毎日新聞を「国家公務員制度改革基本法」というキーワードで記事検索した結果(2017年3月27日時点)
政治家の口利きが横行している様子が分かる。官僚側でも記録がないとか、やりたい放題。森友学園の問題では、この体質が噴出しているなあ。
記録を「個人文書」として公開対象外としていたり、「ない」と言って後から「あった」と出してきたり、ごまかしの手口も似ている。
以下、毎日新聞のここ1年ほどの記事のピックアップ。ほとんど同じだが微妙に細部が異なる記事も含めて。これは「国家公務員制度改革基本法」というキーワードでの記事検索結果。甘利氏とURの問題、遠藤利明氏とALT派遣会社との癒着の問題で2016年2月頃の記事が多い。次に問題になったのが集団的自衛権の問題。ここ1年だけだが、これらに絞っても献金問題とか関連記事が多すぎて到底追い切れない。
以下の記事には、政官癒着、あるいは官僚の政治家べったり姿勢を批判する指摘が繰り返し見られるが、2014年5月末の内閣人事局設置はその姿勢を更に強化しているだろう。この方向はいわゆる「決められる政治」とか「変わらなきゃ」とかに見られる「政治主導」や「リーダーシップ」を強調する潮流を反映しているが、それは内閣府の肥大化、官邸主導という官の集権化だけでなく、自民党内部での執行部への集権化、小選挙区比例代表制という選挙制度に伴う政権安定化とも関係しているだろう。
●甘利・前経済再生担当相:現金授受問題 国交・環境省、秘書と接触の記録残さず 改革法では規定 - 毎日新聞(2016年2月3日 東京朝刊)
甘利明前経済再生担当相の現金授受問題で、国土交通省や環境省が甘利氏の秘書らとのやり取りについて、法律が定める記録を残していないことが分かった。第2次安倍内閣は法に基づき、政治家と官僚の不透明な関係を防ぐため各省庁に記録を作らせることも申し合わせているが、事実上、機能していなかった。(2面参照)国家公務員制度改革基本法は、官僚が国会議員やその秘書と接触した場合、「記録の作成、保存」と「その情報を適切に公開するために必要な措置」をとるよう規定している。
また、2012年末に発足した第2次安倍内閣は初閣議の後の閣僚懇談会で、同基本法と公文書管理法に基づき、「政官接触」の記録・公開について「大臣等の指揮監督の下に適切に対処する」ことを申し合わせた。
それ以降、内閣改造のたびに最初の閣議で「指導力を発揮」するよう菅義偉官房長官が各閣僚に要請している。
甘利氏の秘書らは昨年7月、都市再生機構(UR)と紛争中の千葉県の建設会社に問題解決を頼まれ、URを所管する国交省の住宅局長(当時)を訪問。電話や面談で計3回やり取りした。秘書らは14年9月25日には環境省の課長らとも面談した。
だが、両省は毎日新聞の取材に、これらの接触について記録を残していないことを明らかにした。
その理由について、国交省住宅局は「閣僚懇の申し合わせは『対応が極めて困難なものについては大臣に報告する』などと定められている。今回はUR担当者の連絡先などの問い合わせだったので、該当しないと判断した」と説明した。ただ、閣僚懇の申し合わせは大臣への報告とは別に接触記録の「作成・保存」も定める。同局は「規定は『大臣などの指揮監督の下に適切に対処』とあり、必ずしも全てを記録するということではない」としている。
一方、議員会館で秘書らと面会した環境省廃棄物・リサイクル対策部の山本昌宏企画課長(当時は産業廃棄物課長を兼務)は取材に「大事な話なら面談記録を作るが、今回の内容はそれに当たらず、1回限りだったこともあり、記録は残していない」と述べた。
政官接触記録について、基本法を所管する稲田朋美・行政改革担当相(当時)は14年4月の参院内閣委員会で「大臣らの指揮監督の下、適切に実施されていると認識している」と答弁。各省庁に任せていることを明らかにしている。
だが、第1次安倍・福田両内閣で行革担当相補佐官として公務員制度改革を担当した原英史(えいじ)氏(現・政策工房社長、元経産官僚)は「まさに今回のような事態を防ぐために、すべての政官接触を公平・正確に記録・開示しようというのが基本法の趣旨だ。基本法にも閣僚懇の申し合わせにも違反していると言わざるを得ない」と指摘。「本来は政府として制度を整備する義務があるはずだ。『表に出したくない』と官僚は思うのかもしれないが、そもそも官僚も政治家も税金で活動している。国民にチェックされて困ることがあってはならない」と話す。
一方、独立行政法人のURは甘利氏側との面談内容を記録し、生々しいやり取りが明らかになった。URは「担当者が個人的に作っていたメモ」(広報室)とし、政治家との接触を常に記録しているわけではないという。【日下部聡、樋岡徹也】
●甘利・前経済再生担当相:秘書問題 面会記録なし、首相が「適切」 - 毎日新聞(2016年2月5日 東京朝刊)
甘利明前経済再生担当相の現金授受問題に絡み、甘利氏の秘書らと面会した国土交通・環境両省の職員が国家公務員制度改革基本法の定める記録を残していなかった問題で、安倍晋三首相は4日の衆院予算委員会で「適切に実施されていると認識している」と、政府見解を繰り返した。村岡敏英・改革結集の会代表の「基本法は守られていると思うか」との質問に答えた。同基本法は政治家による圧力を防ぐため、官僚が国会議員やその秘書と接触した際の記録の作成・保存や公開を規定。しかし両省は毎日新聞の取材に「全てを記録するということではない」(国交省)などと回答、法に解釈の余地があると判断している。【日下部聡】
●遠藤担当相仲介問題:予算委で厚労省部長「何度か接触」 - 毎日新聞(2016年2月5日 20時25分(最終更新 2月5日 21時54分))
遠藤利明五輪担当相が、外国語指導助手(ALT)に関する通知を文部科学省が出す直前に、通知に関与した厚生労働省の担当者とALT派遣会社社員の面会を仲介した問題で、文科省と厚労省は5日の衆院予算委員会で、それぞれの担当者が遠藤事務所と派遣会社の3者で面談したことを明らかにした。厚労省の派遣・有期労働対策部長は「遠藤事務所で13年末ごろから(派遣会社社員と同省の担当者が)何度か接触した」と説明。「ALTについて派遣と請負の留意点や法令解釈を聞きたいということで、具体的なやりとりは厚労省で行った」と述べた。さらに「事務所の(衆議院議員)会館の秘書の方が同席ということのようです」と明かした。
しかし、面談記録を出すよう求められると「残していないので提出できない」と答弁。国家公務員制度改革基本法に基づく申し合わせでは、官僚が議員や秘書と接触した場合に記録を保存する取り決めになっている。
また、文科省の初等中等教育局長も昨年10月、遠藤事務所で同省の担当者が派遣会社社員と面談したことを認め、「中身は一般的な英語教育の改革、全般についてお話しした」と述べた。こちらも面談記録については「全部を取っているわけではない」としている。
●遠藤・五輪担当相:文科・厚労職員、事務所で面談 秘書ら同席記録せず - 毎日新聞(2016年2月6日 中部朝刊)
遠藤利明五輪担当相が、外国語指導助手(ALT)に関する通知を文部科学省が出す直前に、通知に関与した厚生労働省の担当者とALT派遣会社社員の面会を仲介した問題で、文科省と厚労省は5日の衆院予算委員会で、それぞれの担当者が遠藤事務所と派遣会社の3者で面談したことを明らかにした。厚労省の派遣・有期労働対策部長は「遠藤事務所で13年末ごろから(派遣会社社員と同省の担当者が)何度か接触した」と説明。「ALTについて派遣と請負の留意点や法令解釈を聞きたいということで、具体的なやりとりは厚労省で行った」と述べた。さらに「事務所の(衆議院議員)会館の秘書の方が同席ということのようです」と明かした。
しかし、面談記録を出すよう求められると「残していないので提出できない」と答弁。国家公務員制度改革基本法に基づく申し合わせでは、官僚が議員や秘書と接触した場合に記録を保存する取り決めになっている。
また、文科省の初等中等教育局長も昨年10月、遠藤事務所で同省の担当者が派遣会社社員と面談したことを認め、「中身は一般的な英語教育の改革、全般についてお話しした」と述べた。一方、遠藤氏の事務所名でマスコミ各社に送付されている毎日新聞記事への反論書が内閣府から送付されていたとして、維新の党の今井雅人幹事長は「事務所名の文書を行政が出すのは問題ではないか」と指摘。遠藤氏は「事務所で対応していたと思っていたが、調べてお答えします」とした。【杉本修作、藤田剛】
●政治とカネ:安倍政権下、「口利き」巡り問題続出 - 毎日新聞(2016年2月11日 東京朝刊)
「政治とカネ」を巡る問題が、安倍政権で再燃している。10日の衆院予算委員会では現金授受問題でつまずいた甘利明前経済再生担当相や、業者と官庁を仲介した遠藤利明五輪担当相の問題が取り上げられた。「口利き」を防ぐ法制度の機能不全も浮かんだ。全11省、政官接触記録なく 今年度「不適切な場合だけ」
政治家の不当な介入の排除を目的に、官僚が国会議員や秘書と接触した時に記録を作成・公開するよう国家公務員制度改革基本法などで定められているにもかかわらず、全11省で今年度、記録が作られていないことが分かった。甘利明前経済再生担当相の現金授受問題で「口利き」の有無が焦点となる中、それを防ぐための制度が空洞化している。毎日新聞は昨年11月、総務▽法務▽外務▽財務▽文部科学▽厚生労働▽農林水産▽経済産業▽国土交通▽環境▽防衛−−各省に、同基本法に沿って昨年4月以降に作られた政官接触の記録を情報公開請求したところ、全省から「作成していない」「保有していない」との通知があった。
また、10日の衆院予算委員会で井坂信彦議員(維新)は、第2次安倍内閣になって以降の3年間、全省庁で作られていなかったと指摘した。だが、甘利氏の当時の秘書らは昨年、都市再生機構(UR)と紛争中の建設会社に問題解決を頼まれ、URを所管する国交省の局長を訪問。法務省にも、甘利事務所から外国人の滞在ビザ審査を巡る問い合わせが昨年2件あった。こうした接触は記録されなかったことになる。
同基本法に沿って第2次安倍内閣は政官接触の記録・公開を申し合わせている。各省が記録を作らない理由は、要約すれば「不当な働きかけがあれば記録するが、そういうことがなかった」ためだ。
同基本法を所管する内閣人事局は「いたずらに事務を膨大化させない範囲で措置を講じるというのが基本法の趣旨」(平池栄一参事官)とし、記録するか否かの裁量は各省庁にあるとする。
だが、第1次安倍、福田両内閣で行革担当相補佐官を務め、基本法案の準備に携わった原英史(えいじ)氏(現・政策工房社長、元経産官僚)は、「すべての政官接触を公平・正確に記録・開示するのが基本法の趣旨。政府の責任で制度化すべきだったのに各省でいいかげんに運用されている。完全に空洞化している」と指摘する。【日下部聡、樋岡徹也】
秘書に補償額漏らす 甘利氏疑惑、UR記録非公開部分
甘利明前経済再生担当相の金銭授受問題を巡り、千葉県白井市の建設会社との補償交渉を進めていた都市再生機構(UR)が昨年10月9日、甘利氏の当時の秘書(先月辞職)との面談で、建設会社への追加補償の額を漏らしていたことが分かった。10日の衆院予算委員会で参考人の上西郁夫UR理事長は「つい口を滑らせた。極めて不適切だった」と陳謝した。交渉に影響を与えかねない情報を当事者以外に漏らすのは、独立行政法人の情報公開法の趣旨に反する行為とされる。上西氏は「補償内容に影響をうけたことは一切ない」と述べたが、秘書はこの場で「結局カネの話か」「少しイロを付けて」などと発言。政治家秘書と献金業者が一体で補償交渉に臨んだ実態が浮かんだ。
URが一部黒塗りですでに公表している面談内容によると、秘書は「いくら提示したのか。教えられる範囲で構わない」と追加補償額を質問。これに続く黒塗り部分で、UR側が秘書に金額を漏らしていた。10日の衆院予算委では、井坂信彦議員(維新)が、黒塗り部分について上下の行との半角分のずれに着目して「数字が入っている。金額を伝えたのでは」と追及。上西氏が漏えいを認めた。
昨年10月9日の面談では、秘書が「事務所の顔を立てる意味でも」とも発言し、URの千葉県内の出先事務所ではなく本社の担当者が建設会社と面談するよう働きかけた。実際、同月27日に本社の担当者を交えた会合が千葉県内で開かれた。
会合でのやり取りについて、予算委で大西健介議員(民主)は、建設会社の総務担当者だった一色武氏(62)の録音に基づくとするメモを公表。会合に出席した一色氏はまず、この場が甘利事務所の要請で設けられたことをUR側に確認し、「新しい提案があるんだよね」などと補償額を増やすよう要請。「国務大臣の中でも相当の方だと思うよ」などと甘利氏の名前を何度も出した。
一方、2013年8月に合意されたURによる約2億2000万円の補償を巡り、甘利事務所に協力を頼むと交渉が急進展したとする一色氏の証言についても、野党側は追及した。URの上西氏は「先方がそう言っているだけ。基準に従い計算した妥当なものだ」と口利き疑惑を否定した。【本多健、樋岡徹也】
「偽装請負」行政指導歴 ALT、遠藤氏仲介の会社受託
遠藤利明五輪担当相の事務所が、外国語指導助手(ALT)に関する通知を文部科学省が出す前に、通知に関与した厚生労働省とALT派遣会社の面会を仲介するなどした問題で、同社に委託した自治体が偽装請負だとして行政指導されていたことが分かった。10日の衆院予算委員会で維新の党の今井雅人幹事長が取り上げ、仲介との関連をただしたが、遠藤氏は「偽装請負があったかは全く承知していない」と述べた。質疑などによると、同社と愛知県東海市による業務委託(請負契約)について、愛知労働局は2010年3月、ALTと担任の「チームティーチング」は請負契約で認められず、労働者派遣法違反に当たるとして是正指導した。この問題は中央労働委員会でも審査され、中労委は13年1月、「業務委託の範囲を超えた業務が部分的に行われた」と判断した。
これに先立つ09年8月、文科省は「担任の指導の下で行うチームティーチングは請負契約でできない」と自治体側に通知したが、遠藤氏の仲介後の14年8月、ALTと担任の「会話実演」は「直ちに違法とはならない」と新たに通知した。今井氏はこうした経緯を取り上げ「派遣会社は13年後半に(厚労省に)要望し始め、通知が変わっている」と指摘。遠藤氏は「詳細は分からない。指導や偽装請負は全く承知していない」と答えた。
仲介については13年12月上旬と14年4月上旬、厚労省の担当課長らが遠藤氏の事務所で秘書と面会したことも判明。
これで仲介に絡む面会は13年12月〜14年5月に計6回、うち4回は秘書が居たが、遠藤氏は「(派遣会社と厚労省の話の)内容には一切関わってない」と述べた。
一方、文科省が16年度予算案に載せたALTなどの「指導員等派遣事業」について「自治体の直接雇用が対象で、派遣や請負は対象外」と説明していることに対し、今井氏は「直接雇用でも業務委託がある」と指摘。ALTを直接雇用する大阪市は、この派遣会社に13年度に約6000万円、15年度には約4200万円で採用業務などを委託している。【杉本修作、藤田剛】
ALTを巡る通知と遠藤氏の事務所による仲介などの経緯
2009年8月28日 文部科学省がALTに関し「日本人担任とのチームティーチングは請負契約でできない」と通知
10年
3月 3日 ALT請負契約を派遣会社と結んだ愛知県東海市に愛知労働局が「偽装請負」だとして是正指導
13年
1月25日 中央労働委員会が派遣会社と東海市によるALT請負契約を偽装請負と認定
12月上旬 厚生労働省需給調整事業課長と遠藤利明議員の秘書が面会
12月下旬 同省課長と秘書、派遣会社が面会
14年
1月上旬 同省課長補佐と秘書、派遣会社が面会
4月上旬 同補佐と秘書が面会
〃 同補佐と派遣会社が面会
5月上旬 同補佐と派遣会社が面会
8月27日 文科省がALTの請負契約に関し、担任との「会話実演」は「直ちに違法とはならない」と通知
●政治とカネ:安倍政権、足元の火ダネ UR、補償額漏らす 甘利氏秘書、業者と一体交渉 - 毎日新聞(2016年2月11日 大阪朝刊)
「黒塗り面談」判明
「政治とカネ」を巡る問題が、安倍政権で再燃している。10日の衆院予算委員会では現金授受問題でつまずいた甘利明前経済再生担当相や、業者と官庁を仲介した遠藤利明五輪担当相の問題が取り上げられた。「口利き」を防ぐ法制度の機能不全も浮かんだ。甘利明前経済再生担当相の金銭授受問題を巡り、千葉県白井市の建設会社との補償交渉を進めていた都市再生機構(UR)が昨年10月9日、甘利氏の当時の秘書(先月辞職)との面談で、建設会社への追加補償の額を漏らしていたことが分かった。10日の衆院予算委員会で、参考人の上西郁夫UR理事長は「つい口を滑らせた。不適切だった」と陳謝した。
交渉に影響を与えかねない情報を当事者以外に漏らすのは、独立行政法人の情報公開法の趣旨に反する行為とされる。上西氏は「補償内容に影響をうけたことは一切ない」と述べたが、秘書はこの場で「少しイロを付けて」などと発言。政治家秘書と献金業者が一体で補償交渉に臨んでいた実態が浮かんだ。
URが一部黒塗りで公表している面談内容によると、秘書は「いくら提示したのか。教えられる範囲で構わない」と追加補償額を質問。これに続く黒塗り部分でUR側が金額を漏らしていた。10日の衆院予算委では、井坂信彦議員(維新)が、黒塗り部分に上下の行との半角分のずれに着目して「数字が入っている。金額を伝えたのでは」と追及。上西氏が漏えいを認めた。
昨年10月9日の面談では、秘書が「事務所の顔を立てる意味でも」とも発言し、URの千葉県内の出先事務所ではなく本社の担当者が建設会社と面談するよう働きかけた。実際、同月27日に本社の担当者を交えた会合が千葉県内で開かれた。
会合でのやり取りについて、予算委で大西健介議員(民主)は建設会社の総務担当者だった一色武氏(62)の録音に基づくとするメモを公表した。会合に出席した一色氏はまず、この場が甘利事務所の要請で設けられたことをUR側に確認し、「新しい提案があるんだよね」などと補償額を増やすよう要請。「国務大臣の中でも相当の方だと思うよ」などと甘利氏の名前を何度も出したという。【本多健、樋岡徹也】
政官接触記録、全11省なし 過去3年間 口利き排除空洞化
政治家の不当な介入の排除を目的に、官僚が国会議員や秘書と接触した時に記録を作成・公開するよう国家公務員制度改革基本法などで定められているにもかかわらず、全11省で今年度、記録が作られていないことが分かった。甘利明前経済再生担当相の現金授受問題で「口利き」の有無が焦点となる中、それを防ぐための制度が空洞化している。毎日新聞は昨年11月、総務▽法務▽外務▽財務▽文部科学▽厚生労働▽農林水産▽経済産業▽国土交通▽環境▽防衛−−の各省に、同基本法に沿って昨年4月以降に作られた政官接触の記録を情報公開請求したところ、全省から「作成していない」「保有していない」との通知があった。
また、10日の衆院予算委員会で井坂信彦議員(維新)は、第2次安倍内閣になって以降の3年間、全省庁で作られていなかったと指摘した。
だが、甘利氏の当時の秘書らは昨年、都市再生機構(UR)と紛争中の建設会社に問題解決を頼まれ、URを所管する国交省の局長を訪問。法務省にも、甘利事務所から外国人の滞在ビザ審査を巡る問い合わせが昨年2件あった。こうした接触は記録されなかったことになる。同基本法に沿って第2次安倍内閣は政官接触の記録・公開を申し合わせている。
第1次安倍、福田両内閣で行革担当相補佐官を務め、基本法案の準備に携わった原英史(えいじ)氏(現・政策工房社長、元経産官僚)は、「すべての政官接触を公平・正確に記録・開示するのが基本法の趣旨。政府の責任で制度化すべきだったのに各省でいいかげんに運用されている。完全に空洞化している」と指摘する。【日下部聡、樋岡徹也】
ALT請負 「偽装」と行政指導歴 遠藤氏の仲介会社受託
遠藤利明五輪担当相の事務所が、外国語指導助手(ALT)に関する通知を文部科学省が出す前に、通知に関与した厚生労働省とALT派遣会社の面会を仲介するなどした問題で、同社に委託した自治体が偽装請負だとして行政指導されていたことが分かった。10日の衆院予算委員会で維新の党の今井雅人幹事長が取り上げ、仲介との関連をただしたが、遠藤氏は「偽装請負があったかは全く承知していない」と述べた。質疑などによると、同社と愛知県東海市による業務委託(請負契約)について、愛知労働局は2010年3月、ALTと担任の「チームティーチング」は請負契約で認められず、労働者派遣法違反に当たるとして是正指導した。【杉本修作、藤田剛】
●集団的自衛権:9条解釈巡る政官協議 法制局、記録残さず - 毎日新聞(2016年2月14日 西部朝刊)
集団的自衛権の行使容認に伴う憲法9条の解釈変更を巡り、内閣法制局の横畠裕介長官が国会議員との協議について、法律などで定める政官接触の記録を残していないことが分かった。法制局は、意思決定過程の記録を行政機関に義務付ける公文書管理法の趣旨にも反し、内部での検討経緯を公文書に残していない。解釈変更を容認する同局のプロセスの不透明さが改めて浮き彫りとなった。【日下部聡、樋岡徹也】政官接触記録は、国家公務員制度改革基本法により「政」による「官」への不当な介入を防ぐ目的で、国の官僚が国会議員と会った際に作成するよう定める。さらに現内閣は、同基本法や公文書管理法にのっとって政官接触の記録や公開を申し合わせている。
政府は2014年7月1日、同盟国への攻撃を自国への攻撃とみなして反撃できる集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。だが、横畠氏は閣議決定の前に自民党の高村正彦副総裁や公明党の北側一雄副代表らと非公式に協議し、容認に伴う解釈変更に合意していたことを複数の与党関係者が取材に証言している。
これを踏まえ、毎日新聞は内閣法制局に対し昨年11月、安全保障関連法制の本格的な検討が始まった13年以降の政官接触記録を情報公開請求したところ、「保有していない」との通知があった。横畠氏は与党幹部との接触を記録していなかったことになる。
基本法を所管する内閣人事局は、政官接触記録について、いわゆる「口利き」を想定し「不当な要求があった時にのみ残す」と解釈している。これに対し、福田政権から鳩山政権初期にかけて国家公務員制度改革推進本部(当時)の企画官だった元衆院議員の大熊利昭氏は「基本法にも内閣の申し合わせにも違反している。政官接触記録は口利きだけでなく、政策的なことにも適用される」と指摘する。
第1次安倍・福田両内閣で行革担当相補佐官として公務員制度改革を担当した元経産官僚の原英史(えいじ)氏(現・政策工房社長)も「すべての政官接触を公平・正確に記録・開示することが求められている」と指摘する。実際、基本法は政官接触記録の目的として「政策の立案、決定及び実施の各段階における国家公務員としての責任の所在」の明確化をうたっている。
そもそも、内閣法制局長官が閣外の国会議員と個人的に接触すること自体、異例だ。元長官の一人は「憲法解釈についての検討依頼は官房副長官を通じてだった」と証言する。
政官接触記録を残さなかった理由を聞こうと横畠氏に取材を申し込んだが、法制局総務課を通じて「忙しいのでお断りする」との返答があった。また、富岡秀男総務課長は「『文書がありません』と申し上げるしかない」と話した。一方、安保法制を議論する与党協議会の事務局を務めていた内閣官房国家安全保障局にも同様の情報公開請求をしたが、政官接触記録は作成していなかった。
■ことば
政官接触の記録
国家公務員制度改革基本法に基づき、国の官僚が国会議員と接触した際、保存や公開を前提に記録を作ることが定められている。内閣官房が2013年、国会に示した書式によると、接触した日時、場所、議員の氏名とともに質疑応答が具体的に箇条書きで列挙されている。
●Listening:<社説>政官の接触記録 法の要請を無視するな - 毎日新聞(2016年2月16日)
国の官僚が国会議員と接触した場合、相手や会見の内容について記録を作ることが国家公務員制度改革基本法で定められている。「政」から「官」への不当な介入を防ぐために2008年に施行された法律だ。ところが、毎日新聞の情報公開請求で、国の全11省が今年度、政官接触記録を「作成していない」か「保有していない」ことが判明した。
官僚側のずさんな運用によって、制度が骨抜きになっている。立法や行政の意思決定にかかわる記録の保存は、民主主義が適切に機能しているのかを検証するために欠かせないものだ。制度の原点に立ち返り、透明性のある運用をすべきだ。
とりわけ、内閣法制局の横畠裕介長官が政官接触記録を残していなかった問題の根は深い。横畠長官は一昨年、集団的自衛権の行使容認に伴う憲法9条の解釈変更をめぐり、与党である自民党や公明党幹部と非公式に協議していた。戦後の安全保障法制の大転換に関わる政治課題だ。
与党の有力政治家がその意思決定にどう関わったのか、検証が必要だ。だが、記録がなければ、責任の所在はうやむやになってしまう。
法制局は、公文書管理法の趣旨に反し、憲法解釈変更についての内部議論の記録も残していなかったことが分かっている。記録は歴史的文書であり、国民共有の知的資源だ。二重の意味で、法の精神に反する。
政官接触記録の制度化は、小泉内閣時代、当時の鈴木宗男衆院議員が外務省へ介入したのがきっかけだった。内閣の一員でないのに省庁に影響力を及ぼす「族議員」の力をそぎ、政策を決める内閣と実行する官僚の役割を明確化する狙いもあった。
だが、情報公開の結果を見れば、複数の省が法施行後、一通も記録を作っていない。「不当な要求があった場合だけ記録を残す」と、法を狭く解釈している。内閣と与党の有力者が一体となって政策を決めていく日本の政治風土を背景に、官僚側の政治家への配慮が垣間見える。
第2次安倍内閣は発足時に、「基本法と公文書管理法に基づく政官接触記録の作成、保存、公開に適切に対処する」と申し合わせている。公文書管理法を入れた点について「政策決定過程をきちんと残しておくべきだとの精神を踏まえている」との担当閣僚答弁もある。
記録がないことは、この申し合わせにも反していることになる。
記録の公開の時期などについて定めがないため、記録を残さない方向に意識が働いている可能性がある。仮に現行法に不備があるのならば、改正の議論をすればいい。官僚の判断でなし崩し的に法を有名無実化している現状は許されない。
●内閣法制局長官:政官接触記録「定めに従って適切に対処」 - 毎日新聞(2016年2月16日 22時36分(最終更新 2月16日 22時36分))
集団的自衛権行使容認に伴う憲法9条の解釈変更を巡り、内閣法制局の横畠裕介長官が法律などの定める与党幹部との協議の政官接触記録を残さなかった問題で、横畠氏は16日の衆院予算委員会で「一般的にではあるが、定めに従って適切に対処している」と述べ、残さない理由を具体的に説明しなかった。落合貴之議員(維新)の質問への答弁。国家公務員制度改革基本法は「政」による「官」への不当な介入を防ぐ目的で、官僚が閣外の国会議員と会った際に記録を作成するよう定め、現内閣も記録や公開を申し合わせている。制度を所管する内閣人事局は「口利き」を想定し「不当な要求があった時にのみ残す」と解釈しているが、制度設計に携わった政府関係者は「すべての政官接触を公平・正確に記録・開示することが法の趣旨」と指摘している。【日下部聡】
●政官接触:11省「記録なし」 作成ルール、有名無実化 - 毎日新聞(2016年2月24日 東京朝刊)
「口利き」など国会議員による官僚への不当な介入を防ぐための政官接触の記録について、作成を定める国家公務員制度改革基本法の施行(2008年6月)後に作られたものを国の全11省に情報公開請求したところ、一通も存在していないことが分かった。基本法に加えて現内閣は接触記録の作成や保存、公開を申し合わせてもいるが、ルールは有名無実化している。国の11省(総務▽法務▽外務▽財務▽文部科学▽厚生労働▽農林水産▽経済産業▽国土交通▽環境▽防衛)を対象に毎日新聞は昨年11月、基本法に基づく今年度分(昨年4月1日以降)の政官接触記録を、情報公開請求した。これに対し全省が「作成していない」または「保有していない」と回答した。そこで11省に今年1月、昨年度(昨年3月31日)までに作成した記録をすべて開示するよう改めて請求した。これにも、全省が「ない」と回答した。
基本法や現内閣の申し合わせは、官僚が閣外の国会議員と接触した際に記録を作り、保存、公開するよう定める。しかし、基本法を所管する内閣人事局は「不当な要求があった時のみ記録する」と解釈。各省もこれにならい「不当な要求はなかった」として記録を作っていない。
一方、基本法作りに携わった政府関係者は「すべての政官接触を公平・正確に記録・開示することが法の趣旨だ」と指摘している。
甘利明前経済再生担当相の現金授受問題を巡っては、国交省や環境省の幹部職員が甘利氏の当時の秘書と接触していたことが明らかになったが、政官接触の記録は作られていなかった。【日下部聡】
●政官接触:一件も記録なし 介入防止の法、骨抜き - 毎日新聞(2016年2月24日 大阪朝刊)
「口利き」など国会議員による官僚への不当な介入を防ぐための政官接触の記録について、作成を定める国家公務員制度改革基本法の施行(2008年6月)後に作られたものを国の全11省に情報公開請求したところ、一通も存在していないことが分かった。基本法に加えて現内閣は接触記録の作成や保存、公開を申し合わせてもいるが、ルールは有名無実化している。国の11省(総務▽法務▽外務▽財務▽文部科学▽厚生労働▽農林水産▽経済産業▽国土交通▽環境▽防衛)を対象に毎日新聞は昨年11月、基本法に基づく今年度分(昨年4月1日以降)の政官接触記録を、情報公開請求した。これに対し全省が「作成していない」または「保有していない」と回答した。
そこで11省に今年1月、昨年度(昨年3月31日)までに作成した記録をすべて開示するよう改めて請求した。これにも、全省が「ない」と回答した。
基本法や現内閣の申し合わせは、官僚が閣外の国会議員と接触した際に記録を作り、保存、公開するよう定める。しかし、基本法を所管する内閣人事局は「不当な要求があった時のみ記録する」と解釈。各省もこれにならい「不当な要求はなかった」として記録を作っていない。
一方、基本法作りに携わった政府関係者は「すべての政官接触を公平・正確に記録・開示することが法の趣旨だ」と指摘している。
甘利明前経済再生担当相の現金授受問題を巡っては、国交省や環境省の幹部職員が甘利氏の当時の秘書と接触していたことが明らかになったが、政官接触の記録は作られていなかった。
これについて18日の参院決算委員会で、又市征治議員(社民)が「今後、すべての接触を記録する考えはないのか」と質問した。石井啓一国交相は「今後もこれまでと同様、適切に対処していく」、白石徹環境政務官は「すべて記録するのは職員の業務が多くなり、現実的でない。これからもケース・バイ・ケースで残していく」と答弁し、両省とも新たな対応はしない構えだ。【日下部聡】
●政官接触:11省「記録なし」 「政官が付き合い過ぎ」 飯尾潤・政策研究大学院大学教授 - 毎日新聞(2016年2月24日 東京朝刊)
国家公務員制度改革基本法が国会議員と官僚のやり取りを記録するよう定めているのに、同法施行後、国の全11省が作成した記録は一通もなかった。「政」と「官」の関係を透明にする制度はなぜ機能しないのか。「日本の統治構造−−官僚内閣制から議院内閣制へ」などの著書で知られる飯尾潤・政策研究大学院大学教授に聞いた。◇
問題の根は深く、一朝一夕に解決するのは難しいだろう。
政官接触の記録・公表は政治家の圧力から官僚を守る制度だ。不当かどうかは政府や国民が判断する。だから、すべて記録するのが国家公務員制度改革基本法の建前だが、現状では不当かどうかを官僚自身が判断できるので機能していない。関係者が不利になりそうなことを、わざわざ記録するはずがない。
日本の官僚は政治家と付き合い過ぎだ。官僚が議員会館を回ったり、党本部まで出向いて説明したりということは外国ではあまり見られない。政策決定は政党政治家による内閣が担い、官僚はその実行に徹するのが本来の議院内閣制だが、日本は両者が融合してしまっている。
例えば英国の官僚は証拠を残すために、政治家の問い合わせには文書でしか応じないのが原則だ。組織文化が大きく違う。
そもそも日本の行政機関は、公文書をきちんと残さない傾向がある。大きな原因は人手不足だ。日本の公務員は諸外国に比べ非常に少ない。作った文書を重要度で分類し、それぞれ保存期間や公開範囲を決めていく膨大な作業が必要だが、日々の業務に忙殺される官僚には酷だろう。国会議員への対応が多忙さに拍車をかけている皮肉な現実がある。
交渉ごとなど機微に触れる内容は、一定期間秘密にした後に開示するような法整備も検討すべきだ。そうしないと官僚は重要なものほど残さないという判断をするようになる。要員増が望めないなら技術で補うしかない。文書を作ると自動的に組織内で共有され、整理や蓄積もされるような電子システムを構築する必要がある。【聞き手・日下部聡】
■人物略歴
いいお・じゅん
1962年生まれ。東京大大学院博士課程修了。専門は政治学・現代日本政治論。埼玉大助教授などを経て現職。著書に「現代日本の政策体系」「政局から政策へ」など。
●政官接触:内閣人事局に「記録」存在 - 毎日新聞(2016年2月25日 06時00分(最終更新 2月25日 09時30分))
「作っていない」と回答、実は「任意の備忘録」
国会議員による国の官僚への不当な介入を防ぐ目的で法律などが定める政官接触の記録を国の11省が作っていない問題で、法律を所管する内閣官房内閣人事局も、毎日新聞の情報公開請求に「作っていない」と回答した。ところが、同局が職員の作成した国会議員との接触記録を保存していたことが分かった。同局は取材に「任意で作った」と説明。法律に基づく政官接触記録ではないとして開示しなかったとみられる。政官接触の記録は国家公務員制度改革基本法(2008年6月施行)が定め、現内閣は同法や公文書管理法に基づいて記録の作成や保存、公開を申し合わせている。政官の関係を示す記録が「官」の裁量で国民の目から遠ざけられている実態が浮かんだ。
国の全11省は毎日新聞の情報公開請求に対し、基本法施行以降、同法に基づく記録はないと回答した。11省とは別に、基本法を所管する内閣人事局にも今年1月、同様の情報公開請求をしたところ、同局から今月8日に「作成していない」との通知があった。
同局は幹部官僚人事の一元管理などで政治主導を強めることを目的に、国家公務員制度改革の一環で14年5月に発足。内部文書は前の担当部署から引き継いでおり、基本法施行時にさかのぼって調べても政官接触記録は「なかった」(文書審査係)という。
ところが、前身の内閣官房行政改革推進本部は13年11月の衆院内閣委員会で、接触記録の「フォーマット(書式)」を出すよう野党議員や委員長らから求められ、渋った末に翌12月、国会議員と職員のやり取りの記録を提出していた。
この事実について内閣人事局に取材したところ、同局は記録を保存しており、毎日新聞に提供した。それによると記録は2件あり、1件はA4判3枚で、国会議員から説明(レクチャー)を求められ、質疑応答を列挙している。日付は13年11月25日で、職員と議員の名前は黒塗りされている。
もう1件は、A4判1枚で「議事概要(未定稿)」「議事・国家公務員制度改革の検討状況について」とある。13年10月に開かれた会議録とみられるが、会議の名称や日付、国会議員の名前、発言内容が黒塗りされ、内容はわからない。
この2件について人事局の平池栄一参事官は、取材に「職員が任意で備忘録的に作ったものだと思う」と説明。「これまで不当な働きかけは特段なかったので(政官接触)記録もない」と述べ、基本法に基づく記録ではないと強調した。
政官接触記録について、人事局は「議員から不当な要求があった場合にのみ記録を残す」と基本法や現内閣の申し合わせを解釈し、11省もこれにならう。だが、基本法は記録の保存・公開の目的として「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進」を掲げる。第1次安倍・福田両内閣で行革担当補佐官として公務員制度改革を担当した元経産官僚、原英史(えいじ)氏は「不当な働きかけがあった場合だけに限る趣旨ではない」と指摘している。【日下部聡】
内閣人事局保存の接触記録 質疑応答、箇条書きで詳細に
内閣人事局が保存していた13年11月25日の接触記録3枚は「国家公務員法改正案の幹部職員一元化と人事管理」を巡る質疑応答だった。1枚は「レク要求」で、「午後3時41分」と議員側の要求時刻を明記。内閣官房職員が同4時半に議員会館へ出向いて「議員本人」に説明し、資料要求は2部、職員は「役職問わず」などと記され、説明前に作られたとみられる。
残る2枚は「メモ」と題し、「先方の主な質問事項」「主なやりとり」など5項目の小見出しのもと、「外部の民間人も大臣は(幹部職員の審査に)推薦できるのか」「そのとおり」などと箇条書きで詳細に列挙している。
●クローズアップ2016:政官接触、ルール骨抜き 記録作成は官僚判断 - 毎日新聞(2016-02-25):掲載図魚拓:基本法などで定める政官接触記録が、なぜ作成されないのか
甘利明前経済再生担当相の「口利き」疑惑で、改めて明るみに出た「政」から「官」への不当な介入。それを防ぐために法で定められた政官接触の記録を調べると、ルールは骨抜きになっていた。【日下部聡、樋岡徹也】毎日新聞は昨年11月、国家公務員制度改革基本法が定める政官接触の記録について、国の全11省(総務、法務、外務、財務、文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業、国土交通、環境、防衛)に情報公開請求を行った。開示を求める対象は「今年度(昨年4月1日から現在)」とした。本来なら「2008年6月に同基本法が施行されて以降」とすべきだが、文書量が多く、開示が遅れる可能性を考えてのことだった。
しかし、それは「取り越し苦労」だったようだ。全省が「作成していない」か「保有していない」のゼロ回答。しかも、総務、法務、農水3省は取材に、法施行後一通も作っていないことを明らかにした。
基本法だけでなく、現内閣は政官接触の記録や公開を申し合わせている。なぜ作成されないのか。
基本法の政官接触記録に関する規定は「政の官への圧力排除」(安倍晋三首相の10日の国会答弁)を目的としている。だが、条文は「必要な措置を講ずる」とし、その先のルール作りは政府に委ねている。かつて国家公務員制度改革推進本部(当時)の企画官を務めた大熊利昭・元衆院議員は「駅で偶然会ったら接触と見なすのか。電話はどうか。具体的な詰めがないまま放置されてきた」と指摘する。
こうした基本法を補完するのが、第2次安倍内閣発足時(12年12月26日)の閣僚懇談会での7項目からなる申し合わせだ。そこでは(1)国会議員や秘書からの働きかけや要請で「対応が極めて困難なもの」は大臣に報告する(2)基本法と公文書管理法に基づき、記録の作成、保存、公開に適切に対処する−−と定める。
(2)は「接触はあまねく記録せよ」と促しているように読める。ところが、基本法を所管している内閣人事局は「不当な要求」などを記録した場合に従うルールを確認しているに過ぎない−−と説明する。各省もこれにならって、「不当な要求があった場合にのみ記録を残す」と、同法を狭く解釈している。
しかし、14年4月3日の参院内閣委員会で当時の稲田朋美行政改革担当相は、(2)の規定に「公文書管理法」が入っていることについて「公文書管理法には、政策決定過程をきちんと残しておくべきだと定められている。その精神を踏まえてということ」と述べ、政官接触の記録が単なる「口利き防止」ではなく、意思決定のプロセスを検証可能な形で残すものだとした。
第1次安倍・福田両内閣で行革担当相補佐官として公務員制度改革を担当した元経産官僚の原英史(えいじ)氏(現・政策工房社長)も「(1)と(2)は分けて考えるのが自然だ。(2)に照らせば、すべての政官接触を公平・正確に記録・開示することが求められている」と指摘する。
結局のところ、現行の基本法解釈で記録するかどうかは接触を受けた官僚の判断に任されている。人事局の武藤真郷参事官は「官僚に説明や資料を求める議員は多い。全部を記録するのは難しい」と話す。これに対し、原氏は「そんなに難しいことではない。録音すればいい」と指摘する。
「禁止」与野党反対で頓挫
政官接触記録の制度化は小泉内閣時代の2002年にさかのぼる。鈴木宗男衆院議員(当時)の外務省への介入が問題となり、政府の方針と著しく異なる働きかけを政治家から受けた官僚は接触の日時や内容を記録し、大臣に報告する−−と申し合わせた。ただ、法律に基づいた制度ではなく、事実上立ち消えとなっていた。
しかし、内閣の一員でもないのに省庁に強い影響力を及ぼす「族議員」への批判は消えない。第1次安倍内閣は、07年に「国家公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」を設けた。ここで、メンバーだった作家の堺屋太一氏(元経済企画庁長官)が、大臣以外の国会議員と官僚の接触そのものを禁止することを提案した。英国の制度を手本とし、政策を決める内閣と、それを実行する官僚の役割を明確に区別しようという狙いがあった。
これを受けて福田内閣は08年、政官接触の原則禁止をうたう国家公務員制度改革基本法案を提出した。ところが、官僚から情報が得られなくなることを心配した与野党議員から反対が続出。与野党協議で、接触を認める代わりに、内容を記録・公開し不正を防ぐ現行規定に修正され、成立した経緯がある。
記録に法的根拠が与えられ、公開を定めた点で、小泉内閣時の申し合わせからは前進している。基本法の修正案を提案した一人、自民党の宮沢洋一衆院議員は当時、同法の狙いについて「記録をきっちり残す、そして公開するということで、透明性を高める」と衆院内閣委員会で説明した。
しかし今回、基本法が施行直後から機能していない実態が取材で浮かんだ。政府関係者の一人は「相手(政治家や秘書)に迷惑がかかるような記録を、役人がわざわざ残すはずがない」と指摘している。
●政官接触:内閣人事局、記録非公開 任意作成理由に - 毎日新聞(2016年2月25日 大阪朝刊)
国会議員による国の官僚への不当な介入を防ぐ目的で法律などが定める政官接触の記録を国の11省が作っていない問題で、法律を所管する内閣官房内閣人事局も、毎日新聞の情報公開請求に「作っていない」と回答した。ところが、同局が職員の作成した国会議員との接触記録を保存していたことが分かった。同局は取材に「任意で作った」と説明。法律に基づく政官接触記録ではないとして開示しなかったとみられる。【日下部聡】政官接触の記録は国家公務員制度改革基本法(2008年6月施行)が定め、現内閣は同法や公文書管理法に基づいて記録の作成や保存、公開を申し合わせている。政官の関係を示す記録が「官」の裁量で国民の目から遠ざけられている実態が浮かんだ。
国の全11省は毎日新聞の情報公開請求に対し、基本法施行以降、同法に基づく記録はないと回答した。11省とは別に、基本法を所管する内閣人事局にも今年1月、同様の情報公開請求をしたところ、同局から今月8日に「作成していない」との通知があった。
同局は幹部官僚人事の一元管理などで政治主導を強めることを目的に、国家公務員制度改革の一環で14年5月に発足。内部文書は前の担当部署から引き継いでおり、基本法施行時にさかのぼって調べても政官接触記録は「なかった」(文書審査係)という。
ところが、前身の内閣官房行政改革推進本部は13年11月の衆院内閣委員会で、接触記録の「フォーマット(書式)」を出すよう野党議員や委員長らから求められ、渋った末に翌12月、国会議員と職員のやり取りの記録を提出していた。
この事実について内閣人事局に取材したところ、同局は記録を保存しており、毎日新聞に提供した。それによると記録は2件あり、1件はA4判3枚で、国会議員から説明(レクチャー)を求められ、質疑応答を列挙している。日付は13年11月25日で、職員と議員の名前は黒塗りされている。
もう1件は、A4判1枚で「議事概要(未定稿)」「議事・国家公務員制度改革の検討状況について」とある。13年10月に開かれた会議録とみられるが、会議の名称や日付、国会議員の名前、発言内容が黒塗りされ、内容はわからない。
この2件について人事局の平池栄一参事官は、取材に「職員が任意で備忘録的に作ったものだと思う」と説明。「これまで不当な働きかけは特段なかったので(政官接触)記録もない」と述べ、基本法に基づく記録ではないと強調した。
政官接触記録について、人事局は「議員から不当な要求があった場合にのみ残す」と基本法を解釈し、11省もこれにならう。だが、基本法は記録の保存・公開の目的として「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進」を掲げる。第1次安倍・福田両内閣で行革担当補佐官として公務員制度改革を担当した元経産官僚、原英史(えいじ)氏は「不当な働きかけがあった場合だけに限る趣旨ではない」と指摘している。
質疑応答を箇条書き
内閣人事局が保存していた13年11月25日の接触記録3枚は「国家公務員法改正案の幹部職員一元化と人事管理」を巡る質疑応答だった。1枚は「レク要求」で、「午後3時41分」と議員側の要求時刻を明記。内閣官房職員が同4時半に議員会館へ出向いて「議員本人」に説明し、資料要求は2部、職員は「役職問わず」などと記され、説明前に作られたとみられる。残る2枚は「メモ」と題し、「先方の主な質問事項」「主なやりとり」など5項目の小見出しのもと、「外部の民間人も大臣は(幹部職員の審査に)推薦できるのか」「そのとおり」などと箇条書きで詳細に列挙している。
●政官接触記録:他にも? 行革相、「行政文書」と認める - 毎日新聞(2016年2月26日 東京朝刊)
内閣官房内閣人事局が保存し、毎日新聞が25日朝刊で詳報した職員による国会議員との接触記録について、河野太郎行政改革担当相は25日の衆院予算委員会第1分科会で「行政文書だと思っている」と述べ、職員の個人的なメモではなく、組織的に管理する文書だと認めた。井坂信彦議員(維新)の質問に答えた。内閣人事局は毎日新聞の取材に「職員が任意で備忘録的に作った」と答えていた。
井坂氏は「同じような記録は他にも多数あるのか」と質問。三輪和夫・内閣人事局人事政策統括官は「どれくらいあるかは把握していない」と述べ、他にも職員が作成した接触記録が存在する可能性を否定しなかった。
内閣人事局は、国家公務員制度改革基本法などが定める政官接触記録の開示を求めた毎日新聞の情報公開請求に、この記録を出さなかった。
河野氏は「基本法に基づく記録ではない」と述べ、対応に問題はないとした。
政官接触の記録は閣外の国会議員による介入を防ぐ目的で定められているが、内閣人事局は「不当な働きかけがあった時だけ記録する」と解釈し、河野氏もこれを踏襲した。【日下部聡】
●政官接触:未記録問題で政府が答弁書 - 毎日新聞(2016年3月5日 東京朝刊)
集団的自衛権行使容認に伴う憲法9条の解釈変更を巡り、内閣法制局の横畠裕介長官が与党幹部との協議記録を残さなかった問題で、政府は4日、「適切に対処している」との答弁書を閣議決定した。政官接触記録の作成・公開を定めた国家公務員制度改革基本法に違反するとして見解を求めた逢坂誠二衆院議員(民主)の質問主意書に答えた。同基本法は政官接触記録の目的について「政策の立案、決定及び実施の各段階における国家公務員としての責任の所在をより明確」にするためとしているが、政府は答弁書で「『口利き』と言われるような、『政』の『官』に対する圧力を排除する趣旨」と、従来の限定的な解釈を踏襲した。
●UR:甘利氏側との面談記録、一転ご都合公開 - 毎日新聞(2016年4月5日 07時30分(最終更新 4月5日 10時45分))
外に出さない「職員の備忘録」が一転、開示すべき「組織文書」に−−。甘利明前経済再生担当相の現金授受問題で、都市再生機構(UR)が公開した当時の秘書らとの面談記録は当初、職員の個人的文書とされ、情報公開制度の対象外だった。説明義務を果たすため例外的に公開したとUR側は説明しているが、組織防衛の意図ものぞく。【日下部聡】この問題では国土交通省と環境省の職員が甘利氏の秘書らと面談していたが、国家公務員制度改革基本法の定める政官接触記録を作っていなかった。URは公的資金を受ける独立行政法人で、職員は公務員に準じた扱いを受ける。2月に記者会見で公開した面談記録は、いわばUR版「政官接触記録」だ。
記録について、URコンプライアンス・法務室の丹圭一チームリーダーは取材に、「国会担当の職員が個人的に備忘録としてつけていたものだ」と説明。週刊文春の報道後、秘書らとのやり取りを確認するため職員から事情を聴いたところ、記録の存在が分かったという。この職員は同僚や上司に記録を見せたことはないという。だが、記録はA4判の用紙に印字され、面談を依頼してきた議員や秘書の名前、依頼を受けた職員名、日時、内容などを書く欄があり、一定の書式で作成されている。
URには、独立行政法人情報公開法に基づき情報を開示する義務があり、開示の対象は「職員が組織的に用いる」文書とされる。URによると、面談記録は職員個人の文書で開示対象外だったが、公開した時点で「組織的に用いる」文書となったため、現在は情報公開請求で誰でも入手できる。
面談記録によると、甘利氏の秘書らは千葉県の建設会社とURの補償交渉を巡り「結局カネの話か」「少しイロを付けて」など補償増額を働きかけるような発言をした。一方で記録には、UR側が秘書らに「これ以上(交渉に)関与されない方がよろしいように思う」と示唆するなど、URの「正当性」を示す内容も含まれていた。
公開した理由について、丹氏は「URとして説明義務を果たすため」と述べた。だが、国会に参考人として呼ばれた上西郁夫UR理事長は、公開の狙いを「社会的な疑念が持たれることを考慮し、当機構への疑念を払拭(ふっしょく)する上で重要だ」と説明し、組織防衛の意図をにじませた。
重要な記録であるにもかかわらず、公的機関の裁量で開示、非開示が決まっている。政治家との面談記録作成を内部で義務づけ、最初から「組織的に用いる」文書として管理するよう内規を変えられないのか。URは「国や他の組織の動向も見なければならない」(林田桂・広報室主査)と述べ、UR単独で変えることは今のところないとした。
身の安全考えたか
元外務官僚で作家の佐藤優氏の話 URは「個人的な備忘録」と言うが、自分だけのためなら汚い字で他人に読めないように残せばいいわけで、あの記録は組織内で共有する文書だろう。省庁と比べ権限がないため身の安全を守ることを考えたのだろうが、よくこれだけ細かく取っていたと感心した。国の官僚は国会議員とのやり取りで、内容が外に出るとまずい場合には口頭で上司に報告し記録に残さない。後日、経緯を知りたくとも分からなくなるのは問題だ。解説 政官接触、常に開示を
「備忘録」という言葉は政府の内閣人事局の幹部からも聞いた。国家公務員制度改革基本法は、国会議員の省庁への不当な介入を防ぐ目的で、国家公務員が政官接触の記録を作るよう定める。ところが、同法を所管する人事局は、情報公開請求に「記録はない」と回答しながら、国会議員との面談記録を保存していた。「職員が備忘録的に作った」との説明だった。実際には記録があるのに、なるべく公開せずに済ます方便として「備忘録」と言う−−そんな疑念がぬぐえない。ある元官僚はこう明かした。「機微に触れるやり取りは(情報公開の対象にならないよう)『個人メモ』にしていた。上司に見せたこともあった」。上司に見せたのなら「組織的に用いた」ことになり、本来は公開の対象だ。こんな恣意(しい)的な運用が許されるなら、情報公開制度は空洞化するだけだろう。
官庁が政官接触記録の作成や公開に及び腰なのは、「後で面倒なことになる」という心理的な要因が大きいためとみられる。だが、URの例でも分かるように、それは自身を守る手段ともなる。
業者から口利きを頼まれた政治家や秘書が、公務員らに圧力をかける。汚職の温床となるこうした事例は枚挙にいとまがないが、今回ほど詳細な実態が明らかになるのは珍しい。URは「政官接触記録」の価値を世に知らしめたとも言える。
一方、政策決定過程を後で検証できるよう記録することを定めた公文書管理法は、個人のメモでも重要性に応じて公文書として扱うべきだとガイドラインでうたう。官庁は「情報を国民と共有する」という感覚を持ってほしい。同時に、国民の主権者意識も問われている。【日下部聡】
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