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2017/04/17

「特定秘密」文書の廃棄が進行中。ほか関連記事(毎日新聞から)

毎日新聞は行政文書の隠蔽や廃棄の問題を重視している印象がある。

特定秘密文書:廃棄手続きが進行中 対象や省庁名は不明 - 毎日新聞(2017年4月17日 07時00分(最終更新 4月17日 10時02分))

14年末の特定秘密保護法施行後、初

 国の行政機関が指定した特定秘密を記録した文書について、廃棄に向けた手続きが進められていることが内閣府などへの取材で分かった。特定秘密文書の廃棄は2014年末の特定秘密保護法施行後、初とみられる。順次廃棄が進められるとみられるが、秘密文書は通常の文書と違って第三者のチェックに制約がある。専門家からは「本来残すべきものまで廃棄される恐れもある」との指摘がある。

 特定秘密文書は、公文書管理法に基づいて一般の文書と同様に、それぞれの保存期間を過ぎれば内閣府のチェックを受けた後に廃棄することができることになっている。ただし、特定秘密保護法の運用基準で、指定から30年を超えた文書は重要性が高いと判断されて一律に公文書館などに移管されて保存されることが定められている。

 廃棄をチェックする内閣府は毎日新聞の取材に対し、特定秘密文書を保有する省庁と廃棄に向けた協議を行っていることを認めた。対象文書の内容や省庁名は明らかにしていないが、保存期間2年以下の文書とみられる。

 内閣府は各省庁から文書目録の提供を受け、「行政文書管理ガイドライン」に沿って廃棄が妥当か点検する。しかし、特定秘密文書の目録は秘密の内容が想起されないようにタイトルを付けることになっており、内閣府は文書の重要度を判断しにくい。省庁側に特定秘密文書の閲覧を求めてチェックすることも制度上は可能だが、文書を作った省庁は「わが国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれ」があるとの理由で閲覧を拒否することができる。

 内閣府のチェックとともに、第三者機関の役割を担う政府内の独立公文書管理監の検証・監察を受けることになっているが、方法は明らかになっていないが、保存期間2年以下の文書とみられる。

 秘密文書の廃棄を巡っては、今月11日の衆院総務委員会で内閣官房の田中勝也審議官が「恣意(しい)的な廃棄はできないと理解している」と答弁した。【青島顕】

特定秘密を記録した文書

 外交、防衛、テロ・スパイ防止に関する重要情報を政府が特定秘密に指定し、漏えいした人などに罰則を科すと定めた特定秘密保護法が2014年に施行され、16年末までに11行政機関が487件を指定した。5年ごとに秘密指定期間が更新され、通算30年(一部は60年)まで可能。特定秘密を記録した文書は15年末段階で27万2020点ある。文書の保存期間は秘密指定期間と別に定められ、特定秘密に指定されたまま文書が保存期間満了を迎え廃棄対象になる場合もある。

掲載図:特定秘密文書廃棄審査の流れ(イメージ)(魚拓)

こちらは2016年12月の記事。よくまとまっている。
特定秘密保護法:施行から2年 行政の情報隠し、発見・指摘に高い壁 - 毎日新聞(2016年12月5日 東京朝刊)

 国の安全保障に関わる重要な情報を厳重に管理し、情報を漏らしたり不正に取得したりした人に重罰を科す「特定秘密保護法」が施行されて10日で2年を迎える。今のところ懸念された国民の「知る権利」をおびやかす事態は発覚していない。しかし行政による情報隠しが起きたとき、行政と並び立つ司法や立法が誤りを指摘し、正すことのできる準備は十分とは言えない。【青島顕】

役所はほぼ不開示

 「情報公開請求で特定秘密をチェックすることができる」。秘密保護法が成立したころ、そう説明をする人たちがいた。自民党のホームページにある「特定秘密の保護に関する法律Q&A」にも「特定秘密の記録された行政文書についても、情報公開法に基づいて、開示・不開示が判断されます」とある。

 本当だろうか。「特定秘密に指定された情報に違法なものがある」と市民が聞きつけたと仮定して、役所に情報公開請求をするケースを考えてみる。役所は特定秘密指定の有無にかかわらず「公開対象外だ」として不開示にするだろう。

 市民が不服審査を求めると、第三者でつくる審査機関は非開示になった文書を実際に見られることになっているので、特定秘密のチェックも一見できそうにも思える。しかし役所が本当に見せるかどうかは分からない。

 仮に審査機関が開示すべきだと判断しても、審査機関は役所に開示を命じるのではなく、開示した方がよいと「答申」できるだけだ。役所は特定秘密に関わる文書の開示を拒否できる。

 そうなった場合、市民は裁判所に情報公開訴訟を起こすしかない。しかし現行の情報公開法では、裁判官が不開示文書を取り寄せることはできない。そのまま市民が敗訴する公算大だ。

 鈴木秀美・慶応大教授(憲法)は、情報公開法を改正して裁判官が文書を実際に見て、開示か不開示かを判断する「インカメラ審理」と呼ばれる仕組みを取り入れるよう訴えている。「裁判所が文書をきちんと見たうえで実質的な判断をできるようにすることが重要だ」と話す。

 インカメラ審理を使って不備のある秘密情報の公開を実現するには、もう一つ高いハードルがある。現行の情報公開法には「公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある」などと行政側が判断すれば不開示にできるという条文がある。併せて改正が必要になる。

国会に通報窓口を

 国会は衆参両院に「情報監視審査会」をつくった。所属する議員や職員に守秘義務を課し、携帯電話の電波も届かない特別な部屋を非公開にすることで、政府から特定秘密の提供を受けてチェックする仕組みを整え、2015年春にスタートした。

 厳格な仕組みにもかかわらず、秘密保護法は、政府に提供を拒否する権限を与えている。とくに外国から得た情報について、政府は相手国の了解を得なければ国会には出せないとしている。

 森雅子担当相(当時)は14年、衆院議院運営委員会で「国会から求められた場合は政府としては尊重して適切に対応する。提供できない場合は限定的に解釈していくべきだ」と答弁していた。ところが参院の審査会(会長=中曽根弘文・元外相)に対する担当官僚の説明は森元担当相の答弁より後退したものになっているという。

 参院の審査会は審査の前提を欠いたまま、本題に入ることができなくなり、さらに環太平洋パートナーシップ協定(TPP)承認案・関連法案をめぐる与野党の対立もあって11月2日以来、丸1カ月開催できていない。15年に指定された特定秘密61件の妥当性がおもな審査課題だが、指定した省庁の説明聴取が始まっていない。来年3月までに年次報告書を作成するのは難しい状況になっている。

 一方、衆院の審査会(会長=額賀福志郎・元財務相)は昨年の特定秘密の指定状況などについて11省庁からの説明を聴取し、来年3月に報告書を公表する方向だ。

 11月30日には、警察庁と経済産業省から特定秘密を記録した文書や画像を提供させてチェックした。審査会に所属する議員たちが実際に秘密の記録を見るのは、今年1月以来だ。

 委員らの説明によると、警察庁の特定有害活動(スパイ活動)にかかわる特定秘密の文書の中に30年以上前の古いものがあり、特定秘密としてふさわしいかを調べたという。

 ただ審査する特定秘密を選ぶ手掛かりは、秘密の概要を記した「指定書」と、担当官僚による説明に限られている。何らかの問題が起きてもそれを発見するのは極めて難しい。

 秘密保護法に詳しい江藤洋一弁護士は「指定書の記載はあいまいで、検証が難しい。国会が監視できなければ特定秘密の問題を見つけることはできないのに、現状は衆参の審査会が機能しているとは言えない」と手厳しい。

 また、審査会や事務局には省庁の職員から通報を受ける窓口が作られていない。通報者を保護する仕組みも作られていない。

 省庁から独立した国会にこそ通報窓口が必要だとする声も識者の間には根強い。

政府内にも監視機関

 政府内にもチェック機関はある。内閣府の佐藤隆文・独立公文書管理監(検事出身)と佐藤氏を室長とする情報保全監察室(20人)がそうだ。守秘義務を課せられた官僚でつくる組織だけに、特定秘密の文書を直接見て妥当性を判断できるようになっている。今年4月、外務省と警察庁の計3件の特定秘密に相当する文書がないとして指定の解除を求めた。監視活動が初めて具体的に機能した。

 独立公文書管理監には官僚からの内部通報を受け付ける窓口があるが、政府内の機関に対して官僚が通報するには相当な決心が求められそうだ。独立公文書管理監の業務についての報告書は来年春に作られる予定だ。佐藤独立公文書管理監は14年12月の就任以来、記者会見を一度も開かず、業務の方針などを国民に説明していない。

 ■ことば

特定秘密保護法

 (1)外交(2)防衛(3)テロの防止(4)スパイなどの防止--の4分野について、政府が重要な情報を特定秘密に指定し、漏らした人や不正に取得しようとした人に最長懲役10年の重罰を科す内容。政府は米国などと安全保障に関する情報を交換、共有しやすくするために必要だとして1980年代以来、制定を目指してきたが、安倍晋三政権が2013年に成立させた。いったん特定秘密になると外部からうかがい知れないため、情報隠しに悪用される余地があるとの懸念が根強い。


掲載図1:衆院の情報監視審査会の開催について説明する額賀福志郎会長(左から2人目)ら=東京都千代田区の衆院第2議員会館で2016年11月30日(魚拓)
掲載図2:各国議会の情報監視機関の開催比較(魚拓)
掲載図3:特定秘密監視の仕組み(魚拓)

特定秘密:「ルーズな運用」に批判…文書なし166件 - 毎日新聞(2017年3月29日 22時10分(最終更新 3月29日 23時03分))

 特定秘密保護法に基づく秘密指定の状況を調査する衆院の情報監視審査会(会長・額賀福志郎元財務相)が29日、年次報告書を衆院議長に提出した。昨年に続いて2回目。調査で文書が存在しない秘密の存在が次々に判明し、指摘を受けた政府は新たに9件の秘密指定を解除した。専門家は「ルーズな運用だ」と批判している。

 防衛省は2014年の特定秘密保護法施行まで「防衛秘密」だった「自衛隊防衛・警備計画」や「情勢等に関する見積もり」など5件を特定秘密に移行させていたが、文書は存在していなかった。「行政文書として保存期間を過ぎており廃棄をした。関係する職員が知識として保有しているため、特定秘密の指定としての維持をしている」。防衛省幹部は昨年11月21日の審査会でこう答弁した。

 こうした対応について、政府の情報保全諮問会議委員の清水勉弁護士は「特定秘密は文書や電子情報といった表示できるものを組織として管理するのが法の趣旨だ。頭の中の知識は原則として秘密指定の対象にならない。防衛省の説明は誤りだ。ルーズな運用で、氷山の一角かもしれない」と批判する。

 15年末時点の特定秘密は443件。政府は27万2020の文書に秘密が記録されていると説明したが、それぞれの秘密に何件の文書があるかは分かっていなかった。審査会が各省庁に提示を求めると、4割弱の166件に対応する文書がなかった。

 暗号を含む「物」の形で存在するものが91件あったが、15件は情報が将来出現する見込みで指定されており、10件は「職員の知識の中に存在する」状態だった。政府は昨年5件の秘密指定を解除したが、さらに今月までに9件を解除した。

 審査会は非公開で開かれ、所属議員には守秘義務が課されているが、行政機関が説明を渋るケースは後を絶たない。国家安全保障会議(NSC)は4大臣会合の結論を秘密指定しており、昨年10月14日の審査会で政府参考人は「安全保障政策の核心が記載されており、極めて機微」と答弁した。

 出席議員の一人は「答弁は初めから(特定秘密を)出さないと言っているに等しい」と指摘した。

 「安全保障に支障がある恐れがある」と政府が判断した場合、特定秘密の提供を拒否できるため、審査会の調査には限界がある。過去1年の調査で特定秘密の提供を受けたのは6件にとどまった。

 昨年は衆院と同じ3月30日に年次報告書を提出した参院の審査会は、2回目の年次報告書提出のめどが立っていない。【青島顕、遠藤拓】

掲載図:衆院情報監視審査会の終了後、2016年の年次報告書を額賀福志郎会長(左)から手渡される同院の大島理森議長(中央)=国会内で2017年3月29日午前10時21分、川田雅浩撮影(略)


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