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2019年9月の2件の記事

2019/09/03

朝鮮学校の無償化訴訟、東京と大阪で敗訴が確定。

自民党政権下では実現できなかった高校「無償化」を民主党への政権交代によって初めて実現した。だが政権は再び自民党に戻り、朝鮮学校が狙い撃ちにされ、政権が煽り、苛烈さを増した北朝鮮への憎悪の中、朝鮮学校とその関係者らへに無数の攻撃が集中した。その憎悪を公然と煽り排外行為を行った中には、少なくない自民党や維新の会などの政治家がいた。そしてその攻撃の中、朝鮮学校への差別は正当化され、正式に制度化された。

この朝鮮学校への差別の契機は自民党政権の復活にあった。おそらく、当時の民主党政権下ではこのようなあからさまで醜悪な差別は起きなかっただろう。だから、この朝鮮学校差別は、自民党への政権復活を支えた、あるいはそれを許した日本の有権者が実行したものだ。我々が、朝鮮学校とその関係者を差別し排斥したのだ。選挙を棄権した者も、他の投票者に決定を委任したという意味でこの自民党の政権復活を黙認し、等しく差別排外主義に手を貸したのだ。

最高裁は今回、朝鮮学校を差別するもしないも裁量の範囲内だと判断を示した。であるならば、差別しない選択もまた裁量の範囲内だったのだ。そして我々は差別する政府を選択し、その選択は6年以上も続いている。その間何度も異なる選択を示す機会はあったのにだ。これを我々の責任と言わずして何と言えるか。

北朝鮮への憎悪は、その後、トランプ政権が北朝鮮対話路線に向かったことで急速に水面下へ潜り、代わりに現在猖獗を極めているのが韓国への憎悪である。これは、安倍政権、自民党、その他右翼政党らがヒステリックに叫ぶ、平和を祈念する少女像や徴用工への補償要求への憤激に引きずられて、水面下の差別意識がむき出しになったものだ。しばらく前までは北朝鮮への怒りをぶちまけていたかと思えば、少し事情が変わっただけで今は韓国を徹底的に敵視する。政府与党の都合に合わせて、いくらでも容易に憎悪の矛先を変えられるのが我々日本人である。

もちろん政府の希望通りに怒ってみせられるこの憎悪の背景には、我々日本人の無意識にまで深く食い込んだ排外主義と夜郎自大な優越意識、そして朝鮮半島への度しがたい侮蔑がある。実際、北朝鮮への憎悪が見えづらくなったと思えば、次には韓国への憎悪が爆発する有様である。我々日本人は片時でも朝鮮半島の社会と人々への差別と軽蔑とを止めることができない。これは我々の病である。この病は人を傷つける加害性の症状を示す。我々はその重篤な患者であり、他者に迷惑な存在であることを自覚すべきである。

話を元に戻す。朝鮮学校への差別を行っているのは日本の政府と自治体であり、その主権者は我々日本人である。従って差別の責任を負うのは日本人である。これは日本人が押し止めなければならない「我々の」問題である。

朝鮮学校無償化訴訟 元生徒側が敗訴 初の確定 最高裁決定 - 毎日新聞(2019年8月28日 20時24分(最終更新 8月28日 21時13分))

 朝鮮学校を高校無償化の対象にしなかった処分は違法だとして、東京朝鮮中高級学校(東京都北区)の元生徒61人が国に1人当たり10万円の賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は27日付で元生徒側の上告を棄却する決定を出した。国の不指定処分を適法として請求を退けた1、2審判決が確定した。

 全国5カ所で起こされた同種訴訟が最高裁で確定するのは初めて。小法廷は裁判官5人全員一致の意見で「上告理由に該当しない」と述べた。

 高校無償化は2010年、当時の民主党政権が導入。全国の朝鮮学校が無償化の指定を求めたが、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)との関係を問題視され、自民党が政権に復帰した後の13年に不指定とされた。

 1審・東京地裁判決(17年9月)は文部科学相が朝鮮総連の影響などを考慮し、「学校運営が適正なものか十分な確証を得られない」との理由で不指定とした処分に裁量権の逸脱はないと認め、元生徒側の請求を退けた。2審・東京高裁判決(18年10月)も1審を支持した。

 最高裁決定に対し、元生徒側の弁護団は「具体的理由を述べることなく退けた決定に抗議する。一日も早く、朝鮮学校を(無償化の)対象とすることを求める」とコメントした。

 5地裁・地裁支部に起こされた同種訴訟は、17年7月の大阪地裁判決が唯一、学校側勝訴となる「不指定は違法」と判断したが、2審の大阪高裁(18年9月)が覆して国側の逆転勝訴となった。現在、名古屋、広島、福岡の3高裁で審理が続いている。【服部陽】

朝鮮学校無償化訴訟:大阪朝鮮学校も敗訴 最高裁上告棄却 - 毎日新聞(2019年8月30日)

 大阪朝鮮高級学校(東大阪市)を高校無償化の対象にしなかった国の処分は違法だとして、学校を運営する学校法人・大阪朝鮮学園(大阪市)が処分の取り消しなどを求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は27日付で学校側の上告を棄却する決定を出した。学校側の逆転敗訴を言い渡した2審判決が確定した。裁判官5人全員一致の意見。

 第3小法廷は同日付で、東京朝鮮中高級学校(東京都北区)の元生徒が国に賠償を求めた訴訟でも、元生徒側の上告を棄却する決定を出していた。名古屋、広島、福岡の3高裁で審理が続く同種訴訟に影響を与えそうだ。

 1審・大阪地裁判決(2017年7月)は「教育の機会均等とは無関係な外交・政治的理由で排除したのは違法・無効だ」として同学校を無償化の対象とするよう命じた。これに対し、2審・大阪高裁判決(18年9月)は「在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)から不当な支配を受けている疑いがある」とし、学校側の逆転敗訴を言い渡した。

 高校無償化は10年に当時の民主党政権が導入したが、その後に政権に復帰した自民党政権が無償化の対象外とした。【服部陽】

朝鮮学校無償化訴訟 敗訴確定で原告らが抗議集会 文部科学省前 - 毎日新聞(2019年8月30日 21時01分(最終更新 8月30日 21時30分))

 朝鮮学校を高校無償化の対象にしなかった処分は違法だとして、元生徒や学校法人が国を相手に起こした東京、大阪の二つの訴訟の敗訴が確定したことを受け、原告らが30日、東京・霞が関の文部科学省前で抗議集会を開いた。

 集会には主催者発表で約600人が参加。小雨が降る中、「不当判決を許さない」「無償化適用」と書かれた横断幕を掲げ、「不当な差別をやめろ」などと声を上げた。

 東京都内の大学院に通う原告の男性(23)は文科省の庁舎に向かい、「私たちの民族的アイデンティティーを汚すような今回の決定は本当に許せない。最後まで闘う」と訴えた。

 同種訴訟は全国5カ所で起こされ、最高裁は27日付で東京と大阪での訴訟について、原告側の上告を退け、敗訴が確定。名古屋、広島、福岡の残り3件では1審で原告側が敗訴し、高裁に係属中。【後藤由耶】

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2019/09/02

厚労省:大臣意向で「非正規」という言葉を禁止するも撤回。大臣関与は否定。

東京新聞:「非正規と言うな」通知撤回 本紙の情報公開請求後に:政治(TOKYO Web)(2019年9月1日 07時05分)

 厚生労働省が省内の全部局に、根本匠厚労相の指示として「非正規」や「非正規労働者」という表現を国会答弁などで使わないよう求める趣旨の文書やメールを通知し、本紙が情報公開請求した後に撤回したことが分かった。同省担当者は撤回の理由を「不正確な内容が散見された」と説明。根本氏の関与はなかったとしている。 (中根政人)

 厚労省雇用環境・均等局によると、文書は「『非正規雇用労働者』の呼称について(周知)」という件名で四月十五~十六日に省内に通知。当面の国会答弁などの対応では、原則として「有期雇用労働者」「派遣労働者」などの呼称を用いるとした。「非正規雇用労働者」の呼称も認めるが、「非正規」のみや「非正規労働者」という表現は「用いないよう留意すること」と注意を促している。

 各部局に送信したメールには、同じ文書を添付した上で「『非正規雇用』のネーミングについては、(中略)ネガティブなイメージがあるとの大臣(根本氏)の御指摘があったことも踏まえ、当局で検討した」と記載され、今回の対応が根本氏の意向であることがうかがえる。「大臣了」と、根本氏の了承を意味する表現も明記されていた。

 「非正規」の用語に関しては、六月十九日の野党の会合で、厚労省年金局課長が、根本氏から使わないよう求められていると説明。根本氏は同月二十一日の記者会見で「指示した事実はない」と課長の発言を否定した。その上で、働き方の多様化に関し「単に正規、非正規という切り分け方だけでいいのか、それぞれの課題に応じた施策を講じるべきではないかという議論をした記憶がある」と話していた。

 本紙は七月十二日付で文書やメールを情報公開請求した。雇用環境・均等局は同月下旬に文書やメールの撤回を決めたとしている。撤回決定後の八月九日付で開示を決定した。

 堀井奈津子同局総務課長は撤回の理由について、文書に単純な表記ミスがあったことを指摘。根本氏の意向に触れたメールについては本紙の情報公開請求後に送信の事実や内容を知ったとして「チェックが行き届かなかった」と釈明した。

 文書については「大臣に見せていないし、省内に周知するとも伝えていない。文書作成に関して大臣の指示も了承もなかった」と説明。メールにある「大臣の御指摘」や「大臣了」についても、メールを作成した職員の勘違いとしている。

◆格差象徴に政府ピリピリ

 正社員と非正規労働者の不合理な待遇差の解消は、安倍政権の重要政策になっている。安倍晋三首相自身も「非正規という言葉をこの国から一掃する」と強調してきた。厚生労働省が「非正規」との表現を使わないことを文書やメールで省内に通知したのは、それだけ表現に神経質になっていたためとみられる。

 総務省の労働力調査(詳細集計)によると、役員を除く雇用者に占める非正規労働者は、第二次安倍政権発足当初の二〇一三年で年平均約千九百十万人(36・7%)だったが、一八年には約二千百二十万人(37・9%)に増加した。

 非正規労働者は、正社員に比べて賃金や社会保障などの面で待遇が悪く、格差拡大や貧困の問題と結び付いている。企業には都合の良い「雇用の調整弁」とされ、否定的な意味合いで受け止められることが多い。

 労働問題に詳しい法政大の上西充子教授は、厚労省の文書について「非正規という言葉だけをなくしてしまえ、という取り組みに映る。正社員になれず社会的に不遇な立場にある非正規労働者を巡る問題の矮小(わいしょう)化につながりかねない」と指摘。「問題と向き合うなら、逆に非正規をちゃんと社会的に位置付けないといけない」と訴える。 (中根政人)

掲載図:「厚労省が本紙に開示した「非正規労働者」に関する文書。「用いないよう留意」と全部局に通知している」【魚拓】

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