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2017/12/20

文化財保護がなし崩しにされるかも。

安倍総理大臣 地方活性化は「インスタ映えが鍵」(テレ朝ニュース テレビ朝日)
(2017/12/19 23:28)

 安倍総理大臣は、政権の最重要政策である地方活性化について「インスタ映えが鍵となる」と訴えました。

 安倍総理大臣:「地方活性化の鍵はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)にあります。SNS映えするというのはインスタ映えするとも言われていますが、旅行ニーズが爆買いといった買い物中心の旅から、その場所でしか経験できない体験型に変わりつつあります。SNS映えする街道風景を増やしていきたいと思います」
 安倍総理は最近、自らも始めたインスタグラムを引き合いに出し、地方にインスタ映えする風景を増やすことで観光客を増やしたいと強調しました。また、「お寺でミュージカル、遺跡のパワースポットでヨガ。アイデア次第で観光客を集めるキラーコンテンツに生まれ変わる」として、文化財保護法の改正案を来年の通常国会に提出する方針を明らかにしました。

「インスタ映え」云々は生暖かく曖昧な笑顔で受け止めればいいが、文化財保護法の改正は重大問題。

「お寺でミュージカル、遺跡のパワースポットでヨガ。アイデア次第で観光客を集めるキラーコンテンツに生まれ変わる」というのは、山本幸三地方創生大臣(当時)の「学芸員が地方創生のガン、一掃しなければ」という発言と軌を同じくしている。
国の観光戦略には「観光客=金づる→集客して金儲け」という視点しかなく、地域の生活、文化、芸術、歴史などを尊重し、その保全と充実に努めるという視点は全くない。それどころか、「観光振興=国民の余暇の充実→生活の質の向上」という、かつての国土計画時代の理念すら失われている。現在の観光振興とは消費拡大と外需誘致というカネの話に完全に平板化されているのである。

この発想は文化財や歴史遺産、文化芸術の食いつぶしにしかつながらない。観光学の教科書では、観光の発展によって文化が観光化され、変質して本来の意義を失ったり、文化の担い手のアイデンティティクライシスが起きる危険が指摘されている。観光とは本質的に覗き見趣味や野次馬趣味と裏表の関係にあるから、見世物になる・される側が被る圧力には十分な配慮が必要で、慎重の上に慎重を期すべきものである。単なる「おもてなし」で交流人口が拡大してハッピーだというだけのものではない。

さらに、金儲け優先の観光振興は地域の記憶や歴史の改変・平板化にも無頓着だ。金を稼げる分かりやすいストーリーと英雄譚、安い感動を売れるコンテンツの「発掘」と解釈が広告宣伝に使われ、住民の郷土愛涵養の材料として流布される。こうして、例えば英君が領民に苛政を加えた史実や差別や虐殺などの歴史、地域内多様性や反乱などの痕跡は忘れられることになる。薩長の明治維新の美化や、世界遺産登録騒動で現れた歴史のつまみ食い、強制連行の史実の否定と隠蔽などはその典型である。

現在でも文化財の保護は不十分で、開発に対抗して史跡を守ることには困難が伴う。史跡や文化財の保護は非経済的な価値に基づいていて、失われた過去の記憶を次の次代に伝えるという目的でなされるものなのだから、本来的に金儲けの論理とは相容れない。にもかかわらず、文化財保護には金(公金)がかかるという理由でカネの論理がすでに浸食してきているのが現状である。だから現法の保護の不十分さを補うための改正であればともかく、文化財の観光消費を容易化し、金儲けの種にするための改正というのだから、文化財保護が危うくなると考えるのは当然だろう。金儲け主義が蔓延しているからこそ、非経済的な価値の保護を強化すべきなのである。

それにしても安倍政権・自民党は「美しい国」とか「日本を取り戻す」とか言いながら、やっていることはことごとく先人の遺産の食いつぶし、将来世代へ遺すべき富の利食い、社会維持のシステムの破壊ばかりだなあとの思いを強くする。せめて我々はガラパゴス諸島が日本領でなかった幸いを神に感謝すべきだろう。

インバウンド:山本地方創生相「学芸員はがん。一掃を」 - 毎日新聞(2017年4月16日 21時51分(最終更新 4月17日 14時41分))

 山本幸三地方創生担当相(衆院福岡10区)は16日、大津市での講演後、観光やインバウンド(訪日外国人)による地方創生に関する質疑で、「一番のがんは文化学芸員だ。観光マインドが全く無く、一掃しないとだめだ」と述べた。法に基づく専門職員の存在意義を否定する発言で、波紋を広げそうだ。

 講演は滋賀県が主催し、山本氏は「地方創生とは稼ぐこと」と定義して各地の優良事例を紹介した。

 発言は会場からの質問への回答。山本氏は京都市の世界遺産・二条城で英語の案内表示が以前は無かったことなどを指摘した上で、「文化財のルールで火も水も使えない。花が生けられない、お茶もできない。そういうことが当然のように行われている」と述べ、学芸員を批判した。

 閉会後の報道陣の取材に対し、山本氏はインバウンドの興味を引くさまざまなアイデアについて「『文化財が大変なことになる』と全部、学芸員が反対する。観光立国として(日本が)生きていく時、そういう人たちのマインドを変えてもらわないと、うまくいかない」と説明し、「全員クビは言い過ぎ」とも述べた。

 学芸員は博物館法で定められた専門職員で、資格認定試験に合格し博物館資料の収集、保管、展示、調査研究などを行っている。ある学芸員は「観光のための文化財活用と文化財保護をいかに両立するかが大事な視点だ。観光に重きを置いている最近の国の風潮を象徴している発言だ」と話した。【北出昭】


山本地方創生相:学芸員くび発言、大英博物館「事実誤認」 - 毎日新聞(2017年4月20日 19時04分(最終更新 4月20日 19時48分))
 「一番のがんは文化学芸員」などの発言を撤回した山本幸三地方創生担当相が、大英博物館(ロンドン)について「観光マインドがない学芸員は全部くびにした」と発言していたことが分かった。大英博物館は20日までに、毎日新聞の取材に対して「明らかな事実誤認」と回答した。

 山本氏は3月9日の参院内閣委員会で、2012年のロンドン五輪で観光を盛り上げるため、大英博物館で大規模改装が行われたと説明。「一番抵抗したのが学芸員で、そのときは観光マインドがない学芸員は全部くびにした」と語った。山本氏は今月16日の滋賀県での地方創生に関するセミナーでも同様の発言をしていた。

 これについて、大英博物館の広報担当者は「事実誤認」と否定し、「大英博物館は観光のためにスタッフを解雇したことも根本的な建物改装をしたこともない」と強調した。

 この件について山本氏の事務所に見解を求めたが、20日夜までに回答はなかった。【岸達也】


山本地方創生相「大英博物館は学芸員を全部クビにした」⇒大英博物館"明らかな事実誤認"と全面否定(2017年04月19日 19時54分 JST | 更新 2017年04月20日 22時31分 JST)
山本幸三大臣の発言を引用しておく。
ロンドン・オリンピックのときに観光を盛り上げるという意味で成功したと言われているのが、文化プログラムをつくって、ロンドンのみならずイギリス全体の美術館、博物館を観光客のために大改革をしたんですね。例えば、大英博物館の中の壁を取っ払って、真ん中に人が集まるところをつくって、そこからいろんな部門に行くというように全部やり替えました。そのときに一番抵抗したのが学芸員でありまして、そのときは観光マインドがない学芸員は全部首にしたというんですね。それぐらいの取組をやって、その後、ロンドンにまさに大英博物館を始め大変な観光客が継続して続くようになりまして、オリンピック終わってもにぎやかさを保っているというようなことであります。

(参議院会議録情報 第193回国会 内閣委員会 第2号より)


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