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2018/04/05

自称「中立」という偏向:北海道経産局が原発に関する教育講演に介入

大学助教の原発説明に修正要求 北海道経産局、高校での講演に - 共同通信
2018/4/5 14:08

 北海道ニセコ町の町立ニセコ高で昨年10月、日本科学技術振興財団の事業の一環でエネルギーをテーマにした講演を行った際、経済産業省北海道経産局が講師の大学助教に原子力発電に関する説明を修正するよう求めていたことが5日、分かった。一部住民は「教育への圧力だ」と問題視。経産局は「中立公平な内容とするためアドバイスした。不当行為ではない」としている。

 ニセコ高は2017年度、経産省資源エネルギー庁の委託で財団が実施するエネルギー教育モデル校事業の対象校に選ばれた。昨年10月、北海道大大学院の山形定助教が原子力などエネルギーの特徴を説明する講演を実施した。

「中立公平な内容とするためアドバイスした」とのこと。「中立公平」とか「アドバイス」とか言葉の選択がいちいち笑わせる。

経産省エネ庁の「エネルギー教育」予算 → 科学技術振興事業団(JST)が実施
ちなみに科学技術振興事業団は、文科省が所管。

上記共同通信の記事は各地方紙のサイトにも掲載されている。

北海道新聞はやや詳しい。

経産局、ニセコ高の原発講演に修正要求 不当介入と批判:どうしん電子版(北海道新聞)
04/05 12:42 更新

 【ニセコ】後志管内ニセコ町の町立ニセコ高校で昨年10月、北大大学院工学研究院の助教が公益財団法人・日本科学技術振興財団(東京)の事業の一環として行ったエネルギー問題に関する講演に関し、北海道経済産業局幹部が事前に原子力発電の問題点に関する内容の変更を求めていたことが5日、分かった。助教は資料を追加したものの、削除などはせずに講演を行った。住民からは「教育への不当な介入だ」との批判が上がっているのに対し、道経産局は「中立的な講演内容を求めただけだ」と反論している。

 講演は2017年10月16日、自然エネルギーなどに詳しい同院の山形定(さだむ)助教(環境学)が「ニセコでエネルギーと環境を考える」と題して行った。ニセコ高は17年度、同財団から「エネルギー教育モデル校」に選ばれており、講演は、同財団が経済産業省外局の資源エネルギー庁の委託を受けて実施した。

 山形さんは5日前の同11日、講演会で使用する説明資料を高校に送った。翌12日には、経産局の部長と課長が高校側から送られた資料を手に、山形さんの研究室を訪問。原発の発電コストの高さや原発事故発生時の危険性を指摘した記述と写真について「他の見解もあるのではないか」と指摘した。福島第1原発事故の水素爆発時の写真を掲載した資料については「印象操作だ」などと変更を求めた。
残り:509文字/全文:1072文字

・原発の発電コストの高さ・事故発生時の危険性の説明→「他の見解もあるのではないか」
・福島第1原発事故の水素爆発時の写真→「印象操作だ」

やっぱり「中立公平」とか、笑うしかない。
原発が低コスト・安全だという説明には「他の見解もあるのでは」などと言うはずがないし、原発自治体で原発落成を祝った写真を見せても「印象操作」とは言わないだろうからね。

毎日新聞記事は違う方面からの記事。

北海道経産局幹部:原発記述の修正要求 ニセコ高の講演に - 毎日新聞
2018年4月5日 00時54分(最終更新 4月5日 01時01分)

北海道大助教のエネルギー問題講演で
 北海道ニセコ町立ニセコ高で昨年10月、公益財団法人・日本科学技術振興財団の事業で北海道大の助教がエネルギー問題の講演をした際、北海道経済産業局幹部が事前に原子力発電の問題点を指摘する部分の変更を求めたことが関係者への取材で分かった。住民から「教育への介入」と批判する声が上がる一方、経産局は「原子力を含めた各エネルギーのメリットとデメリットの両面が幅広く伝わるようにするのが目的だった」と反論している。

 講演は昨年10月16日にあり、北海道大大学院工学研究院の山形定(さだむ)助教が「ニセコでエネルギーと環境を考える」と題して全国とニセコ町のエネルギー全般について説明した。

 複数の関係者によると、山形氏が事前に高校側に講演資料を送ったところ、経産局の部長と課長が山形氏を訪問。原子力の発電コストや事故発生時の危険性を指摘した記述と写真について「特定の見方だ」「(福島第1原発の水素爆発時の写真掲載は)印象操作だ」として変更を求めた。

 山形氏は「(風力発電などの)自然エネルギーが100%安全なわけではない」などの記述を加えたが、原発についての記述や写真は変更しなかった。取材に「(変更要求が)原発に集中しており、違和感を覚えた」と話す。

 同高は昨年度、日本科学技術振興財団から「エネルギー教育モデル校」に選ばれ、講演もその一環だった。モデル校には経産省外局の資源エネルギー庁が財団を通じて教育活動費を助成していた。

 経産局は「事業の目的に沿って実施するための対応だった。原発のデメリットを一方的に決めつけ、メリットを説明しないのは問題。教育への介入ではない」と説明した。ただ、同局が事前に内容の修正を求める例は多くないという。

 経緯を知った町民らが「教育への介入」などと問題視。昨年12月から3月まで住民の求めにより町の住民説明会が3回開かれ、町長らが状況を説明した。また、町議会でも共産党町議が「圧力をかけた」などと批判した。【田所柳子】

欠けていた住民への配慮
 今回の問題は二つの論点がある。まず「経産局が原発批判を封じたのか」。同局は「仮に自然エネルギー批判が極端な講演でも変更を求めたはず」と否定した。ただ、ニセコ町の一部は、北海道電力泊原発(泊村)の30キロ圏内に含まれるだけに講演内容に過剰に神経をとがらせた可能性もある。一方で住民の反発は、原発問題への関心の高さも背景にあるのだろう。

 もう一つは「教育に介入したか」。同局はこれも否定した。資源エネルギー庁の補助金で実施する事業を同局が「適切かチェックする」(関係者)こと自体は問題ないかもしれない。しかし、講師を訪ねて内容変更を迫ったのは異例だ。

 住民説明会に参加した男性は取材に、文部科学省が2月、前川喜平前事務次官が講師を務めた授業を終了後に調査した問題を挙げ「今回は事前介入で、より問題が大きい」と批判した。住民にどう受けとめられるかの配慮に欠けていたのは間違いない。【田所柳子】

田所記者の論評はかなり控えめ。政府に弱腰だとすら思えるほど。

講師が講演資料を高校に送付 → 経産局が講師に原発に集中して変更要求。

経産局の言い分「原発のデメリットを一方的に決めつけ、メリットを説明しないのは問題。」
全然中立じゃないじゃん。

「自然エネルギー批判が極端な講演にも変更要求する」と言うのは空々しいよね。そんなことをするはずがないし、そんな講演がそもそもあるのかとも言えるし。

これはもちろん先日の
・前川前事務次官の教育講演に不当介入した文科省と自民党極右の赤池・池田の2議員
・中学校の性教育に介入した東京都教委と自民党古賀俊昭都議
とを思い出させるわけだけれども、もう一つ、
・慰安婦問題での言論活動に圧力を掛けた外務省
もまた思い出させる。
前川前事務次官の件と中学校の性教育の件は、どちらも自民党極右議員たちが発端になっているけれども、今回の原発講演への介入はそうではないみたいだ。その点では外務省の慰安婦問題への介入に似ている。

前川前事務次官の件はもちろんモリカケ問題に絡んでいるので安倍政権がらみ。
性教育への介入は2003年の七生養護学校への介入と併せて考えると、安倍晋三氏の系譜が浮き出てくる。
そして慰安婦問題での外務省の圧力は、安倍政権下で強まった。もちろん安倍氏は有名な破廉恥広告 THE FACTS に荷担したし、日韓合意でカオスを作った責任者でもある。

そう考えると、行政機関による言論・教育への圧力を半ば堂々とやり、開き直るようになったのは、やっぱり安倍政権の影響だとも言えるんじゃないか、控えめに言っても。

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追記(2018年4月11日)

倶知安町:講演の講師を変更 過去に原発「危険性」指摘  - 毎日新聞
2018年4月11日 19時09分(最終更新 4月11日 19時27分)

経済産業省の出先機関・北海道経産局が昨年、ニセコ町の高校で講演した北海道大助教に原発の危険性を指摘する内容を修正するよう求めた問題で、隣接する倶知安町がいったん助教を講師とする講演を内定した後、同局から推薦された別の講師に変更していた。町は「自主的に判断した」と強調するが、助教は「町側が経産局に『そんたく』したのかもしれない」と話している。

 倶知安町は昨年、経産省の再生可能エネルギー促進に関する事業の助成を受けて「再生可能エネルギーセミナ…

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残り496文字(全文730文字)

全然関係ないんだけど、とある国の機関の人の話をよく聞くんだけど、その機関が所管している政策に批判的な人々や、反対する人々がいるわけ。まあ役所だからそういう反対運動みたいなものはどうしても出てくるよね。で、その機関の人々は、そういう批判や反対をする人たちのことを、これはもう、本当に蛇蝎のごとく嫌っているというか、心底侮蔑し嫌悪……というか憎悪すらしているようなんだよね。生存自体を認められないというか、それぐらい嫌っているらしい。
どうしてそう言えるかというと、その人達の話になると、明確に敵、しかも猛烈な悪意で攻めてくる、役所を潰すことだけを目的とする悪の集団だという認識しか出てこないんだよね。しかも、その職場ではだいたいの人がそう感じているという。
批判者や反対者、抗議行動をする人たちにも色々なタイプがあるし、主義主張も異なるはずなんだけど、あまり違いは認識しないみたいで、ただ敵としか見ていないっぽい。公務員試験を通った人たちがそういうアタマでどうする、と思ったりもするけれど、まあそういうものらしいです、少なくとも私の聞く例では。

どうしてこんなことを思い出したかというと、原発政策担当部署の人たちもそういう感覚なのかもしれないなあと思ったからなんですね。
昔、学校を卒業して数年後、久しぶりに学友と食事をしたときに、たまたま原発問題の話になったことがあったんですね。すると、その学友が見事に原発推進派になっており、そして反原発運動の人たちを陰謀論者であるかのように批判して、原発反対論を次々と「論破」していったんですね。彼はノンポリ(古語?)で社会問題には無関心、そういう政治的な話をある意味侮蔑していたような人だったので、びっくりしたのを今でも覚えています。で、その彼の就職先は電力会社だったという。マンガみたいな話だけれども実話です。
他方、学生時代は強固な原発支持者だったんだけど、原発と関係ない……というか、本当は多少は原発に関係するんだけれど、あまりその関係は芳しくないものを抱えているところ……に就職した友人は、何年か経って「原子力とは離れたい」と言って全然関係ない方面に異動しましたね。あのエバンジェリストが一体どうして、とそのときも驚いたのを覚えています。


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