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2017/01/10

毎日新聞の戦争責任観についてのメモ

従軍慰安婦問題に関する毎日新聞の論調をしばらく見てきた印象だが、毎日新聞はアジア女性基金を支持していて、朴裕河氏にも親和的な立場を取っている。そして、この立場の基本には、被害者側からの許しが重要だという認識があるように思う。

和解は心の問題であり、それには「許す」という感情が重要だという考え方には一面の真理があるが、しかし、それを加害者側が言うのか…と思わざるを得ない。しかも我々の被害者に向けて。そしてまた、許しに焦点を当てた「和解」には再発防止への視点が抜けている。
こうした見方の底にあるのは、あの惨劇がもう過ぎたことであり、我々には無縁で再発するようなものではないという認識だろう。今の日本は平和国家であり、我々日本人が残虐な行為をするようになる心配などないのだという意識が、戦争責任へに対するこうした態度の一要素になっているのではないだろうか。

私が毎日新聞のこういう視点に気がついたのは、日英和解についての記事を何度か目にしたときだった。

参考:「日英兵士の和解」―ビルマ戦線―-日本財団会長 笹川陽平ブログ
掲載された毎日新聞記事写真をみると、「和解」の観点が日本と日本人の名誉回復にあるのが印象的である。

今回、当時読んだ記事を拾おうと検索してみたのだが、あまり見つからなかった。一つ、日米になってしまうが、三菱マテリアルによる米兵捕虜への謝罪に関する記事を拾っておく。

そこが聞きたい:日米の戦後和解 岡本行夫氏 - 毎日新聞(2015年12月9日 東京朝刊)

(前略)中国と韓国が高まるナショナリズムを背景に、世界に向け反日キャンペーンを行いました。(……中略……)民間の側でも7月に、企業が第二次大戦中に強制労働させられた米国の元捕虜に謝罪するといった出来事がありました。

−−三菱マテリアル(旧三菱鉱業)ですね。岡本さんは同社の社外取締役を務めていますが、どんな考えで捕虜問題に取り組んだのですか。

 元捕虜の存命者がわずかになっています。私も人間の尊厳に立ち返って謝罪すべきだと思っていました。米国政府は第二次大戦中に強制収容された日系アメリカ人に謝罪し、補償しました。大事なのは人間の心です。今回、元捕虜からも金銭的な要求はありません。
(……中略……)

 歴史和解には波及をどこまで考えるかという難しい問題があります。(……中略……)

 一方、他の企業が提訴されている「韓国人徴用工」の問題は性質が違います。65年の日韓請求権協定のもとで徴用工問題は明確に解決されましたし、被害の実態も異なります。韓国人は日本人と共に働かされていました。劣悪な職場に割り振られた韓国の人々は強制労働だったと主張しますが、米国の捕虜や中国人らに課された奴隷状態とは違います。

(……中略……)

中国や韓国は簡単には日本を許そうとしません。(後略)

この岡本氏の談話には、加害責任を曖昧にしてもらえる相手には寛容さを示す特徴が現れている。怒り、厳しく追及してくる被害者に対しては警戒感があらわになっている。そして、後に示すが、毎日新聞はこの岡本氏の論調に沿った社説を出して日米和解を説いている。

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そこが聞きたい:日米の戦後和解 岡本行夫氏 - 毎日新聞(2015年12月9日 東京朝刊)

政府の消極姿勢に変化 外交評論家・岡本行夫氏
 戦後70年の今年は歴史認識に注目が集まった年だった。日米開戦の12月8日をはさみ、現在、外務省の招きで米国の元捕虜が来日中だ。日本の和解への対応をどうみるか。元捕虜への民間謝罪に関わり、安倍晋三首相の戦後70年談話を検討する有識者会議の委員も務めた外交評論家、岡本行夫氏(70)に聞く。【聞き手・岸俊光、写真・竹内幹】

−−日米関係を中心に、この1年の日本の歴史問題についての取り組みをどう評価しますか。

 70年という期間は、感覚的にちょうど「史実」が「歴史」になって固定化し始める節目だったような気がします。それに中国と韓国が高まるナショナリズムを背景に、世界に向け反日キャンペーンを行いました。70年が国際的にも強く意識されて、日本も反応せざるを得なかったという面があります。日本が前に進むには、歴史にどう対応するかを考える必要がある。安倍首相はそうみて、戦後70年談話の参考にするために21世紀構想懇談会を設けました。懇談会はバランスのとれた歴史観を示したと思います。内閣として歴史問題に正面から取り組んだと言えるのではないでしょうか。民間の側でも7月に、企業が第二次大戦中に強制労働させられた米国の元捕虜に謝罪するといった出来事がありました。

−−三菱マテリアル(旧三菱鉱業)ですね。岡本さんは同社の社外取締役を務めていますが、どんな考えで捕虜問題に取り組んだのですか。

 元捕虜の存命者がわずかになっています。私も人間の尊厳に立ち返って謝罪すべきだと思っていました。米国政府は第二次大戦中に強制収容された日系アメリカ人=1=に謝罪し、補償しました。大事なのは人間の心です。今回、元捕虜からも金銭的な要求はありません。

−−2009年には、当時の藤崎一郎駐米大使が元捕虜団体の会合に出席して謝罪したことがあります。

 いいことでした。政府は長年、サンフランシスコ講和条約で決着済みとして民間が元捕虜と個別和解することには消極的でした。それが第2次安倍政権になって、民間がやるのは自由という空気が出てきた。これで大変やりやすくなりました。私自身の関わりは、元捕虜による損害賠償訴訟が米国内で拡大していた00年以降です。取締役会では全員が謝罪に賛成でした。それからなお時間を要しましたが、今年実現できました。講和条約は戦争の悲劇に、人間としてどう行動すべきなのかについては言及していません。企業が使用者、管理者としての責任を感じて謝ることは自然なことだと思います。

−−同社の中国人強制連行訴訟にも和解の動きがありますね。

 歴史和解には波及をどこまで考えるかという難しい問題があります。日本が戦地から連行した捕虜約3万6000人のうち、95%が米国、英国、オランダ、オーストラリアの人々でした。1971年の昭和天皇の訪欧の際にはオランダや英国で抗議運動が起きました。三菱マテリアルとしては、和解できるなら、米国以外の英国、オランダ、オーストラリアにも謝罪するという立場です。中国人の強制労働被害者にも真摯(しんし)に対応します。訴訟の中で話し合っています。

 一方、他の企業が提訴されている「韓国人徴用工」の問題は性質が違います。65年の日韓請求権協定のもとで徴用工問題は明確に解決されましたし、被害の実態も異なります。韓国人は日本人と共に働かされていました。劣悪な職場に割り振られた韓国の人々は強制労働だったと主張しますが、米国の捕虜や中国人らに課された奴隷状態とは違います。

−−ところで、途絶えていた日韓首脳会談が先月実現しました。米国の仲介をどう評価しますか。

 日韓で話し合っても進展は限られます。ドイツのメルケル首相はフランスとの和解を強調していますが、日本と韓国を仲介できるのは米国です。中国や韓国は簡単には日本を許そうとしません。フランスが域内諸国を説得したように、米国がアジア・太平洋国家の一員として仲介してくれるのはありがたいことです。

−−米大統領の被爆地訪問を日米が体験を語り継ぐ契機にという声があります。どう考えますか。

 来てもらいたいですね。日本の首相の真珠湾訪問も、米大統領の被爆地訪問も、不可能ではないと思います。米議会上下両院合同会議で4月に行われた安倍首相の演説=2=は、「真珠湾、バターン・コレヒドール、サンゴ海」という戦場をあげ、「悔悟」という言葉を用いて、米国で評価されました。三菱マテリアルの今回の謝罪に、米国は原爆投下を謝っていないという声もありました。しかし相互謝罪がなければ何もしないという考えは、個々の状況を無視していると思います。日本は、歴史を次の世代にきちんと伝えなければなりません。特に高校で日本の近現代史を必修科目とすべきでしょう。若い人と接してそう実感します。

聞いて一言
 三菱マテリアルが元捕虜への謝罪を決めた陰には、元捕虜との交流を続けてきたライター、徳留絹枝さん(64)の仲介があった。7月に米ロサンゼルスで謝罪が行われる前には捕虜問題に間接的に言及した安倍首相の米議会演説があり、このときワシントンで催された首相夫妻主催の夕食会には元捕虜の一人が招かれた。そして11月、この元捕虜はオバマ大統領にも面会した。アジアとの和解は残されているが、日米和解の重要な一コマと言えよう。

 ■ことば

1 日系人強制収容
 米西海岸などに住む日系アメリカ人約12万人が1942年の大統領令により10カ所ほどの強制収容所に送られた。88年、レーガン大統領が補償法に署名。米国政府は初めて日系アメリカ人に公式謝罪し、生存する元収容者全員にそれぞれ2万ドルの補償金を支払った。

2 安倍首相の米議会演説
 安倍首相は今年4月末、米議会上下両院合同会議で「戦後の日本は先の大戦に対する痛切な反省を胸に歩みを刻んだ」と演説した。米側から評価される一方、東アジアの歴史問題に踏み込まず、安全保障関連法を夏までに成立させると明言したことに批判もあった。

 ■人物略歴

おかもと・ゆきお
 1945年生まれ。外務省北米1課長などを経て退職。橋本龍太郎首相と小泉純一郎首相の補佐官として、それぞれ沖縄問題とイラク復興を担当。今年、21世紀構想懇談会の委員を務めた。


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社説:12・8 日米の傷癒やす努力を - 毎日新聞(2015年12月8日 02時34分(最終更新 12月8日 02時34分))
 日本の真珠湾攻撃による日米開戦から、きょうで74年がたった。強固な日米同盟を築くに至った両国だが、今も深い傷を残す人がいる。

 日本と米国はそれを癒やす努力を続けなければならない。

 第二次大戦中に旧日本軍の捕虜となった元米兵ら10人が、日本政府の招きで14日まで来日している。

 政府による元戦争捕虜の招待は、心の和解を通じて日米の相互理解の促進を図ることを目的に2010年から始まった。これまでに訪日した元捕虜や介護者はのべ97人になる。

 戦後70年を迎え、元捕虜の高齢化が進んでいる。なるべく多くの人を招待しようと、10月に続いて、今年2回目の実施となった。

 この間、政府が招いた元捕虜の中には旧日本軍が1942年にフィリピン・バターン半島で約100キロを歩かせ、多数の死者が出た「バターン死の行進」の生存者が含まれる。09年には、当時の藤崎一郎駐米大使がこの元捕虜の団体の会合に出席し謝罪した。英国やオランダの元捕虜を招く事業の対象外だった米国の元捕虜の招待が、翌年に実現した。

 安倍晋三首相は今年4月に米議会上下両院合同会議で行った演説で、「真珠湾、バターン・コレヒドール、サンゴ海」という戦場をあげ、先の戦争で命を落とした米国人に哀悼をささげた。その折、首相夫妻が主催した夕食会には元捕虜が招かれた。

 今年は元捕虜を使役した企業の側でも、和解に向けた前進があった。

 三菱マテリアルが7月、米ロサンゼルスで、前身の三菱鉱業が大戦中に行った強制労働について、米国の元捕虜と遺族に日本の大企業として初めて公式に謝罪したのである。

 日本企業を相手取り元捕虜が損害賠償を求める訴訟が米国に広がっていた00年ごろ、日本政府はサンフランシスコ講和条約で決着済みであり法的責任はない、との立場を譲らなかった。裁判で日本の主張が認められたことで政府は道義的責任に基づく謝罪に転じ、民間も謝罪しやすい環境が整ったとみられる。

 米国は歴史問題をめぐる国際的な論議の舞台になることが多い。他の企業の動きはないが、一連の和解の意味は小さくない。

 一方、アジアとの関係改善は残されている。三菱マテリアルは、中国人被害者らとの和解を訴訟の中で模索している。

 米国政府はこのところ慰安婦問題で停滞する日韓関係を取り持つ姿勢も示してきた。当事国間では困難な問題の打開に向け、アジア・太平洋国家である米国の影響力は大きい。

 日米にはなお、原爆投下の問題などが横たわる。双方の努力でわだかまりがとけ、大統領の被爆地訪問が実現するよう期待したい。

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