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2018/07/05

警官が制圧→窒息死→罰金30万円。テレビが一部始終を撮影→警察が押収、テレビ局は抗議もせず報道もせず。

鹿児島・警官取り押さえ男性死亡:警察官による制圧死 撮影したTBS、映像を放送せず - 毎日新聞
2018年7月5日 東京朝刊

 鹿児島市で2013年、会社員男性が鹿児島県警の警察官に取り押さえられた際、死亡する事件があった。業務上過失致死罪で2人の警察官が有罪判決を受けたが、事件は警察に密着取材するTBSテレビの番組の撮影中に起きていた。事件の一部始終は制作スタッフが撮影。この映像を県警が押収していた。TBSは映像を放送しておらず、押収に対する抗議もしていない。報道機関としての対応を疑問視する声が出ている。【川名壮志】

当局押収「抗議なし」

 事件は13年11月24日午前2時ごろ、鹿児島市の繁華街で発生。けんかの通報で駆けつけた警察官2人が、路上で会社員男性(当時42歳)を取り押さえた。男性は路面に押さえつけられ、胸部などの圧迫による低酸素脳症で同日夜に死亡した。

 遺族の刑事告訴を受け、鹿児島地検は警察官2人を業務上過失致死罪で略式起訴。鹿児島簡裁は事態を重くみて「略式不相当」と判断し、正式裁判で審理した鹿児島地裁は15年7月、警察官2人にそれぞれ罰金30万円を言い渡し、確定した。

 判決によると、警察官が駆け付けた際、興奮した男性が蹴りつけるなどしたため転倒させ、1人が背中に膝を押し当てて体重をかけた。男性が抵抗し、2人がかりで3分にわたり押さえつけた。判決は「抑圧に及んだ経緯にはやむを得ない面がある」としたうえで「漫然と制圧行為を継続した」と指摘した。

 男性の遺族は「現場には他の警察官もいたが、事件を回避する注意義務を怠った」として、国家賠償法に基づき、県警を所管する鹿児島県を相手取り、損害賠償を求める民事訴訟を起こした。

 関係者によると、事件当時、警察官にはTBSから取材を請け負った番組制作会社のスタッフが同行していた。同社はTBSからドキュメンタリー番組「密着警察24時」の制作を受注しており、スタッフは警察官が男性を押さえつけた経緯の一部始終を撮影していた。

 この映像は放送されていない。また、県警が制作会社から映像を押収したことも判明している。

 一方、検察は略式起訴前、押収映像を遺族側に見せた。起訴の判断について説明する際、「報道関係者が撮影した」と遺族に告げたうえで見せたという。遺族はこの時、男性の「助けて」「死ぬ、死ぬ」などの声をレコーダーに録音。遺族側はその内容を文書にし、事件の状況を示す証拠として民事訴訟に提出した。

遺族「報道して真相を明らかに」

 遺族側が問題視しているのは、この映像が放送されなかったことだ。男性の父親(80)は取材にこう訴える。「息子が命を奪われた現場に、テレビのスタッフがいたと知って驚いた。警察官が人を死なせてしまったのに、なぜその映像を報道しないのか。報道で真相を明らかにしてほしかった」

 遺族の代理人弁護士は「警官の制圧と死亡の因果関係や、結果を回避できたかどうかを判断する上で、映像は大きな支えになる」と言う。

 服部孝章・立教大名誉教授(メディア法)は「映像を報道しないのは、権力を監視する役割を怠ったといえる」と話す。

 映像を押収されたことについて、TBS側はその事実を公表していない。捜査当局によると、押収に対する抗議もなかった。鈴木秀美・慶応大教授(メディア論)は「報道機関として押収に抗議しないのはおかしい」と話す。

 捜査機関によって映像や録画を差し押さえられることに、テレビ局は抵抗してきた。1990年3月、TBSの番組「ギミア・ぶれいく」が、暴力団関係者が市民を脅して債権を取り立てる場面を放送した。傷害事件とみて捜査した警視庁が、証拠としてビデオテープを押収した際、TBSは「報道の自由が妨げられる」として抗議。押収取り消しを求めて準抗告を申し立てた。最高裁は「取材の自由は尊重されるべきだ」としながら「(このケースの)事情を総合すると適正、迅速な捜査のためにはやむを得ない」とTBSの特別抗告を棄却している。

 今回の問題で、毎日新聞はTBSに2度、文書で取材を申し込んだ。同局は「番組制作過程等については、従来、事実の有無を含めてお答えしていない」としている。番組制作会社も取材に応じていない。

 この事件を調査している宮下正昭・鹿児島大准教授(報道論)は「今からでもTBSは映像を使って報道し、事件の経緯を明らかにすべきだ」と話す。

問われる「密着番組」 識者「権力監視の役割果たせ」

 番組の取材中に起きた事件の映像が放送されなかった問題には、警察の協力を得て成立する「警察密着番組」であったことが背景にあると指摘されている。

 各地の警察活動にカメラが密着するドキュメンタリー番組は民放キー各局が放送しており、人気番組になっている。テレビ局が警察に企画を持ち込み、内容の交渉を経て実現している。警察にとっては現場の活動を国民に知ってもらうメリットがある。テレビ局側には、報道機関としての視点をどこまで確保できるかが課題になる。

 局関係者によると、こうした番組の制作は、報道部門でなくバラエティーなど娯楽番組を受け持つ部署が担当するのが通例だ。報道とバラエティーの両方の制作に関わった経験がある民放プロデューサーは「視聴率を稼ぐことが優先される民放にとって、警察密着番組は低予算で多くの視聴者を獲得できる人気番組。一方で公権力を監視する役割を担う放送局が、下手をすると警察のPR番組を作ってしまう危うさがある」と話す。

 このプロデューサーはこうも指摘する。「長く番組を制作していれば撮影中に事件処理を巡るトラブルに遭遇したり、警察が加害者になるケースに居合わせたりすることも起こりうる。その際にどう対応するかが問題だ。番組の性格によらず、テレビ局として犯罪を報じないことはあり得ない」

 元日本テレビ・ディレクターの水島宏明・上智大教授(ジャーナリズム論)は「警察密着番組は警察の全面協力の下に制作する弱みはあるが、事件が起きれば報道機関としての姿勢が問われる。TBSが撮影の事実も捜査機関に押収された経緯も公表していないのは強い違和感を覚える。権力へのチェックは報道機関の役割。『密着番組は警察べったり』と受け止められないために、番組の在り方を考える必要もあるだろう」と話した

2013年の事件。判決は15年。
人を一人殺しても30万円払えばチャラになるのか。遺族はやりきれないのではないか。亡くなった人は42才会社員、遺族には生活苦が待っているのかもしれない。色々な辛さが重なって民事訴訟につながっているのかも。


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