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2018/02/22

「働き方改革」の怪しさが分かる記事。朝日:時々刻々から

朝日新聞の力が入った記事。上西充子氏のツイートで知った。

ネットがあるから既存メディアは用無しだという意見をしばしば目にするが、この水準を維持して継続的に報じる機能は依然として既存メディアの独壇場だ。実力ある記者が専門分野を掘り下げて取材し続ける場を維持できているのは現状では既存メディアしかない。

(時時刻刻)首相、問われる答弁姿勢 「裁量労働、一般より長く労働」 説明受けるも触れず:朝日新聞デジタル
2018年2月21日05時00分

 安倍晋三首相肝いりの「働き方改革」に、改めて疑問符がついた。20日の衆院予算委員会では、関連法案作成に関わる厚生労働省の労働政策審議会に説明不十分な調査データが示されていたことが発覚。首相は、自ら撤回した裁量労働制に関する答弁の責任を同省に押しつける姿勢を示した。法案の正当性だけでなく、首相の姿勢も問われる事態になりつつある。

 裁量労働制で働く人の労働時間は、一般労働者より長くなるのか、短くなるのか――。

 20日の衆院予算委では、首相が裁量労働制で働く人の方が一般労働者より労働時間が長いという調査結果を知りながら、1月29日の衆院予算委で触れなかったことが明らかになった。

 首相は1月29日、裁量労働制で働く人の労働時間について、厚労省のデータをもとに「平均的な方で比べれば、一般労働者よりも短いというデータもある」と述べた。後に撤回することになったものの、裁量労働制で働く人の方が労働時間が短いと受け取られかねない答弁だった。

 ところが、首相は20日、1月29日朝に答弁を準備する中、裁量労働制で働く人の方が一般労働者より労働時間が長いとする独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の調査結果について説明を受けたと明らかにした。この調査結果については、首相はその日の答弁で触れなかった。

 20日の衆院予算委では、希望の党の山井和則氏が機構の調査について質問した。首相は「裁量労働制が適用されることで、適用前より労働時間が長くなることを示したものではない」と反論。山井氏は「ひどい」と不満をあらわにし、「裁量労働制の方が短い時はそのことしか答弁せず、裁量労働制の方が長いというデータしかなくなったらその調査は不十分な点があると(言う)。裁量労働制の方が労働時間が長いということは不都合なのか」と指摘した。

 一方、立憲民主党の長妻昭代表代行は、働き方改革関連法案の作成過程に疑問をぶつけた。「労働政策審議会に示したデータも非常に問題がある。(調査手法について)全然説明がなく、委員の先生は分からない」

 長妻氏が問題視したのは、厚労省が2013年10月に労政審に示した「労働時間等総合実態調査」。裁量労働制で働く人の労働時間や一般労働者の残業時間などを調べたもので、国会への提出が検討されていた労働基準法改正案を審議する労政審の委員に参考にしてもらうためだった。

 この調査では、一般労働者の「平均的な人」の1週間の残業時間を、注釈をつけずに「平均2時間47分」と記載していたが、これは1カ月のうち残業時間が「最長の1週間」を集計した値だった。

 これは、首相が撤回した答弁の根拠になった、一般労働者と裁量労働制で働く人の1日の労働時間を比べたデータと同様の手法で集計した数字だ。調査結果の意味が伝わっていなければ、メンバーの議論の役に立たなかったとも言える。

 (米谷陽一)

 ■データの責任「厚労省」

 20日の衆院予算委。厚労省が19日に、不適切に比べたデータを使った首相答弁だったことを認めてから初めて、安倍首相が国会審議に臨んだ。野党は首相に批判の矛先を向けた。

 「データを知らないで答弁したのか」「答弁は虚偽だったということでいいか」。立憲の長妻氏が矢継ぎ早に質問を浴びせると、首相はこう答えた。「担当大臣は厚労大臣だ」

 首相はさらに「すべて私が詳細を把握しているわけではない」「答弁は厚労省から上がってくるわけで、それを私は参考にして答弁した」などと述べ、こうしたデータを出した責任は厚労省にあるとの認識を示した。

 首相の姿勢を、長妻氏は「無責任だ」と批判。裁量労働制の対象を広げるためにあえて都合の良いデータを作らせたのではないかという疑念もぶつけた。首相は「私や私のスタッフから指示を行ったことはない」と強調し、首相官邸側の関与を否定した。

 国会審議で、首相の答弁はどのように作られるのか。

 首相が出席して国政全般を議論する予算委は、午前9時から計7時間開かれるケースが多い。首相は午前7時ごろには官邸に入り、首相秘書官らと答弁に向けた勉強会に臨む。答弁案は国会議員から前日までに出された質問通告を受け、各省庁の担当部局が作成。首相秘書官が修正し、首相に渡す仕組みだ。

 「(質問は全部で)100問近いので、一つの質問に2分ぐらいしか時間をかけられない」「一つ一つの資料を正しいか確認しろなんてことはあり得ない」「役所から上がってきた資料については、ある程度信頼して答えざるを得ない」

 首相はこの日の衆院予算委で、こうした事情に理解を求めた。自民党の森山裕国会対策委員長は20日、記者団に「厚労省から上がってきた資料を信頼して国会の答弁に使われるのは当然のことだ。首相がすべてを点検するということはあり得ない」とかばった。

 だが、政府のトップである首相が自身の国会答弁の責任を役所に押しつける姿勢には疑問の声も上がっている。そもそも通常国会を「働き方改革国会」として関連法案の成立を最大のテーマに位置づけたのは、首相自身だ。

 希望の党の玉木雄一郎代表は20日の記者会見で「首相も含めて深刻に考えてもらわないといけない」と指摘し、こう続けた。「(データが)役所から上がってきたときに『本当にそうかな』と思う感覚がないことが問題だ」

 (中崎太郎、清宮涼)

 ■<解説>裁量労働制拡大にお墨付き 労政審、政権方針を「追認」

 「すでに労政審で議論しており、その中では、労働時間などについての資料も含めて審議をしたと了解をしている」。安倍首相は20日の衆院予算委で、野党が求める法案の撤回や調査のやり直しを、こう言って突っぱねた。裁量労働制の拡大については労政審のお墨付きをもらっているから修正の必要はない――。これが政府の言い分だ。

 裁量労働制の拡大は、経済界が要求していた規制緩和の一つ。13年6月に閣議決定された「日本再興戦略」に盛り込まれたものだ。12年12月に発足した第2次安倍政権は当時、「世界で一番企業が活躍しやすい国」をぶち上げた。労政審の議論は13年秋から始まったが、政権の方針はその前から決まっていた。このため、当時の議論は結論ありきで進んでいた。

 労政審は厚生労働相の諮問機関。有識者と労使の代表らで構成される。労働政策は政府だけが決めるのでなく、労働者側、経営者側の代表を加えた「3者構成」で決めるという国際労働機関(ILO)の原則にのっとった組織だ。

 労働法制を大きく変える時は通常、厚労省が必要に応じた調査を実施し、専門家が考え方を整理する。労政審では、その考え方を前提に議論が進む。たとえば13年4月に施行された改正労働契約法のときは、こうした手順を踏んでいる。

 政府は労政審のお墨付きを盾に、裁量労働制を巡る不適切データ問題の幕引きを図る構えだが、安倍政権の労働政策は、産業競争力会議や規制改革会議(当時)など官邸主導の会議が先に方針を決めることが目立つ。こうした会議には労働組合の中央組織の連合は加わっていない。働き方改革実現会議には連合の神津里季生会長が加わったが、官邸主導の会議である点は変わらない。

 裁量労働制の拡大も、年収が高い専門職を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度の創設も、事実上、政権が決めた結論を労政審が追認した格好になっている。自ら形骸化を進めてきた労政審を盾に、政権が法案の正当性を主張するのは説得力を欠く。

 (編集委員・沢路毅彦)

掲載図1:安倍首相の20日の発言魚拓
掲載図2:労働政策審議会の形骸化が進んでいる魚拓


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