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2020年2月の1件の記事

2020/02/17

役所が共産党アレルギーを持っている証拠

非自民の政権交代が日本では成り立たないだろうと思う理由の一つがこれ。
本来は政権に忠実であるべきはずの役人自体が、自民党・カルト「保守」的認識に染まっていて、人権とか自律とかいう思想になじめない。どれほど理不尽であっても極右的な攻撃には脆弱な一方、行儀の良い市民運動的な異議申し立てには聞く耳を持たない。政権を支えるはずの行政機関がこんな体質では、非自民や「革新」が首長や議会の多数派を取っても、内部から暗黙の抵抗に遭って政権は瓦解する。

「共産党系」理由で講師依頼撤回 区役所、事実認め謝罪:朝日新聞デジタル(2020年2月17日 6時00分)

 昨年12月に横浜市緑区が開催した人権啓発講演会で、いったん講師を依頼した男性について、「所属団体は共産党系ではないか」と区役所内で声が上がり、「ダブルブッキング(二重予約)だった」という事実と異なる理由で依頼を取り消していたことが市への取材でわかった。区は先月31日、事実関係を認め、男性に謝罪した。

 男性の所属団体は特定の政党を支援しておらず事実誤認のうえ、識者は「『信条によって差別されない』という憲法の規定に反する行為だ」と指摘する。

 共産党神奈川県委員会の田母神悟委員長は、今月2日に投開票された京都市長選で「大切な京都に共産党の市長は『NO』」とする新聞広告が出たことにも触れながら、「時代錯誤な共産党アレルギーが社会に残っていることがうかがえる」と指摘。「緑区の対応は不愉快だ」と話した。

 区の三瓶(さんべ)一道副区長は「中立性を過度に意識してしまった。安易に断らず、藤井氏側と、中立性が担保できるよう講演内容を相談するべきだった。批判があればきちんと藤井氏の実績を説明すればよかった」と話している。

 依頼を取り消されたのは、NPO法人日本障害者協議会(東京都新宿区)の藤井克徳代表(70)。障害者が働く場を支援する全国組織「きょうされん」(同中野区、前身は共同作業所全国連絡会)の専務理事なども務める。

 東京都や内閣府などの諮問機関の委員を歴任し、障害者の自立支援策などを提言している。自身も視覚障害があり、2014年には国連の第7回障害者権利条約締約国会議に日本代表団顧問として参加した。

 緑区によると、講演会は夏の東京五輪・パラリンピックに向けた「東京2020公認プログラム」の一つで、多様性への理解を進めるための事業。昨年7月5日、きょうされんを通して藤井氏に講師を依頼し、承諾を得た。ところがその後、講師選定の場に加わっていた総務課の係長がきょうされんをインターネットで検索し、予測検索ワードに「共産党」が出てきたことや、共産党大阪府委員会のホームページのリンク先にきょうされん大阪支部があったことを理由に、「きょうされんは共産党系ではないか」と指摘した。

 区役所内で同11日に再協議した場で、係長が「検索するとすぐに所属する団体が共産党系だとわかる」「(一部の市民から)なぜこの人を呼んだのかと意見が入る可能性もある。(他政党などの)団体系の講師の依頼を断れなくなる恐れもある」と反対。区は同日、きょうされんに講師依頼をキャンセルする連絡をした。この時点で他の人物とは日程調整をしていなかったが、キャンセルした本当の理由を言いにくかったため、「ダブルブッキングだった」と事実と異なる説明をしたという。

 きょうされんの多田薫事務局長は「団体設立以来、どの選挙でも特定の政党の候補を公認・推薦したことはない。行政が発言を封印するような過ちを犯さないよう強く求めた」と話す。藤井氏は「中立とは本来、様々な意見に耳を傾けること。多様性を理解するための人権啓発事業で、忖度(そんたく)を疑わせる排除が行われたのは悲しい」と語った。(茂木克信)

木村草太・首都大学東京法学部教授(憲法学)の話

 木村草太・首都大学東京法学部教授(憲法学)の話 緑区がインターネットの検索エンジンの結果だけで講師の取り下げを決めたというのは、ずさんに過ぎる。そもそも「共産党系」という前提事実すら正しくない。

 人権啓発などの文化活動の講師は、本人の専門性や業績を基準に選ぶもので、どこかの政党や支援団体に属しているということは考慮しないのが、本来の行政の中立性だ。憲法14条も、信条や政治的関係などで差別を受けないことを保障している。

 もちろん、講師は講演会の中で政党の宣伝活動をしてはいけない。講師を受ける側もそれは意識するだろうし、行政の側も、事前に話す内容を打ち合わせておけば事足りる。

 今回の区の反応の裏には、ネットの発達などによって外部から圧力をかける手法が増え、行政が萎縮している問題がある。だが批判を受けても、講演する分野の著書や活動歴といった根拠があれば説明できる。行政はそうした基準を整備することが必要だ。

2015年の「表現の不自由展」の会場となったギャラリー古藤(ふるとう)(東京都練馬区)の田島和夫オーナーの話

 2015年の「表現の不自由展」の会場となったギャラリー古藤(ふるとう)(東京都練馬区)の田島和夫オーナーの話 練馬区役所を定年退職する前、人権・男女共同参画課長だった時のこと。ある選挙で野党系候補だった女性を講演会の講師に呼ぼうとしたら、自民党議員から電話が来て、根拠をただされたという引き継ぎを受けた。女性は公募の実行委員会が選んだが、そうした外部からの声に備え、選考の根拠を説明できるようにしていた。

 横浜市緑区の対応は論外だが、異論が出ない講師を選ぼうとした気持ちはわからなくもない。だが、それでは萎縮が社会に広がる。必要な情報を発信したり吸収したりできなくなると、表現の自由の土台が揺らぎ、民主主義が劣化する。そうならないためにも、行政はあらゆる面でルールをオープンにし、批判に答えられるようにしてほしい。

     ◇

 〈きょうされん〉 1977年8月、16の共同作業所の連絡会組織「共同作業所全国連絡会(略称・共作連)」として発足。99年に1千会員を達成し、現在は就労系事業所やグループホーム、相談支援事業所など全国約1900の事業所が会員となっている。障害のある人の労働を通じた社会参加を進めるため、政党の枠を超えて国会への請願や政策提言、要望活動に取り組んでいる。


横浜市緑区の総務課係長は実名で報道してもいいと思うし、こんな難癖みたいな意見が役所で通って、しかも嘘までついたのかは、調査して明らかにされるべき。副区長は共産党系を排除しようとしたこと自体には問題がないという認識のようだし、ろくでもない。

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