我が物顔でぶらぶら歩くということは起こりにくいだろう。
というもろもろのことから、「住民人口より中国人が多くなる」みたいな不安は少なくとも生活空間が侵食されるという意味においてはあまり現実的ではないだろう。
外国人への不安感を開発反対運動のテコに利用することは、環境保護や地元民の生活防衛という大義を汚すし、地域の対外イメージにも傷をつけることになるのではないか。

私も龍郷町は何度か訪問しているし、奄美群島をめぐる状況はある程度知っていて、その上で今回の開発には懐疑的な気持ちを抱いているが、この署名の呼びかけだとちょっと乗れないなあと思う。地域の人たちの不安をそのまま代弁しているかのようにも読めるが、もしそうなら余計に問題だと思うからだ。悲しいことだけど。


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